研究内容

1.時間分解STMの開発と応用

原子レベルの空間分解能を持つ走査トンネル顕微鏡(STM)とフェムト秒領域の時間分解能を持つ超短パルスレーザー技術を融合することにより、(1)STM(原子レベル)の空間分解能で局所構造や電子状態を確認しながら、(2)フェムト秒(光学的パルス幅)の時間分解能で分光を行うことが可能な新しい分光技術の研究を進め、世界に先駆けて同手法の開発に成功すると共に局所スピンの超高速ダイナミックスの計測などを可能にしてきた(図1,2)。本研究では、こうした技術を基盤とし、CEP(carrier envelope phase)と呼ばれるパルス光内の電場の位相の直接制御など、量子光学の先端技術を導入することにより、サブサイクル(電場一周期内)の現象を制御してSTMの空間分解能でプローブすることを可能にする極限計測法を開発し、新たな科学領域の開拓を試みる。

これまで開発を進めてきた時間分解STMは、光学的ポンププローブ法をSTMと融合することにより誕生したが、パルス光には数周期の電場が含まれ、その位相も制御されてはいなかった。本研究では、新光源や位相制御などの先端技術を導入し、励起光の位相変調など微弱信号を取り出す為の新たな工夫を凝らすことにより、サブサイクルのダイナミックスをSTMの分解能で顕わにする測定法を実現する。STM探針直下の電場は100万倍程の大きさに増幅される為、STMで周囲の環境を確認しながら、目的とする局所構造を選択的に励起できる。従って、モノサイクルのパルス光を用いCEP制御することで、局所物性を励起電場で制御しながらダイナミックスをサブサイクルでとらえる仕組みが可能になる。

通常の超高速分光では物性を励起した後の緩和過程を観察するが、本手法では物性を制御しながらサブサイクルで時間分解測定を行う。こうした情報は分子機能を最大限に引き出すだけで無く、全く新しい機能を発現させ活用する為の基礎となる可能性を持ち、分子マシン、触媒、薬剤開発など幅広い応用が拓ける。また測定対象は分子に限らず半導体素子内のキャリアや相転移のダイナミックスなど多岐に亘り、新しい学術領域の創出が期待される。

図1 GaAs-PIN構造中に光励起されたキャリアの内蔵電場内でのダイナミックスの可視化
図2 単一量子井戸中のスピンダイナミックス計測

2.コヒーレントフォノンによる量子制御

コヒーレントフォノンとはレーザーパルスで励起した位相の揃った格子振動のことです。このようなフォノン量子の振幅・位相・周波数を光で精密に制御することにより、カーボンナノチューブ・タンパク質などの量子制御や、トポロジカル絶縁体などにおける構造相転移制御とそれを応用した量子素子開発を目指しています。

3.細胞イメージング技術の開拓

細胞イメージング技術の開拓の画像

非線形ラマン分光法を基盤とした新しい分子イメージング手法の開拓を目指します。

4.タンパク質溶液テクノロジー

タンパク質溶液テクノロジーの画像

タンパク質の多様な溶液状態を自在に制御する技術の開発を目指します。

5.量子生命制御

タ量子生命制御の画像

外場によって細胞や各要素のダイナミックスを分子レベルで制御し、例えば、ガン化のメカニズムを明らかにしたり、新たな治療法を開拓する。

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