線形代数II/演習1

(47d) 更新


線形代数II

問題

(1) $P^2[x]$ において次のベクトルは線形独立か?

 a) $2x^2+1,\ 2x-1,\ x^2+x$
 b) $x^2+x+1,\ x-4,\ x^2+2x$
 c) $x+1,\ x-1$

(2) $V=\{\bm x=(x,y,z)\in \mathbb R^3 \,|\, x+y+2z=0\}$ は $\mathbb R^3$ の部分空間となる。$V$ の基底を1つ定めよ。 また、その基底に対して $V$ 上の点 $(1,1,-1)$ の数ベクトル表現を求めよ。

(3) 「複素数の集合 $\mathbb C$」を「実数 $\mathbb R$上の線形空間」と考えて、基底を1つ定めよ。

(4) $P^2[x]$ に基底 $\bm e_1=2x-1, \bm e_2=x^2-x+3,\bm e_3=4$ を取る。この基底に対して $3x^2-x$ の数ベクトル表現を求めよ。

(5) $f:P^2[x]\to P^2[x]$ を $f:\bm v\mapsto x\frac{d}{dx}\bm v$ と定義する。

 a) $f(-x^2+2x+3)$ を求めよ
 b) この写像が線形であることを示せ
 c) この写像は全射であるか?
 d) この写像は単射であるか?

解答例

(1) $P^2[x]$ において次のベクトルは線形独立か?

 a) $2x^2+1,\ 2x-1,\ x^2+x$

線形結合をゼロと置く。

$$a(2x^2+1)+b(2x-1)+c(x^2+x)=0$$

$$(2a+c)x^2+(2b+c)x+(a-b)=0$$

この両辺が多項式として等しいということは、

$$\begin{cases} 2a\phantom{+2b}+c=0\\ \phantom{2a+}2b+c=0\\ \phantom{2}a-\phantom{2}b\phantom{+c}=0 \end{cases}$$

この時点で $a=b$、 $c=0$ なら $a\ne 0$ でも成り立つことが見て取れるが、 ここでは練習のため正攻法で解いてみる。

拡大係数行列を階段化すれば、

$$ \begin{pmatrix} 2&0&1&0\\0&2&1&0\\1&-1&0&0 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&0&1/2&0\\0&1&1/2&0\\1&-1&0&0 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&0&1/2&0\\0&1&1/2&0\\0&0&0&0 \end{pmatrix} $$

これは

$$\begin{cases} a\phantom{+b}+c/2=0\\ \phantom{a+}b+c/2=0\\ \phantom{a-b+/2}0=0 \end{cases}$$

を表すから、掃き出せなかった列に対応する $c$ をパラメータで $c=2t$ と置いて、

$$ \begin{pmatrix}a\\b\\c\end{pmatrix}= t \begin{pmatrix}-1\\-1\\2\end{pmatrix} $$

したがって、例えば $t=1$ と置けば

$$-(2x^2+1)-(2x-1)+2(x^2+x)=0$$

を確かめられ、これらが一次従属であることが示された。

 b) $x^2+x+1,\ x-4,\ x^2+2x$

一次結合をゼロと置いて、

$$a(x^2+x+1)+b(x-4)+c(x^2+2x)=0$$

$$(a+c)x^2+(a+b+2c)x+(a-4b)=0$$

両辺が多項式として等しいためには、

$$\begin{cases} a\phantom{+4b}+\phantom{2}c=0\\ a+\phantom{4}b+2c=0\\ a-4b\phantom{+2c}=0 \end{cases}$$

第3式より $a=4b$
第1式、第2式に代入すると $4b+c=0$、$5b+2c=0$
これらが同時に成り立つのは $a=b=c=0$ しかないため、 与えられた3つのベクトルは一次独立。

 c) $x+1,\ x-1$

一次結合をゼロと置く。

$$a(x+1)+b(x-1)=0$$

$$(a+b)x+(a-b)=0$$

両辺が多項式として等しいためには、

$$\begin{cases} a+b=0\\a-b=0 \end{cases}$$

両式を加えれば $a=0$ 差し引けば $b=0$ を得るから、 これらのベクトルは一次独立である。

(2) $V=\{\bm x=(x,y,z)\in \mathbb R^3 \,|\, x+y+2z=0\}$ は $\mathbb R^3$ の部分空間となる。$V$ の基底を1つ定めよ。 また、その基底に対して $V$ 上の点 $(1,1,-1)$ の数ベクトル表現を求めよ。

$V$ 上のベクトルを適当に2つ見つけると: $(1,1,-1), (1,-1,0)$

これらが一次独立であることと、$V$ を張ることを言えば良い。

一次独立であることはほぼ自明だが一応確認すると、線形結合をゼロと置いて、

$$a(1,1,-1)+b(1,-1,0)=(0,0,0)$$

$$\begin{cases} a+b=0\\a-b=0\\-a=0 \end{cases}$$

第3式から $a=0$、第1式に代入して $b=0$ を得るから、やはり独立である。

$V$ はどう見ても2次元(平面)であり、 2次元空間に取った2つの一次独立なベクトルが その空間を張ること(すなわちその空間の基底となること)は 当然であるのだが、ここでは以下でちゃんと調べてみる。

$\bm x\in V$ とすれば $x+y+2z=0$ であるが、その拡大係数行列はすでに階段行列で、

$$\begin{pmatrix} 1&1&2&0\\ 0&0&0&0\\ 0&0&0&0\\ \end{pmatrix}$$

掃出しの行えなかった行に対応して $y=s,2z=2t$ と置けば、

$$\begin{aligned} \begin{pmatrix} x\\y\\z \end{pmatrix} &=s\begin{pmatrix}-1\\1\\0 \end{pmatrix}+ t\begin{pmatrix}-2\\0\\1 \end{pmatrix}\\ &=s\Bigg[-\begin{pmatrix} 1\\-1\\0 \end{pmatrix}\Bigg]+ t\Bigg[-\begin{pmatrix} 1\\-1\\0 \end{pmatrix}- \begin{pmatrix} 1\\1\\-1 \end{pmatrix}\Bigg]\\ \end{aligned} $$

と書ける。すなわち、任意の $\bm x\in V$ をこれらの線形結合で表せるから、

$$V=[(1,1,-1),(1,-1,0)]$$

である。

この基底に対して、$(1,1,1)$ は

$$ (1,1,-1)=\Big((1,1,-1),(1,-1,0)\Big)\begin{pmatrix} 1\\0 \end{pmatrix} $$

と表せるから、数ベクトル表現は $\displaystyle\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}$ である。

(3) 「複素数の集合 $\mathbb C$」を「実数 $\mathbb R$上の線形空間」と考えて、基底を1つ定めよ。

任意の $z\in\mathbb C$ は $x,y\in\mathbb R$ を用いて $z=x+iy=x\cdot 1+y\cdot i$ と表せるから、 2つのベクトル $1,i\in\mathbb C$ は $\mathbb C$ を張る。

一方、これらの線形結合をゼロと置くと、

$$x\cdot 1+y\cdot i=0$$

は $x=y=0$ でしか成り立たないから、これらは独立である。

すなわち、$1,i$ は $\mathbb C$ を実数上の線形空間として見た際の基底となる。

(4) $P^2[x]$ に基底 $\bm e_1=2x-1, \bm e_2=x^2-x+3,\bm e_3=4$ を取る。この基底に対して $3x^2-x$ の数ベクトル表現を求めよ。

$$a(2x-1)+b(x^2-x+3)+c(4)=3x^2-x$$

を満たす $a,b,c$ を見つければ $\begin{pmatrix}a\\b\\c\end{pmatrix}$ が数ベクトル表現である。

$$bx^2+(2a-b)x+(-a+3b+4c)=3x^2-x$$

$$\begin{cases} b=3\\2a-b=-1\\-a+3b+4c=0 \end{cases}$$

ここから $b=3,a=1,c=2$ を得るから、数ベクトル表現は $\begin{pmatrix}1\\3\\2\end{pmatrix}$

(5) $f:P^2[x]\to P^2[x]$ を $f:\bm v\mapsto x\frac{d}{dx}\bm v$ と定義する。

 a) $f(-x^2+2x+3)$ を求めよ

$$f(-x^2+2x+3)=x\frac{d}{dx}(-x^2+2x+3)=x(-2x+2)=-2x^2+2x$$

 b) この写像が線形であることを示せ

$$f(a\bm x+b\bm y)=x\frac{d}{dx}(a\bm x+b\bm y)=ax\frac{d\bm x}{dx}+bx\frac{d\bm y}{dx}=af(\bm x)+bf(\bm y)$$

 c) この写像は全射であるか?

$$f(ax^2+bx+c)=x\frac{d}{dx}(ax^2+bx+c)=x(2ax+b)=2ax^2+bx$$

より、例えば $f(\bm x)=1\in P^2[x]$ を満たすような $\bm x$ は存在しないことが分かる。

すなわち、この写像は全射ではない。

 d) この写像は単射であるか?

c) の結果から、$f(0)=f(1)=0$ が分かるから、この写像は単射ではない。

Q & A

Q: なぜ「掃き出せなかった列に対応する変数をパラメータに置く」必要があるのか

連立方程式を解く際、拡大係数行列を基本変形により階段化する方法を1年生で学んだと思う。

階段化した後、簡単になった連立方程式を闇雲に解いてしまえば、 階段化は単なる計算の省力化に過ぎないが、

掃き出せなかった列に対応する変数をすべてパラメータに置くことで、 上で見たとおりそれらのパラメータ $p_1,p_2,\dots,p_m$ を用いて一般解は

$$ \bm v=p_1\bm v_1+p_2\bm v_2+\dots+p_m\bm v_m $$

と表される。

掃き出せなかった列の数 = 一般解の自由度 が常に成り立つことは重要な定理となるのに加え、 計算間違い等も防ぎやすいことから、この方法に慣れておくのは良いことである。

Q: $x\frac{d}{dx}\bm v\ne \frac{d}{dx}(x\bm v)$ となるのはなぜか?

実際に計算してみると、

$$ \begin{aligned} \frac{d}{dx}(x\bm v) &= \frac{dx}{dx}\bm v+x\frac{d}{dx}\bm v\\ &= \bm v+x\frac{d}{dx}\bm v\\ &= \big (x\frac{d}{dx}+1\big)\bm v\\ \end{aligned} $$

となる。すなわち $f\mapsto x\frac{d}{dx}f$ と $f\mapsto\frac{d}{dx}(xf)$ とは異なる演算であり、 $d/dx$ と $x$ とを入れ替えてしまうと意味が変ってしまうのだ。

$d/dx$ などは線形演算子であるから、

$$ \frac{d}{dx}[af(x)+bg(x)]= a\frac{d}{dx}f(x)+b\frac{d}{dx}g(x) $$

などの変形、すなわち「分配法則」を使って自由に計算が行えるため、 気をつけないと普通の数値の掛け算と同一視してしまい、 例えば「$x$ との掛け算」との「交換法則」が成り立たないことを 見落としてしまいがちであるが、「線形写像」同士の「交換法則」が必ずしも成り立たないのは、 「行列の掛け算」に「交換法則が成り立たない」のとまったく同じ現象であるため、 しっかりと理解しておきたい。

「$f(\bm x)=1\in P^2[x]$ を満たすような $\bm x$ は存在しない」→ $x$ に適当な値を入れれば 1 にできるのでは?

$f(\bm x)=1$ は、$f(\bm x)$ という多項式が、$x$ の多項式としての $1$ と等しいという式であって、 多項式中の $x$ に何らかの値を当てはめたら $1$ になるとか、ならないとか、そういうことではないと 理解して欲しい。

多項式としての $1$ とは、$0\cdot x^2+0\cdot x+1\cdot x^0$ のことなのだ。

質問・コメント




無題

お世話になっています。? ()

解答の(2)の下から2行目頭、
(1,1,-1)のはずが、(1,1,1)となってしまっています。

  • ありがとうございます、おっしゃるとおりでした。 -- 武内(管理人)?

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