電磁気学/Faraday の電磁誘導

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電磁気学

目次

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§1−4 Faraday (ファラデー) の電磁誘導

faraday.png

電磁誘導 = コイル内の磁束の変化がコイルに起電力を生じる

$$ \underbrace{\phi\vphantom{\frac00}}_\text{起電力}=-\frac{d}{dt}\underbrace{N\vphantom{\frac00}}_\text{磁束} $$

磁束は磁力線の本数のことである。

$$ \underbrace{N}_\text{磁束}=\underbrace{B}_\text{磁束密度}\cdot \underbrace{S}_\text{面積} $$

起電力は経路に沿って電場を積分したもの。 この場合は回路に沿った閉ループ $C$ が経路となる。

$$ \phi=\oint_C \bm E\cdot d\bm r $$

回路が複数巻きのコイルである場合には、起電力の式に「巻き数$\,n\,$」を乗じる。

起電力 = 電位?

次のような疑問が生じるかもしれない。

  • 「電位」も電場を線積分したものではなかったか?
  • 「起電力」は「電位」とは違うのか?
  • 「電位」ならば一周して戻ってくればゼロになるはずだが、電磁誘導の法則はゼロにならないと言っている?!

後にしっかり学ぶように、「電位」は静電場でしか定義されないからここでは考えてはいけない。

動電磁場では「ベクトルポテンシャル」と「スカラーポテンシャル」からなる「電磁ポテンシャル」の出番。

上記はあくまで「起電力」である。

コイルが無くても

実はコイルが無くても、変動する磁場の周囲には電場が発生している!

  • そこにコイルがあれば抵抗に応じた電流が流れる
  • コイルがなければ抵抗が無限大なので電流は流れない
  • 起電力も簡単には測れない
  • 電場自体は測定可能

磁束?

ベクトルポテンシャル.png

「コイルを貫く磁束」は常に定義可能だろうか?$C$ が平面上にあれば良いけれど、 曲がっているような場合には「面積」はどのように取ればいいのだろう?

ここで、「磁力線は常にループになる」というのが効いてくる。

磁力線の作るループのうち、「閉曲線とからんでいるループの数」が閉曲線を貫く磁力線の本数である、とすれば「コイルを貫く磁束」は「面」を決めることなく明確に定義される。(空間にたくさんの磁力線がループを描いているところを想像せよ。その空間に自由に閉曲線を描き、その閉曲線を仮想的に手でつまんで持ち上げる。閉曲線と絡んだループのみがキーホルダーに下がったキーのように閉曲線に引きずられて取り出されるだろう。その絡んだ磁力線のループの数が「閉曲線を貫く磁束」にあたる。そう考えれば磁束を定義するために閉曲線を縁とする「面」を考える必要はない。)

数式で表す場合には以下のように考えればよい。コイルを表す閉曲線 $C$ に対して、$C$ を(ふち)とする2つの曲面 $S_1,S_2$ を考えれば、両者を貫く磁束は常に等しくなる。

$$ N_C=\int_{S_1}\bm B\cdot\bm ndS=\int_{S_2}\bm B\cdot\bm ndS $$

なぜなら、$S_1,S_2$ をつなげた閉曲面 $S=S_1-S_2$ およびその中の体積 $V$ を考えれば、

$$ \begin{aligned} &\int_{S_1}\bm B\cdot\bm ndS-\int_{S_2}\bm B\cdot\bm ndS\\ &=\int_S\bm B\cdot\bm ndS\\ &=\int_V\DIV\bm Bd^3x\\ &=0 \end{aligned} $$

であるためだ。最後に $\DIV \bm B=0$ を用いた。

磁力線は途中で途切れることなく常にループを描くから、 もし磁力線が $S_1$ を貫くけば、それは必ず $S_2$ も貫くのである。

磁束の値は縁の形状 $C$ のみにより定義され、磁束を積分する面の取り方に依らない事実を数式的にも示せたことになる。

Faraday の法則(積分形)

起電力及び磁束を積分で書けば、次式を得る。

$$ \underbrace{\oint_C \bm E\cdot d\bm r}_{\phi}=-\frac{d}{dt}\underbrace{\int_S\bm B\cdot\bm n dS}_{N} $$

Faraday の法則(微分形)

左辺に Stokes の定理 を適用すれば、

$$ \int_S \rot\bm E\cdot \bm n\,dS=-\int_S\frac{\PD\bm B}{\PD t}\cdot\bm n\,dS $$

$S$ は任意に取れるため、

$$ \rot\bm E(\bm x,t)=-\frac{\PD}{\PD t}\bm B(\bm x,t) $$

この式を見て、「$\bm E$ を一周積分した起電力が磁束の時間変化に等しい」と読めるように復習しておくこと。

質問・コメント




誘導電場の強弱

()

そこにコイルがあれば抵抗に応じた電流が流れる
とありますが質問です。
コイルに抵抗を繋ぎ、コイル内を貫く磁場を変化させたとします。この時、誘導電場自体は空間に一様に分布してるということでしょうか?
仮に一様に分布してると仮定すると、
オームの法則i=ρEによれば、この回路に等しい電流が流れるためには抵抗に応じてEが変化する必要があり、矛盾してるような気がします。
つまり私の考えではコイルの導線上は無視できるほどの誘導電場しか無く、抵抗内の電子に対してのみ大部分の誘導電場が割かれていることになるのですが、これはこれでおかしいと自分でも思ってしまいます。
どう解決すれば良いでしょうか。

  • 「コイルの導線上は無視できるほどの誘導電場しか無く、抵抗内の電子に対してのみ大部分の誘導電場が割かれている」という考えで良いのだと思います。分かりやすくするため抵抗を繋ぐ代わりに一か所を切断したコイルを考えます。誘導電場によりコイル内の電子が少し動くと切断点の一方に正の、もう一方に負の電荷が溜まります。それだけだとコイルを構成する導体内の電場をすべて打ち消すことはできませんが、同様に少しでも導体内に電場があれば電子が動きますのでその結果ちょうど導体内の電場が打ち消されるよう導体表面に絶妙に電荷が分布する状態が実現します。コイルの起電力を電荷の偏りによる電場が打ち消す結果として(直流)電流が流れない、という状況が出来上がるわけです。逆に、ちょうど打ち消すようになるまでは電子が移動するので、磁場が周期的に変わるなら一端が切断されていても交流電流は流れます。切断点の静電容量が大きければこの電流は顕著になります。「アンテナ」はこれと似たような原理で周期的に変化する電磁波を交流信号として受け取ります。 -- 武内(管理人)?

レンツの法則

匿名? ()

いつも拝見させていただいています。
レンツの法則についてなのですが、磁束の変化を妨げる方向に電圧が発生するのはわかりますが、なぜそれが磁束の変化を妨げる方向なのか不思議になってきました。なぜ磁束の変化する方向へ電圧は発生しないのか、そういえば説明できないなと思いまして、質問させていただきました。
どのレンツの法則の説明も、V=-dΨ/dtからの説明で、なぜマイナスなのか、がないので気になりました。ご教授いただけると幸いです。

  • 量子力学Ⅰ/波動関数の解釈#fd91a38a ← こちらに、近代科学の方法論の基本的スタンスとして、科学は「自然がどうなっているかを調べ、そこから未来の観測結果を予測するもの」であり、「実験事実により検証できない内容については考えない」すなわち「どうして自然がそうなっているのかには答えない」という内容を書きました。この質問は少しそういうニュアンスを含んでいるようにも感じますが、、、一方で、もしこの起電力の方向が逆だったらどうなるかを考えることで疑問の解消ができるかもしれないとも思いました。マクスウェル方程式の対応する符号を逆転させると・・・エネルギーの保存も運動量の保存もなりたたず、物理学の法則として矛盾だらけになってしまいます。回路学と絡めれば、本来コイルは高周波ほど通しにくい素子ですが、符号が逆転してしまえば「自ら高周波を発生する素子」になってしまいそうです。ということで、少なくとも符号が逆にはなってしまうとまずい理由については説明できるのではないかと思います。 -- 武内(管理人)?
  • マイナスが付く理由は、 -- 辻 峰男?
  • マイナスが付く理由は、磁束と起電力の測り方を決めないと分からないと思います。磁束は面積分するときの法線ベクトルの向き、起電力は線積分するときの接線ベクトルの向きが測定の向きです。これが右手系になっていればマイナスが付きます。しかし、本来測定の向きは自由に選べるので、マイナスが付かない式も成り立つと思います。 -- 辻 峰男?
  • すみません。先ほどのコメントで右手系は右ねじの関係の誤りです。 -- 辻 峰男?
  • おっしゃる通り「測定の向きを逆」にするとファラデーの法則からマイナスが消えますが、今度はアンペールの法則の方にマイナスが出てくることになり、「磁束の変化を妨げる方向に電圧が発生する」という事実は変わらないことになりますね。 -- 武内(管理人)?

添付ファイル: filefaraday.png 682件 [詳細]

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