電磁気学/Ampère の法則 のバックアップソース(No.3)

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[[電磁気学]]


* §1-5 Ampère の法則 [#gae71086]
#ref(oersted.png,around,right,66%);

これは電流が磁場を作るという法則である。

&ruby(エルステッド){Oersted}; は電流 &math(I); から &math(r); の距離に発生する磁場について、

  &math(B\propto \frac{I}{r});

すなわち、

  &math(2\pi rB=\mu_0I);

と書けることを示した。ただし &math(\mu_0); はある定数(実際には真空の誘電率)

#ref(ampere.png,around,right,66%);
&ruby(アンペール){Ampère}; は電流を中心としなくても、また電流が複数あったとしても、
任意の閉経路 &math(C); に対して、

  &math(
\oint_C\bm B\cdot d\bm r
&=\mu_0 I\\
&=\mu_0 (I_1+I_2+\dots)\\
);

と表せることを示した。ただし &math(I); は &math(C); を貫く電流の総量。
この法則は点電荷の電場から Coulomb の法則を導いたのと同様に、
Oersted の法則と空間の等方性から導くことが可能である。

&math(\mu_0); は真空の誘電率と呼ばれる定数であり、その値は次のように定義される。

  &math(\mu_0=\frac{1}{\epsilon_0c^2}=4\pi\times 10^{-7}\,\mathrm{N/A^2});

これはたまたま測定値がこのようになったというわけではなく、光速 &math(c); 
の測定値に対して、&math(\mu_0); がこの値となるように &math(\epsilon_0);
の値、ひいては電荷の単位 &math(C); を定めたということである。

* 電流密度 [#fbdb7ae4]

ある曲面 &math(S); を貫く電流は、電流密度 &math(\bm i); を用いて、

  &math(I=\int_S\bm i\cdot\bm n\,dS);

と表せるから、&math(C); を&ruby(ふち){縁};とする曲面を &math(S); とすれば、
Ampère の法則の積分形を


  &math(\oint_C\bm B\cdot d\bm r
&=\mu_0\int_S\bm i\cdot\bm n\,dS);

と表せる。さらにこれを Stokes の定理により変形すれば、Ampère の法則の微分形を

  &math(\frac{1}{\mu_0}\mathrm{rot}\,\bm B=\bm i);

として得る。

* 閉曲線を貫く電流? [#be0b58a9]
#ref(divergenceofcurrent.png,around,right,66%);

ある閉曲線を貫く磁束が定義できる理由は、&math(\mathrm{div}\,\bm B=0); 
すなわち磁場が常にループを描くことにあった。

「ある閉曲線を貫く電流」が定義できるためには、これと同様に &math(\mathrm{div}\,\bm i=0); 
が成り立たなければならない。もしどこかで電流が途切れたり、湧き出したりするようなことがあれば、
「閉曲線 &math(C); を縁とする曲面」の取り方によって、曲面を貫く電流値が違うことになってしまい、
結果として「閉曲面を貫く電流」が一意に定義されないことになる。

例えば右図では閉曲線 &math(C); を縁とする2つの曲面 &math(S_1,S_2); に対して、
それらに囲まれる範囲から湧き出した電流 &math(I); が &math(S_1); は貫くものの、
&math(S_2); を貫かない状況を表している。このとき「&math(C); を貫く電流」は一意に定義されない。

このことは、上記の Ampère の法則の微分形の両辺の発散を取ることでも確認できる。

  &math(\frac{1}{\mu_0}\underbrace{\mathrm{div}\,\mathrm{rot}}_{=0}\,\bm B=0=\mathrm{div}\,\bm i);

すなわち、Ampère の法則はそれ自体が &math(\mathrm{div},\bm i=0); を表していることになる。

* 電荷保存則 [#s523873a]

&math(\mathrm{div}\,\bm i=0); すなわち電流が完全にループを描いている限り、
電流が流れても正味の電荷の移動はないが、一方で
電流の湧き出し、吸い込みがあればそこには正味の電荷密度の変化が生じる。

これを端的に表したのが電荷保存則である:

  &math(\underbrace{\rule[-20pt]{0pt}{0pt}\mathrm{div}\,\bm i}_{電流が湧き出した分}=\underbrace{\rule[-20pt]{0pt}{0pt}-\frac{\partial}{\partial t}\rho}_{電荷密度が低下する});

* Ampère-Maxwell の法則 [#hcf47cd6]

#ref(ampere-maxwell.png,around,right,66%);
Maxwell は Ampère の法則を拡張し、電荷密度が時間的に変化する場合にも成り立つ法則を導いた。

  &math(\frac{1}{\mu_0}\mathrm{rot}\,\bm B=\bm i+\underbrace{\epsilon_0\frac{\partial \bm E}{\partial t}}_{変位電流});

これは、電場の時間変化が電流と同様に磁場を生むという式になっている。
この電流の次元を持つ項はしばしば変位電流と呼ばれる。

両辺の div を取ると、

  &math(
0&=\mathrm{div}\,\bm i+\epsilon_0\frac{\partial \mathrm{div}\,\bm E}{\partial t}\\
&=\mathrm{div}\,\bm i+\frac{\partial \rho}{\partial t});

が得られ、これは電荷保存則に他ならない。

変位電流の意味するところは右図により説明される。ここでは &math(S_1); 
を貫く電流 &math(I); の経路にコンデンサが存在し、その対向電極の間を &math(S_2); 
が通っている。このため、&math(S_2); を貫く電流はゼロとなるが、
電流 &math(I); によりコンデンサが充電されるため、&math(S_2); 上の電場が時間と共に増加し、
&math(S_2); 上では通常の電流の代わりに変位電流が流れることになる。

Ampère-Maxwell の法則から電荷保存則が導かれることからも分かるとおり、
&math(S_2); 上を流れる変位電流はちょうど &math(S_1); 上を流れる電流値と一致することから、
閉曲線 &math(C); を貫く「電流+変位電流」は &math(C); を縁とする曲面の取り方に依らず一意に定義され、
&math(\bm B); の &math(C); 上の周回積分の値がこの「電流+変位電流」で書かれることとなるのである。

* コメント・質問 [#yaf20ce9]

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