量子力学Ⅰ/線形代数の復習 の変更点

更新


#mathjax

* 概要 [#c0204dae]

量子力学で用いる関数空間の概念について復習する。

[[線形代数II]]を履修済みの学生を念頭に置いている。

このページは画面幅がある程度大きくないと見づらいため、
スマホよりもPC等の広い画面で見ることを推奨します。

** 目次 [#m4e60a23]

[[量子力学Ⅰ]]
#contents

* 関数の線形空間 = 関数空間 [#ebae6101]

ある決まった区間 &math(a<x<b);(ただし &math(a,b); は &math(\pm\infty); でも可)
で定義される複素関数すべてからなる集合 &math(U); 
を考えると、&math(U); は以下で定義される関数の和と複素数倍に対して線形空間を為す。

&math(f,g\in U);、&math(k\in\mathbb C); のとき、

 和 &math(u=f+g); を  &math(u(x)\equiv f(x)+g(x));

 複素数倍 &math(v=kf); を  &math(v(x)\equiv kf(x));

(線形空間とは和とスカラー倍に対して閉じた空間のことだった。閉じている、とは演算の結果が集合の外の出ない、つまり &math(u,v\in U); であるということだった。あやふやな人は復習しておくこと。)

以下、数ベクトル空間と対比させながら複素関数空間について復習する。

* ベクトルのグラフ [#m25c4a20]

#multicolumns

&math(\bm a=(a_1\ a_2\ \dots\ a_n)^T\in\mathbb R^n); のとき、

添字 &math(k); に対して &math(a_k); をプロットすれば、
「ベクトルのグラフ」を表示できる。

#multicolumns

&math(u(x)\in U); のとき、

変数 &math(x); に対して &math(u(x)); をプロットすれば、
「関数のグラフ」を表示できる。

#multicolumns(end)

#multicolumns

&ref(線形代数II/関数空間/vector1.png,,33%);

&math(k); から &math(a_k); への対応関係を決めると、
それが1つのベクトルを決めることに相当する。

#multicolumns

&ref(線形代数II/関数空間/function.png,,33%);

&math(x); から &math(u(x)); への対応関係を決めると、
それが1つの関数を決めることに相当する。

#multicolumns(end)

~

このグラフで考えると、
- ベクトルの和はグラフの上下方向への重ね合わせに
- ベクトルの定数倍はグラフの上下方向の引き延ばしに

それぞれ対応する。

ただし本来、ベクトルや関数の値は複素数を想定しているので、
上記グラフはあくまで概念的な物である。

* 内積・ノルム・直交・規格化・正規直交 [#a0503298]

以下で用いる &math(A^\dagger); の記号は行列 &math(A); のエルミート共役(随伴行列)を表わしており、&math(A^\dagger\equiv (A^T)^*); と定義される。
ただし、&math(A^T); は &math(A); の転置行列、&math(A^*); は &math(A); の複素共役行列である。

#multicolumns
''[標準内積]''

&math((\bm a,\bm b)\equiv\bm a^\dagger\bm b
=\sum_{k=1}^n a_k^*b_k);

複素内積では &math(a_k); に &math(^*); が付く。
線形代数学では

&math((\bm a,\bm b)\equiv\bm a^T\bm b^*
=\sum_{k=1}^n a_kb_k^*);

と定義する流儀もあるが、&math(\bm a); 側に &math(^*); 
を付ける方が量子力学との親和性が高いため、
応用理工の線形代数では上の流儀を採用していた。

#multicolumns
''[標準内積]''

&math((u,v)\equiv\int_a^bdx\,u^*(x)v(x)=\int_a^bdx\,\big(u(x)\big)^*v(x));

&math(U); は &math(a<x<b); で積分可能な関数の集合とする。

#multicolumns(end)
#multicolumns
''[非負性]''

任意の &math(\bm a); に対して~
&math((\bm a,\bm a)=\sum_{k=1}^na_k^*a_k=\sum_{k=1}^n|a_k|^2\ge 0);

&math((\bm a,\bm a)= 0); となるのは &math(\bm a=\bm 0); に限る。

#multicolumns
''[非負性]''

任意の &math(u(x)); に対して~
&math((u,u)=\int_a^bdx\,u^*(x)u(x)=\int_a^bdx\,|u(x)|^2\ge 0);

&math((u,u)= 0); となるのは &math(u(x)=0); に限る。

#multicolumns(end)
#multicolumns
''[ノルム]''

&math(|\bm a|\equiv\sqrt{(\bm a,\bm a)});

#multicolumns
''[ノルム]''

&math(\|u\|\equiv\sqrt{\int_a^bdx\,|u(x)|^2});

複素数 &math(u(x)); の絶対値 &math(|u(x)|); と区別するため &math(\|u(x)\|); と書く。

#multicolumns(end)
#multicolumns
''[正規化]''

&math(\bm e=\frac{1}{|\bm a|}\bm a); とすれば &math(|\bm e|=1);

#multicolumns
''[正規化]''

&math(g(x)=\frac{1}{\|u\|}u(x)); とすれば &math(\|g\|=1);

#multicolumns(end)
#multicolumns
''[直交]''

&math((\bm a,\bm b)=0); のとき &math(\bm a\perp\bm b);

#multicolumns
''[直交]''

&math(\int_a^bdx\,u^*(x)v(x)=0); のとき &math(u\perp v);

#multicolumns(end)
#multicolumns
''[正規直交]''

ベクトルの組 &math(\set{\bm e_k}); に対して

&math((\bm e_i,\bm e_j)=\delta_{ij});

#multicolumns
''[正規直交]''

関数の組 &math(\set{\psi_k(x)}); に対して

&math(\int_a^bdx\,\psi_i(x)^*\psi_j(x)=\delta_{ij});

#multicolumns(end)

* 完全性・成分表示 [#u2490b82]

#multicolumns
''[張る]''

ベクトルの組 &math(\set{\bm b_k}); が線形空間 &math(V); を張るとは、
任意の要素 &math(\bm x\in V); を次のように線形結合として表せることである。

&math(\bm x=\sum_{k=1}^n x_k\bm b_k);

以下では &math(\{\bm e_i\}); を &math(V); を張る正規直交系、
すなわち &math(V); の正規直交基底であるとする。

#multicolumns
''[完全]''

関数系 &math(\set{\psi_k(x)}); が集合 &math(U); で完全であるとは、
任意の関数 &math(f(x)\in U); を次のように線形結合として表せることである。

&math(f(x)=\sum_{k=1}^\infty f_k\psi_k(x));

以下では &math(\{\psi_i(x)\}); を &math(U); における正規直交完全系であるとする。
#multicolumns(end)
#multicolumns
''[成分表示]''

&math(\bm x=\sum_{k=1}^n x_k\bm e_k); と分解するとき、
その係数は

&math(x_k=(\bm e_k,\bm x));

として求められる。(あるいは &math(x_k=(\bm x,\bm e_k)^*);)

すなわち、

&math(\bm x=\sum_{k=1}^n (\bm e_k,\bm x)\bm e_k);

#multicolumns
''[成分表示]''

&math(f(x)=\sum_{k=1}^\infty f_k\psi_k(x)); と分解するとき、
その係数は

&math(f_k=\int_a^bdx\,\psi_k^*(x)f(x));

として求められる。

すなわち、

&math(f(x)=\sum_{k=1}^\infty \Bigg[\int_a^bdx'\,\psi_k^*(x')f(x')\Bigg]\psi_k(x));

#multicolumns(end)
#multicolumns
''[正規直交基底の条件]''

上式を変形すれば、

&math(\bm x=\Big(\sum_{k=1}^n \bm e_k\bm e_k^\dagger\Big) \bm x);

となり、任意のベクトル &math(\bm x); に対して成り立つから、

&math(\sum_{k=1}^n \bm e_k\bm e_k^\dagger=E);

である。この式を正規直交基底の条件とする場合もある。

#multicolumns
''[正規直交完全性の条件]''

上式を変形すれば

&math(f(x)=\int_a^bdx'\,\Big[\sum_{k=1}^\infty \psi_k^*(x')\psi_k(x)\Big]f(x')); 

となり、任意の関数 &math(f); に対して成り立つから、

&math(\sum_{k=1}^\infty \psi_k^*(x')\psi_k(x)=\delta(x'-x));

である。この式を正規直交完全性の条件とする場合もある。(&math(\delta); はディラックのデルタ関数)

#multicolumns(end)
#multicolumns
''[成分とノルム]''

&math(\bm x=\sum_{k=1}^n x_k\bm e_k); のとき、

&math(|\bm x|^2=\sum_k^n |x_k|^2);

#multicolumns
''[成分とノルム]''

&math(f(x)=\sum_{k=1}^\infty f_k\psi_k(x)); のとき、

&math(\|f\|^2=\sum_k^\infty |f_k|^2);

#multicolumns(end)

この関係は内積で書いたノルムの式に展開した形を代入し、正規直交条件を用いることで容易に導ける。

* 部分空間 [#q57c00e9]

たとえば、
&math(V=\set{f\in U|f(a)=f(b)=0}); とすれば &math(V\subset U); 
であり、なおかつ &math(V); は和とスカラー倍について閉じている。したがって、&math(V); は &math(U); の部分空間となる。

このように、&math(U); に___和やスカラー倍で保存する何らかの制約___を課した部分空間を考えることもよく行われる。

- ?回微分可能とか、積分可能とか
- 両端でゼロとなる境界条件 (&math(\phi(a)=\phi(b)=0);)とか、周期的境界条件 (&math(\phi(a)=\phi(b));)とか
- ある線形な微分方程式の解であるとか(ある線形演算子 $\hat A$ に対する $\hat A\bm x=\bm 0$ の解空間)

* 線型変換・線型演算子 [#q7f74d1f]

#multicolumns
''[線型変換]''

あるベクトルを別のベクトルに変える変換 &math(F(\bm x)); が
あるベクトルを同じ空間の別のベクトルに変える変換 &math(F(\bm x)); が
任意の &math(\bm a,\bm b\in V); に対して

&math(F(\alpha\bm a+\beta\bm b)=\alpha F(\bm a)+\beta F(\bm b));

を満たす時、これを線型変換という。

#multicolumns
''[線型演算子]''

ある関数を別の関数に変える演算子 &math(\hat F); が
任意の &math(f(x),g(x)\in U); に対して

&math(\hat F(\alpha f(x)+\beta g(x))=\alpha \hat Ff(x)+\beta \hat Fg(x));

を満たす時、これを線型演算子という。

例えば~
 &math(\hat A: f(x)\mapsto \frac{d}{dx}f(x)); や~
 &math(\hat B: f(x)\mapsto (3x^2+1)f(x));~
 &math(\hat C: f(x)\mapsto f(x+1));~
は線型演算子である。

#multicolumns(end)

#multicolumns
''[行列表現]''

線型変換 &math(F(\bm x)); の行列表現 &math(A=(a_{ij})); は

&math(a_{ij}=(\bm e_i,F(\bm e_j)));

であり、このとき

&math(F(\bm x)=A\bm x=\sum_{i=0}^n \bm e_i\sum_{j=0}^n a_{ij}\underbrace{(\bm e_j,\bm x)}_{x_j});

と表せる。
#multicolumns
''[行列表現]''

任意の線型演算子 &math(\hat Ff(x)); に対してその行列要素は

&math(F_{ij}=\int_a^bdx\,\psi_i^*(x)\hat F\psi_j(x));

と定義され、

&math(\hat Ff(x)=\sum_{i=0}^\infty \psi_i^*(x)\sum_{j=0}^\infty F_{ij}\underbrace{\int_a^bdx\,\psi_j^*(x)f(x)}_{f_j});

#multicolumns(end)

* エルミート変換 [#occc27d8]

#multicolumns
''[エルミート共役]''

任意の &math(\bm a,\bm b\in V); に対して

&math((\bm a,A\bm b)=(A^\dagger\bm a,\bm b));

となるような &math(A^\dagger); を &math(A); のエルミート共役と呼ぶ。

標準内積では &math(A^\dagger=(A^T)^*); として求められる。
#multicolumns
''[エルミート共役]''

任意の &math(f(x),g(x)\in U); に対して

&math(\int_a^bdx\,f^*(x)\hat Ag(x)=\int_a^bdx\,\big(\hat A^\dagger f(x)\big)^*g(x));

となるとき、&math(\hat A^\dagger); を &math(\hat A); 
のエルミート共役と呼ぶ。
#multicolumns(end)
#multicolumns
''[エルミート行列]''

&math(A^\dagger=A); のとき &math(A); をエルミート行列と呼ぶ。

このとき 

&math((\bm a,A\bm b)=(A\bm a,\bm b)); 

が成り立つ。

#multicolumns
''[エルミート演算子]''

&math(\hat A^\dagger=\hat A); のとき &math(\hat A); をエルミート演算子と呼ぶ。

このとき 

&math(\int_a^bdx\,f^*(x)\hat Ag(x)=\int_a^bdx\,\big(\hat Af(x)\big)^*g(x)); 

が成り立つ。

#multicolumns(end)



* ユニタリー変換 [#l5f20be7]
#multicolumns
''[ユニタリー行列]''

任意の &math(\bm a,\bm b\in V); に対して

&math((U\bm a,U\bm b)=(\bm a,\bm b));

となる &math(U); をユニタリー行列と呼ぶ。

当然、&math(|U\bm a|=|\bm a|); も成り立つ。

またこのとき &math(U^\dagger U=UU^\dagger=E); すなわち
&math(U^\dagger=U^{-1}); である。
#multicolumns
''[ユニタリー演算子]''

任意の &math(f(x),g(x)\in U); に対して

&math(\int_a^bdx\,\big(\hat Uf(x)\big)^*\big(\hat Ug(x)\big)=\int_a^bdx\,f^*(x)g(x));

となる &math(\hat U); をユニタリー演算子と呼ぶ。

当然、&math(\|Uf(x)\|=\|f(x)\|); も成り立つ。

またこのとき &math(\hat U^\dagger \hat U=\hat U\hat U^\dagger=\hat 1); すなわち
&math(\hat U^\dagger=\hat U^{-1}); である。

ここで &math(\hat 1:f(x)\mapsto f(x)); は恒等変換を表わす。

#multicolumns(end)
#multicolumns
''[正規直交基底の変換行列]''

&math(\{\bm e_k\}); と &math(\{\bm f_k\}); がどちらも正規直交基底であれば、

&math(\bm f_k=U\bm e_k);

となる &math(U_{e\to f}); はユニタリー行列になる。

#multicolumns
''[正規直交完全系の変換演算子]''

&math(\{\psi_k(x)\}); と &math(\{\phi_k(x)\}); がどちらも正規直交完全系であれば、

&math(\phi_k(x)= \hat U \psi_k(x));

となる &math(\hat U); はユニタリー変換になる。

#multicolumns(end)

* 固有値問題 [#m2006e96]

** 固有値、固有ベクトル・固有関数 [#f82e64ef]
*** 固有値が連続な場合もありうる [#l67d8f01]
** 対角化可能性 [#me56c699]
*** 相似変換 [#e5c2b3bf]
*** 固有関数の直交性 [#te68020b]
*** 正規行列・正規演算子 [#c888ca5b]
** エルミート行列の固有値は実数 [#fb478b4f]
** ユニタリー行列の固有値は絶対値が1 [#cc0ed7b6]

* デターミナント・トレース・固有値 [#sb743be3]
** 定義・性質 [#vec8e625]
** 固有値との関係 [#p1b01fdf]
** 相似変換で保存 [#u27da019]
** デターミナントとノルム [#k8326c7d]

* 行列の関数 [#l13bb77c]

** $H$ がエルミートなら $e^{iH}$ はユニタリー [#a5808b18]

&math(H); の固有値を &math(\lambda_1,\lambda_2,\dots); とすれば、

&math(U=e^{iH}); の固有値は &math(e^{i\lambda_1},e^{i\lambda_2},\dots); であり、
すべて絶対値が1となるからこれはユニタリーである。

* 質問・コメント [#xe022926]

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