線形代数I/行列式

(1206d) 更新

線形代数I

培風館「教養の線形代数(五訂版)」に沿って行っている授業の授業ノート(の一部)です。

2次の行列式(デターミナント)

2次の正方行列 A の行列式(デターミナントを日本語では行列式と呼ぶ)は、

\det A=|A|=\left|\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right|=ad-bc

であることを高校で学んだ。(最近は学ばないのかも)

ここで、 \left|\left[\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right]\right| と書く代わりに \left|\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right| と書くことに注意せよ。

一般に n 次の正方行列に行列式が定義される。

例:3次の場合
\left|\begin{array}{ccc}a&b&c\\d&e&f\\g&h&i\end{array}\right|=aei+bfg+cdh-ceg-bdi-afh

n 次の行列式は

  1. n 個の要素を掛け合わせ、符号を付けて足し合わせたもの
  2. 掛け合わされる n 個の要素は各列から1つずつ、各行から1つずつ取られる
    つまり、1つの項の中に現れる n 個の因子に同じ行、同じ列の要素がダブって含まれることは無い。
  3. 付ける符号の決め方は後で学ぶ。

2. のルールを満たす積の作り方は {}_nP_n=n! 通りある。

例: n=3 の時

各行に対してどの列を取るかを表にすると、

1行目2行目3行目符号
aei 123+
bfg 231+
cdh 312+
ceg 321-
bdi 213-
afh 132-

列の取り方が {}_nP_n=n! 通りになることが分かる。

3.1 順列

各項の符号を定義するため「順列」について学ぶ。

n 次の順列とは、 1\sim n の数字を任意の順に並べ替えて丸括弧でくくった物。

  • 1次:(1)
  • 2次:(1 2), (2 1)
  • 3次:(1 2 3), (2 3 1), (3 1 2), (3 2 1), (2 1 3), (1 3 2)
  • \vdots

(1つの順列の中に同じ数字は複数回現れないことに注意せよ)

n 次の順列は n! 個存在する

{}_nP_n=n! 個存在する。

1!=1 , 2!=2\cdot 1=2 , 3!=3\cdot 2\cdot 1=6 , 4!=4\cdot 3\cdot 2\cdot 1=24 , 5!=120 , 6!=720 , 7!=5040 , ・・・

文字で書くときは

(p_1\ p_2\ p_3\ \cdots\ p_n) などと書く。

p_1, p_2, p_3, \cdots, p_n には 1\sim n の自然数が1回ずつ現れる。

転倒数

p_i p_j が、 i<j にもかかわらず p_i>p_j となるとき、 p_i,p_j は「転倒している」と言う。
(1\ 2\ 3\ \cdots\ n) の順を基準として、入れ替わっていると言う意味)

  • (1 2 3) 転倒はない → 転倒数 0
  • (1 3 2) 3 と 2 が転倒 → 転倒数 1
  • (2 3 1) 2 と 1, 3 と 1 が転倒 → 転倒数 2
  • (3 2 1) 3 と 2, 3 と 1, 2 と 1 が転倒 → 転倒数 3

間違いなく数えるには、それぞれの数字に対して、 自身よりも右にあって、自身よりも小さな数字の出現回数を数えて、 最後に全て加えればいい。

(2\ 5\ 1\ 3\ 7\ 4\ 6)
\phantom{(}1+3+0+0+2+0+0=6

順列の符号

\varepsilon(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n) と書く。

順列の符号は \pm 1 の値を取り、

  • +1 : 転倒数が偶数の場合
  • -1 : 転倒数が奇数の場合

両方まとめると、転倒数が r の時に

\varepsilon(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)=(-1)^r

隣り合う要素の入れ替えで符号は反転する

\varepsilon(\cdots\ p_i\ p_{i+1}\ \cdots)&=\\-\varepsilon(\cdots\ p_{i+1}\ p_i\ \cdots)&

p_i,p_{i+1} 以外の要素の組については転倒数が変化しない。
したがって、
(1) p_i<p_{i+1} の時、入れ替えにより転倒数は1増える
(2) p_i>p_{i+1} の時、入れ替えにより転倒数は1減る

どちらの場合も、符号は反転する。

任意の要素の入れ替えで符号は反転する

\varepsilon(\cdots\ p_i\ \cdots\ p_j\ \cdots)&=\\-\varepsilon(\cdots\ p_j\ \cdots\ p_i\ \cdots)&

i<j とすれば、
i 番目と i+1 番目、 i+1 番目と i+2 番目、…、 j-1 番目と j 番目をこの順に入れ替えると、入れ替え階数は j-i 回であるから

(左辺) =(-1)^{j-i}\varepsilon(\cdots\ p_{i+1}\ \cdots\ p_j\ p_i\ \cdots)

となる。( p_{i+1}\ \cdots\ p_j p_i とを入れ替えた)

さらに、 j-2 番目と j-1 番目、 j-3 番目と j-2 番目、…、 i 番目と i+1 番目をこの順に入れ替えると、入れ替え階数は j-i-1 回であるから

=(-1)^{2(j-i)-1}\varepsilon(\cdots\ p_j\ p_{i+1}\ \cdots\ p_{j-1}\ p_i\ \cdots)= (右辺)

となる。( p_j p_{i+1}\ \cdots\ p_{j-1} とを入れ替えた)

n次正方行列の行列式

A=[a_{ij}] とすると、行列式は次のように定義される。

|A|=\sum_{(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)a_{1p_1}a_{2p_2}\cdots a_{np_n}

  • \sum_{(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)} は、 n 次の順列全てについて、それぞれ \varepsilon(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)a_{1p_1}a_{2p_2}\cdots a_{np_n} の値を計算し、 できた n! 個の項を足し合わせた値を意味する。

例1: n=2 の時:

2次の順列を転倒数で分類すれば、

+1:\ (1\ 2)\\-1:\ (2\ 1)

したがって、

\left|\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right| &=\sum_{(p_1\ p_2)}\varepsilon(p_1\ p_2)a_{1p_1}a_{2p_2}\\ &=\underbrace{\varepsilon(1\ 2)a_{11}a_{22}}_{(p_1\ p_2)\,=\,(1\ 2)}+ \underbrace{\varepsilon(2\ 1)a_{12}a_{21}}_{(p_1\ p_2)\,=\,(2\ 1)}\\ &=ad-bc

例2: n=3 の時:

3次の順列を転倒数で分類すれば、

+1:\ (1\ 2\ 3), (2\ 3\ 1), (3\ 1\ 2)\\-1:\ (3\ 2\ 1), (2\ 1\ 3), (1\ 3\ 2)

したがって、

\left|\begin{array}{ccc}a&b&c\\d&e&f\\g&h&i\end{array}\right| =\sum_{(p_1\ p_2\ p_3)}\varepsilon(p_1\ p_2\ p_3)a_{1p_1}a_{2p_2}a_{3p_3}

\begin{array}{r@{\hspace{1cm}}c@{\hspace{1cm}}l} =\varepsilon(1\ 2\ 3)a_{11}a_{22}a_{33}&\rightarrow&+aei\\ +\varepsilon(2\ 3\ 1)a_{12}a_{23}a_{31}&\rightarrow&+bfg\\ +\varepsilon(3\ 1\ 2)a_{13}a_{21}a_{32}&\rightarrow&+cdh\\ +\varepsilon(3\ 2\ 1)a_{13}a_{22}a_{31}&\rightarrow&-ceg\\ +\varepsilon(2\ 1\ 3)a_{12}a_{21}a_{33}&\rightarrow&-bdi\\ +\varepsilon(1\ 3\ 2)a_{11}a_{23}a_{32}&\rightarrow&-afh \end{array}

=aei+bfg+cdh-ceg-bdi-afh

3.2 行列式の性質

すぐ分かる内容

  • A=[a] なら |A|=a
    \because|A|=|[a]|=|a|=\sum_{(p_1)}\varepsilon(p_1)a_{1p_1}=+a_{11}=a
  • |A| は正にも負にもなる (絶対値とは異なる)
  • A が整数のみからなる行列なら |A| も整数となる

行に対する多重線形性

「線形」とは、
\begin{cases}f(ax)=af(x)\\f(x+y)=f(x)+f(y)\end{cases}

を満たすような関数 f を表す性質。

  • f(x)=Ax なら線形
  • f(x)=Ax+B だと線形ではない

行列式の多重線形性は、 A=\begin{bmatrix}\hspace{5mm}\bm a_1\hspace{5mm}\\\bm a_2\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_n\end{bmatrix} を行列 A の行ベクトル分解として次の2つが成り立つこと。

\begin{cases}\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\bm a_1\hspace{10mm}\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]c\bm a_k\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_n\end{vmatrix}=c\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\bm a_1\hspace{10mm}\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_k\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_n\end{vmatrix}\\\phantom{0}\\\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\bm a_1\hspace{10mm}\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_k+\bm a'_k\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_n\end{vmatrix}=\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\bm a_1\hspace{10mm}\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_k\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_n\end{vmatrix}+\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\bm a_1\hspace{10mm}\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a'_k\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_n\end{vmatrix}\end{cases}

これは、行列式を「行ベクトルを与えると数値を返す関数」と見たときに、

f(\bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_n)=\begin{vmatrix}\hspace{5mm}\bm a_1\hspace{5mm}\\\bm a_2\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_n\end{vmatrix}

すべての引数 \bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_n に対して線形性を持つと言うことであり、この意味で「多重」と言われる。

証明

&(第1式左辺)\\ &=\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}\dots (ca_{kp_k})\dots a_{np_n}\\ &=c\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}\dots a_{kp_k}\dots a_{np_n}\\ &=(第1式右辺)

\sum 中で、 k 行目の要素が現れるのは ca_{kp_k} の部分しかないことに注意せよ。

同様に、

(第2式左辺)\\ &=\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}\dots (a_{kp_k}+a'_{kp_k})\dots a_{np_n}\\ &=\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}\dots a_{kp_k}\dots a_{np_n}\\ &\ +\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}\dots a'_{kp_k}\dots a_{np_n}\\ &=(第2式右辺)

行に対する交代性

行を入れ替えると符号が反転する

\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_j\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}=-\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_j\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}

証明

(左辺)\\ &=\phantom{-}\sum_{(\dots p_i\dots p_j\ \dots)}\varepsilon(\dots p_i\dots p_j\ \dots)\dots a_{ip_i}\dots a_{jp_j}\dots\\ &=\phantom{-}\sum_{(\dots p_i\dots p_j\ \dots)}\varepsilon(\dots p_i\dots p_j\ \dots)\dots a_{ip_j}\dots a_{jp_i}\dots\\ &=-\sum_{(\dots p_i\dots p_j\ \dots)}\varepsilon(\dots p_j\dots p_i\ \dots)\dots a_{ip_j}\dots a_{jp_i}\dots\\ &=-\sum_{(\dots p_j\dots p_i\ \dots)}\varepsilon(\dots p_j\dots p_i\ \dots)\dots a_{ip_j}\dots a_{jp_i}\dots\\ &=(右辺)

  • 1行目→2行目:実数の積の交換法則
  • 2行目→3行目:順列要素の入れ替え
  • 3行目→4行目:Σの添え字が変更になることで和を取る順番が変化するが、 n 次の順列すべてについて和を取れば、全体として現れる項は等しくなる。

行に対するその他の性質

同じ値を持つ行が複数存在すると行列式はゼロ

等しい値の行を入れ替えても行列式の値は変わらないが、 同時に符号は反転するはず。

\because\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}=-\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}

x=-x の解は x=0 であるから、この行列式の値はゼロ。

ゼロ行を含む行列式はゼロ

\bm o=0\bm o より、

\because\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm o\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}=0\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm o\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}=0

ある行の定数倍を別の行に加えても行列式の値は変化しない

\because&\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_j+c\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}\\=&\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_j\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}+\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]c\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}\\=&\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_j\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}+c\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}\\=&\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_j\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}

次数の低下(行方向)

1列目が a_{11} を残してすべてゼロであるとき、 行列式を次数の1つ小さな行列式で表せる。

\begin{vmatrix}a_{11}&a_{12}&\dots&a_{1n}\\0&a_{22}&\dots&a_{2n}\\\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\0&a_{n2}&\dots&a_{nn}\end{vmatrix}=a_{11}\begin{vmatrix}a_{22}&\dots&a_{2n}\\\vdots&\ddots&\vdots\\a_{n2}&\dots&a_{nn}\end{vmatrix}

証明

(左辺)

=\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}a_{2p_2}\dots a_{np_n}

ここで、元の行列の形から a_{k1} k\ne 1 の時にゼロとなる。

一方、 p_1\ne 1 の項では p_2\sim p_n のうちどれかが必ず 1 になる。

p_k=1 とすると、積 a_{2p_2}\dots a_{np_n} の中に a_{kp_k}=a_{k1} ただし k\ne 1 が現れるから、そのような項はすべて消えてしまう。

結果として、 p_1=1 の項のみが残されて、

&=\sum_{(1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{11}a_{2p_2}\dots a_{np_n}\\&=a_{11}\sum_{(1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{2p_2}\dots a_{np_n}

ここで、 n 次の順列 (1\ p_2\ \dots\ p_n) n-1 次の順列 (p_2\!-\!1\ \dots\ p_n\!-\!1) とは同じ転倒数を持ち、符号も等しい。

さらに、前者が可能な値すべてを動くとき、後者は n-1 次の順列全てを動く。

したがって、 (p_2\!-\!1\ \dots\ p_n\!-\!1)=(p'_1\ \dots\ p'_n) と書けば、

=a_{11}\sum_{(p'_1\ \dots\ p'_{n-1})}\varepsilon(p'_1\ \dots\ p'_{n-1})a_{2(p'_1+1)}\dots a_{n(p'_{n-1}+1)}

=(右辺)

  • 上三角行列の行列式は対角成分の積に等しい

    \begin{vmatrix}a_{11}&a_{12}&\dots&a_{1n}\\&a_{22}&\dots&a_{2n}\\&&\ddots&\vdots\\O&&&a_{nn}\end{vmatrix}=a_{11}a_{22}\dots a_{nn}
  • 単位行列の行列式は1

    |I|=1

3.3 行に対する基本変形

ある行を c 倍

|P_i(c)A|=c|A|

A=I の時 |P_i(c)|=c より |P_i(c)A|=|P_i(c)||A| とも書ける

ある行に別の行の c 倍を加えると行列式は変化しない

|P_{ij}(c)A|=|A|

A=I の時 |P_{ij}(c)|=1 より |P_{ij}(c)A|=|P_{ij}(c)||A| とも書ける

ある行と別の行とを入れ替えると行列式は反転

|P_{ij}A|=-|A|

A=I の時 |P_{ij}|=-1 より |P_{ij}A|=|P_{ij}||A| とも書ける

基本行列と行列式

上で見た内容から、以下の2つの性質が明らかになった。

  • 基本行列の行列式はゼロではない
  • P が基本行列の時 |PA|=|P||A|

正則行列と行列式 (補題3.7)

任意の正則行列 P は基本行列の積で書けるから、

正方行列 A に正則行列 P を左から掛ける時

|PA|=|P_k\cdots P_2P_1A|=|P_k||P_{k-1}|\cdots|P_2||P_1||A|=|P||A|

すなわち行列 P, A の積の行列式 |PA| は、 行列式 |P|,|A| の積で表わされる。

正則行列と行列式

  • 正則行列の行列式はゼロではない

|A|=|P_k\cdots P_2P_1|=|P_k||P_{k-1}\cdots P_2P_1|=|P_k||P_{k-1}|\cdots|P_2||P_1|\ne 0

  • A が正則でない場合 |A|=0

PA=X を階段行列とすると、 X はゼロ行ベクトルを含むため、 |PA|=|X|=0

一方、(1) より |PA|=|P||A| であるから |A|=0

  • 正則性の判定 : 以下はすべて同値な条件となる (定理3.9)
  • A が正則であること
  • \rank A=n
  • |A|\ne 0
  • 逆行列の行列式 |A^{-1}|=\frac{1}{|A|}
    A^{-1}A=I より |A^{-1}|\,|A|=|I|=1

積の行列式は行列式の積で表せる (定理3.8)

A,B を正方行列とすれば |AB|=|A||B| が成り立つ。

証明

(1) A が正則な場合は既に証明した

(2) A が正則でない場合

|A|=0 であり、また AB も正則でないため |AB|=0

したがって、 |AB|=|A||B|=0

行列の転置と行列式

基本行列の転置をとっても行列式は変化しない

P_i(c) および P_{ij} は対称行列であるから自明。

P_{ij}(c) については、

\left|\transpose P_{ij}(c)\right|=\left|P_{ji}(c)\right|=1=\left|P_{ij}(c)\right|

転置をとっても行列式は変化しない

A が正則でなければ \transpose A も正則でないので、 |A|=|\transpose A|=0

A が正則ならば、基本行列の積で書けて

&|\transpose A|=|\transpose (P_k\dots P_2P_1)|=|\transpose P_1 \transpose P_2\dots \transpose P_k|=|\transpose P_1||\transpose P_2|\dots|\transpose P_k|\\&=|P_1||P_2|\dots|P_k|=|P_1P_2\dots P_k|=|A|

列に対する性質

転置に対する定理のおかげで、行に対する性質はすべて列に対しても成立する。

  1. { 行 or 列 } に対する多重線形性
  2. { 行 or 列 } に対する交代性
  3. { 行 or 列 } に対する基本変形
    1. ある { 行 or 列 } を c 倍すると行列式も c 倍
    2. ある { 行 or 列 } に別の { 行 or 列 } の c 倍を加えると行列式は変化しない
    3. ある { 行 or 列 } と別の { 行 or 列 } とを入れ替えると行列式は反転
  4. 次数の低下({ 行 or 列 }方向)
  5. { 行 or 列 } に対するその他の性質
    1. 同じ値を持つ { 行 or 列 } が複数存在すると行列式はゼロ
    2. ゼロの { 行 or 列 } を含む行列式はゼロ

次数の低下の一般公式

ある行、あるいはある列が、1つの要素を除いてゼロの時、要素の添え字に依存する符号を付けて次数を低下できる。

\begin{vmatrix}A&\vdots&B\\\bm o&a_{ij}&\bm o\\C&\vdots&D\end{vmatrix}=\begin{vmatrix}A&\bm o&B\\\dots&a_{ij}&\dots\\C&\bm o&D\end{vmatrix}=(-1)^{i+j}a_{ij}\begin{vmatrix}A&B\\C&D\end{vmatrix}

行方向に i-1 回、列方向に j-1 回、行・列を入れ替えることで、それぞれ

=(-1)^{i+j-2}\begin{vmatrix}a_{ij}&\bm o&\bm o\\\vdots&A&B\\\vdots&C&D\end{vmatrix} =(-1)^{i+j-2}\begin{vmatrix}a_{ij}&\dots&\dots\\\bm o&A&B\\\bm o&C&D\end{vmatrix}

の形にでき、 (-1)^{-2}=1 を用い、また (1,1) 要素を前に出せば上記公式を得る。

一般の行列式の求め方

  • 行および列に対する基本変形で、ある行または列を掃き出す
  • 次数を低下する

を繰り返すことで、大きな行列でも行列式の値を計算できる。

3.4 行列式の展開

余因子

ある行列 A を、 a_{ij} を中心に次のように分割する。

|A|=\begin{vmatrix}B&\bm ?&C\\\bm ?&a_{ij}&\bm ?\\D&\bm ?&E\end{vmatrix}

i 行目と j 列目を除いてできる行列式に符号を付けた

\Tilde a_{ij}=(-1)^{i+j}\begin{vmatrix}B&C\\D&E\end{vmatrix}

を、 A (i,j) 余因子と呼ぶ。

余因子を使うと、次数の低下を次のように書ける。

\begin{vmatrix}B&\bm o&C\\\bm ?&a_{ij}&\bm ?\\D&\bm o&E\end{vmatrix}=\begin{vmatrix}B&\bm ?&C\\\bm o&a_{ij}&\bm o\\D&\bm ?&E\end{vmatrix}=a_{ij}\Tilde a_{ij}

\Tilde a_{ij} の表式は a_{ij} を含まないことに注意せよ。

i 行目に対する展開

\begin{vmatrix}&&\text{\Large $\ast$}&&\\[10pt]a_{i1}&a_{i2}&a_{i3}&\hdots&a_{in}\\[10pt]&&\text{\Large $\ast$}&&\\\end{vmatrix}

=\begin{vmatrix}&&\text{\Large $\ast$}&&\\[10pt]a_{i1}&0&0&\hdots&0\\[10pt]&&\text{\Large $\ast$}&&\\\end{vmatrix}+\begin{vmatrix}&&\text{\Large $\ast$}&&\\[10pt]0&a_{i2}&0&\hdots&0\\[10pt]&&\text{\Large $\ast$}&&\\\end{vmatrix}+\dots+\begin{vmatrix}&&\text{\Large $\ast$}&&\\[10pt]0&0&0&\hdots&a_{in}\\[10pt]&&\text{\Large $\ast$}&&\\\end{vmatrix}

=a_{i1}\Tilde a_{i1}+a_{i2}\Tilde a_{i2}+\dots+a_{in}\Tilde a_{in}

=\sum_{k=1}^n a_{ik}\Tilde a_{ik}=|A|  (任意の i に対して成り立つ)

j 列目に対する展開

\sum_{k=1}^n a_{kj}\Tilde a_{kj}=|A|  (任意の j に対して成り立つ)

ゼロとなる和

i\ne i' あるいは j\ne j' の時、

\sum_{k=1}^n a_{i'k}\Tilde a_{ik}=0  (任意の i\ne i' に対して成り立つ)

\sum_{k=1}^n a_{kj'}\Tilde a_{kj}=0  (任意の j\ne j' に対して成り立つ)

となる。

なぜならこれらは、

  • A i 行目に i' 行目と同じ行をコピーした
  • A j 列目に j' 行目と同じ行をコピーした

行列の行列式を、それぞれ i 行目、 j 行目で展開した形であるため。

|A'|=\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a'_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a'_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}=0

A (i,j) 余因子と、
A' (i,j) 余因子とは等しいことが重要である。

(そもそも \Tilde a_{ij} には i 行目の成分も j 行目の成分もまったく含まれない)

例:

A=\begin{bmatrix} a&b&c\\ d&e&f\\ g&h&i \end{bmatrix} のとき、

\begin{vmatrix} a&b&c\\ d&e&f\\ d&e&f \end{vmatrix} &= \begin{vmatrix} a&b&c\\ d&e&f\\ d&0&0 \end{vmatrix}+ \begin{vmatrix} a&b&c\\ d&e&f\\ 0&e&0 \end{vmatrix}+ \begin{vmatrix} a&b&c\\ d&e&f\\ 0&0&f \end{vmatrix}\\ &=d(-1)^{3+1}\begin{vmatrix}b&c\\e&f\end{vmatrix} +e(-1)^{3+2}\begin{vmatrix}a&c\\d&f\end{vmatrix} +f(-1)^{3+3}\begin{vmatrix}a&b\\d&e\end{vmatrix}\\ &=d\,\tilde a_{31}+e\,\tilde a_{32}+f\,\tilde a_{33}\\ &=a_{21}\tilde a_{31}+a_{22}\tilde a_{32}+a_{23}\tilde a_{33}\\ &=\sum_{j=1}^3a_{2j}\tilde a_{3j}

2行目を3行目にコピーした行列式を元の A の余因子で書けていることに注意。

余因子行列と逆行列

余因子行列

\Tilde A=\transpose \,[\Tilde a_{ij}]=[\Tilde a_{ji}]=\begin{bmatrix}\Tilde a_{11}&\cdots&\Tilde a_{n1}\\\vdots&\ddots&\vdots\\\Tilde a_{1n}&\cdots&\Tilde a_{nn}\end{bmatrix}

転置に注意せよ。

余因子行列の性質

A \Tilde A=\left[\,\sum_{k=1}^n a_{ik}\Tilde a_{jk}\,\right]=\Big[\,|A|\delta_{ij}\,\Big]

\Tilde A A=\left[\,\sum_{k=1}^n \Tilde a_{ki}a_{kj}\,\right]=\Big[\,|A|\delta_{ij}\,\Big]

すなわち、

A\Tilde A=\Tilde AA=|A|I

\frac{1}{|A|}\Tilde A=A^{-1}

ここからも、 |A|\ne 0 であれば A が正則であることを確認できる。

クラメル(Cramer)の公式

連立一次方程式を A\bm x=\bm b 、その解を \bm x=\begin{bmatrix}x_1\\x_2\\\vdots\\x_n\end{bmatrix} とすると、 |A|\ne 0 のとき

x_1=\frac{|\bm b\ \bm a_2\ \bm a_3\ \dots\ \bm a_n|}{|A|}

x_2=\frac{|\bm a_1\ \bm b\ \bm a_3\ \dots\ \bm a_n|}{|A|}

・・・

x_n=\frac{|\bm a_1\ \bm a_2\ \bm a_3\ \dots\ \bm b|}{|A|}

と表せる。

証明

A=\begin{bmatrix}a_1&a_2&\hdots&a_n\end{bmatrix} のように列ベクトルに分割する。

\bm b=A\bm x=x_1\bm a_1+x_2\bm a_2+\dots x_n\bm a_n=\sum_{k=1}^n x_k\bm a_k

したがって、

\Big|\bm a_1\ \dots\ \bm a_{i-1}\ \bm b\ \bm a_{i+1}\ \dots\ \bm a_n\Big|

=\left|\bm a_1\ \dots\ \bm a_{i-1}\ \left(\sum_{k=1}^n x_k\bm a_k\right)\ \bm a_{i+1}\ \dots\ \bm a_n\right|

=\sum_{k=1}^n x_k\Big|\bm a_1\ \dots\ \bm a_{i-1}\ \bm a_k\ \bm a_{i+1}\ \dots\ \bm a_n\Big|

=x_i\Big|\bm a_1\ \dots\ \bm a_{i-1}\ \bm a_i\ \bm a_{i+1}\ \dots\ \bm a_n\Big|

=x_i|A|

両辺を |A| で割れば与式を得る。

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