線形代数I/教科書定理/2.11 の変更点

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[[線形代数I/要点/2章B-線形写像]]

* 定理2.11 [#sb11748e]

線形写像が1対1であれば任意の線形独立なベクトルは写った先でも線形独立である

また、その逆も成り立つ。つまり、

任意の線形独立なベクトルが線形写像により写された先でも線形独立であるならばその写像は1対1である

* 証明 [#s3908ae7]

&math(\bm{R}^n); から &math(\bm{R}^m); への線形写像 &math(\phi); が1対1であるとする。

&math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\dots,\bm{a}_n); が線形独立であるにもかかわらず
&math(\phi(\bm{a}_1),\phi(\bm{a}_2),\dots,\phi(\bm{a}_n)); が線形従属であるならば

&math(k_1\phi(\bm{a}_1)+k_2\phi(\bm{a}_2)+\dots+k_n\phi(\bm{a}_n)=0);

となるような &math(\{k_i\}); ただし、ある &math(m); に対して &math(k_m \ne 0); が
存在する。

&math(\phi); は線形独立なので、この &math(\{k_i\}); に対して

&math(\phi(k_1\bm{a}_1+k_2\bm{a}_2+\dots+k_n\bm{a}_n)=0);

となるが、線形写像 &math(\phi); が1対1であればこれは

&math(k_1\bm{a}_1+k_2\bm{a}_2+\dots+k_n\bm{a}_n=0);

のときしか起こりえず、矛盾を生じる。

したがって、まず前半が証明できたことになる。

逆に任意の線形独立なベクトルが &math(\phi); により線形独立なベクトルに写るとしよう。

&math(\phi(\bm{x})=\bm{o});

となる &math(\bm{x}); について &math(\bm{R}^n); のある基底 &math(\{\bm{e_i}\}); 取り
&math(\bm{x}=x_1\bm{e_1}+x_2\bm{e_2}+\dots+x_n\bm{e_n}); と表すと、&math(\phi); は
線形写像なので

&math(x_1\phi(\bm{e_1})+x_2\phi(\bm{e_2})+\dots+x_n\phi(\bm{e_n})=\bm{o});

とすることができる。

一方、基底 &math(\{\bm{e_i}\}); は線形独立なので &math(\{\phi(\bm{e_i})\}); も
線形独立であることになる

従って、上の式は &math(x_1=x_2=\dots=x_n=0); の時にしか成り立たず、

&math(\phi(\bm{x})=\bm{o} \to \bm{x}=\bm{o});

すなわち、&math(\text{Ker}\,\phi=\{o\}); であり、&math(\phi); が1対1写像である
ことが導かれる。

これで後半が証明され、証明了。


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