量子力学Ⅰ/前期量子論 のバックアップ(No.2)
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量子力学以前の世界 †
物理学の略史:
- 16世紀半ば コペルニクスの地動説 (戦国時代)
- 17世紀後半 ニュートンの力学 (江戸時代)
- 18世紀半ば 産業革命
- 19世紀初頭 熱力学
- 19世紀半ば (明治時代)
- 分子運動論から統計力学へ
- マクスウェル方程式による電磁気学
- 19世紀末 トムソンが電子を発見
- 20世紀初頭 (大正時代)
- アインシュタインの相対性理論
目に見えるサイズ以上については、ほぼすべてこれらの理論で説明できるように思われていた。
これらの理論の特徴:
- 決定論的
- 初期状態が決まれば未来永劫までの運動が決定される
- 初期状態を決めるための計測に、原理的な限界はない
量子力学以前の物理を指して「古典論」と呼ぶ。
暗雲 †
いくつかの分野で、古典論では説明できない現象が発見され始めた。
- 黒体放射のスペクトル (1900年 プランク)
- 光電子 (1905年 アインシュタイン)
- 惑星型原子模型 (1910年 ラザフォード)
前期量子論 †
前提1:光について †
光は電磁波である。 つまり、光が通ればそこに電場 と磁場 の波ができる。 電磁波は横波なので、電場や磁場は光の進行方向に垂直な面内にできる。
電磁波は を用いた次の波動方程式を満たす。
&math( \nabla^2 \bm E(\bm x,t)=\frac{1}{c^2}\frac{\PD^2}{\PD t^2}\bm E(\bm x,t)\\ \nabla^2 \bm B(\bm x,t)=\frac{1}{c^2}\frac{\PD^2}{\PD t^2}\bm B(\bm x,t)\\ );
解は、互いに垂直となる と とが同位相で速度 で伝わる形になる。電場と磁場の大きさは の形で互いに比例し、両者は同位相で振動しながら伝わっていく。
光の周期 、周波数 、角周波数 、波長 、波数 の関係は、
, , ,
電場や磁場が運ぶエネルギーの密度(単位時間、単位面積あたり)は、ポインティングベクトル で表わされる。
波数 の光では、電場と磁場の振幅をそれぞれ として、次のように表わされる。
このままだとエネルギーは波数に依存しないように見えるが、これをベクトルポテンシャルで書き直すと、ベクトルポテンシャルの振幅を として、次のように に比例する形に書き表される。
空間中のエネルギー密度(単位体積あたり)はこれを で割って、次のようになる。
電場や磁場が運ぶ運動量密度(単位時間あたり、単位面積あたり)は であり、 その大きさは に等しい。
空間中の運動量密度(単位体積あたり)は となる。この、
という関係は、量子力学でも保たれる。
このように、光のエネルギーや運動量は や によらず、 振幅 や により連続的な値を取りうる。
また、光は波であるから、干渉や回折、散乱などの波に特有な性質を示す。 物理学実験でもレーザー光の回折現象を学んだ。
黒体放射 †
有限温度の物体は温度に依存したスペクトルの光を出す (例:赤熱する鉄など)
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反射率が高い物はその分だけ輻射が減るため、完全な「黒体」が最もたくさん光を出す
物体から出る光のエネルギーが連続値を取り得るとすると、 理論的に予想されるスペクトル形状が実験値と合わないばかりか、 予想される放出エネルギーは無限大になってしまう。
光により持ち出されるエネルギーに最小値がある(量子化されている)ことを仮定して、 黒体放射のスペクトルを理論的に導出した。
得られた結果 †
周波数 (ニュー) の光が物質から運び去るエネルギーは、 をプランク定数として、 の整数倍である。
電磁波としての光は連続的なエネルギーを運ぶはずなのに・・・
前提2:電子について †
https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/kori/science/ayumi/ayumi13.html
真空中で物質を加熱したり、物質に光を当てると、その物質から負電荷(陰極線)が飛び出すことを確認できる。
出てきた電荷を電場や磁場の中を通すとその軌道が湾曲することから、この負電荷が帯電する粒子であることが分かり、その比電荷(粒子1つあたりの電荷と質量の比)が求まる。
ウィルソンの霧箱と呼ばれる装置を用いることで、箱の中の荷電粒子の数と、電荷の総量を求めることができ、そこから粒子1つあたりの電荷量が分かった。(トムソンの実験 1887年)
この電荷量と比電荷から、この荷電粒子の質量が水素原子の 1/1000 程度と非常に小さいことが確認された。
これが電子の発見とされる。
光量子仮説 †
金属に光(紫外光)を当てると、金属中の電子が外へ飛び出してくる。この現象を光電効果という。
また、光を当てて出てくる電子を
光電効果は、当てる光の周波数 が金属の種類によって決まるある値 より大きいときのみ生じる。また、出てくる光電子の速度(運動エネルギー)は に依存する。
- では、光強度が強い場合にも光電子はまったく出ない。
- では、出てくる光電子の量は光の強さに比例する。電子の運動エネルギーは光量によらない。
- 電子の運動エネルギーは が大きくなると増加する。
これらの結果から、アインシュタインは光を吸収することにより電子が受け取るエネルギーが量子化されていることを提案した。これを光量子仮説という。
- 光がそれぞれエネルギー を持つ粒子=光子の流れであるとする。
- 電子が1つの光子を吸収することにより のエネルギーを得るとする。
- 電子を金属柱に閉じ込めているエネルギー障壁の高さ(仕事関数)を とする。
- 光電子は、 の運動エネルギーを持って飛び出してくる。
これらを仮定すれば、 として、
- では電子は障壁を越えられず金属から飛び出さない。光子の数が増えても状況は変わらない。
- では、単位時間あたりに金属に飛び込む光子の数が多いほど(光が強いほど)光電子の数が増える。光電子の運動エネルギーは変わらない。
- が増えれば光電子の運動エネルギーも増える。
として、実験結果を説明できる。
得られた結果 †
振動数 の光は1つあたり のエネルギーを持つ粒子=光子の集まりである。
でも光は明らかに波としての性質も持っているのだが・・・
惑星型原子模型 †
電子の発見により、原子はその質量のほとんどを占める正電荷を持つ部分と、 非常に軽い電子とからなることが分かっていた。
1910年頃、ラザフォードは金属箔に放射線(アルファ線 = 正に帯電した粒子)を当てると、 ほとんどの粒子がそのまま箔を通り抜けるにもかかわらず、 非常に低い確率でアルファ線が大きな角度で散乱されることを見いだした。
この結果は、金属箔を構成する原子の質量の大部分が非常に小さな領域に固まっていること(= 原子核が存在すること)を示している。なぜなら原子核が大きければ、散乱される確率が上がったり、は散乱角度が小さくなったりするはずだから。(これはアルファ線自体が原子よりもずっと小さな粒子であることが前提 = アルファ線はヘリウム原子核なので無問題)
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詳しい計算から、原子核は原子のサイズのⅠ万分の以下であることが分かった。
得られた結果 †
電子が原子核の周りを回っているという惑星型原子モデル
荷電粒子である電子が加速度運動(円運動)すると、電磁波を放出してエネルギーを失ってしまうのだが・・・