はじめての誤差論 のバックアップ(No.2)

更新


概要

以下は、筑波大学応用理工学類の1年生向けに開講されている 「物理学実験」という授業のオリエンテーションをかねて 1時間目に学ぶ「誤差論」の部分の教科書原稿です。

当初の執筆者がどなたか、歴代の担当者がどこをどう手直ししてきたかについて あやふやな部分があるのですが、このたび武内が大幅に改訂してまとめました。

2年生以降の学生さんにもぜひ復習してほしいので、ここに上げておこうと思います。

誤差論

 長さ、時間、温度など、どんな物理量を測定する場合でも、種々の要因によって測定には不確かさが含まれ、 測定値は真の値に一致しない。この測定値真値(しんち)との差を誤差と呼ぶ。

(1.1)
(誤差) = (測定値) - (真値)

また、誤差と真値との相対誤差と呼び、次元の異なる物理量の不確かさを比較したり、乗除算による誤差の伝播(でんぱ)を議論する際に用いられる。

(1.2)
(相対誤差) = (誤差) / (真値) \sim ( 誤差) / (測定値)

相対誤差との混同を避けるため、式1.1で定義される誤差を絶対誤差と呼ぶこともある。

測定値に含まれる誤差の大きさを正しく見積もることは大変重要である。しかし、実際には真の値は分からないから、正確な誤差の大きさも分からない。そこで、誤差を評価するには測定値から真の値を推定し、また、誤差の大きさを推定することになる。

測定値の表し方

誤差を評価した後の測定結果は、真値の推定値 x と誤差の推定値 \delta x (\delta x>0) を用いて

(1.3)
x\pm \delta x

のように表す。たとえば、真値の推定値が 27.32、誤差の推定値が 0.02 であれば、

(1.4)
27.32 ± 0.02

となる。これを 27.32\pm 2\times 10^{-2} などと書いてしまうと、どの桁に誤差が含まれるかが分かりにくいため、真値と誤差の推定値は表示桁をあわせるべきである。

表示桁を合わせて書けば明らかなように、誤差の推定値に要求される精度は有効数字1桁〜2桁もあれば十分であり、数桁も求めても無意味である。

測定誤差とその原因

測定誤差はどのような原因によって生じるであろうか。振り子の周期 T から重力加速度 g を求める実験を例にとって、測定値に含まれる誤差の原因について考えてみよう。

長さ L=1.85\,\mathrm{m} の振り子を、初期角 \theta_0=2\,\mathrm{deg} から振動させる。おもりが最初に最下点を通過したときから測定を始めて、10回振動するのにかかる時間(振動周期の10倍)を、100分の1秒まで測れるストップウォッチで 50 回測定した。得られたデータは次の通りである。(単位は秒)

27.2626.9927.0627.1827.2527.2727.3427.2727.2227.25
27.2627.1827.4127.3127.2827.2727.2627.2427.2627.27
27.2127.2227.2427.2627.2727.2727.5727.3427.3827.28
27.2727.4427.3527.2827.1827.2227.2627.3727.2427.43
27.1827.2727.3127.3827.2527.1827.2927.3827.3127.35

50個の測定値を平均すると27.28秒となるが、個々の測定値は平均値の周りにランダムに分布している。この分布を調べるため、以下にヒストグラムを示した。

[添付]


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