相互作用のない複数粒子のスレーター行列 のバックアップ差分(No.4)

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[[量子力学Ⅰ]]

* 目次 [#c27a89f2]

#contents

* 相互作用のない2つの粒子 [#ec9cc311]

例として、遠く離れた2つの水素原子の基底状態を考える。

2つの原子が遠く離れていれば、
原子核 1 の周りの電子の確率分布や、原子核 2 の周りの電子の確率分布は、
水素原子が1個しかない場合の確率分布と ほぼ等しいはずである。

孤立水素原子の基底状態の、時間によらない波動関数を &math(\varphi_0(\bm r));、
そのエネルギーを &math(\varepsilon_0); とすれば、

原子核 1 の周りの電子の存在確率は &math(|\varphi_0(\bm r-\bm R_1)|^2); と~
原子核 2 の周りの電子の存在確率は &math(|\varphi_0(\bm r-\bm R_2)|^2); と~

ほぼ等しいことになる。ただし、&math(\bm R_1,\bm R_2); は2つの原子核の位置を表す。

そこで、

 &math(\varphi_1(\bm r)=\varphi_0(\bm r-\bm R_1));~
 &math(\varphi_2(\bm r)=\varphi_0(\bm r-\bm R_2));

と置き、系全体の波動関数を

 &math(\Phi(\bm r_1,\bm r_2)=\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2));

としてみると、

 &math(|\Phi(\bm r_1,\bm r_2)|^2=|\varphi_1(\bm r_1)|^2|\varphi_2(\bm r_2)|^2);

となり、電子 1 の空間分布は電子 2 の位置によらず &math(|\varphi_1(\bm r_1)|^2); で表され、
電子 2 の空間分布は電子 1 の位置によらず &math(|\varphi_2(\bm r_2)|^2); で表される。

また、系のハミルトニアンは、

 &math(
\hat H&=
\underbrace{\left[-\frac{1}{2m}\bm \nabla_{\bm r_1}^2-\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{e^2}{|\bm r_1-\bm R_1|}\right]}
_{\displaystyle\hat H_1}
+\underbrace{\left[-\frac{1}{2m}\bm \nabla_{\bm r_2}^2-\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{e^2}{|\bm r_2-\bm R_2|}\right]}
_{\displaystyle\hat H_2}
+\,(その他を無視)\\
&=\hat H_1+\hat H_2
);

とできるから、上記波動関数に作用させれば

 &math(
\hat H\mathit\Phi(\bm r_1,\bm r_2)
&=\hat H_1\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)+\hat H_2\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\\
&=\big[\hat H_1\varphi_1(\bm r_1)\big]\varphi_2(\bm r_2)
 +\varphi_1(\bm r_1)\big[\hat H_2\varphi_2(\bm r_2)\big]\\
&=\varepsilon_0\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)+\varepsilon_0\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\\
&=2\varepsilon_0\mathit\Phi(\bm r_1,\bm r_2)
);

のように、エネルギー固有値 &math(E=2\varepsilon_0); の固有関数となっており、
時間を含まないシュレーディンガー方程式の解となっている。

このように、独立な1体シュレーディンガー方程式の解を単に掛け合わせた形はハートリー積と呼ばれ、
多体のシュレーディンガー方程式を満たす解を作る簡便な方法となる。

** フェルミ粒子の反対称性を満たす解 [#hb301541]

ただ、ハートリー積により作られた波動関数はボーズ粒子、フェルミ粒子に要求される(反)対称性 
&math(\Phi(\bm r_2,\bm r_1)=\pm\Phi(\bm r_1,\bm r_2)); を満たさない。
電子 1 が &math(\bm R_1); 付近に、電子 2 が &math(\bm R_2); 
付近に存在することを表す波動関数は不可弁別性を満たさないためだ。

正しい波動関数は、~
電子 1 が原子核 1 に、電子 2 が原子核 2 に束縛された状態と、~
電子 1 が原子核 2 に、電子 2 が原子核 1 に束縛された状態と、~
を、混ぜ合わせて得られる。

 &math(
&\Phi(\bm r_1,\bm r_2)=\ \ A\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)+B\varphi_2(\bm r_1)\varphi_1(\bm r_2)\\
=-\,&\Phi(\bm r_2,\bm r_1)=-A\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)-B\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_1)\\
);

 &math((A+B)\{\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)+\varphi_2(\bm r_1)\varphi_1(\bm r_2)\}=0);

 &math(A+B=0);

したがって、

 &math(\Phi(\bm r_1,\bm r_2)=A\big\{\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)-\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\big\});

&math(\varphi_1(\bm r)); と &math(\varphi_2(\bm r)); が正規直交している場合には、&math(A=-B=1/\sqrt 2); とすれば規格化された解となる。

 &math(\Phi(\bm r_1,\bm r_2)=\frac{1}{\sqrt 2}\big\{\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)-\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\big\});

上記で &math(\varphi_1); と &math(\varphi_2); との重なりを完全に無視できない場合にはこれらは直交せず、&math(A=-B=1/\sqrt 2); と取っても規格化は達成されない。このことは下でもう少し詳しく見る。

以上は1粒子の波動関数からフェルミ粒子の2粒子波動関数を作る標準的な手順である。

** ボーズ粒子の対称性を満たす解 [#hb301541]
** (参考)ボーズ粒子の対称性を満たす解 [#hb301541]

ボーズ粒子であれば、&math(A=B); と取ればよく、

 &math(\Phi(\bm r_1,\bm r_2)=A\big\{\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)+\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\big\});

などとすればよい。

** 確率分布 [#y920ce4b]

フェルミ粒子に対する解の確率分布について調べよう。

 &math(
\Big|\Phi(\bm r_1,\bm r_2)\Big|^2 &=A^2\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\big|^2+\big|\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\big|^2
-\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1^*(\bm r_2)\varphi_2^*(\bm r_1)
-\varphi_1^*(\bm r_1)\varphi_2^*(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)
\Big]\\
&=A^2\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\big|^2+\big|\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\big|^2
-2\,\mathrm{Re}\Big\{\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1^*(\bm r_2)\varphi_2^*(\bm r_1)\Big\}
\Big]\\
);

1粒子の時間によらない波動関数は常に実数に取れることを利用すると、

 &math(
\Big|\Phi(\bm r_1,\bm r_2)\Big|^2 
&=A^2\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\big|^2+\big|\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\big|^2
-2\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_2)
\Big]\\
);

ここから、粒子1の確率分布を求めると、

 &math(
P(\bm r_1)
&=\int\Big|\Phi(\bm r_1,\bm r_2)\Big|^2 d\bm r_2\\
&=A^2\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\big|^2\int\big|\varphi_2(\bm r_2)\big|^2d\bm r_2+\big|\varphi_2(\bm r_1)\big|^2\int\big|\varphi_1(\bm r_2)\big|^2d\bm r_2
-2\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_1)\int\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_2)d\bm r_2
\Big]\\
&=A^2\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\big|^2+\big|\varphi_2(\bm r_1)\big|^2
-2\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_1)\int\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_2)d\bm r_2
\Big]\\
);

&math(\varphi_1); と &math(\varphi_2); とが直交する場合には
&math(\int\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_2)d\bm r_2=0); であるから
第3項は消えて、

 &math(
P(\bm r_1)
&=\frac{1}{2}\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\big|^2+\big|\varphi_2(\bm r_1)\big|^2
\Big]\\
);

粒子の確率分布は単に &math(|\varphi_1|^2); と &math(|\varphi_2|^2); 
の平均値となる。

一方、&math(\varphi_1); と &math(\varphi_2); とが直交しない場合には、
&math(\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_1)); がゼロと見なせない領域、つまり
&math(\varphi_1); と &math(\varphi_2); とが両方ともゼロと見なせない領域で、
&math(|\varphi_1|^2); と &math(|\varphi_2|^2); の平均値からずれることになる。
((&math(\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_1)); がゼロと見なせない領域が存在することは、2つの粒子が相互作用をしないという仮定に反することになるため近似の精度には注意が必要である))

2つの波動関数を水素原子の基底状態を模して &math(\propto e^{-|\bm r-\bm R|});
と置き、&math(P(\bm r_1)); を計算した結果を以下に示す。

2つの波動関数が両方とも値を持つことになる中央部で
3項目がゼロでなくなり不自然に確率分布が小さくなっている他は、
おおむね1粒子波動関数を足し合わせた分布が再現されていることが分かる。

当然、&math(P(\bm r_2)); もこれとまったく同じ分布になる。

&ref(量子力学Ⅰ/多粒子系の波動関数とボゾン・フェルミオン/two-hydrogens-2d.png);

&ref(量子力学Ⅰ/多粒子系の波動関数とボゾン・フェルミオン/two-hydrogens-profile.png);

#collapsible(Mathematica ソース);

 LANG:mathematica
 phi[x_, q_, d_] := Exp[-Sqrt[(x - d)^2 + q^2]]
 
 phi1 = Compile[{x1, q1, d}, 
    NIntegrate[
     2 Pi q2 (phi[x1, q1, d] phi[x2, q2, -d] - 
        phi[x1, q1, -d] phi[x2, q2, d]),
     {x2, -100.0, 100.0}, {q2, 0, 100.0}]];
 
 image = Table[phi1[x, q, 3], {x, 0, 10, 0.1}, {q, 0, 5, 0.1}];
 
 ListDensityPlot[
  Flatten[Table[{x, q, 
     image[[Abs[Round[x/0.1]] + 1]][[Abs[Round[q/0.1]] + 1]]}, {x, -10,
      10, 0.1}, {q, -5, 5, 0.1}], 1], PlotRange -> All, 
  AspectRatio -> 1/2]
 
 profile = Table[phi1[x, 0, 3], {x, 0, 10, 0.01}];
 
 ListPlot[Table[{x, profile[[Abs[Round[x/0.01]] + 1]]}, {x, -10, 10, 
    0.01}], PlotRange -> All]
 
#collapsible();
* スレーター行列式 [#o506f6bd]
* スレーター行列 [#o506f6bd]

** フェルミオンの場合 = 行列式 [#g7013176]

上でフェルミオンの波動関数が以下の性質を持たなければならないことを学んだ。

- 座標を入れ替えると符号が反転する
- 同じ座標が2つ以上あるとゼロになる

これは行列式の以下の性質とよく似ている。

- 2つの行を入れ替えると符号が反転する
- 同じ行が2つ以上あるとゼロになる

実際、上で見た2電子の波動関数は(&math(\varphi_j); が正規直交系になっていれば)

&math(
 &math(
\Phi(\bm r_1,\bm r_2)
&=\frac{1}{\sqrt 2}\Big[\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)-\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\Big]\\
&=\frac{1}{\sqrt 2}\left|\begin{matrix}
&=\frac{1}{\sqrt 2}\det\begin{pmatrix}
\varphi_1(\bm r_1) & \varphi_1(\bm r_2) \\
\varphi_2(\bm r_1) & \varphi_2(\bm r_2) \\
\end{matrix}\right|
\end{pmatrix}
);

のように2×2の行列式の形に表せる。

一般の多粒子系においても、

&math(
 &math(
\Phi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)
&=\frac{1}{\sqrt{n!}}\left|\begin{matrix}
&=\frac{1}{\sqrt{n!}}\det\begin{pmatrix}
\varphi_1(\bm r_1) & \varphi_1(\bm r_2) & \dots  & \varphi_1(\bm r_n) \\
\varphi_2(\bm r_1) & \varphi_2(\bm r_2) &        & \vdots \\
\vdots             &                    & \ddots & \vdots \\
\varphi_n(\bm r_1) & \dots              & \dots  & \varphi_n(\bm r_n) \\
\end{matrix}\right|
\end{pmatrix}
);

とすることで、相互作用の無視できる &math(n); 個の粒子の波動関数を1粒子の波動関数から作れる。

この右辺に現れる行列式はスレーター行列式と呼ばれ、教科書ではその省略した書き方を次のように書いている。
この右辺に現れる行列はスレーター行列と呼ばれ、教科書ではその係数と行列式を合わせた省略系として次の記法を用いている。

&math(
 &math(
\Phi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)
&=|\,\varphi_1, \varphi_2, \dots, \varphi_n\,|
);

行列式の定義により、右辺には &math(n!); 個の項が現れる。
それぞれの項は、&math(n); 個の粒子をそれぞれどの1粒子状態に割り当てるか、
の割り当て方の1つ1つに対応し、その割り当て方は &math(n!); 通り存在する。
それらに適切な符号を付け、均等に加えたのがスレーター行列式である。
ただ、この書き方はわかりにくいので、以下ではこれを

 &math(
\Phi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)
&=\frac{1}{\sqrt{n!}}\det\big(\,\varphi_1, \varphi_2, \dots, \varphi_n\,\big)
);

と書くことにする。

行列式の定義により、これは下記のようにも書ける。

&math(
 &math(
\Phi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)
&=\frac{1}{\sqrt{n!}}\sum_{(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)}\sigma(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)
\varphi_1(\bm r_{p_1})\varphi_2(\bm r_{p_2})\dots\varphi_n(\bm r_{p_n})
);

※ボゾンの場合には各項の符号を与える &math(\sigma(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)); の部分を &math(+1); 
に置き換えればよい
右辺には &math(n!); 個の項が現れる。
それぞれの項は、&math(n); 個の粒子をそれぞれどの1粒子状態に割り当てるか、
の割り当て方の1つ1つに対応し、その割り当て方は &math(n); 
個の1粒子状態に &math(n); 個の粒子を割り当てる数として、&math({}_nC_n=n!); 通り存在する。
それらに適切な符号を付け、均等に加えたのがスレーター行列式である。
&math(\set{\varphi_k}); が正規直交系であれば、&math(n!); 個の項も正規直交系をなすため
頭の &math(1/\sqrt{n!}); により正規化がなされる。

※正確には1粒子波動関数は空間座標とスピン座標の関数である

※本来は1粒子波動関数は空間座標とスピン座標の関数であることに注意せよ

** (参考)ボゾンの場合 = パーマネント [#y3803f08]

ボゾンの場合には各項の符号を与える &math(\sigma(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)); の部分を &math(+1); 
に置き換えれば、粒子の入れ替えで値の変わらない形が得られる。
行列式(デターミナント)に現れる符号をすべて &math(+1); に置き換えた形は
パーマネントと呼ばれるため、以下では次のように表す。

 &math(
\Phi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)
&=A\sum_{(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)}+1\cdot
\varphi_1(\bm r_{p_1})\varphi_2(\bm r_{p_2})\dots\varphi_n(\bm r_{p_n})\\
&=A\,\mathrm{perm}\,\big(\,\varphi_1, \varphi_2, \dots, \varphi_n\,\big)
);

&math(A); は規格化定数であるが、フェルミオンの場合と異なり &math(1/\sqrt{n!}); 
とはならない。

というのも、&math(k); 番目の1粒子状態に &math(n_k); 個の粒子が入るとすれば、
それらの因子をかける順番を変えてもまったく同じ形の関数になる。そのような項は
&math(\prod_k n_k!); 個あるから、それらをまとめて書けば、

 &math(
\Phi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)
&=A\sum_{代表の(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)} \Big(\prod_k n_k!\Big)\cdot
\varphi_1(\bm r_{p_1})\varphi_2(\bm r_{p_2})\dots\varphi_n(\bm r_{p_n})\\
&=A\Big(\prod_k n_k!\Big)\sum_{代表の(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)} 
\varphi_1(\bm r_{p_1})\varphi_2(\bm r_{p_2})\dots\varphi_n(\bm r_{p_n})
);

&math(\sum); 内の項は正規直交であり、項数は &math(\frac{n!}{\prod_k n_k!}); であるから、

 &math(
\int|\Phi|^2\,d\bm r_1d\bm r_2\cdots d\bm r_n
=A^2\Big(\prod_k n_k!\Big)^{\cancel 2}\frac{n!}{\cancel{\prod_k n_k!}}
=A^2 n!\prod_k n_k!=1
);

より、正規化した形は次のようになる。

 &math(
\Phi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)
&=\frac{1}{\sqrt{n!\prod_k n_k!}}\,\mathrm{perm}\,\big(\,\varphi_1, \varphi_2, \dots, \varphi_n\,\big)
);

** スレーター行列式のユニタリ変換 [#uddab98b]

あるユニタリ行列 &math(U=(u_{ij})); に対して

 &math(
\begin{pmatrix}
\chi_1(\bm r)\\
\chi_2(\bm r)\\
\vdots\\
\chi_n(\bm r)\\
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
u_{11}&u_{12}&\dots&u_{1n}\\
u_{21}&\ddots&&\vdots\\
\vdots&&\ddots&\vdots\\
u_{n1}&\dots&\dots&u_{nn}\\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\varphi_1(\bm r)\\
\varphi_2(\bm r)\\
\vdots\\
\varphi_n(\bm r)\\
\end{pmatrix}
);

の関係があるとき、

&math(|\,\chi_1,\chi_2,\dots,\chi_n\,|); と &math(|\,\varphi_1,\varphi_2,\dots,\varphi_n\,|); 
&math(\det\big(\,\chi_1,\chi_2,\dots,\chi_n\,\big)); と &math(\det\big(\,\varphi_1,\varphi_2,\dots,\varphi_n\,\big)); 
とは絶対値が1となる係数を除いて一致する。

なぜなら、

&math(
\begin{vmatrix}
\chi_1(\bm r_1)&\chi_2(\bm r_1)&\dots&\chi_n(\bm r_1)\\
\chi_1(\bm r_2)&\ddots&&\vdots\\
\vdots&&\ddots&\vdots\\
\chi_1(\bm r_n)&\dots&\dots&\chi_n(\bm r_n)\\
\end{vmatrix}&=\left|\ 
\begin{pmatrix}
\varphi_1(\bm r_1)&\varphi_2(\bm r_1)&\dots&\varphi_n(\bm r_1)\\
\varphi_1(\bm r_2)&\ddots&&\vdots\\
\vdots&&\ddots&\vdots\\
\varphi_1(\bm r_n)&\dots&\dots&\varphi_n(\bm r_n)\\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
u_{11}&u_{21}&\dots&u_{n1}\\
u_{12}&\ddots&&\vdots\\
\vdots&&\ddots&\vdots\\
u_{1n}&\dots&\dots&u_{nn}\\
\end{pmatrix}\ \right|\\
&=\begin{vmatrix}
\varphi_1(\bm r_1)&\varphi_2(\bm r_1)&\dots&\varphi_n(\bm r_1)\\
\varphi_1(\bm r_2)&\ddots&&\vdots\\
\vdots&&\ddots&\vdots\\
\varphi_1(\bm r_n)&\dots&\dots&\varphi_n(\bm r_n)\\
\end{vmatrix} \left|U^T\right|
);

であり、&math(\left|U^T\right|=|U|); はユニタリ行列の行列式なので絶対値は1となる。


* パウリの排他律2 [#f3d323a1]

スレーター行列式を作る &math(n); 個の1粒子波動関数のうち、
&math(\varphi_j); と &math(\varphi_k); とが同一であるとすると、

&math(
\Phi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)
&=\frac{1}{\sqrt{n!}}\left|\begin{matrix}
\varphi_1(\bm r_1) & \dots  & \varphi_1(\bm r_n) \\
\vdots&&\vdots\\
\varphi_j(\bm r_1) & \dots  & \varphi_j(\bm r_n) \\
\vdots&&\vdots\\
\varphi_k(\bm r_1) & \dots  & \varphi_k(\bm r_n) \\
\vdots&&\vdots\\
\varphi_n(\bm r_1) & \dots  & \varphi_n(\bm r_n) \\
\end{matrix}\right|
\begin{array}{l}
\\
\\
\leftarrow 同一の行になる\\
\\
\leftarrow 同一の行になる\\
\\
\\
\end{array}\\
&=0
);

行列式中にまったく同じ行が2つ現れるから、
行列式の値はゼロになる。

すなわち、2つ以上のフェルミ粒子が同じ1粒子量子状態を占めることはできない。

こちらが通常の意味でのパウリの排他律である。

正確には粒子の座標は空間座標とスピン座標の両方で指定されるため、
波動関数の空間座標部分が同一でも、スピン座標成分が異なれば同一とは見なされない。

* 質問・コメント [#bdffa9a9]

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