復習:連立方程式と逆行列 のバックアップの現在との差分(No.1)

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[[線形代数II]]

* 内容 [#eef5aa60]
&katex();
- 連立一次方程式 (&math(A\bm x=\bm b);) は次の3つのケースに分類できる
-- 解なし
-- ただ1つの解を持つ
-- 1つ以上のパラメータを用いて表される無数の解を持つ

- 掃き出し法を使うとこれらの3つの分類のどれになるかを簡単に見分けられる
-- 解なし~
 0 = 1 の行が現れる
-- ただ1つの解を持つ~
--- すべての列を掃き出せる
-- 1つ以上のパラメータを用いて表される無数の解を持つ
--- 掃き出せなかった列の数が解に含まれるパラメータの数となる
--- パラメータの数は係数行列のみにより決まる(定数項によらない)

- 階数(rank)との関係
-- 掃き出せた列の数 = rank
-- 解なし~
 $\mathrm{rank} A<\mathrm{rank} \big(\,A\ \bm b\,\big)$
-- ただ1つの解~
 $\mathrm{rank} A=\text{(Aの列数)}$
-- パラメータを用いて表される無数の解~
 $\text{(パラメータ数)}=\text{(Aの列数)}-\mathrm{rank} A$

- 逆行列の求め方

* 演習 [#h06d6faf]

(1)
(1) 次の連立方程式について、

次の連立方程式について、

&math(
$$
\begin{cases}
ax+by=c\\
dx+ey=f
\end{cases}
);
$$

 (a) ただ1つの解を持つような &math(a,b,c,d,e,f); を1つ答えよ~
 (b) 複数の解を持つような &math(a,b,c,d,e,f); を1つ答えよ~
 (c) 1つも解が存在しないような &math(a,b,c,d,e,f); を1つ答えよ~
 (a) ただ1つの解を持つように $a,b,c,d,e,f$ を定めよ~
 (b) 複数の解を持つように $a,b,c,d,e,f$ を定めよ~
 (c) 1つも解が存在しないように $a,b,c,d,e,f$ を定めよ~

(2) 次の連立方程式を掃き出し法(ガウスの消去法)を用いて解け。

$$
\begin{cases}
2x+4y-2z=6\\
x-y+3z=2
\end{cases}
$$

(3) 連立方程式 $A\bm x=\bm b$ の一般解に任意パラメータが含まれるとき、
パラメータの数は $\text{(Aの列数)}-\mathrm{rank}\, A$ に等しいことを説明せよ。

(4) 次の行列の逆行列を求めよ。
$A=\begin{pmatrix}
3&2&3\\
2&1&2\\
3&2&2
\end{pmatrix}$

* 解答 [#zcc467ae]

(1)-(a)
** (1) [#v67506a5]

規則性無く係数を選べばほぼ必ず解は1つに定まるが、分かりやすい形を答えるのであれば、
例えば &math(a=1,\ b=0,\ c=1,\ d=0,\ e=1,\ f=2); とすれば、
適当に係数を選べばほとんどの場合に解は1つに定まる。

&math(
(b) や (c) のようになるのは例外的である(係数行列が非正則になる)。

*** (a) [#u95a659e]

例えば $a=1,\ b=0,\ c=1,\ d=0,\ e=1,\ f=2$ とすれば、

$
\begin{cases}
x+0y=1\\
0x+y=2
\end{cases}
);
$

&math(x=1,\ y=2); だけが解となる。
であるから、明らかに $x=1,\ y=2$ だけが解となる。

(1)-(b)
*** (b) [#afa26130]

2つの式が独立な条件になっていないとき、解は無数に存在する。

たとえば、&math(a=b=c=d=e=f=1); とすれば、
たとえば、$a=b=c=d=e=f=1$ とすれば、

&math(
$
\begin{cases}
x+y=1\\
x+y=1
\end{cases}
);
$

であるから、&math(y=s); と置けば 
&math(\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=s\begin{pmatrix}-1\\1\end{pmatrix}+
\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix});
これは2つの変数に対して1つの条件式しか与えられていないのと同じことになる。

あるいは、&math(a=b=c=d=e=f=0); と置けば、任意の &math(x,y); が方程式の解となる。
$y=s$ と置けば、任意のパラメータ $s$ に対して 
$\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=s\begin{pmatrix}-1\\1\end{pmatrix}+
\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}$ が解となる。

(1)-(c)
あるいは、$a=b=c=d=e=f=0$ と置けば、実質的には条件式は何もないことになり、
任意の $x,y$ が方程式の解となる。

*** (c) [#sbee4af8]

絶対に成り立たない方程式を作ればいいから、

例えば &math(a=b=0,\ c=1); と置けば、
例えば $a=b=0,\ c=1$ と置けば、

&math(
$
\begin{cases}
0x+0y=1\\
dx+ey=f
\end{cases}
);
$

となって、&math(d,e,f); によらず第1式を満たす &math(x,y); は存在しないから、
解なし、となる。
となって、$d,e,f$ によらず第1式すなわち $\ 0=1\ $ を満たす $x,y$ は存在しない。
解なし、である。

あるいは、&math(a=b=c=d=e=1,\ f=2); と置けば、
あるいは、$a=b=c=d=e=1,\ f=2$ と置けば、

&math(
$
\begin{cases}
x+y=1\\
x+y=2
\end{cases}
);
$

となって、やはりこれらを同時に満たす &math(x,y); は存在しない。
となって、やはりこれらを同時に満たす $x,y$ は存在しない。

** (2) [#eeb5d3a7]

拡大係数行列に「行に対する基本変形」を適用し掃き出しを行うことで、
最終的に「[[階段行列>線形代数I/行列の階数#h48fd710]]」の形にする。

[[行に対する基本変形>線形代数I/行列の階数#h8a08c91]] とは以下の3つの操作のことである。
- ある行に他の行の定数倍を加える
- ある行に定数をかける
- 2つの行を入れ替える

この変形は行列の表す条件式を同値に保つ。
この授業では条件式としての同値性を表すのに記号 $\sim$ を用いる。
行列として等しいわけではないため $=$ は使えないことに注意せよ。

$
\begin{pmatrix}
2&4&-2&6\\
1&-1&5&0
\end{pmatrix}\sim
\begin{pmatrix}
1&2&-1&3\\
1&-1&5&0
\end{pmatrix}\sim
\begin{pmatrix}
1&2&-1&3\\
0&-3&6&-3
\end{pmatrix}\sim
\begin{pmatrix}
1&2&-1&3\\
0&1&-2&1
\end{pmatrix}\sim
\begin{pmatrix}
1&0&3&1\\
0&1&-2&1
\end{pmatrix}
$

より、与式は

$
\begin{cases}
x+3z=1\\
y-2z=1
\end{cases}$

と同値である。

掃き出しの行えなかった列があれば、___その列に対応する変数をパラメータに置けば___ 答えが求まる。

ここでは $z=s$ とすれば求める解は任意パラメータ $s$ を用いて

$
\begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}=
s\begin{pmatrix}-3\\2\\1\end{pmatrix}+
\begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix}
$

と表せることが分かる。

このように $A\bm x=\bm b$ の形に表せる連立方程式の解が任意パラメータ $c_1,c_2,\dots,c_r$ を用いて~
$\bm x=\bm x_0+c_1\bm x_1+c_2\bm x_2+\dots+c_r\bm x_r$ の形に表せるとき、

$$\begin{cases}
A\bm x_0=\bm b\\
A\bm x_1=\bm 0\\
A\bm x_2=\bm 0\\
\hspace{1cm}\vdots\\
A\bm x_r=\bm 0\\
\end{cases}$$

であり、

この一般解は非斉次方程式 ($A\bm x=\bm b$) の特殊解 $\bm x_0$ に、~
斉次方程式 ($A\bm x=\bm 0$) の解 $\bm x_1,\bm x_2,\dots$ を加えた形になっていることが分かる。

線形代数で学ぶ「掃き出し法」は、「効率の良い問題の解き方」を学ぶためのものではなく、
どんな問題もこの方法で解けることと、解いた結果がどのような形になるかを分類できること、
を理解するのが重要なので、「別にこの方法でも解けるし、」などと考えず、
しっかり手順を身に着ける必要がある。

「掃き出しの行えなかった列の数」が「任意パラメータの数」となることも理解しておくように。

** (3) [#w07b762d]

[[$\mathrm{rank}\, A$ は掃き出し後の階段行列の行数として定義されるが>線形代数I/行列の階数#h48fd710]]、
これは「掃き出しが行えた列の数」に等しい。

一方、(上でも見た通り)一般解に含まれる任意パラメータの個数は掃き出しの行えなかった列の数に等しい。

したがって、任意パラメータの個数は $(Aの列数)-\mathrm{rank}\, A$ と表せることになる。

以上が解答例。さらに解説を加えると、

掃き出せた回数 $\mathrm{rank}\, A$ が $A$ の列数を超えることはないから $(Aの列数)-\mathrm{rank}\, A\ge 0$ である。

$(Aの列数)-\mathrm{rank}\, A>0$ なら一般解はパラメータを含み、無数の解を見つけられる。

$(Aの列数)-\mathrm{rank}\, A=0$ はすべての列が掃き出せたことを表す。掃き出せた回数が $A$ の行数を超えることもないので、$A$ はこのとき正方行列か、あるいは縦長の行列である。

$A$ が正方行列なら掃き出し後は単位行列になり、解は1つに定まる。

$A$ が縦長のとき、掃き出し後にゼロのみを含む行が現れる。

$$(A\ \bm b)\sim\begin{pmatrix}
1&0&0&0&*\\
0&1&0&0&*\\
0&0&1&0&*\\
0&0&0&1&*\\
0&0&0&0&?\\
0&0&0&0&?\\\end{pmatrix}\begin{matrix}\\\\ \\ \\\leftarrow\text{ここ}\\\leftarrow\text{ここ}\end{matrix}$$

その行の定数部分(上の $?$ の部分)がゼロでなければ $0=1$ のような条件が現れ解なしとなる。
定数部分もゼロなら $0=0$ であるから実質的には何もないのと同じであり、$A$ が正方行列の時と同様に解は1つに定まる。

** (4) [#s805569f]

$A$ と単位行列 $E$ とを並べて掃き出し、
左半分が単位行列になったとき、右に残ったのが $A^{-1}$ である。
詳しくは [[逆行列の求め方>線形代数I/連立一次方程式#hb26fec8]] を参照。

途中で掃き出しができなくなれば、$A$ は非正則(逆行列を持たない)。

$$
\begin{aligned}
&\Big(\,A\ E\,\Big)=
\begin{pmatrix}
3&2&3&1&0&0\\
2&1&2&0&1&0\\
3&2&2&0&0&1
\end{pmatrix}\sim
\begin{pmatrix}
1&1&1&1&-1&0\\
2&1&2&0&1&0\\
3&2&2&0&0&1
\end{pmatrix}\sim
\begin{pmatrix}
1&1&1&1&-1&0\\
0&-1&0&-2&3&0\\
0&-1&-1&-3&3&1
\end{pmatrix}\sim\\
&\begin{pmatrix}
1&1&1&1&-1&0\\
0&1&0&2&-3&0\\
0&-1&-1&-3&3&1
\end{pmatrix}\sim
\begin{pmatrix}
1&0&1&-1&2&0\\
0&1&0&2&-3&0\\
0&0&-1&-1&0&1
\end{pmatrix}\sim
\begin{pmatrix}
1&0&0&-2&2&1\\
0&1&0&2&-3&0\\
0&0&1&1&0&-1
\end{pmatrix}=\Big(\,E\ A^{-1}\,\Big)
\end{aligned}
$$

したがって、

$
A^{-1}=\begin{pmatrix}
{}-2&2&1\\
2&-3&0\\
1&0&-1
\end{pmatrix}
$

* コメント・質問 [#od7231f8]

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