量子力学Ⅰ/3次元調和振動子 の変更点

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#mathjax

* 目次 [#p212d2aa]

#contents

* 復習:$x,y,z$ 座標で解いた3次元調和振動子 [#a46a099a]

バネ定数 &math(K=m\omega^2); (&math(\omega); は系の固有角振動数)
の3次元調和振動子に対する時間を含まないシュレーディンガー方程式を
&math(x,y,z); について変数分離して解けば、その解は &math(\varphi(x,y,z)=X(x)Y(y)Z(z)); 
の形となり、&math(X(x),Y(y),Z(z)); はそれぞれ1次元調和振動子に対する解となることを
[[量子力学Ⅰ/調和振動子#y596d643]] で学んだ。

すなわち &math(r_0=\sqrt{\hbar/m\omega}); およびエルミート多項式 &math(H_n); を使って、

 &math(\varphi_{n_xn_yn_z}(x,y,z)=H_{n_x}(x/r_0)H_{n_y}(y/r_0)H_{n_z}(z/r_0)e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}});

対応するエネルギーは &math(N=n_x+n_y+n_z); を用いて、

 &math(
\varepsilon_{n_xn_yn_z}&=\hbar\omega(n_x+n_y+n_z+3/2)\\
&=\hbar\omega(N+3/2)\\
);

|CENTER:|LEFT:|CENTER:|c
|&math(N=n_x+n_y+n_z);|     &math((n_xn_yn_z));     |縮退度|
|0|(0 0 0)|1|
|1|(1 0 0), (0 1 0), (0 0 1)|3|
|2|(2 0 0), (0 2 0), (0 0 2)|6|
|~|(1 1 0), (1 0 1), (0 1 1)|~|
|3|(3 0 0), (0 3 0), (0 0 3)|10|
|~|(2 1 0), (0 2 1), (1 0 2)|~|
|~|(1 2 0), (0 1 2), (2 0 1)|~|
|~|(1 1 1)                  |~|

* 球座標で解いた3次元調和振動子 [#fe164113]

一方、この問題は球対称なポテンシャル

 &math(V(r,\theta,\phi)=\frac{1}{2}Kr^2);

の中での運動であるから、球座標で展開して解けば

 &math(\phi_{nlm}'(r,\theta,\phi)=R_n{}^l(r)Y_l{}^m(\theta,\phi));
 &math(\varphi_{nlm}'(r,\theta,\phi)=R_n{}^l(r)Y_l{}^m(\theta,\phi));

の形の解が得られる。このとき、

 &math(\varepsilon=\varepsilon_n{}^l);

と表せ、エネルギーは &math(m); の値によらない。

|CENTER:60|CENTER:60|CENTER:200|CENTER:60|c
|状態|l|m|縮退度|
|s|0|0|1|
|p|1|-1, 0, +1|3|
|d|2|-2, -1, 0, 1, 2|5|
|f|3|-3, -2, -1, 0, 1, 2, 3|7|

ただし、水素原子のところでも見たとおり、ポテンシャルの形状によっては &math(m); 
に対する縮退以外にも、異なる &math(l); を持つ状態が縮退することがある。

* 両者の関係は? [#i65992c1]

次に見るとおり、

- &math(N=0); の縮退度は 1 → &math(l=0); (縮退度 1 の s 状態)
- &math(N=1); の縮退度は 3 → &math(l=1); (縮退度 3 の p 状態)
- &math(N=2); の縮退度は 6 → &math(l=2); (縮退度 5 の d 状態) と &math(l=0); (縮退度 1 の s 状態) が縮退
- &math(N=3); の縮退度は 10 → &math(l=3); (縮退度 7 の f 状態) と &math(l=1); (縮退度 3 の p 状態) が縮退

にそれぞれ対応している。

* 演習:球座標による解の縮退 [#jd93721a]

&math(x,y,z); 座標で変数分離して得られる解と、
&math(r,\theta,\phi); 座標で変数分離して得られる解との関係を明らかにしたい。

(1) 3次元調和振動子に対する動径方向の方程式は、
&math(r/r_0=\xi); と書き換え、&math(rR(r)=X(\xi)); と置けば、

&math(
X''(\xi)=\Big[\xi^2-\frac{2\varepsilon}{\hbar\omega}+\frac{l(l+1)}{\xi^2}\Big]X(\xi)
);

となることを示せ。(&math(l=0); のとき、この式は1次元調和振動子の式と一致する)

(2) &math(\frac{d^2}{d\xi^2}\left(\xi^k e^{-\xi^2/2}\right)=\left(\xi^2-(2k+1)+\frac{(k-1)k}{\xi^2}\right)\xi^k e^{-\xi^2/2}); を確かめよ。

(3) &math(X(\xi)=\xi^{l+1} e^{-\frac{\xi^2}{2}}); が
&math(\varepsilon=\left(l+\frac{3}{2}\right)\hbar\omega); に対する固有関数となることを示せ。

(4) &math(X(\xi)=\left(\xi^{l+1}-\frac{2}{2l+3}\xi^{l+3}\right)e^{-\xi^2/2});
が &math(\varepsilon=\left(l+\frac{7}{2}\right)\hbar\omega);
に対する固有関数となることを示せ。

(5) (発展)&math(X_n{}^l(\xi)=\left(\sum_{k=0}^n c_k\xi^{2k}\right)\xi^{l+1}e^{-\xi^2/2});
が &math(\varepsilon=\left(l+2n+\frac{3}{2}\right)\hbar\omega);
に対する固有関数となるよう &math(c_k); を定めよ。

~

[[● 解答はこちら>@量子力学Ⅰ/3次元調和振動子/メモ#ne558c03]]

** 解説 [#k1911005]

(3) で &math(l=0); とすれば &math(R(r)\propto e^{-\xi^2/2}); となって、&math(N=0); の解に相当する。

(3) で &math(l=1); とすれば &math(R(r)\propto \xi e^{-\xi^2/2}); となって、&math(N=1); の解に相当する。

(3) で &math(l=2); とした &math(R(r)\propto \xi^2 e^{-\xi^2/2}); と、
(4) で &math(l=0); とした &math(R(r)\propto \left(\xi-\frac{2}{3}\xi^3\right)e^{-\xi^2/2}); とは同じエネルギーを持ち(縮退しており)、&math(N=2); の解に相当する。

(3) で &math(l=3); とした &math(R(r)\propto \xi^3 e^{-\xi^2/2}); と、
(4) で &math(l=1); とした &math(R(r)\propto \left(\xi^2-\frac{2}{5}\xi^4\right)e^{-\xi^2/2}); とは同じエネルギーを持ち(縮退しており)、&math(N=3); の解に相当する。

(5) のように、一般には 

 &math(X_n{}^l(\xi)=(\xi の 2n 次多項式)\ \xi^{l+1} e^{-\xi^2/2}); 

の形で &math(\varepsilon=(l+2n+3/2)\hbar\omega); に対する固有関数を作れるから&math((n=0,1,2,\dots));、
&math(N=l+2n); となるように &math(l,n); を選べば &math(N); と同じエネルギーを与える。

たとえば &math(N=4); なら以下の通り15重に縮退する。
- &math(n=0,\ l=4); の 9 個
- &math(n=1,\ l=2); の 5 個
- &math(n=2,\ l=0); の 1 個

* グラフ形状 [#ve6ee106]

&math(X_n^l(\xi)); をプロットした。

&attachref(spherical_harmonic_oscillation.svg,,ogp); 

球対称な箱形ポテンシャルと同様に、

- n が増加すると振動回数が増える → r 方向の運動量が大きくなる
- l が増加すると角運動量が増える → 遠心力で外側へ寄る

エネルギーは &math((l+2n+3/2)\hbar\omega); なので、
n の増加は l の増加の2倍、エネルギーを増やす。

n の増加は調和振動子の振幅の増加に当たり、
ポテンシャルエネルギーが大きく増加するためだ。

* $N=0$ の解 [#d4bfce50]

 &math(
\varphi_{000}(\bm r)
&=\left(\frac{4\pi}{r_0}\right)^{3/4}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
&\propto e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
);

は &math(\theta,\phi); に依存しない。

一方、&math(Y_0{}^0=1/\sqrt{4\pi}); も &math(\theta,\phi); に依存しないので、

 &math(
\varphi_{000}(\bm r)
&\propto e^{-\frac{r^2}{r_0^2}}\,Y_0{}^0\\
);

と書ける。

すなわち &math(n=0); の解は s 状態であり、&math(\varphi_{000}); に対して &math(\hat l^2=0,\hbar l_z=0); であることが分かる。

* $N=1$ の解 [#zc579fdf]

 &math(
\varphi_{100}(\bm r)\propto xe^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
=r\sin\theta\cos\phi e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
);

 &math(
\varphi_{010}(\bm r)\propto ye^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
=r\sin\theta\sin\phi e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
);

 &math(
\varphi_{001}(\bm r)\propto ze^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
=r\cos\theta e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
);

一方、

 &math(Y_1{}^0\propto \cos\theta);

 &math(Y_1{}^{\pm 1}\propto \pm e^{i\phi}\sin\theta);

より、

 &math(
\varphi_{100}(\bm r)\propto re^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,(Y_1{}^1-Y_1{}^{-1})
);

 &math(
\varphi_{010}(\bm r)\propto re^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,(Y_1{}^1+Y_1{}^{-1})
);

 &math(
\varphi_{001}(\bm r)\propto re^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,Y_1{}^0
);

すなわち、&math(N=1); に対応する &math(\varphi_{n_xn_yn_z}); はすべて、

 &math(\frac{r}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,Y_1{}^m(\theta,\phi));

の形の関数の線形結合で表されることが分かる。

同じ固有値に属する固有関数の線形結合はやはり固有関数であるため、
これらの &math(\varphi); に対して、

 &math(\hat H\varphi=(1+3/2)\hbar\omega\varphi=\frac{5}{2}\hbar\omega\varphi);

 &math(\hat{\bm l}^2\varphi=1(1+1)\hbar\omega\varphi=2\hbar\omega\varphi);

が成り立つ。&math(\hat{\bm l}^2=2\hbar); より、これらは &math(p); 状態である。

一方、&math(\hat l_z); に対しては、

 &math(\hat l_z\varphi_{001}=0\hbar \varphi_{001}=0);

であるものの、&math(\varphi_{100},\varphi_{010}); は &math(\hat l_z); の固有関数ではない。
これら2つについて &math(l_z); を測定すれば、&math(1/2); の確率で &math(\hbar); が、
&math(1/2); の確率で &math(-\hbar); が、観測されることになる。

&math(\varphi_{100},\varphi_{010}); はそのままでは &math(\hat l_z); の固有関数ではないが、

 &math(\varphi_{100}+i\varphi_{010}\propto Y_1{}^1);

 &math(\varphi_{100}-i\varphi_{010}\propto Y_1{}^{-1});

とすることにより &math(\hat l_z); のそれぞれ &math(m=1,-1); の固有関数となる。

物理的に見れば、&math(z); 方向に振動する &math(\varphi_{001}); については &math(z); 
軸周りの角運動量はゼロであり、&math(x,y); 方向に振動する &math(\varphi_{100},\varphi_{010}); 
についてもそれら単独ではやはり &math(z); 軸周りの角運動量の期待値はゼロである。

しかし、&math(x); 方向に振動しつつ同時に &math(y); 方向にも振動する場合、
その位相によっては &math(z); 軸周りの角運動量が生じることになる。

ここでは &math(\pm i=e^{\pm \pi/2}); をかけて足しており、
物理的には &math(x); 方向の振動に対して &math(y); 方向の振動の位相が &math(\pm \pi/2); 
だけずれていることに対応する。
すなわち、&math(x); が &math(\sin\omega t); 的な振動をするとき
&math(y); が &math(\pm\cos\omega t); 的に振動することになり、
これはすなわち &math(z); 軸の周りの左回り/右回りの円運動に他ならない。

* $N=2$ および $N=3$ の解 [#d984bf3e]

&math(N=2); の解のうち、

 &math(\varphi_{200},\ \varphi_{020},\ \varphi_{002}); は &math(l=0); の解と &math(l=2); の解の線形結合で、

 &math(\varphi_{110},\ \varphi_{011},\ \varphi_{101}); は &math(l=2); の解のみで

それぞれ表せる。すなわち後者は d 状態に対応するが、前者は s 状態と d 状態の混合、
すなわち &math(\hat{\bm l}^2); の固有関数ではなく、
全角運動量を測定すれば 1/3 の確率で &math(l=0); を、2/3 の確率で &math(l=2); を取る。

&math(N=3); の解のうち、

 &math(\varphi_{111}); は純粋な f 状態であるが、

 他は、p 状態と f 状態の混合となっている。

[[詳しい計算はこちら>@量子力学Ⅰ/3次元調和振動子/メモ]]

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* 質問・コメント [#r449b67e]

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