線形代数II/抽象線形空間 のバックアップ差分(No.1)

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* 「線形代数学」の意味 [#zb5eb4b1]

1年生の線形代数Iにおいて、「線形」の意味を教わった。

>関数 &math(f(\bm x)); が線形とは &math(f(a \bm x+b \bm y)=a f(\bm x)+b f(\bm y)); が成り立つこと

では「代数学」とは何だろうか?

小学生から大学1年生まで、様々な「数」を学んだ。

- &math(\mathbb N); 自然数 = 加算・乗算について閉じている
- &math(\mathbb Z); 整数  = 減算についても閉じている
- &math(\mathbb Q); 有理数 = 除算について「ほぼ」閉じている
- &math(\mathbb R); 実数  = 収束する有理数列の極限演算について閉じている
- &math(\mathbb C); 複素数 = 関数の求根操作について閉じている

知っての通り &math(\mathbb N \subset \mathbb Z \subset \mathbb Q \subset \mathbb R \subset \mathbb C);
であり、これまでの数学では新しい「演算」の導入により「数の集合」を拡大する方向で学んできた。

- 解析学は主に &math(\mathbb C); の上(あるいは &math(\mathbb C^n); の上)で
極限や微積分を扱う数学である

代数学は &math(\mathbb N, \mathbb Z, \mathbb Q, \mathbb R, \mathbb C); の系列から外れて、~
例えば、

>乗算は定義されるが加算は定義されない数の集合

などというように、「何らかの演算」が定義された「数の集合」を定め、
そこに現れる「構造」を研究する学問である。

これから学ぶ「ベクトル」も上で言う「数」の一員である。

* 代数学的な数の例 [#i1c86368]

ある「数」の集合 &math(\mathbb U); には演算 &math(*); が定義され、
&math(\mathbb U); は &math(*); について閉じているものとする。~
すなわち &math(x,y \in \mathbb U\rightarrow x*y\in \mathbb U); である。

さらにこの演算が次の性質を持つ時、
+ 結合法則 &math((a*b)*c=a*(b*c)); を満たす
+ ある特別な元(単位元) \math(1\in \mathbb U); が存在して、すべての &math(x \in \mathbb U); に対して &math(1*x=x*1=x); を満たす
+ すべての &math(x \in \mathbb U); に対して逆元 &math(y\in \mathbb U); が存在し、&math(x*y=y*x=1); を満たす

このような集合 &math(\mathbb U); は代数学において「群」と呼ばれる。

一見すると、&math(\mathbb U); を有理数 &math(Q);、&math(*); を通常の乗算 &math(\times); と考えれば
「群の公理」を満たしそうに思えるが、&math(0\in \mathbb Q); が逆元を持たないため、
有理数 &math(Q); は乗算 &math(\times); に対して群とはならない。

&math(\mathbb U); を有理数 &math(Q); からゼロを除いた集合 &math(Q-\{0\});、&math(*); を通常の乗算 &math(\times);、単位元を &math(1); とすれば、この集合は群を為す。

また、&math(\mathbb U); を整数 &math(\mathbb Z);、&math(*); を通常の加算 &math(+);、単位元を &math(0); と考えると、この場合も上記3つすべての条件を満たし、群を為す。

また、&math(\mathbb U); をゼロ以上の &math(k); の倍数 &math({nk|n\ge0 \& n\in \mathbb N});、&math(*); を通常の加算 &math(+);、単位元を &math(0); と考えると、この場合も上記3つすべての条件を満たし、群を為す。


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