1次元トンネル現象再考 †
https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/5021/1/kyouyoronshu_240_17.pdf
を参考にやってみる。
1次元のポテンシャルエネルギーを、
トンネル障壁部分以外で 0、
トンネル障壁部分で
となるような、
矩形障壁のモデルを考え、
が負の無限大から正方向へ振幅1の平面波が入射する条件を考える。
距離 $d$ の伝播 †
ポテンシャルエネルギー
の領域における解は
と置ける。このとき、
および
での波動関数を
と書こう。
,
はそれぞれ
における、波数
の成分と波数
の成分の値である。
上式から、
の関係があり、これを
と書けることが分かる。
トンネル障壁 †
位置
から始まる、
厚さ
高さ
のトンネル障壁を考える。
障壁の直前・直後の
成分、
成分の値を
および
とする。
すなわち、障壁前後の波動関数を、
障壁前:
障壁後:
と置いたことになる。
障壁内での波動関数は
および障壁入射直後の
成分
を用いて
と表せるから、両端で障壁内外の波動関数がなめらかに接続する条件を次の4つの式で表せる。
(1)
(2)
(3)
(4)
(1), (2) より、
(3), 42) より、
したがって、
計算すると、
となる。この行列は
の形をしているが(
)、
より、
の関係がある。
そこで、実数
を
(
となる)
として導入すれば、
となって、
を得る。
トンネル問題を考え、
と置けば、
と求まり、
反射率:
透過率:
を得る。
ここから、
の物理的意味が分かる。
:
が反射率
障壁通過による位相の進み
以前の結果と比べると
であり、
に対して、
となる。
2重トンネル †
厚さ
の障壁が
だけ間を置いて連続して2つあるとする。
1つ目の障壁直前を
、2つ目の障壁直後を
とすれば、
と置くと、
より、透過率は
となる。
この値は反射率が高く
である場合にも、
すなわち
の条件で透過率が 100% になることを示している。これが共鳴トンネルと呼ばれる現象である。
このとき、2つの障壁に挟まれた井戸の中での波動関数を
と置けば、
より、
このとき、
となり、位相
だけ染み出すものの、
ほぼ井戸の両端でゼロになっている。
すなわち、共鳴トンネルは入射波エネルギーが
井戸の準定常状態のエネルギーと一致することが条件となっている。
が
番目の共振波長を
に近いと近似してみると、
のようにローレンツ型の共振特性が得られる。
このときの半値幅は、
となる。
反射率が高く
のとき、
また、
より、
として、エネルギー表示においてもやはりローレンツ型の表示が可能である。
このときのエネルギー幅は、
で、反射率が高いときには
はほぼ透過率と等しくなるから、
となる。
これらのローレンツ型の式は、あくまで
や
が共振点に非常に近いことを前提としており、
の
依存性や、
などの1次近似の範囲内でのみ成立することに注意が必要である。
なので、エネルギーが高くなればエネルギー幅は広くなる。
に対する透過率と、その際の
の分布をプロットした。
[添付]
透過率を
に対する分布とすると次のようになる。
[添付]
- 波数あるいはエネルギーが障壁に挟まれた領域のエネルギー準位に一致すると透過率が1になる
- ピークにおいて、障壁内部の確率密度はその両端でほぼゼロになる
- ピーク幅はエネルギーが高くなると広くなる
非対称2重トンネル †
と置いて、
この関数は
の時に最大値
を取る。このとき、
であり、ピーク幅は、
となる。両側の反射率の相乗平均を取って
とすると、
となり、対称な場合の結果と一致する。
対称2重トンネルの結果が、
だったのに、
なのは興味深い。
むしろ、対称な時を
と書き、非対称なときに
と書けることが本質であるということか?
左右対称3重トンネル †
と置いて、
透過確率が1になるのは
は
だから、
両側に比べてそこそこ中央が通りやすければ解がある。
その周辺に於いて、
だから、ピーク幅は
となる。