スピントロニクス理論の基礎/4

(91d) 更新

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4 強磁性体の微視的記述

4-1 強磁性ラグランジアンと磁化の運動

(2.12) を極座標表示に直す。

\bm S(\bm r) は空間的に大きさは一定で( |\bm S(\bm r)|=S(\bm r)=S )、 その方向のみが変化するとすれば、 \bm S の方向を表す \theta(\bm r) \phi(\bm r) を空間座標の関数として、(4.2)

\bm S(\bm r) \equiv S\bm n = \begin{pmatrix} S \sin\theta(\bm r) \cos\phi(\bm r)\\ S\sin\theta(\bm r) \sin\phi(\bm r) \\ S\cos\theta(\bm r) \end{pmatrix}

と表せる。このとき、

\Delta \theta=\theta(\bm r+\bm a)-\theta(\bm r)=\bm a\cdot \nabla\theta(\bm r)

\Delta \phi=\phi(\bm r+\bm a)-\phi(\bm r)=\bm a\cdot \nabla\phi(\bm r)

そして、

\theta \rightarrow \theta+\Delta\theta のとき  |\Delta \bm S| = S \Delta\theta

\phi \rightarrow \phi+\Delta\phi のとき  |\Delta \bm S| = S \sin\theta \Delta\phi

より、

\sum_{\bm a=a \bm e_x, a\bm e_y, a\bm e_z} &\{\bm S(\bm r+\bm a)-\bm S(\bm r)\}^2\\ &=a^2S^2\{(\nabla\theta)^2+\sin^2\theta(\nabla\phi)^2\}

したがって、(4.1)

H_J=&\,\frac{J}{2}\sum_{\bm r}\{\nabla \bm S(\bm r)\}^2\\ =&\,\frac{J}{2}\int\frac{d^3r}{a^3}\{\nabla \bm S(\bm r)\}^2\\ =&\,\red{+}\frac{J}{2}\int\frac{d^3r}{a^3}S^2\{(\nabla\theta)^2+\sin^2\theta(\nabla\phi)^2\}

を得る。(空間的に一様の時に最もエネルギーが低いはずで、教科書の符号は誤り)

磁気異方性

(2.12) は物質が等方的な場合の話で、容易軸・困難軸等がある場合には

-\frac{K}{2}S_z^2  → z軸に向きやすい

や、

\frac{K_\perp}{2}S_y^2  → y軸に向きにくい

などの項を含める場合もある。

例えば前者の場合が (4.3)

H_S=&\int\frac{d^3r}{a^3}\left(\red{+}\frac{J}{2}S^2\{(\nabla\theta)^2+\sin^2\theta(\nabla\phi)^2\}-\frac{K}{2}S^2\cos^2\theta\right)

ただし、教科書では一項目の符号が逆になっている。

S は無次元なので、 K はエネルギーの次元を持つ。

ラグランジアンの導出

ハミルトニアンからラグランジアンを求めるには、 スピンを記述する力学変数と、その共役運動量を知る必要がある。

しかしスピンの力学変数 \bm S は、半径 S の球面上の束縛されているため、 簡単にラグランジアンを求めることができない。

別の言い方をすれば、スピンの量子自由度は SU(2) の交換関係

[\hat S_x,\hat S_j]=i\hbar\sum_k \epsilon_{ijk}\hat S_k

を満たしており、通常の 通常の [\hat p,\hat x]=-\hbar 型の交換関係ではないことが 困難の原因となる。

このような場合、簡単にラグランジアンを導出するには経路積分表示をすることになる(らしい)。

そこから求まるのが、(4.5) らしい。

L_S&=\int\frac{d^3r}{a^3}\hbar S\dot \phi(\cos\theta-1)-H_S\equiv L_B-H_S\\ &=\int\frac{d^3r}{a^3}\mathcal L_S=\int\frac{d^3r}{a^3}(\mathcal L_B-\mathcal H_S)

後で使うことになるため、ここでラグランジアン密度 \mathcal L_S, \mathcal L_B ハミルトニアン密度 \mathcal H_S などを定義しておく。

以下に見るように、スピンのダイナミクスは H_S よりもむしろここで出てくる L_B で規定されるので、本来であれば (4.5) の導出がとても重要なんだけれど・・・ここでは飛ばされている。

運動方程式

実際に運動方程式を見てみよう。

(4.7) は、教科書では汎関数微分の使い方がおかしくて、

\frac{\delta L_S}{\delta \theta}=\frac{d}{dt}\left(\frac{\red\PD \mathcal L_S}{\red\PD \dot \theta}\right)-\frac{\red\PD \mathcal L_S}{\red\PD\theta}=0

\frac{\delta L_S}{\delta \phi}=\frac{d}{dt}\left(\frac{\red\PD \mathcal L_S}{\red\PD \dot \phi}\right)-\frac{\red\PD \mathcal L_S}{\red\PD \phi}=0

より、(4.8)

&0-\left(-\hbar S\sin\theta\dot\phi-\frac{\delta H_S}{\delta \theta}\right )=0\\ &\hbar S\sin\theta\dot\phi=-\frac{\delta H_S}{\delta \theta}

&\frac{d}{dt}(\hbar S(\cos\theta-1))-\frac{\delta H_S}{\delta\phi}=0\\ &\hbar S\sin\theta\dot\theta=-\frac{\delta H_S}{\delta \phi}

という、 \theta,\phi に対して対称性の良い式を得る。

\delta は汎関数微分を表す。というのも、 L_B H_S \theta(\bm r) \phi(\bm r) の関数であり ( L_S[\theta,\phi] などと書く)、 \bm r の関数ではない。 \theta(\bm r) \phi(\bm r) \bm r の関数である。

H_S \bm r 座標上のすべての点での \theta 値や \phi 値に依存する多変数関数であり、さらに、 L_B \dot\phi にも陽に依存している。このような無限個の変数に依存する関数に対する「偏微分」のようなものを書くために汎関数微分が用いられる(そうです)。参照 → http://homepage2.nifty.com/eman/analytic/functional.html

Landau-Lifshitz方程式

もう少し見通しを良くするために、ベクトル \bm S を用いて書き直す。

\bm S=S\bm n=S\begin{pmatrix}\sin\theta\cos\phi\\ \sin\theta\sin\phi\\ \cos\theta\end{pmatrix}

より、(4.9), (4,10)

\frac{d\bm S}{dt} &=S\dot\theta\begin{pmatrix}\cos\theta\cos\phi\\ \cos\theta\sin\phi\\ -\sin\theta\end{pmatrix} +S\dot\phi\begin{pmatrix}-\sin\theta\sin\phi\\ \sin\theta\cos\phi\\ 0\end{pmatrix}\\ &\equiv S(\dot\theta\bm e_\theta+\sin\theta\dot\phi\bm e_\phi)

同様に、

\theta\rightarrow\theta+\delta\theta に対して \Delta \bm S=S\delta\theta\bm e_\theta
\phi\rightarrow\theta+\delta\phi に対して \Delta \bm S=S\sin\theta\delta\phi\bm e_\phi

ここから、任意の関数 F(\theta,\phi) に対して

(4.11)

\frac{\delta F}{\delta\theta}=S\left(\bm e_\theta\cdot\frac{\delta F}{\delta\bm S}\right)

\frac{\delta F}{\delta\phi}=S\sin\theta\left(\bm e_\phi\cdot\frac{\delta F}{\delta\bm S}\right)

ただし、 \frac{\delta F}{\delta\bm S} \bm S の変化に対する F の勾配 \bm\nabla_{\bm S}\,F の汎関数微分表示である。すなわち、 \delta\bm S の変化に対する F の変化量が \Delta F=\int \frac{d^3r}{a^3}\delta \bm S\cdot\frac{\delta F}{\delta\bm S} と書けるものとしている。

(4.9) に (4.8) を代入すると、

\hbar \dot{\bm S} &=\left(\frac{1}{\sin\theta}\frac{\delta H_S}{\delta \phi}{\bm e}_\theta-\frac{\delta H_S}{\delta\theta}{\bm e}_\phi\right)\\ &=S\left\{\bm e_\theta\left(\bm e_\phi\cdot\frac{\delta H_S}{\delta\bm S}\right) -\bm e_\phi\left(\bm e_\theta\cdot\frac{\delta H_S}{\delta\bm S}\right)\right\}\\

ベクトル3重積の公式から、一般に

\bm A\times(\bm B\times\bm C)=(\bm A\cdot\bm C)\bm B-(\bm A\cdot \bm B)\bm C

が成り立つので、

(4.12)

\hbar \dot{\bm S} &=S\left(\frac{\delta H_S}{\delta\bm S}\times(\bm e_\theta\times\bm e_\phi)\right)\\ &=\frac{\delta H_S}{\delta\bm S}\times \bm S

ここで、 \bm e_\theta\times\bm e_\phi=\bm n を用いた。

(4.12) は、ある点 \bm r に存在するスピン \bm S(\bm r) の運動が、 他のスピン(ここでは隣接するスピン?)の作る \frac{\delta H_S}{\delta \bm S} に比例する有効磁場の下での歳差運動として記述されることを表している。

ラーモア歳差運動・スピン・磁気モーメント・磁場

ちょっと復習を兼ねて、一様な磁束密度 \bm B 中における磁気モーメント \bm M の歳差運動は、そのトルクを

\bm T=\bm M\times\bm B=\gamma \bm J\times\bm B=\frac{d\bm J}{dt}

として表せた。ここで、 \gamma は磁気回転比、 \bm J は角運動量である。

このとき、系はラーモア周波数 \omega_L=\gamma B で歳差運動をする。

今は(単位体積あたりで) \bm M=-\frac{g\mu_B}{a^3}\bm S (2.9) であるから、

\gamma \bm J=-\frac{g\mu_B}{a^3}\bm S

\bm T=-\frac{g\mu_B}{\gamma a^3}\dot{\bm S}=-\frac{g\mu_B}{a^3}\bm S\times \bm B

\hbar\dot{\bm S}=-\hbar\gamma \bm S\times \bm B

これと (4.12) とを比べることで、「有効磁場」が分かる。
→ S×B ではなく B×S ではないかと コメントを頂きました。後で見直そうと思います。

有効磁場

ある時刻において、 \bm r に存在する有効磁場は

(4.13)

\bm B_S(\bm r)\equiv\frac{1}{\hbar\gamma}\frac{\delta H_S}{\delta \bm S}

と定義される。 \gamma\equiv\frac{g\mu_B}{\hbar}>0 は磁気回転比と呼ばれる定数。

これを用いると、(4.14)

\hbar\dot{\bm S}=\bm B_S\times(\gamma\hbar\bm S)

となって、一様磁化を持つマクロな強磁性体に対する Landau-Lifshitz 方程式に一致する。

この式は、 \hbar \bm S が角運動量であること、
\gamma \hbar\bm S=\bm M が磁化であること、
\bm M\times \bm B_S がトルクを表すこと、
から、角運動量変化 = トルク という式であることが分かる。

スピンの共役関係

(4.5) より、 \phi に共役な変数(運動量) \hat P_\phi を求めてみる。

\hat P_\phi\equiv \frac{\PD \mathcal L_B}{\PD \dot\phi}=\hbar S(\cos\theta\, \red{-1})

ではないのか???

4-2 スピンの Berry 位相項

上記の通り、スピン系のラグランジアンの中で L_B が本質的な役割を担う。

これをスピン Berry 位相項と呼ぶ。( L_B の B は Berry の B と思われる)

スピンがゆっくり時間発展するとき、この項によりスピンの波動関数に「位相」が付く・・・ という意味はまだよく分かっていない。

ラグランジアン ( L_B ) の時間積分、作用項を (4.6) の定義に従って計算してみると、

(4.20A)

&\int_{t_0}^{t_1}dt\,L_B\\ &=\int_{t_0}^{t_1}dt\int\frac{d^3r}{a^3}\,\hbar S \dot\phi(\cos\theta-1)\\ &=\int\frac{d^3r}{a^3}\,\hbar S \int_{t_0}^{t_1}dt\, \frac{\PD \phi(\bm r,t)}{\PD t}(\cos\theta(\bm r,t)-1)\\ &=\int\frac{d^3r}{a^3}\,\hbar S \int_{\phi(t_0)}^{\phi(t_1)}\!\! d\phi\, \{\cos\theta(\bm r,t(\phi))-1\}\\

となる。さらに

\cos\theta(\bm r,t(\phi))-1=-\int_0^{\theta(\bm r,t(\phi))}d\theta'\,\sin\theta'

の関係を用いると、

(4.20B)

&\int_{t_0}^{t_1}dt\,L_B\\ &=-\int\frac{d^3r}{a^3}\,\hbar S \int_{\phi(t_0)}^{\phi(t_1)}\!\! d\phi\, \int_0^{\theta(\bm r,t(\phi))}d\theta'\,\sin\theta'\\

となるが、この式を図4.3左のように図形的に理解したければ、 (4.20A) の方が分かりやすいはずだ。

fig4-3_left.png

\cos\theta-1 は上図左のように \bm S の方向ベクトル先端から単位球に北極で接する平面に下ろした垂線の足の長さを表している。教科書ではこれが子午線の長さを表しているかの様に書かれているが、その理由はよく分からない。

時刻 t と共に \phi が変化すると、この積分値は上図右のように \bm S 先端から下ろした垂線が通過する面の面積を表すことに・・・・・あれ、ならないのか。 d\phi が面に平行じゃないから簡単には図形で表せないかも?教科書ではこれを北極( \theta=0 )から測った立体角としているが、やはりこれは間違いと感じられる。

また、その後の議論では、 \phi=0 の線に沿って、あるいは \phi=\pi の線に沿って、スピンが \theta=0 から \theta=\pi まで変化する状況に関して考察されているが、 L_B\propto\dot\phi であるから \phi が時間的に変化しない限り L_B=0 であるため、この議論も意味が分からなかった。

後で文献 [57,58] を当たってみなければ。。。

4-3 スピン系の持つ運動量

スピンは角運動量を持つが、通常の運動量を持つか? → YES

まずは一般論から

一般的に、エネルギーおよび運動量の保存則は系の時間に対する、あるいは空間に対する並進対称性から導かれる。以下にそれを見よう。

系のラグランジアン密度が \mathcal L で表されるとする。このとき系のラグランジアンは、

L(t)\equiv\int d^3r\,\mathcal L(\bm r,t)

また、系の座標パラメータ t,x,y,z x_0,x_1,x_2,x_3 で表す。

\mathcal L は変数 \varPsi^\alpha(x_0,x_1,x_2,x_3) およびその導関数 \PD_\mu \varPsi^\alpha(x_0,x_1,x_2,x_3)\equiv\frac{\PD}{\PD x_\mu}\varPsi^\alpha(x_0,x_1,x_2,x_3) ただし \mu=0,1,2,3 の関数であるとする。

この場合の古典的な運動方程式は、ラグランジアンの時間積分、すなわちラグランジアン密度の時空積分として定義される作用(action) I を極小にするという条件から決まる。

I=\int_{t_1}^{t_2}dt\,L(t)=\int_{t_1}^{t_2}dx_0\int dx_1\int dx_2\int dx_3\,\mathcal L

すなわち、変数 \varPsi^\alpha のいかなる微小変化 \varPsi^\alpha\rightarrow\varPsi^\alpha+\delta\varPsi^\alpha に対しても、作用の変化が停留していることになる。

\delta I=\iiiint d^4x\, \frac{\delta I}{\delta \varPsi^\alpha}\delta \varPsi^\alpha=0

これが任意の \delta\varPsi^\alpha に対して成り立つことから、

\frac{\delta I}{\delta \varPsi^\alpha}=0

が条件となる。上記の通り \mathcal L \varPsi^\alpha \PD_\mu\varPsi^\alpha の関数である場合には、

(4.21)

\frac{\delta I}{\delta \varPsi^\alpha}=\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD\varPsi^\alpha} -\sum_{\mu=0}^{3}\frac{\red\PD}{\red\PD x_\mu}\left(\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD (\PD_\mu\varPsi^\alpha)}\right)=0

である。左辺は汎関数微分、右辺は通常の偏微分で書かれるのが正しいはず。(汎関数微分については http://homepage2.nifty.com/eman/analytic/functional.html 等を参照)

以降では \mu,\nu 0,1,2,3 を渡る添え字、 i,j 1,2,3 を渡る添え字として、その範囲は省略する。

ここで、エネルギ運動量テンソル T^{\mu\nu} を次のように定義すると、 (教科書でこの定義が大幅に間違っている点について本多先生から指摘があった)

(4.22)

T^{\mu\nu}\equiv\red{\sum_\alpha}\,\frac{\red\PD\red{\varPsi^\alpha}}{\red\PD x_\mu}\left(\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD(\PD_\nu\varPsi^\alpha)}\right)-\delta_{\mu\nu}\red{\mathcal L}

(4.24)

\sum_\nu\PD_\nu T^{\mu\nu}=&\left[\sum_{\nu,\alpha}\frac{\PD}{\PD x_\nu}\frac{\PD{\varPsi^\alpha}}{\PD x_\mu}\left(\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD(\PD_\nu\varPsi^\alpha)}\right)\right]-\frac{\PD\mathcal L}{\PD x_\mu}\\

(4.25)

\frac{\PD\mathcal L}{\PD x_\mu}=\sum_{\alpha}\left( \frac{\PD\varPsi^\alpha}{\PD x_\mu}\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD\varPsi^\alpha}+ \sum_{\nu}\frac{\PD^2\varPsi^\alpha}{\PD \red{x_\mu}\PD \red{x_\nu}}\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD(\PD_\nu\varPsi^\alpha)} \right)

(4.26)

\frac{\PD\mathcal L}{\PD x_\mu}&=\sum_{\alpha}\left( \frac{\PD\varPsi^\alpha}{\PD x_\mu} \sum_{\mu'}\frac{\PD}{\PD x_{\mu'}}\frac{\PD\mathcal L}{\PD(\PD_{\mu'}\varPsi^\alpha)}+ \sum_{\nu}\frac{\PD^2\varPsi^\alpha}{\PD \red{x_\mu}\PD \red{x_\nu}}\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD(\PD_\nu\varPsi^\alpha)} \right)\\ &=\sum_{\nu,\alpha}\frac{\PD}{\PD x_\nu}\left(\frac{\PD\varPsi^\alpha}{\PD x_\mu}\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD(\PD_\nu\varPsi^\alpha)}\right)

より、

(4.23)

\sum_\nu\PD_\nu T^{\mu\nu}=0

を得る。

この式を全空間で積分すれば、

(4.27A)

\int d^3r\sum_\nu\PD_\nu T^{\mu\nu}&=\int d^3r\,\frac{\PD T^{\mu 0}}{\PD t}+\int d^3r\sum_i\frac{\PD}{\PD x_i} T^{\mu i}\\ &=\int d^3r\,\frac{\PD T^{\mu 0}}{\PD t}+\int d^3r\sum_i \nabla_i T^{\mu i} = 0\\

(4.27B)

\therefore\int d^3r\,\frac{\PD T^{\mu 0}}{\PD t}=-\int d^3r\sum_i \nabla_i T^{\mu i}

無限遠では場がないことから右辺はゼロとなり、

(4.27C)

\frac{d}{d t}\int d^3r\,T^{\mu 0}=0

すなわちこの左辺の積分は保存量である。

(4.28A)

E\equiv\int d^3r\,T^{00}

P_i\equiv\int d^3r\,T^{i0}

と置けば、これらがエネルギーおよび運動量を表す。

具体的に書き下せば、

(4.28B)

T^{00}=\left[\sum_\alpha\dot\varPsi^\alpha\left(\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\varPsi^\alpha}\right)\right]-\mathcal L

T^{i0}=\sum_\alpha\frac{\PD\varPsi^\alpha}{\PD x_i}\left(\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\varPsi^\alpha}\right)

すなわち、

(4.28C)

E=\int d^3r\left[\,\sum_\alpha\dot\varPsi^\alpha\left(\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\varPsi^\alpha}\right)-\mathcal L\,\right]

\bm P=\int d^3r\,\sum_\alpha\bm\nabla\varPsi^\alpha\left(\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\varPsi^\alpha}\right)

となる。

スピン系では

(4.28C) に (4.5) を代入すると( H_S \dot\theta,\dot\phi に依存しないことから)、

(4.29)

E_S&=\int d^3r\left[\dot\theta\left(\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\theta}\right)+\dot\phi\left(\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\phi}\right)-\mathcal L\,\right]\\ &=0+\int\frac{d^3r}{a^3}\dot\phi\hbar S(\cos\theta-1)-L_S\\ &=L_B-L_S\\ &=H_S

\bm P_S&=\int d^3r\,\left(\bm \nabla\!\theta\,\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\theta}+\bm \nabla\!\phi\,\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\phi}\right)\\ &=\int d^3r\,\left(0+\bm \nabla\!\phi\,\frac{\hbar S}{a^3}(\cos\theta-1)\right)\\ &=\int \frac{d^3r}{a^3}\,\hbar S\, (\bm\nabla\!\phi)(\cos\theta-1)

(4.6) と比較すると運動量は空間方向の Berry 位相になっている(そうだ)。

4-4 局在スピンの緩和

(4.14) 式で見たように、スピン位置での有効磁場 \bm B_S がもし時間に依存しなければ、 磁場方向を向いていないスピンは永久に歳差運動を行うことになる。 しかし、実際には徐々に歳差運動が失われ、比較的速やかにスピンは磁場方向を向いて静止する。

この運動は、(4.14) にスピンの速度に比例した大きさ \alpha|\dot S| を持つ 「摩擦項」を加えることで記述できる。このときの比例係数 \alpha は Gilbert ダンピング定数と呼ばれ、金属磁性体の場合には 0.01 程度の大きさとなる。

(4.31)

\dot {\bm S}=\gamma \bm B_S\times\bm S-\frac{\alpha}{S}\bm S\times \dot {\bm S}

S は次元を持たないため、 \alpha も次元を持たない。)

まず、右辺から明らかに \dot{\bm S}\perp \bm S すなわち \dot{\bm S}\cdot\bm S=0 である。

したがって、右辺第2項の大きさは

\left|-\frac{\alpha}{S}\bm S\times \dot {\bm S}\right|=\alpha|\dot{\bm S}|

と評価できる。

\alpha が小さいことから、 \dot{\bm S} はほぼ \bm B_S に垂直であり、 \bm e_\phi 方向を向く。これが歳差運動成分である。

緩和項はさらにそれに垂直であり、 \bm e_\theta 方向を向く。 これがスピンを磁場方向に向ける成分である。

(4.31) から (4.32) の導出は

&\dot{\bm S}=\gamma\bm B_S\times\bm S-\frac{\alpha}{S}\bm S\times\dot{\bm S}\\ &\bm S\times\dot{\bm S}=\bm S\times(\gamma\bm B_S\times\bm S)-\bm S\times\left(\frac{\alpha}{S}\bm S\times\dot{\bm S}\right)\\ &\dot{\bm S}\cdot(\bm S\times\dot{\bm S})=0=\dot{\bm S}\cdot\left\{S^2\gamma\bm B_S-(\gamma\bm B_S\cdot\bm S)\bm S\right\}+\dot{\bm S}\cdot(\alpha S\dot{\bm S})\\ &S^2\gamma\bm B_S\cdot\dot{\bm S}=-\alpha S\dot{\bm S}^2\\ &\gamma\bm B_S\cdot\dot{\bm S}=\red{\frac{1}{\hbar}}\frac{\delta H_S}{\delta \bm S}\cdot \dot{\bm S}=\red{\frac{1}{\hbar}}\frac{dH_S}{dt}=-\frac{\alpha}{S} \dot{\bm S}^2\\ &\frac{dH_S}{dt}=-\frac{\red{\hbar}\alpha}{S} \dot{\bm S}^2\\

途中で、 \bm S\perp\dot{\bm S} すなわち \bm S\cdot\dot{\bm S}=0 を使った。

脚注に依れば、この緩和項は時間微分に対する1次近似までを取り込んだ近似理論に過ぎず、 本来は高次項があってしかるべきであるとのこと。

散逸関数

ラグランジアンに散逸成分(緩和項)を入れる標準的なやり方として、 Rayleigh の「散逸関数(緩和関数)」を用いる方法がある。

今の場合であれば、緩和関数として

(4.33)

W_S\equiv \int\frac{d^3r}{a^3}\frac{\hbar \alpha}{2S}\dot{\bm S}^2= \int\frac{d^3r}{a^3}\frac{\alpha}{2}\hbar S(\dot\theta^2+\sin^2\theta\dot\phi^2)

を定義して、運動方程式を

(4.34)

\frac{\delta L_S}{\delta q}=\frac{d}{dt}\frac{\red \PD \mathcal L_S}{\red\PD\dot q}-\frac{\red\PD \mathcal L_S}{\red\PD q}=-\frac{\delta W_S}{\delta\dot q}

ただし、 q=\theta,\phi とすることになる。

このような定式化は、後に (5.28) あたりにおいて、 変数変換後のラグランジアンに対する緩和項の影響を考える際に有用となる。

(緩和関数はエネルギーを時間で割った次元を持っている)

4-5 スピンの運動方程式と磁壁解

運動方程式の HS 依存性

(4.31) に (4.3) を代入して具体的な解を求める。

まず (4.9) より左辺は、

\frac{d\bm S}{dt}=S(\dot\theta\bm e_\theta+\sin\theta\dot\phi\bm e_\phi)

右辺第一項は、(4.13), (4.12) より、

\gamma\bm B_S\times\bm S&=\gamma\frac{1}{\hbar\gamma}\frac{\delta H_S}{\delta\bm S}\times \bm S\\ &=\frac{1}{\hbar}\left(\frac{1}{\sin\theta}\frac{\delta H_S}{\delta \phi}\bm e_\theta -\frac{\delta H_S}{\delta \theta}\bm e_\phi\right)

右辺第二項は、

\bm n\times\bm e_\theta&=\begin{pmatrix}\sin\theta\cos\phi\\\sin\theta\sin\phi\\\cos\theta\end{pmatrix}\times\begin{pmatrix}\cos\theta\cos\phi\\\cos\theta\sin\phi\\-\sin\theta\end{pmatrix}\\ &=\begin{pmatrix}-\sin\theta\sin\phi\sin\theta-\cos\theta\cos\theta\sin\phi\\\cos\theta\cos\theta\cos\phi+\sin\theta\cos\phi\sin\theta\\\sin\theta\cos\phi\cos\theta\sin\phi-\sin\theta\cos\phi\cos\theta\sin\phi\end{pmatrix}\\ &=\begin{pmatrix}-\sin\phi\\\cos\phi\\0\end{pmatrix} =\bm e_\phi

\bm n\times\bm e_\phi&=\begin{pmatrix}\sin\theta\cos\phi\\\sin\theta\sin\phi\\\cos\theta\end{pmatrix}\times \begin{pmatrix}-\sin\phi\\\cos\phi\\0\end{pmatrix}\\ &=\begin{pmatrix}-\cos\theta\cos\phi\\-\cos\theta\sin\phi\\\sin\theta\cos\phi\cos\phi+\sin\theta\sin\phi\sin\phi\end{pmatrix}\\ &=\begin{pmatrix}-\cos\theta\cos\phi\\-\cos\theta\sin\phi\\\sin\theta\end{pmatrix} =-\bm e_\theta

を用いれば、

-\frac{\alpha}{S}\bm S\times\frac{d\bm S}{dt}&=-\alpha \bm S \times(\dot\theta\bm e_\theta+\sin\theta\dot\phi\bm e_\phi)\\ &=-\alpha S\, \bm n \times(\dot\theta\bm e_\theta+\sin\theta\dot\phi\bm e_\phi)\\ &=-\alpha S (\dot\theta\bm e_\phi-\sin\theta\dot\phi\bm e_\theta)\\

そこで、 \bm e_\theta\perp\bm e_\phi より \bm e_\theta,\bm e_\phi のそれぞれの係数から

S\dot\theta=\frac{1}{\hbar\sin\theta}\frac{\delta H_S}{\delta \phi}+\alpha S\sin\theta\dot\phi

S\sin\theta\dot\phi=-\frac{1}{\hbar}\frac{\delta H_S}{\delta \theta}-\alpha S \dot\theta

HS の汎関数微分

一方で、 H_S の汎関数微分は、例えば

\delta H_S&= \int\frac{d^3r}{a^3}\ \delta\left(\red+\frac{J}{2}S^2((\nabla\theta)^2+\sin^2\theta(\nabla\phi)^2)-\frac{K}{2}S^2\cos^2\theta\right)\\ &= \int\frac{d^3r}{a^3}\left\{\frac{\PD}{\PD\theta}\Big(***\Big)\delta\theta+\frac{\PD}{\PD(\bm\nabla\theta)}\Big(***\Big)\cdot\delta(\bm\nabla\theta)\right\}\\ &= \int\frac{d^3r}{a^3}\left\{\frac{\PD}{\PD\theta}\Big(***\Big)-\bm\nabla\cdot\frac{\PD}{\PD(\bm\nabla\theta)}\Big(***\Big)\right\}\delta\theta\\ &= \int\frac{d^3r}{a^3}\left\{\frac{\delta H_S}{\delta\theta}\right\}\delta\theta\\

すなわち、

\frac{\delta H_S}{\delta\theta}=\frac{\PD}{\PD\theta}\Big(***\Big)-\bm\nabla\cdot\frac{\PD}{\PD(\bm\nabla\theta)}\Big(***\Big)

のように偏微分で表せるから、

\frac{\delta H_S}{\delta\theta} &= \frac{\PD}{\PD\theta}\Big(***\Big)-\bm\nabla\cdot\frac{\PD}{\PD(\bm\nabla\theta)}\Big(***\Big)\\ &=JS^2\sin\theta\cos\theta(\nabla\phi)^2+KS^2\cos\theta\sin\theta-JS^2\nabla^2\theta\\ &=KS^2\left\{\lambda^2\left(-\nabla^2\theta+\frac{1}{2}\sin 2\theta(\nabla\phi)^2\right)+\frac{1}{2}\sin 2\theta\right\}

\frac{\delta H_S}{\delta\phi} &= \frac{\PD}{\PD\phi}\Big(***\Big)-\bm\nabla\cdot\frac{\PD}{\PD(\bm\nabla\phi)}\Big(***\Big)\\ &=-JS^2\bm\nabla\cdot(\sin^2\theta\bm\nabla\phi)

運動方程式

したがって、

(4.37)

-\sin\theta\dot\phi-\alpha \dot\theta&=\frac{1}{\hbar S}\frac{\delta H_S}{\delta \theta}\\ &=\frac{KS}{\hbar}\left\{\lambda^2\left(-\nabla^2\theta+\frac{1}{2}\sin 2\theta(\nabla\phi)^2\right)+\,\frac{1}{2}\sin 2\theta\right\}

(4.38)

\dot\theta-\alpha \sin\theta\dot\phi&=\frac{1}{\hbar S\sin\theta}\frac{\delta H_S}{\delta \phi}\\ &=-\,\lambda^2\frac{KS}{\hbar}\frac{1}{\sin\theta}\red{\bm\nabla\cdot}\,(\sin^2\theta\red{\bm\nabla}\phi)

となる。教科書の (4.3) の J の項は符号が間違っていることに注意が必要。

(4.39)

\lambda\equiv\sqrt{\frac{J}{K}}

は後に見るように磁気構造の空間的スケールを規定する長さとなる。(例えば磁壁の厚さ)

自明な解

\theta(\bm r,t)=n\pi

は、 n を任意の整数値として上記運動方程式の自明な定常解を与える。

磁壁構造

z=-\infty \theta=\pi z=+\infty \theta=0 となるような 定常的な ( \dot\theta=0 , \dot\phi=0 ) 一次元解 ( \PD\theta/\PD x=\PD\theta/\PD y=0 , \PD\phi/\PD x=\PD\phi/\PD y=0 ) が存在することを以下に示す。

まず、 \phi は定数とする。

\phi(\bm r,t)=\phi_0

このとき、 \theta の方程式は (4.37) より、

0=\frac{KS}{\hbar}\left(-\lambda^2\frac{d^2}{dz^2}\theta+\,\frac{1}{2}\sin 2\theta\right)

すなわち、

(4.40)

\frac{d^2}{dz^2}\theta=\frac{1}{\lambda^2}\sin\theta\cos\theta

を満たすことになる。両辺に d\theta/dz を掛けて z に対して積分すれば、

&\int dz\frac{d^2\theta}{dz^2}\frac{d\theta}{dz}=\frac{1}{2}\left[\left(\frac{d\theta}{dz}\right)^2\right]=\frac{1}{2}\left(\frac{d\theta}{dz}\right)^2+C' \\ &\int dz\frac{1}{\lambda^2}\sin\theta\cos\theta\frac{d\theta}{dz}=\frac{1}{2\lambda^2}\sin^2\theta+C''

(4.41)

\therefore\left(\frac{d\theta}{dz}\right)^2=\frac{1}{\lambda^2}\sin^2\theta+C

z\rightarrow\pm\infty \sin\theta\rightarrow 0 かつ d\theta/dz\rightarrow 0 より、 C=0 であるから、

(4.42)

\frac{d\theta}{dz}=\mp\frac{1}{\lambda}\sin\theta

を得る。

\pm\frac{\lambda}{\sin\theta}\frac{d\theta}{dz}=1

の両辺を積分すれば、

\pm\int dz\frac{\lambda}{\sin\theta}\frac{d\theta}{dz}=\int dz=z+X'

&\pm\int d\theta\frac{\lambda}{\sin\theta}\\ &=\pm\int d\theta\frac{\lambda\sin\theta}{\sin^2\theta}\\ &=\pm\int d\theta\frac{-\lambda}{1-\cos^2\theta}\\ &=\pm\int dt\frac{-\lambda}{1-t^2}\\ &=\pm\int dt\frac{\lambda}{(t+1)(t-1)}\\ &=\pm\frac{\lambda}{2}\int dt\left(\frac{1}{t-1}-\frac{1}{t+1}\right)\\ &=\pm\frac{\lambda}{2}\Big[\log|t-1|-\log|t+1|\Big]\\

&=\pm\frac{\lambda}{2}\log\left|\frac{t-1}{t+1}\right|+X''\\ &=\pm\frac{\lambda}{2}\log\left|\frac{\cos\theta-1}{\cos\theta+1}\right|+X''\\ &=\pm\frac{\lambda}{2}\log\left|\frac{1-\cos\theta}{1+\cos\theta}\right|+X''\\ &=\pm\frac{\lambda}{2}\log\left|\frac{\sin^2\frac{\theta}{2}}{\cos^2\frac{\theta}{2}}\right|+X''\\ &=\pm\frac{\lambda}{2}\log\left|\tan^2\frac{\theta}{2}\right|+X''\\ &=\pm\lambda\log\left|\tan\frac{\theta}{2}\right|+X''\\

&\pm\lambda\log\left|\tan\frac{\theta}{2}\right|=z-X\\ &\log\left|\tan\frac{\theta}{2}\right|=\mp(z-X)/\lambda\\ &\left|\tan\frac{\theta}{2}\right|=e^{\mp(z-X)/\lambda}\\

0\le\theta\le\pi の範囲では \tan\frac{\theta}{2}\ge 0 であるから、

&\tan\frac{\theta}{2}=e^{\mp(z-X)/\lambda}\\

と書け、積分定数 X は磁壁の中心位置を表す。

&\tan^2\frac{\theta}{2}=\frac{1-\cos\theta}{1+\cos\theta}=e^{\mp 2(z-X)/\lambda}\\ &1-\cos\theta=(1+\cos\theta)e^{\mp 2(z-X)/\lambda}\\ &1-e^{\mp 2(z-X)/\lambda}=\cos\theta(1+e^{\mp 2(z-X)/\lambda})\\ &\cos\theta=\frac{1-e^{\mp 2(z-X)/\lambda}}{1+e^{\mp 2(z-X)/\lambda}}\\ &\phantom{\cos\theta}=\frac{e^{\pm(z-X)/\lambda}-e^{\mp(z-X)/\lambda}}{e^{\pm(z-X)/\lambda}+e^{\mp(z-X)/\lambda}}\\ &\phantom{\cos\theta}=\pm\tanh \frac{z-X}{\lambda}\\

境界条件により z=-\infty \cos\theta=-1 z=+\infty \cos\theta=1 また、 \sin\theta\ge 0 であるから、

(4.43)

&\cos\theta=\tanh \frac{z+X}{\lambda}\\

\sin\theta&=\sqrt{1-\cos^2\theta}\\ &=\sqrt{1-\tanh^2 \frac{z+X}{\lambda}}\\ &=\sqrt{1-\left\{\frac{e^{\pm(z-X)/\lambda}-e^{\mp(z-X)/\lambda}}{e^{\pm(z-X)/\lambda}+e^{\mp(z-X)/\lambda}}\right\}^2}\\ &=\sqrt{1-\frac{e^{\pm 2(z-X)/\lambda}-2+e^{\mp 2(z-X)/\lambda}} {e^{\pm 2(z-X)/\lambda}+2+e^{\mp 2(z-X)/\lambda}}}\\ &=\sqrt{\frac{4}{\{2\cosh{\pm (z-X)/\lambda\}^2}}}\\ &=\frac{1}{\cosh\frac{z-X}{\lambda}}\\

\phi=\phi_0

が求める解となる。

この形より、 X が磁壁の位置、 \lambda が磁壁の厚さを表していることがわかる。

図4.4 は \phi_0 x 軸を指している場合、すなわち \phi_0=2n\pi の場合を表しているが、およそ X-\lambda<z<X+\lambda の範囲で n_z の極性が入れ替わっていることを見て取れる。

\lambda の値は、パーマロイで 100 nm かそれ以下、CoPt などの薄膜で、面に垂直に強い磁化容易軸を持つ場合には 12 nm 程度とされている。 \lambda=\sqrt{J/K} より、 K が大きいほど磁壁は薄くなる。これは、容易軸からずれた領域を薄くする効果として理解できる。逆に J が相対的に大きい場合には、スピンの空間的な変化が緩やかになるように働くため、磁壁が厚くなる。

通常の強磁性金属では、

J/(a^2k_B)\sim\mathrm{1000\,K}

K/k_B\lesssim\mathrm{0.1\,K}

より、磁壁は 10 ~ 100 nm 程度となる。

有機磁性体では J が小さいために磁壁が格子間隔程度となることが多い。

  • スピン容易軸がスピン変化方向(z軸)と平行なのが Néel 磁壁
  • スピン容易軸がスピン変化方向(z軸)と垂直なのが Bloch 磁壁

で、

  • スピン容易軸がスピン変化方向(z軸)と平行な Néel 磁壁 = 厚い
  • スピン容易軸がスピン変化方向(z軸)と垂直な Bloch 磁壁 = 薄い

という傾向がある。

4-6 磁気渦

z軸を磁気困難軸とする強磁性体を考える。

H_V&= \int\frac{d^3r}{a^3}\ \left(\frac{J}{2}S^2((\nabla\theta)^2+\sin^2\theta(\nabla\phi)^2)+\frac{K_\perp}{2}S^2\cos^2\theta\right)\\

この時間に依らない定常解を探すなら、(4.37), (4.38) を少し変更して、

(4.45)

\frac{KS}{\hbar}\left\{\lambda_\perp{}^2\left(-\nabla^2\theta+\frac{1}{2}\sin 2\theta(\nabla\phi)^2\right)-\frac{1}{2}\sin 2\theta\right\}=-\sin\theta\dot\phi-\alpha \dot\theta=0

-\lambda_\perp{}^2\frac{KS}{\hbar}\frac{1}{\sin\theta}\red{\bm\nabla\cdot}\,(\sin^2\theta\red{\bm\nabla}\phi)=\dot\theta-\alpha \sin\theta\dot\phi=0

となる。ここでの長さスケールは、

\lambda_\perp\equiv\sqrt{\frac{J}{K_\perp}}

である。

原点対称となる2次元解の、 r=\sqrt{x^2+y^2}\gg \lambda_\perp の極限での解を考える。

原点から遠い部分でスピンは最も安定な「面内方向」にあるとして、

(4.47右)

\theta=\frac{\pi}{2}

を仮定すれば、 \sin 2\theta=0 より (4.45) の第1式、第2式とも

(4.47左)

\nabla^2\phi=0

が条件となる。円筒座標系 r=\sqrt{x^2+y^2} , \varphi=\tan^{-1}\frac{y}{x} では、

\nabla^2=\Delta=\frac{1}{r}\frac{\PD}{\PD r}\left(r\frac{\PD}{\PD r}\right)+\frac{1}{r^2}\frac{\PD^2}{\PD\varphi^2}+\frac{\PD^2}{\PD z^2}

であるから、

\phi=\varphi+\varphi_0=\tan^{-1}\frac{y}{x}+\varphi_0

の形は原点対称 \frac{\PD}{\PD z}\phi=0 , \phi(x,y,z)=-\phi(-x,-y,z) な解を与える。

\nabla^2\phi&=\frac{1}{r}\frac{\PD}{\PD r}\left(r\frac{\PD}{\PD r}(\varphi+\varphi_0)\right)+\frac{1}{r^2}\frac{\PD^2}{\PD\varphi^2}(\varphi+\varphi_0)+\frac{\PD^2}{\PD z^2}(\varphi+\varphi_0)\\ &=0+0+0=0

この解は原点から見た座標点への角度 \varphi と、スピンの方向 \phi が定数を除いて一致した物となっている。

この解は磁気渦と呼ばれる。

強磁性円盤等では \varphi_0=\pm\frac{\pi}{2} として、 周で磁化が閉じ、磁極を作らない構造が現れる。

(4.47) のより一般的な解として、整数パラメータである渦度(vorticity) q の自由度を与えることができる。

\phi=q\varphi+\varphi_0=q\tan^{-1}\frac{y}{x}+\varphi_0

この解が (4.47) を満たすことは容易に確かめられる。この解は 原点から見た座標点への角度 \varphi が一回転する間に、 スピンの方向が q 回転する解を与える。

その他の自由度として分極 p があり、 この自由度は渦の中心での局在スピンの向きを与える。

質問・コメント




ラーモア歳差運動・スピン・磁気モーメント・磁場のセクションの訂正

たまさん? ()

これと (4.12) とを比べることで、「有効磁場」が分かる。 の上の式

S×B → B×S としないと符号があわないかもです。

  • ありがとうございます。ちょっと内容を検討し直す時間がとれないので、コメントを頂いたことを追記いたしました。 -- 武内(管理人)?

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