量子力学Ⅰ/固有値と期待値 のバックアップ(No.4)
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量子力学I?
線形代数との対応 †
確率密度・期待値 †
[ベクトル] |
[波動関数] |
[内積] |
[積分] |
[ノルムの二乗] |
[全確率密度] |
[規格化] |
[規格化] |
[行列] |
[線型演算子] &math(\hat A\big(a\psi_1(\bm r,t)+b\psi_2(\bm r,t)\big) =a\hat A\psi_1(\bm r,t)+b\hat A\psi_2(\bm r,t)); |
[エルミート共役] 転置の複素共役 |
[エルミート共役] |
[エルミート行列] がエルミート行列であれば つまり |
[エルミート演算子] がエルミート演算子であれば つまり |
演習:物理量を表わす演算子のエルミート性 †
境界条件 を満たす一次元波動関数 の集合 において、「観測可能な物理量」を表わす演算子はすべてエルミート演算子になる。 現実的な問題では常にこの境界条件は満たされるため、このことは非常に重要である。
(1) 演算子 のエルミート共役が 自身になること、すなわち がエルミート演算子であることを示せ。 (座標 は実数であることに注意せよ)
(2) 演算子 (ただし は実数関数) のエルミート共役が 自身になること、すなわち がエルミート演算子であることを示せ。
(3) 演算子 のエルミート共役が となることを示せ。部分積分を使い、上記の境界条件を用いるとよい。
(4) 演算子 のエルミート共役が 自身になること、すなわち がエルミート演算子であることを示せ。
(5) エルミート演算子
の
(6) エルミート演算子 の和 がエルミート演算子となることを示せ。
(7) ハミルトニアン演算子 がエルミート演算子であることを示せ。
(8) エルミート演算子 の積 は すなわち と が可換でない限り エルミート演算子ではない ことを示せ。
(9) 上記演算子 について、 であることを示せ。 すなわち や はエルミート演算子ではない。
解説:物理量を表わす演算子のエルミート性 †
上記の通り、量子力学で「観測可能」とされる物理量は必ずエルミートになる。
逆に、物理量を演算子で表わした際にエルミートにならないような物理量は観測可能ではない。 例えば、位置 と運動量 の積は観測可能ではない。
これは、位置 と運動量 を同時に、 正確に測定する手段がないという意味で、そのため積を観測できないことになる。
観測可能性については後に 不確定性原理 のところでより詳しく学ぶ。
シュレーディンガー方程式・固有値 †
[ベクトル方程式] |
[シュレーディンガー方程式] |
[固有値方程式] |
[時間に依存しないシュレーディンガー方程式] |
[$A_H$の固有値・固有関数] |
[エネルギー固有値・固有関数] |
エルミート演算子の固有値問題 †
時間に依存しないシュレーディンガー方程式はそのままハミルトニアン演算子に対する固有値問題であったが、 これと同様に任意の観測可能な物理量に対応するエルミート演算子に対して固有値問題を考えることができる。
エルミート行列では、
- 固有値はすべて実数
- 異なる固有値に属する固有ベクトルは互いに直交
- ユニタリー行列により対角化が可能
エルミート行列を対角化するユニタリー行列の各列ベクトルは 正規直交系を為し、なおかつ 次元空間を張るため、 正規直交基底となるのであった。
同様に、エルミート演算子では、
- 固有値はすべて実数
- 異なる固有値に属する固有関数は互いに直交
- 固有関数により正規直交完全系を作れる
以下、
や
はエルミートとする。
[固有値は実数] ならば |
[固有値は実数] ならば |
[固有ベクトルで正規直交系基底を作れる] 個のベクトル を、 かつ となるように選ぶことができる。 それらを並べた により、 を対角行列にできる。 これは となることに対応する。 |
[固有関数で正規直交完全系を作れる] 完全系 を、 かつ となるように選ぶことができる。 それらに対して、 |
[固有ベクトルによる展開] 任意のベクトルを固有ベクトル で展開できる(基底だから)。 このとき、 &math((\bm a,A\bm a)&=\sum_{i=1}^\infty\sum_{j=1}^\infty c_i^*c_j(\bm e_i,A\bm e_j)\\ &=\sum_{i=1}^\infty\sum_{j=1}^\infty c_i^*c_j\,\lambda_i\delta_{ij}\\ &=\sum_{i=1}^\infty \lambda_i|c_i|^2 ); |
[固有関数による展開] 任意の関数を固有関数 で展開できる(完全性)。 このとき、 &math(\overline A&=\iiint \psi^*(\bm r,t)\hat A\psi(\bm r,t)d\bm r\\ &=\sum_{i=1}^\infty \lambda_i|c_i|^2 ); |
「観測可能な物理量」の実数性 †
がエルミート演算子であれば、固有値 はすべて実数であるから、 その期待値 も必ず実数になることが分かる。