線形代数I/教科書定理/2.10

(4317d) 更新

定理2.10

線形写像が1対1であることと、その核がゼロベクトルのみを含むこと、 すなわち \text{Ker}\,\phi=\{\bm{o}\} とは同値である。

証明1(教科書のもの)

まず線形写像の核は必ずゼロベクトルを含むことを示す。

なぜならベクトルと線形写像の性質から、

\phi(\bm{x})=\phi(\bm{x}+\bm{o})= \phi(\bm{x})+\phi(\bm{o})

であるが、両辺に -\phi(\bm{x}) を加えると、

\phi(\bm{o})=\bm{o}

つまり、 \bm{o} \in \text{Ker}\,\phi となる。

ところが、 \phi が1対1写像であれば \bm{x} \ne \bm{o} \phi(\bm{x}) \ne \phi(\bm{o}) = \bm{o} を意味するので、 \text{Ker}\,\phi はゼロベクトル以外の要素を含まない。

逆に、 \text{Ker}\,\phi=\{\bm{o}\} であるとすると、

\phi(\bm{x}_1)=\phi(\bm{x}_2) を変形して
\phi(\bm{x}_1)-\phi(\bm{x}_2)=\bm{o}
\phi(\bm{x}_1-\bm{x}_2)=\bm{o}

より、

\bm{x}_1-\bm{x}_2=\bm{o} すなわち
\bm{x}_1=\bm{x}_2

を導くことができ、この対偶として \phi が1対1写像であること が示される。

証明2

線形写像 \phi が1対1である

の定義は

\bm{x}_1 \ne \bm{x}_2 であるような \bm{x}_1 \ne \bm{x}_2 について \phi(\bm{x}_1) \ne \phi(\bm{x}_2) である

ということであった。これを数学的に書けば

\bm{x}_1 \ne \bm{x}_2 \to \phi(\bm{x}_1) \ne \phi(\bm{x}_2)

となるが、これの対偶は

\phi(\bm{x}_1) = \phi(\bm{x}_2) \to \bm{x}_1 = \bm{x}_2

である。

さらに両辺を変形すると、

\phi(\bm{x}_1-\bm{x}_2)=\bm{o} \to \bm{x}_1 - \bm{x}_2=\bm{o}

\bm{z}=\bm{x}_1 - \bm{x}_2 と置けば、

\phi(\bm{z})=\bm{o} \to \bm{z}=\bm{o}

これは \text{Ker}\,\phi=\{\bm{o}\} と同値である。

途中の変形はすべて同値変形であるから、定理は証明された。


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