線形代数I/実対称行列の対角化 のバックアップ(No.1)

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線形代数I

培風館「教養の線形代数(五訂版)」に沿って行っている授業の授業ノート(の一部)です。

実対称行列の対角化

実対称行列の固有値は必ず実数

準備:

任意の複素ベクトル \bm z に対して、 {}^t\bar{\bm z}\bm z は実数であり、 {}^t\bar{\bm z}\bm z\ge 0 。等号は \bm z=\bm 0 の時のみ成り立つ。

&math( \because \bm z=\begin{bmatrix}z_1\\z_2\\\vdots\\z_n\end{bmatrix}, \bar{\bm z}=\begin{bmatrix}\bar z_1\\\bar z_2\\\vdots\\\bar z_n\end{bmatrix}, {}^t\!\bar{\bm z}=\begin{bmatrix}\bar z_1&\bar z_2&\cdots&\bar z_n\end{bmatrix} );

&math( {}^t\!\bar{\bm z} \bm z&=\bar z_1 z_1 + \bar z_2 z_2 + \dots + \bar z_n z_n\\ &=\|z_1\|^2 + \|z_2\|^2 + \dots + \|z_n\|^2 \in \mathbb R\\ );

右辺は明らかに非負で、ゼロになるのは \bm z=\bm 0 の時のみである。

証明:

A\bm z=\lambda \bm z の時、

&math( &\lambda\,{}^t\!\bar{\bm z} \bm z= {}^t\!\bar{\bm z} (\lambda\bm z)= {}^t\!\bar{\bm z} (A \bm z)= {}^t\!\bar{\bm z} A \bm z= {}^t\!\bar{\bm z}\, {}^t\!A \bm z= {}^t\!\bar{\bm z}\, {}^t\!\bar A \bm z=\\ &{}^t\!(\bar A\bar{\bm z}) \bm z= \overline{{}^t\!(A{\bm z})} \bm z= \overline{{}^t\!(\lambda{\bm z})} \bm z= \overline{(\lambda{}^t\!\bm z)} \bm z= \bar\lambda\,{}^t\!\bar{\bm z} \bm z );

&math( (\lambda-\bar\lambda)\,{}^t\!\bar{\bm z} \bm z=0 );

\bm z\ne \bm 0 の時、 {}^t\!\bar{\bm z} \bm z\ne 0 より、 \lambda=\bar \lambda を得る。

複素内積、エルミート行列

実は、複素ベクトルを考える場合、内積の定義は (\bm x,\bm y)={}^t\bm x\bm y ではなく、 (\bm x,\bm y)={}^t\bar{\bm x}\bm y を用いる。

そうすることで、 |z|^2=(\bm z,\bm z)\ge 0 がノルムとして定義される。

このとき、 (A\bm x,\bm y)=(\bm x,A\bm y) を満たすのは対称行列 ( A={}^tA ) ではなく、 エルミート行列 A={}^t\!\bar A である。対称行列は実エルミート行列と言っても良い。

対称行列に限らず、エルミート行列はすべて固有値が実数となる。

対称行列では固有ベクトルも実数となる。
複素エルミート行列の場合、固有ベクトルは実数にはならない。

以下は実数の範囲のみを考える。

実対称行列では、異なる固有値に属する固有ベクトルは直交する

A\bm x=\lambda \bm x, A\bm y=\mu \bm y かつ \lambda\ne\mu の時、

\lambda(\bm x,\bm y)=(\lambda\bm x,\bm y)=(A\bm x,\bm y)=(\bm x,\,{}^t\!A\bm y)=(\bm x,A\bm y)=(\bm x,\mu\bm y)=\mu(\bm x,\bm y)

すなわち、

(\lambda-\mu)(\bm x,\bm y)=0

\lambda-\mu\ne 0 より、

(\bm x,\bm y)=0

を得る。

実対称行列の直交行列による対角化

(1) 固有値がすべて異なる場合、固有ベクトルは自動的に直交するので、 大きさが1になるように選ぶことにより ( \bm r_k=\frac{1}{|\bm p_k|}\bm p_k )、

R=\Bigg[\bm r_1\ \bm r_2\ \dots\ \bm r_n\Bigg]

は直交行列となり、この R を用いて、

R^{-1}AR

を対角行列にできる。

(2) 固有値に重複がある場合にも、

対称行列では、重複する固有値に属する1次独立な固有ベクトルを重複度分だけ見つけることが常に可能
(証明は (定理6.8) にあるが、ここでは省略)

それらをグラム・シュミットの直交化法により正規直交化し、他の固有ベクトルと合わせれば、 やはり直交行列 R が得られる。

A=\begin{bmatrix}2&1&1\\1&2&1\\1&1&2\end{bmatrix}

まず固有値を求める

&math( |A-\lambda I|&=\begin{vmatrix}2-\lambda&1&1\\1&2-\lambda&1\\1&1&2-\lambda\end{vmatrix}\\ &=\begin{vmatrix}4-\lambda&4-\lambda&4-\lambda\\1&2-\lambda&1\\1&1&2-\lambda\end{vmatrix}\hspace{1cm}\leftarrow\text{2,3行目を1行目に加えた}\\ &=(4-\lambda)\begin{vmatrix}1&1&1\\1&2-\lambda&1\\1&1&2-\lambda\end{vmatrix}\\ &=(4-\lambda)\begin{vmatrix}1&0&0\\1&1-\lambda&0\\1&0&1-\lambda\end{vmatrix}\\ &=(1-\lambda)^2(4-\lambda)\\ );

\lambda=1,4 ただし 1 は2重解。

I. \lambda=1 の時、

&math( (A-\lambda I)\bm x&= \begin{bmatrix}1&1&1\\1&1&1\\1&1&1\end{bmatrix} \begin{bmatrix}x\\y\\z\end{bmatrix}\\ );

\therefore x+y+z=0 掃き出せない y,z をパラメータ s,t と置けば x=-s-t

したがって、

&math( \begin{bmatrix}x\\y\\z\end{bmatrix}=s\begin{bmatrix}-1\\0\\1\end{bmatrix}+t\begin{bmatrix}0\\-1\\1\end{bmatrix} );

II. \lambda=4 の時、

&math( (A-\lambda I)\bm x&= \begin{bmatrix}-2&1&1\\1&-2&1\\1&1&-2\end{bmatrix} \begin{bmatrix}x\\y\\z\end{bmatrix}\\ );

&math( &\begin{bmatrix}-2&1&1&0\\1&-2&1&0\\1&1&-2&0\end{bmatrix}\\ &\sim \begin{bmatrix}1&-2&1&0\\-2&1&1&0\\1&1&-2&0\end{bmatrix}\\ &\sim \begin{bmatrix}1&-2&1&0\\0&-3&3&0\\0&3&-3&0\end{bmatrix}\\ &\sim \begin{bmatrix}1&-2&1&0\\0&1&-1&0\\0&1&-1&0\end{bmatrix}\\ &\sim \begin{bmatrix}1&0&-1&0\\0&1&-1&0\\0&0&0&0\end{bmatrix}\\ );

\therefore \begin{cases}x-z=0\\y-z=0\end{cases} 掃き出せない z をパラメータ s と置けば x=y=s

したがって、

&math( \begin{bmatrix}x\\y\\z\end{bmatrix}=s\begin{bmatrix}1\\1\\1\end{bmatrix} );

A が実対称行列であるため、

\begin{bmatrix}-1\\0\\1\end{bmatrix}\perp\begin{bmatrix}1\\1\\1\end{bmatrix} および \begin{bmatrix}0\\-1\\1\end{bmatrix}\perp\begin{bmatrix}1\\1\\1\end{bmatrix} が確認できる。

同じ固有値 \lambda=1 に属する \begin{bmatrix}-1\\0\\1\end{bmatrix} \begin{bmatrix}0\\-1\\1\end{bmatrix} とは直交しないので、これらをシュミットの 直交化法により直交させる。

\bm f_1=\begin{bmatrix}-1\\0\\1\end{bmatrix}

\bm e_1=\frac{1}{|\bm f_1|}\bm f_1=\frac{1}{\sqrt 2}\begin{bmatrix}-1\\0\\1\end{bmatrix}

&math(\bm f_2&=\begin{bmatrix}0\\-1\\1\end{bmatrix}-\left(\bm e_1,\begin{bmatrix}0\\-1\\1\end{bmatrix}\right)\bm e_1\\ &=\begin{bmatrix}0\\-1\\1\end{bmatrix}-\frac{1}{2}\begin{bmatrix}-1\\0\\1\end{bmatrix}\\ &=\frac{1}{2}\begin{bmatrix}1\\-2\\1\end{bmatrix});

\bm e_2=\frac{1}{|\bm f_2|}\bm f_2=\frac{1}{\sqrt 6}\begin{bmatrix}1\\-2\\1\end{bmatrix}

\bm f_3=\begin{bmatrix}1\\1\\1\end{bmatrix}

\bm e_3=\frac{1}{|\bm f_3|}\bm f_3=\frac{1}{\sqrt 3}\begin{bmatrix}1\\1\\1\end{bmatrix}

したがって、

R=\begin{bmatrix}-1/\sqrt 2&1/\sqrt 6&1/\sqrt 3\\0&-2/\sqrt 6&1/\sqrt 3\\1/\sqrt 2&1/\sqrt 6&1/\sqrt 3\end{bmatrix}

と置けば、 R は直交行列となる。

念のため確かめてみると、

&math({}^t\!RR&=\begin{bmatrix}-1/\sqrt 2&0&1/\sqrt 2\\1/\sqrt 6&-2/\sqrt 6&1/\sqrt 6\\1/\sqrt 3&1/\sqrt 3&1/\sqrt 3\end{bmatrix}\begin{bmatrix}-1/\sqrt 2&1/\sqrt 6&1/\sqrt 3\\0&-2/\sqrt 6&1/\sqrt 3\\1/\sqrt 2&1/\sqrt 6&1/\sqrt 3\end{bmatrix}\\ &=\begin{bmatrix}1/2+1/2&-1/\sqrt{12}+1/\sqrt{12}&-1/\sqrt{6}+1/\sqrt{6}\\-1/\sqrt{12}+1/\sqrt{12}&1/6+4/6+1/6&1/\sqrt{18}-2/\sqrt{18}+1/\sqrt{18}\\-1/\sqrt 6+1/\sqrt 6&1/\sqrt{18}-2/\sqrt{18}+1/\sqrt{18}&1/\sqrt 3+1/\sqrt 3+1/\sqrt 3\end{bmatrix}\\ &=\begin{bmatrix}1&0&0\\0&1&0\\0&0&1\end{bmatrix});

で、直交行列の条件 {}^t\!R=R^{-1} を満たしていることが分かる。

この R を使って、 A

R^{-1}AR=\begin{bmatrix}1&0&0\\0&1&0\\0&0&4\end{bmatrix}

の形に直交化される。

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