線形代数I
ベクトルとは?†
- 縦数ベクトル:
 
- 横数ベクトル:
 
- 幾何ベクトル:
 
- そのほかにも様々なものをベクトルと見なせる
 
直交座標の成分表示で幾何ベクトルを数ベクトルと1対1に対応させられる。
ベクトル空間とベクトル†
上記のように、
- 
 (スカラー倍)
 
- 
 (和)
 
が内部で定義されている集合を「ベクトル空間」と言い、
その要素を「ベクトル」と言う。
詳しい定義は線形代数学IIで学ぶことになる。
集合について†
集合とは : 「要素」を含む物
集合については、ある要素を含むか、含まないか、が主な興味となる。
 を集合、
 を要素とすると、
- 
 : 
 は 
 の3つの要素からなる集合である
 
- 
 : 
 が 
 に含まれる
 
- 
 : 
 なら 
 である
- すなわち 
 が 
 に含まれる
 
- あるいは 
 が 
 の部分集合である
 
 
- 
 : 
 かつ 
 
演算が「内部で定義されている」ということ†
たとえば、
 という集合を考える。
これは2つのベクトルを含む「ベクトルの集合」であるが、スカラー倍や和に対して「閉じていない」。
例:
したがって、こういう集合はベクトル空間とは言わない。
n 次元数ベクトル空間†
- 実数の集合を 
 
- 
 次元(縦)実数ベクトル空間を 
 
と書くことにする。
以下では主に実数ベクトル空間について学ぶが、これらを
- 複素数の集合 
 
- 
 次元複素数の集合 
 
に置き換えても、すべての定理が成立することに注意せよ。
1次結合(線形結合)†
の形を 
 の「一次結合」と言う。
例1:
 の一次結合: 
, 
, 
例2:
 を 
 の一次結合で表せるか?という問題は、
を満たす 
 は存在するか?という問題と同値である。
例3:
任意のベクトル 
 は、
基本ベクトル 
 の一次結合として、
と表せる。これを「成分表示」と呼ぶ。
一次独立†
与えられた 
 に対して、
となるのが、
 の時しかありえないなら、
「
 は1次独立である」と言う。
- どんなベクトルが与えられても
 なら条件を満たすこと
 
- 与えられたベクトルによっては
 でなくても条件を満たすこと
 
に注意せよ。
例:
一次従属†
一次独立でないことを「一次従属である」と言う。
例:
 は一次独立か、一次従属か?
例:
 が一次従属であるとき・・・
一次独立と行列の階数†
一次独立であるという条件と、
 の解が 
 しか存在しないという条件は同値。
方程式の一般解が1以上の自由度を持つ、とも同値だから
(
 は常に解であることに注意)、
- 
 が一次独立
 
- それらを並べた行列 
 の階数が列数 
 より小さい
 
が同値な条件となる。
一次独立かどうかを調べるには rank を求めてベクトルの数と比べればよい。
例:
 が一次独立になる条件を求めよ。
したがって、
 の時に一次従属であり、そうでなければ一次独立となる。
A が正方の時†
以下の条件は同値である。
- 
 が一次独立
 
- 
 の解が 
 のみ
 
- 
 が正則
 
一次独立かどうかを調べるには 
 を計算すればよい。
一次独立の重要な性質†
● ゼロベクトルを1つでも含めば一次従属
● 
 が一次従属なら、そこにいくつかベクトルを加えた
 も一次従属である
∵はじめの 
 列のうち1列でも掃き出せなければ、
全体の rank が列数よりも小さくなるため。
(別)
 となる非ゼロの係数が存在するなら、
 であり、
この係数は全てがゼロではないから、全体も一次従属となる。
● 
 が一次独立なら
その部分集合も一次独立である
∵上の定理の対偶になっている
● 
 次元ベクトルを 
 本以上集めたら必ず一次従属になる
∵対応する行列 
 のランクは行数 
 より大きくならないから。
● 一次独立と「張る空間」
- 
 本のベクトルが一次独立ならば、その一次結合は 
 次元空間を張る
 
- ベクトルが 
 本あってもそれらが一次従属ならば、その一次結合が 
 次元空間を張ることはない
(
 次元 
 を張ることになる) 
線形空間(ベクトル空間)†
線形代数IIで詳しく学ぶ。線形代数Iでは上で扱った程度に止める。
線形写像と表現行列†
 を与えると 
 を返すような関数
 を考える。
すなわち 
 は様々な物が考えられるが、任意の 
 に対して、必ず1つだけ 
 が決まることが重要である。このようなベクトルの関数を「写像」と呼ぶこともある。
例:
, 
の時、例えば
として定義される 
 は、
 を1組決めれば 
 が決まるため、
 の写像となる。
線形写像†
ある写像 
 が線形であるとは、任意の 
 および 
 に対して、
が成り立つことを言う。
- 
 は線形か? という問には 
 を確かめればよい
 
すぐ分かるように
- 
 
となる。
線形写像は f(x)=Ax の形に書ける†
スカラー関数 
 が線形ならば、
 であるから、
 と置くことで 
 の形に書けることが分かる。
同様に、
 が線形なら 
 と書ける。
∵ 任意のベクトルを 
として基本ベクトルの和で表せば、
そこで、
 と置けば、
逆に 
 と書ければこれは必ず線形となる。
- 
 を 
 の表現行列と呼ぶ
 
- 
 を 
 の定める線形写像と呼ぶ
 
例:
次の条件を満たす線形写像 
 の表現行列を求めよ。
(解答)
より、
合成写像†
のとき、その合成写像を定義できる。
(
 などと書く)
その表現行列は、
 であれば、
 より 
 である。
例:
2次元ベクトル 
 をx座標方向に3倍してから反時計回りに45度回転する線形写像を考える。
x方向に3倍する:
45度回転する:
合成すると、