線形代数II/まとめ のバックアップ(No.2)

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線形代数II

線形代数とは †

ベクトル空間が持つ代数的構造を学ぶ学問

ベクトル空間とは †

適切に定義された「ベクトルの和」と「スカラー倍」に対して「閉じた」集合

これらの演算は、単位元を持つ、逆元を持つ、結合則、交換則、分配則が成り立つなど、 数ベクトルと同様の性質を持たなければならない。

部分空間とは †

あるベクトル空間 V の部分集合 W が、 「ベクトルの和」と「スカラー倍」に対して閉じていれば、 その集合 W もベクトル空間となる。 W を V の部分空間という。

$n$ 次以下の $x$ の多項式 †

ある整数 n が１つ与えられたとき、
n 次以下の x の多項式の集合 P^n[x] は自然に定義される和と定数倍に対してベクトル空間となる

実係数多項式なら実数上の、複素係数多項式なら複素数上のベクトル空間となる。

一次独立・従属 †

\bm x_1,\bm x_2,\dots,\bm x_n が一次独立 \leftrightarrow\ \Big(\sum_{i=1}^n c_i\bm x_i=\bm 0\ \to\ c_1=c_2=\dots=c_n=0\Big)

いくつかのベクトルの一次結合がゼロであるという式から、その係数がすべてゼロであることを導けるとき、これらのベクトルは一次独立であるという。

逆に、１つでもゼロでない係数に対して一次結合がゼロになるなら一次従属である、という。

張る空間 †

ベクトル \bm x_1,\bm x_2,\dots,\bm x_n が張る空間とは、 それらの一次結合で表せるベクトルからなる集合のこと。名前から分かるとおり、 必ずベクトル空間となる。

[\bm x_1,\bm x_2,\dots,\bm x_n]=\set{\bm x|\bm x=\sum_{i=1}^n c_i\bm x_i}

張る空間の形 †

１つのベクトルが張る空間は通常直線的（１次元的）だが、 ゼロベクトルが張る空間は原点のみを含む集合となる。 [\ \bm 0\ ]=\set{\bm 0}

２つのベクトルが張る空間は通常平面的（２次元的）だが、 それらが一次従属だと直線や点になる。

３つのベクトルが張る空間は通常空間的（３次元的）だが、 それらが一次従属だと平面や直線、点になる。

基底・次元 †

あるベクトル空間 V がベクトルの組 X=\set{\bm x_1,\bm x_2,\dots,\bm x_n} で張られ （ V=[\bm x_1,\bm x_2,\dots,\bm x_n] ）、なおかつこれらのベクトルが一次独立であるとき、 X を V の基底と呼び、基底を構成するベクトルの数 n を V の次元と呼ぶ。すなわち、 \dim V=n 。

数ベクトル表現 †

\bm x\in V を、 V の基底 B=\set{\bm b_1,\bm b_2,\dots,\bm b_n} の一次結合の形で表わしたときの係数はただ１つに定まり、これらを並べた n 次元数ベクトルを、基底 B に対する \bm x の数ベクトル表現、と呼ぶ。

\bm x=x_1\bm b_1+x_2\bm b_2+\dots+x_n\bm b_n=\big(\bm b_1\ \bm b_2\ \cdots\ \bm b_n\big)\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\\vdots\\x_n\end{pmatrix} 　の時の　 \bm x'=\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}

数ベクトル表現はベクトル和やスカラー倍に対して保存するため、 任意の n 次元ベクトル空間は n 次元数ベクトル空間と強い類似性を持つ。

すなわち \bm x+\bm y=\bm z のとき \bm x'+\bm y'=\bm z' 、 k\bm x=\bm y のとき k\bm x'=\bm y' である。

写像 †

f:U\to U' は、集合 U の要素１つ１つに U' の元を１つずつ対応させる写像。 すなわち、 \bm x\in U に対して f(\bm x)\in U' 。

f:\bm x\mapsto f(\bm x) の形にも書く。

線形写像 †

任意の元について f(a\bm x+b\bm y)=af(\bm x)+bf(\bm y) が成り立つとき、写像 f は線形であるという。

例えば、 n 次以下の x の多項式からなる集合を P^n[x] とすれば、

微分演算 f:\bm x\mapsto\frac{d}{dx}\bm x は f:P^n[x]\to P^{n-1}[x] の線形写像と見なせる。

像 $\Image T$ †

写像 T:V\to V' の「値域」にあたる集合を T の像と呼び、 \Image T あるいは T(V) と書く。

image.png

階数 †

線形写像の像は線形空間となる。

その像の次元を写像 T の階数 (rank) と呼ぶ。

\rank T=\dim\big(\Image T\big)

T:V\to V' のとき、 \rank T<\dim V かつ \rank T<\dim V' である。

全射（上への写像） †

写像 T:V\to V' が \Image T=V' を満たすことをいう。 V' のすべての元について、対応する V の元が１つ以上あるということ。

上への写像.png

単射（１対１写像） †

写像 T について、 \bm x\ne \bm y であれば T(\bm x)\ne T(\bm y) であることをいう。異なるベクトルの像が互いに重ならないということ。

写像.png

全単射（上への１対１写像） †

写像が単射かつ全射であること。

逆写像 †

全単射では T:V\to V' に対して、逆写像 T^{-1}:V'\to V を定義できる。

T^{-1}:T(\bm x)\mapsto \bm x

全単射でないと逆写像は定義できないことに注意せよ。

同型 †

２つの線形空間 V と V' の間に線形な全単射 T:V\to V' を定義できるとき、 V と V' は同型であるといい、 V\simeq V' と書く。

数ベクトル表現への写像は同型写像であるから、 任意の n 次元空間は n 次元数ベクトル空間と同型である。

核 $\Kernel T$ †

線形写像 T:V\to V' の核 (Kernel) は T によりゼロに移るベクトルの集合。

\Kernel T\equiv\set{\bm x\in V|T\bm x=\bm 0}

核は線形空間となる。

\Kernel T=\set{\bm 0} は T が１対１写像であるための必要十分条件となる。

次元定理 †

線形写像についてまとめると：

次元定理.png

  • \Kernel T は V の、 \Image T は V' の、部分空間である
  • \Kernel T に含まれる元は \bm 0 に移る
  • V-\Kernel T に含まれる元は \Image T-\set{\bm 0} に移る

線形写像の次元定理： \dim V-\dim(\Kernel T)=\dim(\Image T)

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