線形代数II/連立線形微分方程式

(1369d) 更新

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概要

行列の対角化を利用して、連立線形微分方程式を解く。

この単元は H26 から線形代数IIの範囲から外れました。関連分野ということで記述は残しておくことにします。

1階連立線形微分方程式

基本

通常の1階線形微分方程式

  \frac{dx(t)}{dt}=ax(t)

の解は、積分定数を C とすると、

  x(t)=Ce^{at}

であり、

  x(0)=C

であるから、

  x(t)=e^{at}\,x(0)

と表せる。

連立方程式

未知の関数 x_1(t),x_2(t) に対して 1階の線形微分方程式が連立方程式として与えられているとき、

  \left\{ \begin{matrix} \displaystyle\frac{dx_1(t)}{dt}=\dot x_1(t)=ax_1(t)+bx_2(t) \\ \displaystyle\frac{dx_2(t)}{dt}=\dot x_2(t)=cx_1(t)+dx_2(t) \end{matrix} \right.

この方程式はベクトル関数 \bm x(t)=\begin{pmatrix}x_1(t)\\x_2(t)\end{pmatrix} 、 行列 A=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix} を用いて、

  \frac{d\bm x(t)}{dt}=\dot{\bm x}(t)=A\bm x(t)

のように表せる。

もし A P^{-1}AP=D=\begin{pmatrix}\lambda_1&\\&\lambda_2\end{pmatrix} の形で対角化できるなら、1年生の二次形式のところでやったのと同様に、

  \bm x(t)=P\bm y(t)=P\begin{pmatrix}y_1(t)\\y_2(t)\end{pmatrix}

と変数変換することで、

  \dot{\bm x}(t)=\frac{d}{dt}\{P\bm y(t)\}=P\frac{d\bm y(t)}{dt}=A\bm x(t)=AP\bm y(t)

すなわち、

  \dot{\bm y}(t)=P^{-1}AP\bm y(t)=D\bm y(t)

のように非対角項がゼロの方程式が得られる。これは

  \left\{\begin{matrix} \dot y_1(t)=\lambda_1y_1(t)\\ \dot y_2(t)=\lambda_2y_2(t) \end{matrix} \right.

という方程式を表わすから、この式は y_1(t),y_2(t) に対して独立に解くことができて、

  \left\{\begin{matrix} y_1(t)=y_1(0)e^{\lambda_1t}\\ y_2(t)=y_2(0)e^{\lambda_2t}\end{matrix} \right.  あるいは   \bm y(t)=\begin{pmatrix}e^{\lambda_1t}\\&e^{\lambda_2t}\end{pmatrix}\bm y(0)

のように解が得られる。

このように、方程式を単純化する基底を取って解を表わした座標 \bm y(t) を「基準座標」と呼ぶ。

最終的な問題は基準座標 \bm y(t) に対する解を得ることではなく、 \bm x(t) を求めることなので、 \bm y(0)=P^{-1}\bm x(0) を使って変形すると、

  \bm x(t)=P\bm y(t) =P\begin{pmatrix}e^{\lambda_1t}\\&e^{\lambda_2t}\end{pmatrix}\bm y(0) =P\begin{pmatrix}e^{\lambda_1t}\\&e^{\lambda_2t}\end{pmatrix}P^{-1}\bm x(0)

が得られ、これが初期条件 \bm x(0) が与えられた際に \bm x(t) を求めるための式となる。

先にやったように e^{tA}=P\begin{pmatrix}e^{\lambda_1t}\\&e^{\lambda_2t}\end{pmatrix}P^{-1} であることを用いてこの式を、

  \bm x(t)=e^{tA}\bm x(0)

と書き直すと、通常の線形微分方程式の解との類似性が際立つ。

  \begin{array}{lll} \ddot x(t)=ax(t) &\to& x(t)=x(0)e^{at} \\ \ddot{\bm x}(t)=A\bm x(t) &\to& \bm x(t)=e^{tA}\,\bm x(0) \\ \end{array}

またこの \bm x(t) が与えられた微分方程式を満たすことも容易に確認できる。

  \dot{\bm x}(t)=\frac{d}{dt}\left\{e^{tA}\bm x(0)\right\} =\left\{\frac{d}{dt}e^{tA}\right\}\bm x(0) =Ae^{tA}\bm x(0) =A\bm x(t)

例題

\left\{\begin{matrix} \displaystyle\frac{dx_1(t)}{dt}&=3x_1(t)+\phantom 3x_2(t)\vspace{2mm}\\ \displaystyle\frac{dx_2(t)}{dt}&=\phantom 3x_1(t)+3x_2(t) \end{matrix}\right. を初期条件 x_1(0)=6,x_2(0)=2 の下で解け。

\bm x(t)=\begin{pmatrix}x_1(t)\\x_2(t)\end{pmatrix} A=\begin{pmatrix}3&1\\1&3\end{pmatrix} と置けば、 \dot{\bm x}(t)=A\bm x(t) と書けるから、

\bm x(t)=e^{tA}\bm x(0) と表せる。

ただし、 P^{-1}AP=\begin{pmatrix}e^{\lambda_1t}\\&e^{\lambda_2t}\end{pmatrix} と対角化できるならさらに変形して、

  \bm x(t)=P\begin{pmatrix}e^{\lambda_1t}\\&e^{\lambda_2t}\end{pmatrix}P^{-1}\bm x(0)

である。今の場合、

  |A-\lambda E|=\begin{vmatrix}3-\lambda&1\\1&3-\lambda\end{vmatrix}=(3-\lambda)^2-1=(4-\lambda)(2-\lambda)

より、 \lambda_1=4,\lambda_2=2

それぞれに対応する固有ベクトルは、

  (A-4 E)\bm x=\begin{pmatrix}-1&1\\1&-1\end{pmatrix}\bm x=\bm 0 より \bm x=s\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}

  (A-2 E)\bm x=\begin{pmatrix}1&1\\1&1\end{pmatrix}\bm x=\bm 0 より \bm x=s\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}

したがって、 P=\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix} P^{-1}=\frac{1}{2}\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix} P^{-1}AP=\begin{pmatrix}4\\&2\end{pmatrix} より、

  \bm x(t)&=\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}e^{4t}\\&e^{2t}\end{pmatrix}\frac{1}{2}\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}6\\2\end{pmatrix}\\ &=\begin{pmatrix}e^{4t}&e^{2t}\\e^{4t}&-e^{2t}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}3\\1\end{pmatrix}\\ &=\begin{pmatrix}e^{4t}&e^{2t}\\e^{4t}&-e^{2t}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}4\\2\end{pmatrix}\\ &=\begin{pmatrix}4e^{4t}+2e^{2t}\\4e^{4t}-2e^{2t}\end{pmatrix}\\

が求める解である。

検算

上記の \bm x(t) より

  \bm x(0)=\begin{pmatrix}6\\2\end{pmatrix}

および、

  \dot{\bm x}(t)=\begin{pmatrix}16e^{4t}+4e^{2t}\\16e^{4t}-4e^{2t}\end{pmatrix}\\

  A\bm x(t)=\begin{pmatrix}3&1\\1&3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}4e^{4t}+2e^{2t}\\4e^{4t}-2e^{2t}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}16e^{4t}+4e^{2t}\\16e^{4t}-4e^{2t}\end{pmatrix}\\

を確かめられる。

2階連立線形微分方程式

基本

通常の2階線形微分方程式

  \frac{d^2x(t)}{dt^2}=-\omega^2x(t)

の解は、積分定数を C,C' とすると、

  x(t)=C\cos\omega t+C'\sin\omega t

であり、

  \dot x(t)=-\omega C\sin\omega t+\omega C'\cos\omega t

より、

  x(0)=C

  \dot x(0)=\omega C'

であるから、

  x(t)=x(0)\cos\omega t+\frac{\dot x(0)}{\omega}\sin\omega t

と表せる。

連立方程式

未知の関数 x_1(t),x_2(t) が次の連立微分方程式を満たす時、

  \left\{ \begin{matrix} \displaystyle\frac{d^2x_1(t)}{dt^2}=\ddot x_1(t)=-ax_1(t)-bx_2(t) \\ \displaystyle\frac{d^2x_2(t)}{dt^2}=\ddot x_2(t)=-cx_1(t)-dx_2(t) \end{matrix} \right.

この方程式はベクトル関数 \bm x(t)=\begin{pmatrix}x_1(t)\\x_2(t)\end{pmatrix} 、 行列 A=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix} を用いて、

  \frac{d^2\bm x(t)}{dt^2}=\ddot{\bm x}(t)=-A\bm x(t)

と表せる。

もし A P^{-1}AP=D=\begin{pmatrix}\lambda_1&\\&\lambda_2\end{pmatrix} の形で対角化できるなら、

  \bm x(t)=P\bm y(t)=P\begin{pmatrix}y_1(t)\\y_2(t)\end{pmatrix}

の変数変換により、

  \ddot{\bm x}(t)=\frac{d^2}{dt^2}\{P\bm y(t)\}=P\frac{d^2\bm y(t)}{dt^2}=-A\bm x(t)=-AP\bm y(t)

すなわち、

  \ddot{\bm y}(t)=-P^{-1}AP\bm y(t)=-D\bm y(t)

が得られる。

\lambda_1>0,\ \lambda_2>0 のとき、 \omega_1=\sqrt{\lambda_1},\ \omega_2=\sqrt{\lambda_2} と置けば、これは

  \left\{\begin{matrix} \ddot y_1(t)=-\lambda_1y_1(t)=-\omega_1^2y_1(t)\\ \ddot y_2(t)=-\lambda_2y_2(t)=-\omega_2^2y_2(t) \end{matrix} \right.

という方程式を表わすから、その解を

  \left\{\begin{matrix} y_1(t)=y_1(0)\cos\omega_1t+\frac{\dot y_1(0)}{\omega_1}\sin\omega_1t\\ y_2(t)=y_2(0)\cos\omega_2t+\frac{\dot y_2(0)}{\omega_2}\sin\omega_2t \end{matrix}\right.

あるいは

  \bm y(t)=\begin{pmatrix}\cos\omega_1t\\&\cos\omega_2t\end{pmatrix}\bm y(0) +\begin{pmatrix}\frac{\sin\omega_1t}{\omega_1}\\&\frac{\sin\omega_1t}{\omega_1}\end{pmatrix}\dot{\bm y}(0)

と表せる。 \bm y(0)=P^{-1}\bm x(0), \dot{\bm y}(0)=P^{-1}\dot{\bm x}(0) を用いて書き直すと、

  \bm x(t)=P\bm y(t)=P\begin{pmatrix}\cos\omega_1t\\&\cos\omega_2t\end{pmatrix}P^{-1}\bm x(0) +P\begin{pmatrix}\frac{\sin\omega_1t}{\omega_1}\\&\frac{\sin\omega_1t}{\omega_1}\end{pmatrix}P^{-1}\dot{\bm x}(0)

これが、初期条件 \bm x(0),\dot{\bm x}(0) が与えられた際に \bm x(t) を求める式になる。

行列の関数を用いて書き換えれば、

  \bm x(t)=\Bigg[\cos\left(\sqrt{A}\,t\right)\Bigg]\bm x(0)+\Bigg[\frac{\sin\left(\sqrt{A}\,t\right)}{\sqrt{A}}\Bigg]\dot{\bm x}(0)

と表わせて、通常の調和振動の式との類似性が際立つ。

例題

次の連立微分方程式を考える。

  \left\{\begin{matrix} m\ddot x_1(t)=-kx_1(t)-k\{x_1(t)-x_2(t)\}\\ m\ddot x_2(t)=-kx_2(t)-k\{x_2(t)-x_1(t)\}\\ \end{matrix}\right.

これは下図のように、3つのバネで繋がれた2つの質点の運動を記述する方程式を考えているが、 物理モデルから上記方程式を組み立てる部分は数学の範疇ではないので、線形代数学においては 上記方程式をどのように解くかに焦点を絞る。

coupled_oscillation1.png

\bm x(t)=\begin{pmatrix}x_1(t)\\x_2(t)\end{pmatrix} A=\frac{k}{m}\begin{pmatrix}2&-1\\-1&2\end{pmatrix} と置けば、上式は

  \ddot{\bm x}(t)=-A\bm x(t)

と書けるから、その解を形式的に

  \bm x(t)=\Bigg[\cos\sqrt{A}t\Bigg]\bm x(0)+\Bigg[\frac{\sin\sqrt{A}t}{\sqrt A}\Bigg]\dot{\bm x}(t)

と書ける。

今の場合、 |(m/k)A-\lambda' E|=\begin{vmatrix}2-\lambda'&-1\\-1&2-\lambda'\end{vmatrix}=(2-\lambda')^2-1=(1-\lambda')(3-\lambda')=0 より、

\lambda'=1,3 すなわち \lambda_1=\frac{k}{m},\lambda_2=\frac{3k}{m} であり、

対応する固有ベクトルはそれぞれ \begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix},\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix} であるから、

  P=\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix} と置けば、

  P^{-1}AP=\begin{pmatrix}\lambda_1&0\\0&\lambda_2\end{pmatrix}

として対角化できる。

このとき、

  \bm x(t)= P\begin{pmatrix}\cos\sqrt{\lambda_1}t&0\\0&\cos\sqrt{\lambda_2}t\end{pmatrix}P^{-1}\bm x(0)+ P\begin{pmatrix}\frac{\sin\sqrt{\lambda_1}t}{\sqrt{\lambda_1}}&0\\0&\frac{\sin\sqrt{\lambda_2}t}{\sqrt{\lambda_2}}\end{pmatrix}P^{-1}\dot{\bm x}(0)

と表せ、

  P\begin{pmatrix}a\\&b\end{pmatrix}P^{-1}&=\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a\\&b\end{pmatrix}\frac{1}{2}\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}\\ &=\frac{1}{2}\begin{pmatrix}a&b\\a&-b\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}\\ &=\frac{1}{2}\begin{pmatrix}a+b&a-b\\a-b&a+b\end{pmatrix}

を用いて計算を進めると、

  \bm x(t)= \frac{1}{2}\begin{pmatrix} \cos{\omega_1}t+\cos{\omega_2}t&\cos{\omega_1}t-\cos{\omega_2}t\\ \cos{\omega_1}t-\cos{\omega_2}t&\cos{\omega_1}t+\cos{\omega_2}t \end{pmatrix}\bm x(0)+ \frac{1}{2}\begin{pmatrix} \sin{\omega_1}t+\sin{\omega_2}t&\sin{\omega_1}t-\sin{\omega_2}t\\ \sin{\omega_1}t-\sin{\omega_2}t&\sin{\omega_1}t+\sin{\omega_2}t \end{pmatrix}\dot{\bm x}(0)

ただし \omega_1=\sqrt{\frac{k}{m}},\omega_2=\sqrt{\frac{3k}{m}} \bm x(0),\dot{\bm x}(0) で表わした \bm x(t) の表式となる。

物理的意味

以下、 y_1(t),y_2(t) ただし、 \bm x(t)=P\bm y(t)=P\begin{pmatrix}y_1(t)\\y_2(t)\end{pmatrix} の物理的意味について考察する。

(以下未稿)

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