線形代数I/行列式

(106d) 更新


線形代数I

培風館「教養の線形代数(五訂版)」に沿って行っている授業の授業ノート(の一部)です。

行列式(デターミナント)

任意の正方行列 $A$ からデターミナント(日本語では行列式)と呼ばれる1つの数値 $\det A=|A|$ を求める手順を以下のように定める。

まず、2次の正方行列 $A=\begin{bmatrix}a&b\\c&d\end{bmatrix}$ の行列式は、

$$\det A=|A|=\begin{vmatrix}a&b\\c&d\end{vmatrix}=ad-bc$$

と定義される。

一番右の式は左上の $a$ と右下の $d$ の積から、右上の $b$ と左下の $c$ との積を引いた形になっており、それぞれの項は斜めに数字を掛け合わせる操作となるため「たすき掛け」の計算などと呼ばれる。

ここで、行列 $A$ のデターミナントは $|A|$ と書かれるが、要素を明示する際には $\left|\left[\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right]\right|$ と書く代わりに $\left|\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right|$ と書くことに注意せよ。

3次の場合には、

$$\left|\begin{array}{ccc}a&b&c\\d&e&f\\g&h&i\end{array}\right|=aei+bfg+cdh-afh-bdi-ceg$$

これも各項を良く見ると、$a, b, c$ のそれぞれから右下へ斜めにたどった数字を3つずつ掛け合わせた $aei, bfg, cdh$(端に到達したら反対側から続ける)から、$a,b,c$ のそれぞれから左下へ斜めにたどった数字を3つずつ掛け合わせた $afh, bdi, ceg$ を引いた形をしており、やはり「たすき掛け」により求められる。

2次や3次に対する「たすき掛けの方法」は有用で覚える価値がある。一方、4次以上の行列式はたすき掛けにはならない

とはいえ $n$ 次の行列式においてもその形は2次や3次の時と同様に、

  1. $n$ 個の要素を掛け合わせた項に符号を付けて足し合わせたものとなる
  2. 掛け合わされる $n$ 個の要素は各列から1つずつ、各行から1つずつ取られる
    つまり、1つの項の中に現れる $n$個の因子に同じ行、同じ列の要素がダブって含まれることは無い。
  3. 2. のルールを満たす積の作り方は ${}_nP_n=n!$ 通りあるから、現れる項数は $n!$ である
  4. 付ける符号の決め方は後で学ぶ。

の形となる。

例:$n=2$ の時、

各列から1つずつ、各行から1つずつ要素を取って項を作る方法は、

1行目に1列目の $a$ を取れば2行目に2列目の $d$ を取るしかない:$ad$
1行目に2列目の $b$ を取れば2行目に1列目の $c$ を取るしかない:$bc$

全部で $ad,bc$ すなわち2つの項が作れて、この数は $n!=2!=2$ に等しい。

例:$n=3$ の時

各列から1つずつ、各行から1つずつ要素を取って項を作る方法は、

  • 1行目に1列目の $a$ を取れば2行目は2列目の $e$ を取るか3列目の $f$ をとるかのどちらか
    • 2行目に2列目の $e$ を取れば3行目は3列目の $i$ を取るしかない:$aei$
    • 2行目に3列目の $f$ を取れば3行目は2列目の $h$ を取るしかない:$afh$
  • 1行目に2列目の $b$ を取れば2行目は1列目の $d$ を取るか3列目の $f$ をとるかのどちらか
    • 2行目に1列目の $d$ を取れば3行目は3列目の $i$ を取るしかない:$bdi$
    • 2行目に3列目の $f$ を取れば3行目は1列目の $g$ を取るしかない:$bfg$
  • 1行目に3列目の $c$ を取れば2行目は1列目の $d$ を取るか2列目の $e$ をとるかのどちらか
    • 2行目に1列目の $d$ を取れば3行目は2列目の $h$ を取るしかない:$cdh$
    • 2行目に2列目の $e$ を取れば3行目は1列目の $g$ を取るしかない:$ceg$

全部で $aei,afh,bdi,bfg,cdh,ceg$ の6つの項が作れて、この数は $n!=3!=6$ に等しい。

3.1 順列

各項の符号を定義するため「順列」について学ぶ。

$n$ 次の順列とは、$1\sim n$ の数字を任意の順に並べ替えて丸括弧でくくったもの。

  • 1次:(1)
  • 2次:(1 2), (2 1)
  • 3次:(1 2 3), (2 3 1), (3 1 2), (3 2 1), (2 1 3), (1 3 2)
  • $\vdots$

(1つの順列の中に同じ数字は複数回現れないことに注意せよ)

$n$ 次の順列は $n!$ 個存在する

${}_nP_n=n!$ 個存在する。

$1!=1$, $2!=2\cdot 1=2$, $3!=3\cdot 2\cdot 1=6$, $4!=4\cdot 3\cdot 2\cdot 1=24$, $5!=120$, $6!=720$, $7!=5040$, ・・・

文字で書くときは

$(p_1\ p_2\ p_3\ \cdots\ p_n)$ などと書く。

$p_1, p_2, p_3, \cdots, p_n$ には $1\sim n$ の自然数が1回ずつ現れる。

転倒数

$p_i$ と $p_j$ が、$i<j$ にもかかわらず $p_i>p_j$ となるとき、 $p_i,p_j$ は「転倒している」と言う。
($(1\ 2\ 3\ \cdots\ n)$ の順を基準として、入れ替わっていると言う意味)

  • (1 2 3) 転倒はない → 転倒数 0
  • (1 3 2) 3 と 2 が転倒 → 転倒数 1
  • (2 3 1) 2 と 1, 3 と 1 が転倒 → 転倒数 2
  • (3 2 1) 3 と 2, 3 と 1, 2 と 1 が転倒 → 転倒数 3

間違いなく数えるには、それぞれの数字に対して、 自身よりも右にあって、自身よりも小さな数字の出現回数を数えて、 最後に全て加えればいい。

$(2\ 5\ 1\ 3\ 7\ 4\ 6)$
$\phantom{(}1+3+0+0+2+0+0=6$

順列の符号

$\varepsilon(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)$ と書く。

順列の符号は $\pm 1$ の値を取り、

  • $+1$ : 転倒数が偶数の場合
  • $-1$ : 転倒数が奇数の場合

両方まとめると、転倒数が $r$ の時に

$\varepsilon(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)=(-1)^r$

隣り合う要素の入れ替えで符号は反転する

$$ \begin{aligned} \varepsilon(\cdots\ p_i\ p_{i+1}\ \cdots)&=\\-\varepsilon(\cdots\ p_{i+1}\ p_i\ \cdots)& \end{aligned} $$

∵ $p_i,p_{i+1}$ 以外の要素の組については転倒数が変化しない。
したがって、
(1) $p_i<p_{i+1}$ の時、入れ替えにより転倒数は1増える
(2) $p_i>p_{i+1}$ の時、入れ替えにより転倒数は1減る

どちらの場合も、符号は反転する。

任意の要素の入れ替えで符号は反転する

$$\begin{aligned}\varepsilon(\cdots\ p_i\ \cdots\ p_j\ \cdots)&=\\ {}-\varepsilon(\cdots\ p_j\ \cdots\ p_i\ \cdots)&\end{aligned}$$

証明:

隣り合う2項の入れ替えを繰り返して、$i$ 番目と $j$ 番目を入れ替えれば証明できる。

ここでは $i<j$ として、

  • $i$番目と$i+1$番目
  • $i+1$番目と$i+2$番目
  • $j-1$番目と$j$番目

をこの順に入れ替えると、$j-i$回の隣り合う入れ替えにより、 $p_i$ と $ p_{i+1}\ \cdots\ p_j$ と を入れ替えることができて、

$$\begin{aligned} &\varepsilon(\cdots\ p_i\ \underbrace{p_{i+1}\ \cdots\ p_j}\ \cdots)\\ =(-1)^{j-i}&\varepsilon(\cdots\ \underbrace{p_{i+1}\ \cdots\ p_j}\ p_i\ \cdots)\end{aligned}$$

となる。

さらに、

  • $j-2$番目と$j-1$番目
  • $j-3$番目と$j-2$番目
  • $i$番目と$i+1$番目

をこの順に入れ替えると、$j-i-1$回の隣同士の入れ替えにより $p_j$ と $ p_{i+1}\ \cdots\ p_{j-1}$ とを入れ替えることができて、

$$\begin{aligned} (-1)^{j-i}&\varepsilon(\cdots\ \underbrace{p_{i+1}\ \cdots\ p_{j-1}}\ p_j\ p_i\ \cdots)\\ =(-1)^{2(j-i)-1}&\varepsilon(\cdots\ p_j\ \underbrace{p_{i+1}\ \cdots\ p_{j-1}}\ p_i\ \cdots)\\ =\hspace{3.5mm}(-1)\hspace{3mm}\cdot\hspace{3mm}&\varepsilon(\cdots\ p_j\ \cdots\ p_i\ \cdots)\\ =\text{(右辺)}\hspace{7.9mm}& \end{aligned}$$

となる。

$n$次正方行列の行列式

$A=[a_{ij}]$ とすると、行列式は次のように定義される。

$$|A|=\sum_{(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)a_{1p_1}a_{2p_2}\cdots a_{np_n}$$

  • $\sum_{(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)}$ は、$n$ 次の順列全てについて和を取ることを意味する
  • $(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)$ が順列であるとき、$a_{1p_1}a_{2p_2}\cdots a_{np_n}$ は各行から1つずつ、列が被らないように要素を取り出して得られる $n$ 個の数値を掛け合わせたものとなる
  • それに $\varepsilon(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)$ で決まる符号を付け、$n!$ 個すべてを足し合わせたのが行列式となる

例1: $n=2$ の時:

2次の順列を符号で分類すれば、

$$+1:\ (1\ 2)\\-1:\ (2\ 1)$$

したがって、

$$\begin{aligned} \left|\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right| &=\sum_{(p_1\ p_2)}\varepsilon(p_1\ p_2)a_{1p_1}a_{2p_2}\\ &=\underbrace{\varepsilon(1\ 2)a_{11}a_{22}}_{(p_1\ p_2)\,=\,(1\ 2)}+ {}\underbrace{\varepsilon(2\ 1)a_{12}a_{21}}_{(p_1\ p_2)\,=\,(2\ 1)}\\ &=ad-bc \end{aligned}$$

例2: $n=3$ の時:

3次の順列を符号で分類すれば、

$$+1:\ (1\ 2\ 3), (2\ 3\ 1), (3\ 1\ 2)\\-1:\ (3\ 2\ 1), (2\ 1\ 3), (1\ 3\ 2)$$

したがって、

$$ \left|\begin{array}{ccc}a&b&c\\d&e&f\\g&h&i\end{array}\right| =\sum_{(p_1\ p_2\ p_3)}\varepsilon(p_1\ p_2\ p_3)a_{1p_1}a_{2p_2}a_{3p_3} $$

$$ \begin{array}{rcl} =\varepsilon(1\ 2\ 3)a_{11}a_{22}a_{33}&\rightarrow&+aei\\ {}+\varepsilon(2\ 3\ 1)a_{12}a_{23}a_{31}&\rightarrow&+bfg\\ {}+\varepsilon(3\ 1\ 2)a_{13}a_{21}a_{32}&\rightarrow&+cdh\\ {}+\varepsilon(3\ 2\ 1)a_{13}a_{22}a_{31}&\rightarrow&-ceg\\ {}+\varepsilon(2\ 1\ 3)a_{12}a_{21}a_{33}&\rightarrow&-bdi\\ {}+\varepsilon(1\ 3\ 2)a_{11}a_{23}a_{32}&\rightarrow&-afh \end{array} $$

$$=aei+bfg+cdh-ceg-bdi-afh$$

3.2 行列式の性質

4次の行列式には $4!=4\cdot3\cdot2\cdot1=24$ 個の項が現れ、
5次の行列式には $5!=120$ 個の項が現れる。

これらは2次や3次と違ってとても公式として覚えられるものではないし、 さらに次数が高くなれば計算機を使ってさえ定義通りに計算するのは大変である。

以下のような行列式の性質を用いることで高次の行列式を低次の行列式で表して計算を楽にしたり、 行列式をさまざまな分野に応用したりできるようになる。

すぐ分かる内容

  • $A=[a]$ なら $|A|=a$
    $\because|A|=|[a]|=|a|=\sum_{(p_1)}\varepsilon(p_1)a_{1p_1}=+a_{11}=a$
  • $|A|$ は正にも負にもなる (絶対値とは異なる)
  • $A$ が整数のみからなる行列なら $|A|$ も整数となる

行に対する多重線形性

関数 $f$ が「線形である」というのは、任意の $a, x, y$ に対して

$$\begin{cases}f(ax)=af(x)\\f(x+y)=f(x)+f(y)\end{cases}$$

が成り立つことである。

  • $f(x)=Ax$ なら線形
  • $f(x)=Ax+B$ だと線形ではない

行列式の多重線形性は、$A=\begin{bmatrix}\hspace{5mm}\bm a_1\hspace{5mm}\\\bm a_2\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_n\end{bmatrix}$ を行列 $A$ の行ベクトル分解として次の2つが成り立つこと。

$$\begin{cases}\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\bm a_1\hspace{10mm}\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]c\bm a_k\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_n\end{vmatrix}=c\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\bm a_1\hspace{10mm}\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_k\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_n\end{vmatrix}\\\phantom{0}\\\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\bm a_1\hspace{10mm}\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_k+\bm a'_k\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_n\end{vmatrix}=\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\bm a_1\hspace{10mm}\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_k\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_n\end{vmatrix}+\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\bm a_1\hspace{10mm}\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a'_k\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_n\end{vmatrix}\end{cases}$$

これは、行列式を「$n$ 個の行ベクトルを与えると数値を返す関数」と見たときに、

$$f(\bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_n)=\begin{vmatrix}\hspace{5mm}\bm a_1\hspace{5mm}\\\bm a_2\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_n\end{vmatrix}$$

すべての引数 $\bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_n$ に対して線形性を持つと言うことであり、この意味で「多重」と言われる。

証明

$$\begin{aligned} &(第1式左辺)\\ &=\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}\dots (ca_{kp_k})\dots a_{np_n}\\ &=c\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}\dots a_{kp_k}\dots a_{np_n}\\ &=(第1式右辺) \end{aligned}$$

$\sum$ 中で、$k$ 行目の要素が現れるのは $ca_{kp_k}$ の部分しかないことに注意せよ。

同様に、

$$\begin{aligned} (第2式左辺)\\ &=\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}\dots (a_{kp_k}+a'_{kp_k})\dots a_{np_n}\\ &=\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}\dots a_{kp_k}\dots a_{np_n}\\ &\ +\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}\dots a'_{kp_k}\dots a_{np_n}\\ &=(第2式右辺) \end{aligned}$$

行に対する交代性

行を入れ替えると符号が反転する

$$ \begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_j\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}=-\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_j\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix} $$

証明

$$\begin{aligned} (左辺)\\ &=\phantom{-}\sum_{(\dots p_i\dots p_j\ \dots)}\varepsilon(\dots p_i\dots p_j\ \dots)\dots a_{ip_i}\dots a_{jp_j}\dots\\ &=\phantom{-}\sum_{(\dots p_i\dots p_j\ \dots)}\varepsilon(\dots p_i\dots p_j\ \dots)\dots a_{ip_j}\dots a_{jp_i}\dots\\ &=-\sum_{(\dots p_i\dots p_j\ \dots)}\varepsilon(\dots p_j\dots p_i\ \dots)\dots a_{ip_j}\dots a_{jp_i}\dots\\ &=-\sum_{(\dots p_j\dots p_i\ \dots)}\varepsilon(\dots p_j\dots p_i\ \dots)\dots a_{ip_j}\dots a_{jp_i}\dots\\ &=(右辺) \end{aligned}$$

  • 1行目→2行目:実数の積の交換法則
  • 2行目→3行目:順列要素の入れ替え
  • 3行目→4行目:Σの添え字が変更になることで和を取る順番が変化するが、$n$次の順列すべてについて和を取れば、全体として現れる項は等しくなる。

行に対するその他の性質

同じ値を持つ行が複数存在すると行列式はゼロ

等しい値の行を入れ替えても行列式の値は変わらないが、 一方で、符号は反転することになるわけで・・・

$$\because\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}=-\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}$$

$x=-x$ の解は $x=0$ のみであるから、この行列式の値はゼロ。

ゼロ行を含む行列式はゼロ

$\bm o=0\bm o$ より、

$$\because\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm o\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}=0\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm o\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}=0$$

ある行の定数倍を別の行に加えても行列式の値は変化しない

$$\begin{aligned}\because &\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_j+c\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}\\ =&\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_j\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}+\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]c\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}\\ =&\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_j\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}+c\underbrace{\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}}_{=\,O}\\ =&\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_j\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}\end{aligned}$$

次数の低下(行方向)

1列目が $a_{11}$ を残してすべてゼロであるとき、 行列式を次数の1つ小さな行列式で表せる。

$$\begin{vmatrix}a_{11}&a_{12}&\dots&a_{1n}\\0&a_{22}&\dots&a_{2n}\\\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\0&a_{n2}&\dots&a_{nn}\end{vmatrix}=a_{11}\begin{vmatrix}a_{22}&\dots&a_{2n}\\\vdots&\ddots&\vdots\\a_{n2}&\dots&a_{nn}\end{vmatrix}$$

証明

(左辺)

$$=\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}a_{2p_2}\dots a_{np_n}$$

ここで、元の行列の形から $a_{k1}$ は $k\ne 1$ の時にゼロとなる。

一方、$p_1\ne 1$ の項では $p_2\sim p_n$ のうちどれかが必ず 1 になる。

$p_k=1$ とすると、積 $a_{2p_2}\dots a_{np_n}$ の中に $a_{kp_k}=a_{k1}$ ただし $k\ne 1$ が現れるから、そのような項はすべて消えてしまう。

結果として、$p_1=1$ の項のみが残されて、

$$\begin{aligned}&=\sum_{(1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{11}a_{2p_2}\dots a_{np_n}\\&=a_{11}\sum_{(1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{2p_2}\dots a_{np_n}\end{aligned}$$

ここで、$n$ 次の順列 $(1\ p_2\ \dots\ p_n)$ と $n-1$ 次の順列 $(p_2\!-\!1\ \dots\ p_n\!-\!1)$ とは同じ転倒数を持ち、符号も等しい。

さらに、前者が可能な値すべてを動くとき、後者は $n-1$ 次の順列全てを動く。

したがって、$(p_2\!-\!1\ \dots\ p_n\!-\!1)=(p'_1\ \dots\ p'_n)$ と書けば、

$$=a_{11}\sum_{(p'_1\ \dots\ p'_{n-1})}\varepsilon(p'_1\ \dots\ p'_{n-1})a_{2(p'_1+1)}\dots a_{n(p'_{n-1}+1)}$$

$$=\text{(右辺)}$$

  • 上三角行列の行列式は対角成分の積に等しい(次数の低下を繰り返せばよい)

    $\begin{vmatrix}a_{11}&a_{12}&\dots&a_{1n}\\&a_{22}&\dots&a_{2n}\\&&\ddots&\vdots\\O&&&a_{nn}\end{vmatrix}=a_{11}a_{22}\dots a_{nn}$

  • 単位行列の行列式は1

    $|I|=1$

3.3 行に対する基本変形と行列式

ある行を c 倍

$|P_i(c)A|=c|A|$

$A=I$ の時 $|P_i(c)|=c$ より $|P_i(c)A|=|P_i(c)||A|$ とも書ける

ある行に別の行の c 倍を加えると行列式は変化しない

$$|P_{ij}(c)A|=|A|$$

$A=I$ の時 $|P_{ij}(c)|=1$ より $|P_{ij}(c)A|=|P_{ij}(c)||A|$ とも書ける

ある行と別の行とを入れ替えると行列式は反転

$$|P_{ij}A|=-|A|$$

$A=I$ の時 $|P_{ij}|=-1$ より $|P_{ij}A|=|P_{ij}||A|$ とも書ける

基本行列と行列式

上で見た内容から、以下の2つの性質が明らかになった。

  • 基本行列の行列式はゼロではない
  • $P$ が基本行列の時 $|PA|=|P||A|$

正則行列と行列式 (補題3.7)

任意の正則行列 $P$ は基本行列の積で書けるから、

正方行列 $A$ に正則行列 $P$ を左から掛ける時

$$|PA|=|P_k\cdots P_2P_1A|=|P_k||P_{k-1}|\cdots|P_2||P_1||A|=|P||A|$$

すなわち行列 $P, A$ の積の行列式 $|PA|$ は、 行列式 $|P|,|A|$ の積で表わされる。

正則行列と行列式

  • 正則行列の行列式はゼロではない

$$\because|A|=|P_k\cdots P_2P_1|=|P_k||P_{k-1}\cdots P_2P_1|=|P_k||P_{k-1}|\cdots|P_2||P_1|\ne 0$$

  • $A$ が正則でない場合 $|A|=0$

$\because PA=X$ を階段行列とすると、$X$ はゼロ行ベクトルを含むため、 $|PA|=|X|=0$

一方、(1) より $|PA|=|P||A|$ であるから $|A|=0$

  • 正則性の判定 : 以下はすべて同値な条件となる (定理3.9)
  • $A$ が正則であること
  • $\text{rank}\, A=n$
  • $|A|\ne 0$
  • 逆行列の行列式 $|A^{-1}|=\frac{1}{|A|}$
    ∵ $A^{-1}A=I$ より $|A^{-1}|\,|A|=|I|=1$

積の行列式は行列式の積で表せる (定理3.8)

$A,B$ を正方行列とすれば $|AB|=|A||B|$ が成り立つ。

証明

(1) $A$ が正則な場合は既に証明した

(2) $A$ が正則でない場合

$|A|=0$ であり、また $AB$ も正則でないため $|AB|=0$

したがって、$|AB|=|A||B|=0$

行列の転置と行列式

基本行列の転置をとっても行列式は変化しない

$P_i(c)$ および $P_{ij}$ は対称行列であるから自明。

$P_{ij}(c)$ については、

$$\left|{}^t\! P_{ij}(c)\right|=\left|P_{ji}(c)\right|=1=\left|P_{ij}(c)\right|$$

転置をとっても行列式は変化しない

$A$ が正則でなければ ${}^t\! A$ も正則でないので、 $|A|=|{}^t\! A|=0$

$A$ が正則ならば、基本行列の積で書けて

$$\begin{aligned}&|{}^t\! A|=|{}^t\! (P_k\dots P_2P_1)|=|{}^t\! P_1 {}^t\! P_2\dots {}^t\! P_k|=|{}^t\! P_1||{}^t\! P_2|\dots|{}^t\! P_k|\\&=|P_1||P_2|\dots|P_k|=|P_1P_2\dots P_k|=|A|\end{aligned}$$

列に対する性質

転置に対する定理のおかげで、行に対する性質はすべて列に対しても成立する。

  1. { 行 or 列 } に対する多重線形性
  2. { 行 or 列 } に対する交代性
  3. { 行 or 列 } に対する基本変形
    1. ある { 行 or 列 } を c 倍すると行列式も c 倍
    2. ある { 行 or 列 } に別の { 行 or 列 } の c 倍を加えると行列式は変化しない
    3. ある { 行 or 列 } と別の { 行 or 列 } とを入れ替えると行列式は反転
  4. 次数の低下({ 行 or 列 }方向)
  5. { 行 or 列 } に対するその他の性質
    1. 同じ値を持つ { 行 or 列 } が複数存在すると行列式はゼロ
    2. ゼロの { 行 or 列 } を含む行列式はゼロ

次数の低下の一般公式

ある行、あるいはある列が、1つの要素を除いてゼロの時、要素の添え字に依存する符号を付けて次数を低下できる。

$$\begin{vmatrix}A&\vdots&B\\\bm o&a_{ij}&\bm o\\C&\vdots&D\end{vmatrix}=\begin{vmatrix}A&\bm o&B\\\dots&a_{ij}&\dots\\C&\bm o&D\end{vmatrix}=(-1)^{i+j}a_{ij}\begin{vmatrix}A&B\\C&D\end{vmatrix}$$

行方向に $i-1$ 回、列方向に $j-1$ 回、行・列を入れ替えることで、それぞれ

$$=(-1)^{i+j-2}\begin{vmatrix}a_{ij}&\bm o&\bm o\\\vdots&A&B\\\vdots&C&D\end{vmatrix}$$ $$=(-1)^{i+j-2}\begin{vmatrix}a_{ij}&\dots&\dots\\\bm o&A&B\\\bm o&C&D\end{vmatrix}$$

の形にでき、$(-1)^{-2}=1$ を用い、また (1,1) 要素を前に出せば上記公式を得る。

一般の行列式の求め方

  • 行および列に対する基本変形で、ある行または列を掃き出す
  • 次数を低下する

を繰り返すことで、大きな行列に対する行列式の値を計算できる。

やってみるとわかるが、$n$ が大きいときには行列式の定義に従って $n!$ 個の積を計算するよりもこの方法の方が計算が楽である。

3.4 行列式の展開

余因子

ある行列 $A$ を、$a_{ij}$ を中心に次のように分割する。

$$\begin{aligned}|A|=\begin{vmatrix}B&\bm ?&C\\\bm ?&a_{ij}&\bm ?\\D&\bm ?&E\end{vmatrix}\end{aligned}$$

$i$ 行目と $j$ 列目を除いてできる行列式に符号を付けた

$$\tilde a_{ij}=(-1)^{i+j}\begin{vmatrix}B&C\\D&E\end{vmatrix}$$

を、$A$ の $(i,j)$ 余因子と呼ぶ。

余因子を使うと、次数の低下を次のように書ける。

$$\begin{vmatrix}B&\bm o&C\\\bm ?&a_{ij}&\bm ?\\D&\bm o&E\end{vmatrix}=\begin{vmatrix}B&\bm ?&C\\\bm o&a_{ij}&\bm o\\D&\bm ?&E\end{vmatrix}=a_{ij}\tilde a_{ij}$$

$\tilde a_{ij}$ は $i$ 行目、$j$ 列目を含まない、すなわち $a_{ij}$ 自身の値に依存しないことに注意せよ。

$i$ 行目に対する展開

$$ \begin{aligned} |A|=&\begin{vmatrix}&&\text{\Large *}&&\\[10pt]a_{i1}&a_{i2}&a_{i3}&\dots&a_{in}\\[10pt]&&\text{\Large *}&&\\\end{vmatrix}\\ =& \begin{vmatrix} &&\text{\Large *}&&\\[10pt] a_{i1}&0&0&\dots&0\\[10pt]&&\text{\Large *}&&\\ \end{vmatrix}+\begin{vmatrix} &&\text{\Large *}&&\\[10pt] 0&a_{i2}&0&\dots&0\\[10pt] &&\text{\Large *}&&\\ \end{vmatrix}+\dots+\begin{vmatrix} &&\text{\Large *}&&\\[10pt] 0&0&0&\dots&a_{in}\\[10pt] &&\text{\Large *}&&\\ \end{vmatrix}\\ =&a_{i1}\tilde a_{i1}+a_{i2}\tilde a_{i2}+\dots+a_{in}\tilde a_{in}\\ =&\sum_{k=1}^n a_{ik}\tilde a_{ik}\hspace{1cm}\text{(任意の $i$ に対して成り立つ)} \end{aligned}$$

j 列目に対する展開

$$|A|=\sum_{k=1}^n a_{kj}\tilde a_{kj}\hspace{1cm}\text{(任意の $j$ に対して成り立つ)}$$

ゼロとなる和

$i\ne i'$ あるいは $j\ne j'$ の時、

$$\sum_{k=1}^n a_{i'k}\tilde a_{ik}=0\hspace{1cm}\text{(任意の $i\ne i'$ に対して成り立つ)}$$

$$\sum_{k=1}^n a_{kj'}\tilde a_{kj}=0\hspace{1cm}\text{(任意の $j\ne j'$ に対して成り立つ)}$$

となる。

なぜならこれらは、

  • $A$ の $i$ 行目に $i'$ 行目と同じ行をコピーした
  • $A$ の $j$ 列目に $j'$ 行目と同じ行をコピーした

行列の行列式を、それぞれ $i$ 行目、$j$ 行目で展開した形であるためだ。

$$|A'|=\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a'_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a'_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}=0$$

$\tilde a_{ij}$ は $i$ 行目の成分も $j$ 行目の成分も含まないから、$A$ の $(i,j)$ 余因子と、 その $i$ 列目あるいは $j$ 列目を入れ替えた $A'$ の $(i,j)$ 余因子とは等しいことが重要である。

例:

$A=\begin{bmatrix}a&b&c\\d&e&f\\g&h&i\end{bmatrix}$ のとき、

$$ \begin{aligned} \begin{vmatrix} a&b&c\\ d&e&f\\ d&e&f \end{vmatrix} &= \begin{vmatrix} a&b&c\\ d&e&f\\ d&0&0 \end{vmatrix}+ \begin{vmatrix} a&b&c\\ d&e&f\\ 0&e&0 \end{vmatrix}+ \begin{vmatrix} a&b&c\\ d&e&f\\ 0&0&f \end{vmatrix}\\ &=d(-1)^{3+1}\begin{vmatrix}b&c\\e&f\end{vmatrix} {}+e(-1)^{3+2}\begin{vmatrix}a&c\\d&f\end{vmatrix} {}+f(-1)^{3+3}\begin{vmatrix}a&b\\d&e\end{vmatrix}\\ &=d\,\tilde a_{31}+e\,\tilde a_{32}+f\,\tilde a_{33}\\ &=a_{21}\tilde a_{31}+a_{22}\tilde a_{32}+a_{23}\tilde a_{33}\\ &=\sum_{j=1}^3a_{2j}\tilde a_{3j} \end{aligned} $$

2行目を3行目にコピーした行列式を元の $A$ の余因子で書けていることに注意。

余因子行列と逆行列

余因子行列

$$\tilde A={}^t [\tilde a_{ij}]=[\tilde a_{ji}]=\begin{bmatrix}\tilde a_{11}&\cdots&\tilde a_{n1}\\\vdots&\ddots&\vdots\\\tilde a_{1n}&\cdots&\tilde a_{nn}\end{bmatrix}$$

転置に注意せよ。

余因子行列の性質

$$A \tilde A=\left[\,\sum_{k=1}^n a_{ik}\tilde a_{jk}\,\right]=\Big[\,|A|\delta_{ij}\,\Big]$$

$$\tilde A A=\left[\,\sum_{k=1}^n \tilde a_{ki}a_{kj}\,\right]=\Big[\,|A|\delta_{ij}\,\Big]$$

すなわち、

$$A\tilde A=\tilde AA=|A|I$$

したがって、$|A|\ne 0$ であれば、

$$\frac{1}{|A|}\tilde A=A^{-1}$$

このように余因子行列を使うことで逆行列を閉じた式の形で表せるが、 この式を元に逆行列を求めようとすれば $n$ 次の行列式を1つと $n-1$ 次の行列式を $n^2$ 個求めなければならず非常に大変である。逆行列を手計算で求めるなら先に学んだ掃き出し法を用いるのがずっと便利である。

余因子行列を用いた逆行列の表式の主な用途は理論展開上のものである。

たとえば、この表式から $|A|\ne 0$ であれば $A$ が正則であることを再確認できる。

クラメル(Cramer)の公式

連立一次方程式を $A\bm x=\bm b$、その解を $\bm x=\begin{bmatrix}x_1\\x_2\\\vdots\\x_n\end{bmatrix}$ とすると、$|A|\ne 0$ のとき

$$x_1=\frac{|\bm b\ \bm a_2\ \bm a_3\ \dots\ \bm a_n|}{|A|}$$

$$x_2=\frac{|\bm a_1\ \bm b\ \bm a_3\ \dots\ \bm a_n|}{|A|}$$

・・・

$$x_n=\frac{|\bm a_1\ \bm a_2\ \bm a_3\ \dots\ \bm b|}{|A|}$$

と表せる。

証明

$A=\begin{bmatrix}a_1&a_2&\dots&a_n\end{bmatrix}$ のように列ベクトルに分割する。

$$\bm b=A\bm x=x_1\bm a_1+x_2\bm a_2+\dots x_n\bm a_n=\sum_{k=1}^n x_k\bm a_k$$

したがって、

$$ \begin{aligned} &\Big|\bm a_1\ \dots\ \bm a_{i-1}\ \bm b\ \bm a_{i+1}\ \dots\ \bm a_n\Big|\\ =&\,\left|\bm a_1\ \dots\ \bm a_{i-1}\ \left(\sum_{k=1}^n x_k\bm a_k\right)\ \bm a_{i+1}\ \dots\ \bm a_n\right|\\ =&\,\sum_{k=1}^n x_k\Big|\bm a_1\ \dots\ \bm a_{i-1}\ \bm a_k\ \bm a_{i+1}\ \dots\ \bm a_n\Big|\\ =&\,x_i\Big|\bm a_1\ \dots\ \bm a_{i-1}\ \bm a_i\ \bm a_{i+1}\ \dots\ \bm a_n\Big|\\ =&\,x_i|A|\\ \end{aligned} $$

両辺を $|A|$ で割れば与式を得る。

コメント

余因子による逆行列の表式と同様、方程式の解を求める際にクラメルの公式を使うことに計算上のメリットは無い。

コメント




基底変換において、基底変換行列の持つ行列式の物理的な意味について

筑波院生? ()

いつも拝見させていただいています。
通常の物理量の変換には正規直交基底である変換行列を用いて変換しますが、もしそれが非正規直交基底による物理量の変換になると、物理的にどんな意味があるでしょうか。
非正規直交基底では行列式が1にならないので、変換後の基底に張られる空間の大きさが変換前のそれと一致しないと思います。それが変換前後でのエネルギー保存則を崩しているかと考えているのですが、この認識は正しいでしょうか。

  • この話は量子力学を想定したものでしょうか? 「物理量の変換」というのが何を表しているのかを読み取れず、回答しづらいのですが、もしかすると「物理量を表す演算子の行列表現」が基底変換によりどのように変化するかを考えるような話でしょうか? 量子力学で正規直交系にならない基底に対して行列表現を求めるケースが思い浮かばずにいます。ですが、そのこととエネルギー保存則との関係はなさそうに感じます。もう少し具体的な話が出てくればコメントできるかもしれません。 -- 武内(管理人)?

Counter: 117060 (from 2010/06/03), today: 3, yesterday: 0