復習:連立方程式と逆行列 のバックアップ(No.4)
更新内容 †
- 連立一次方程式 (
) の分類
- 解なし
- ただ1つの解
- パラメータを用いて表される無数の解
- 掃き出し法
- 解なし
0 = 1 の行が現れる - ただ1つの解
係数部分が単位行列になる( 0 = 0 となる行があってもよい) - パラメータを用いて表される無数の解
- 解に含まれるパラメータの数 = 掃き出せなかった変数の数
- パラメータの数は係数行列のみにより決まる(定数項によらない)
- 解なし
- 階数(rank)との関係
- 掃き出せた列の数 = rank
- 解なし
- ただ1つの解
- パラメータを用いて表される無数の解
- 逆行列の求め方
演習 †
(1)
次の連立方程式について、
&math( \begin{cases} ax+by=c\\ dx+ey=f \end{cases} );
(a) ただ1つの解を持つような
を1つ答えよ
(b) 複数の解を持つような
を1つ答えよ
(c) 1つも解が存在しないような
を1つ答えよ
(2)
次の連立方程式を、掃き出し法を用いて解け。
(a) &math( \begin{cases} 2x+4y-2z=6\\ x-y+3z=2 \end{cases}\\ );
(3) 連立方程式 の一般解に任意パラメータが含まれるとき、 パラメータの数は に等しいことを説明せよ。
(4) 次の行列の逆行列を求めよ。 &math(A=\begin{pmatrix} 3&2&3\\ 2&1&2\\ 3&2&2 \end{pmatrix});
解答 †
(1)-(a)
変数と同じ数の式が与えられていることから係数行列は正方行列となり、 規則性無く係数を選べば多くの場合正則な行列が得られ、解は1つに定まる。
(b) や (c) のようになるのは特殊な場合である(係数行列が非正則)。
分かりやすい形を答えるのであれば、 例えば とすれば、
&math( \begin{cases} x+0y=1\\ 0x+y=2 \end{cases} );
であるから、明らかに だけが解となる。
(1)-(b)
2つの式が独立な条件になっていないとき、解は無数に存在する。
たとえば、 とすれば、
&math( \begin{cases} x+y=1\\ x+y=1 \end{cases} );
であるから、実質的には2つの変数に対して1つの条件式しか与えられていないのと同じことになる。
と置けば、任意のパラメータ に対して &math(\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=s\begin{pmatrix}-1\\1\end{pmatrix}+ \begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}); が解となることが分かる。
あるいは、 と置けば、実質的には条件式は何もないことになり、 任意の が方程式の解となる。
(1)-(c)
絶対に成り立たない方程式を作ればいいから、
例えば と置けば、
&math( \begin{cases} 0x+0y=1\\ dx+ey=f \end{cases} );
となって、 によらず第1式を満たす は存在しない。 すなわち、解なし、である。
あるいは、 と置けば、
&math( \begin{cases} x+y=1\\ x+y=2 \end{cases} );
となって、やはりこれらを同時に満たす は存在しない。
(2)-(a)
拡大係数行列に次に与える「行に対する基本変形」を適用し、 左から順に「掃き出し」を行うことにより、最終的に「階段行列」の形にする。
行に対する基本変形:
- ある行に他の行の定数倍を加える
- ある行に定数をかける
- 2つの行を入れ替える
&math( \begin{pmatrix} 2&4&-2&6\\ 1&-1&5&0 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&2&-1&3\\ 1&-1&5&0 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&2&-1&3\\ 0&-3&6&-3 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&2&-1&3\\ 0&1&-2&1 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&0&3&1\\ 0&1&-2&1 \end{pmatrix} );
より、与式は
&math( \begin{cases} x+3z=1\\ y-2z=1 \end{cases});
と同値である。
掃き出しの行えなかった列に対応する変数 をパラメータに置いて、 とすれば、求める解は任意のパラメータ に対して
&math( \begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}= s\begin{pmatrix}-3\\2\\1\end{pmatrix}+ \begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix} );
と表せることが分かる。
このように、 の形に表せる連立方程式の解が 任意パラメータ を用いて の形に表せるとき、
&math(\begin{cases} A\bm x_0=\bm b\\ A\bm x_1=\bm 0\\ A\bm x_2=\bm 0\\ \hspace{1cm}\vdots\\ A\bm x_r=\bm 0\\ \end{cases});
であり、この一般解が非斉次方程式 ( ) の特殊解 に、 対応する斉次方程式 ( ) の解 を加えた形になっていることが分かる。
線形代数で学ぶ「掃き出し法」は、「効率の良い問題の解き方」を学ぶためのものではなく、 どんな問題もこの方法で解けることと、解いた結果がどのような形になるかを分類できること、 を理解するのが重要なので、「別にこの方法でも解けるし、」などと考えず、 しっかり手順を身に着ける必要がある。
(3)
は掃き出し後の階段行列の行数として定義されるが、 これは「掃き出しが行えた列の数」に等しい。
一方、上でも見た通り、一般解に含まれる任意パラメータの個数は掃き出しの行えなかった列の数に等しいから、 と表せることになる。
であるから、 となることはない。
のとき、 のような行が現れれば解なし、 そのような行が現れない場合、つまり階段行列が正方行列になる場合や、 それに加えて の行がいくつか現れる場合には解が1つに定まる。
(4)
と単位行列 とを並べて掃き出し、 左半分が単位行列になったとき、右に残ったのが である。 途中で掃き出しができなくなれば、 は非正則(逆行列を持たない)。
&math( &\Big(\,A\ E\,\Big)= \begin{pmatrix} 3&2&3&1&0&0\\ 2&1&2&0&1&0\\ 3&2&2&0&0&1 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&1&1&1&-1&0\\ 2&1&2&0&1&0\\ 3&2&2&0&0&1 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&1&1&1&-1&0\\ 0&-1&0&-2&3&0\\ 0&-1&-1&-3&3&1 \end{pmatrix}\sim\\ &\begin{pmatrix} 1&1&1&1&-1&0\\ 0&1&0&2&-3&0\\ 0&-1&-1&-3&3&1 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&0&1&-1&2&0\\ 0&1&0&2&-3&0\\ 0&0&-1&-1&0&1 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&0&0&-2&2&1\\ 0&1&0&2&-3&0\\ 0&0&1&1&0&-1 \end{pmatrix}=\Big(\,E\ A^{-1}\,\Big) );
したがって、
&math( A^{-1}=\begin{pmatrix}
- 2&2&1\\ 2&-3&0\\ 1&0&-1 \end{pmatrix} );