ハートレー法では1つのハートレー積で表せる関数の中から、最も小さいエネルギー期待値を与える関数を探すことにより、その形で表すことの可能な「最良の近似解」を求める。
時間に依らないシュレーディンガー方程式 †
個の同種粒子からなる系を考える。
ハミルトニアン
は運動エネルギー
、1体ポテンシャル
、
2体ポテンシャル
の和で表わせる。
ここで、
-
等は空間座標、
などはスピン座標、
などは空間座標とスピン座標を合わせた座標の意味
- 粒子は同種だから、
は
によらず同一
(異なるポテンシャルを感じる粒子は同種でない)
- 2行目の
は、同じ2つの電子に対してポテンシャルを重複して計算しないため
- 4行目では
とする代わりに、全て2回ずつ数えておいて最後に半分にした
多粒子波動関数モデル †
多粒子波動関数は
から作られる単一のハートレー積で表すものとする。
ただし、
は正規化された
個の1粒子関数(必ずしも直交しない)。
をどのように取れば多粒子系のエネルギー期待値を最小化できるか考える。
以下で見るとおり、試行関数を上記の形(1つのハートリー積)に置くこと自体が平均場近似で電子相関および交換相互作用を
無視することに繋がる。
エネルギーの期待値 †
変分法で波動関数を最適化するため、まずはエネルギーの表式を求めておく。
以下、項ごとに見ていく。
運動エネルギー †
が作用するのは
のみなので、
については積分が実行できて
が現れる。
1体エネルギー †
計算は上と同様に、
2体エネルギー †
の2つの積分が残る。
エネルギーの最小化 †
エネルギーの期待値は次のようになった。
これを最小化する
を求めることにより、
1つのハートレー積で表現可能な波動関数の最良解を探そう。
ただし、
が規格化されていることを前提としているので、
の条件下で
を変化させて
を最小化することになる。
そこで ラグランジュの未定係数法 を使う。
ラグランジュの未定係数法 †
正規性を表す条件式は
の
個あるので、
個の未定係数を
として、
を定義し、この
を
で微分しゼロと置く。
で微分した結果をゼロと置けば正規化条件が出てくるので、これは
として正規化された関数を用いることのみで成立する。
一方、
を変化させ、
とした時の変化を
として、任意の
に対して
となる、という条件式が求める1体方程式となる(
の形になる*1汎関数微分については例えば http://eman-physics.net/analyt... などを参考にすると良い)。
演算子のエルミート性 †
ここで、ある演算子
がエルミートであるとき、
すなわち、
のようにまとめられる。これを用いると、
これが任意の
に対して成立するためには、
の部分がゼロでなければならない。すなわち、
これが、
を求めるための1粒子方程式となる。
を含む項を2粒子相互作用の平均場ポテンシャルと解釈すれば
を通常の1粒子ハミルトニアンと捉えることも可能であるが、
この方程式の本質は1つのハートリー積で表せる波動関数の中から最良解を見つけるための方程式である。
多粒子波動関数を単一のハートレー積の形に限定することにより、
非常に自然な流れで「平均場近似」が得られることに注目せよ。