球対称井戸型ポテンシャル のバックアップ(No.7)

更新


前の単元 <<<              量子力学Ⅰ              >>> 次の単元

球形の箱の中の粒子

 &math( V(r)=\begin{cases} 0&(r<=a)\\ V_0&(r>a)\\ \end{cases} );

の場合には、 \chi(r)=rR(r) を考えるよりも R(r) をそのまま扱った方が都合がよい。

  \rho=\sqrt{\frac{2m\varepsilon}{\hbar^2}}r

と置くことにより、箱の内部の方程式は

 &math( \frac{d^2R}{d\rho^2}+\frac{2}{\rho}\frac{dR}{d\rho}+\left\{1-\frac{l(l+1)}{\rho^2}\right\}R=0 );

となる。

この解は球ベッセル関数 j_l(\rho) と呼ばれる。

  j_l(\rho)=(-\rho)^l\left(\frac{1}{\rho}\frac{d}{d\rho}\right)^l\frac{\sin\rho}{\rho}

  j_0(\rho)=\frac{\sin\rho}{\rho}

  j_1(\rho)=\frac{\sin\rho}{\rho^2}-\frac{\cos\rho}{\rho}

  j_2(\rho)=\left(\frac{3}{\rho^3}-\frac{1}{\rho}\right)\sin\rho-\frac{3}{\rho^2}\cos\rho

  j_3(\rho)=\left(-\frac{6}{\rho^2}+\frac{15}{\rho^4}\right) \sin\rho+\left(\frac{1}{\rho}-\frac{15}{\rho^3}\right) \cos\rho

 ...

詳しい導出はこちら

特徴

  • 原点で発散することはない
    • j_0(\rho)=1
    • l\ge 1 では j_l(\rho)=0
  • \rho の大きいところでは、
    • l=4k+0 なら \big(\sin\rho\big)/\rho
    • l=4k+1 なら -\big(\cos\rho\big)/\rho
    • l=4k+2 なら -\big(\sin\rho\big)/\rho
    • l=4k+3 なら \big(\cos\rho\big)/\rho
  • \sin \cos の周期性を反映して j_l(\rho)=0 を満たす根を無限個持つ
  • \rho の小さいところでは、 l が大きいほどゆっくり振動する
    • j_{l+4} j_l に比べて振動回数が1回少ない

SphericalBesselJ.png

SphericalBesselJ1.png

j_l(\rho) の代わりに |\rho j_l(\rho)|^2 をプロットすると下のようになる。 \rho の大きいところでは (1\pm\cos 2\rho)/2 に漸近する。

SphericalBesselJ2.png

境界条件

1次元の箱形ポテンシャルのところで学んだのと同様に、 V_0=+\infty の場合には r=a において j_l(\rho(r))=0 が要求されるから、

  j_l\Big(\sqrt{\frac{2m\varepsilon}{\hbar^2}}a\Big)=0

により \varepsilon が決定される。

j_l(\rho) の根は無数にあるが、 n 番目の根を \rho_n{}^l とすれば、

  \sqrt{\frac{2m\varepsilon}{\hbar^2}}a=\rho_n{}^l

より、

  \varepsilon_n{}^l=\frac{\hbar^2}{2m}\left(\frac{\rho_n{}^l}{a}\right)^2

エネルギーの大きさは根の位置 \rho_n{}^l で決まるから、

  \varepsilon_1{}^0<\varepsilon_1{}^1<\varepsilon_1{}^2<\varepsilon_2{}^1<\varepsilon_1{}^3<\dots

となる。 n l との大小関係に制約はないから、任意の n\ge 0 に対して 任意の l\ge 0 が対応する。

グラフ

見やすいように最大値で規格化した。

\varphi(r)
SphericalBesselJScaled.png

|\varphi(r)|^2
SphericalBesselJScaled2.png

|r\varphi(r)|^2
SphericalBesselJScaled3.png

r\varphi(r) と一次元井戸型ポテンシャルの解との類似性に注意せよ。

  • l=0 については一次元井戸型ポテンシャルの解と完全に一致する
  • l>0 については原点付近の存在確率が下がるが、原点から遠いところではやはり一次元の解と近くなる

箱の外のポテンシャルが有限の場合

箱の外のポテンシャルが有限の場合にも、 r=a における位相が少しずれるものの、 外部の解となめらかに接続する条件から \varepsilon が決定される。

閉じ込めが弱くなると、同じ n,l に対するエネルギーは低下する。 このときポテンシャルエネルギーの期待値はむしろ増加するから、 エネルギーの低下は運動エネルギーの低下によるものである。


前の単元 <<<              量子力学Ⅰ              >>> 次の単元

質問・コメント





Counter: 20706 (from 2010/06/03), today: 2, yesterday: 0