量子力学Ⅰ/電子の波動方程式 のバックアップ(No.4)

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private/量子力学I/前期量子論?

波動方程式

電子は粒子と波の両方の性質を持つことが分かってきた。

量子力学では電子の波動方程式を考えることで、電子の運動を記述する。

電子の粒子性

電子は水素原子の約1/1000の重さを持つ粒子として振る舞う。

JJ トムソンの実験などでその粒子的な性質は明らかである。

  • 運動エネルギーと運動量の関係 E=\frac{p^2}{2m}

電子の波動性

電子線回折などによって、電子が回折現象を起こすこと、加速度により波長が異なること、などが示された。

  • 運動エネルギーと周期の関係  E=h\nu=\hbar\omega
  • 運動量と波数の関係      \bm p=\hbar\bm k

準備:波動を表わす関数

速度 $v$ で移動する関数

f(x-d) は、 f(x) x の正方向に d だけ移動した関数になる。

translation.png

f(x,t)=f(x-vt,0) f(x,0) が時刻 t において vt だけ移動した関数、 すなわち、 f(x,0) の関数が形を変えずに x の正方向に速度 v で伝播する関数になる。

位相速度 $v$ で伝播する波(一次元)

f(x,t)=f(x-vt,0)=\cos(k (x-vt)) は、波数 k の正弦波が速度 v で伝播する関数になる。

f(x,0)=\cos(2\pi x/\lambda)=\cos(kx) が波長 \lambda 、 波数 k=2\pi/\lambda の正弦波であることに注意せよ。

wave-function.gif

f(x,t)=f(x-vt,0)=\cos(k (x-vt))=\cos(kx-\omega t) と書けば、 この関数は時間に対して角振動数 \omega=kv で振動することが分かる。

速度 v の波が1周期 T の間に進む距離が波長 \lambda だから、

\lambda=vT

両者の逆数を取って、

2\pi v/\lambda=2\pi/T

vk=\omega

を確かめられる。

位相速度 $v$ で伝播する平面波(三次元)

3次元空間で定義された f(\bm x,t)=\cos(k x-\omega t) という関数は x 軸方向に進む平面波を表わす。

以下では、3次元空間内で任意の方向に進む平面波を考える。

|\bm e|=1 のとき、 \bm e\cdot\bm x \bm x \bm e 方向成分の長さ

\bm e\cdot\bm x=d という方程式は、 \bm e に平行で、原点から \bm e 方向に \bm d だけ離れた平面を表わす方程式

したがって、 f(\bm x)=\cos(2\pi\bm e\cdot\bm x) は、 \bm e 方向に波長 1 の正弦波で、 \bm e に垂直方向には一定値を取る平面的な波を表わす。 (下図は二次元の場合)

2d-wave.jpg

\bm k\cdot\bm x=|\bm k|\bm e_{\bm k}\cdot x と書けるから、 これは \bm x \bm k 方向成分に、 |\bm k| をかけた値になる。

すなわち、 f(\bm x)=\cos(\bm k\cdot\bm x)=\cos(|\bm k|\bm e\cdot\bm x) は、 \bm e 方向に波長 \lambda=2\pi/\bm k 、波数 |\bm k| の正弦波を表わす。

さらに、 f(\bm x,t)=\cos(\bm k\cdot\bm x-\omega t) とすれば、 f(\bm x,t)=\cos(k\{\bm e_{\bm k}\cdot\bm x-(\omega/k) t\}) より、 波数 \bm k 、周期 \omega 、速度(位相速度) v=\omega/k で伝播する平面波を表わす。

演習:波動方程式(電磁波の場合)

平面波 \bm E(\bm x,t)=\bm E_0\cos(\bm k\cdot\bm x-\omega t) が電磁波の波動方程式

\nabla^2\bm E=\frac{1}{c^2}\frac{\PD^2}{\PD t^2} \bm E

を満たすことを示したい。

(1) \nabla^2 \bm E=-k^2\bm E となることを示せ

(2) \frac{\PD^2}{\PD t^2} \bm E=-\omega^2\bm E となることを示せ

(3) \nabla^2\bm E=\frac{1}{c^2}\frac{\PD^2}{\PD t^2} \bm E となるためには k \omega の間にどのような関係が必要か

(4) 速度 c で進む波の周期 T と波長 \lambda との間には \lambda=cT の関係がある(1回振動する間に進む距離が波長である)。 \lambda,T をそれぞれ k,\omega で書き直して、(3) と同じ式が得られることを示せ

(5) より一般に、任意の関数 f(x), g(x) に対して、 \bm E(\bm x,t)=\bm E_1 f(\bm k\cdot\bm x+\omega t)+\bm E_2 g(\bm k\cdot\bm x-\omega t) \nabla^2\bm E=\frac{1}{c^2}\frac{\PD^2}{\PD t^2} \bm E を満たすことを示せ

自由な電子の波動方程式

外力を受けない(自由な)電子の満たすべき波動方程式はどのようなものであろうか?

分かっていることは、

  • 運動エネルギーと周期の関係  E=h\nu=\hbar\omega
  • 運動量と波数の関係      \bm p=\hbar\bm k
  • 運動エネルギーと運動量の関係 E=\frac{p^2}{2m}

を満たす平面波になること。これらを組み合わせると、

\hbar\omega=\frac{\hbar^2 k^2}{2m}

という条件が得られる。この条件を満たすような波動方程式を作ろう!

波を \phi(\bm x,t)=\phi_0\cos(\bm k\cdot\bm x-\omega t) と置いてみると、

\nabla^2\phi=-k^2\phi_0\cos(\bm k\cdot\bm x-\omega t)

\frac{\PD}{\PD t}\phi=-\omega\phi_0\sin(\bm k\cdot\bm x-\omega t)

となって、上の式では \cos 、下の式では \cos が現れてきてしまうため、 \omega k の間の式にしづらい・・・ \cos \sin は微分により形が変わってしまうのが問題。

微分で形の変わらない関数を使えば波動方程式が作れそう。
\phi(\bm x,t)=\phi_0e^{i(\bm k\cdot\bm x-\omega t)} と置けば、これも波数 \bm k 、各週波数 \omega の波動を表わす

\nabla^2\phi(\bm x,t)=-k^2\phi(\bm x,t)

\frac{\PD}{\PD t}\phi(\bm x,t)=-i\omega\phi(\bm x,t)

これらを用いて \hbar\omega=\frac{\hbar^2 k^2}{2m} の関係を表わすと、

i\hbar\frac{\PD}{\PD t}\phi(\bm x,t)=-\frac{\hbar^2}{2m} \nabla^2\phi(\bm x,t)

これが自由な電子に対するシュレーディンガー方程式である。

外力を受ける場合

電子に外力がかかるとき、電子の感じるポテンシャルエネルギーを V(\bm x,t) とすると、 電子のエネルギーは

\frac{p^2}{2m}\to \frac{p^2}{2m}+V(\bm x,t)

となる。そこで、シュレーディンガー方程式も、

i\hbar\frac{\PD}{\PD t}\phi(\bm x,t)=\left(-\frac{\hbar^2}{2m} \nabla^2+V(\bm x,t)\right)\phi(\bm x,t)

となる。

シュレーディンガー方程式の有用性


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