線形独立、基底及び次元 の履歴の現在との差分(No.4)
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[[線形代数Ⅱ]] [[前の単元 <<<>線形代数II/抽象線形空間]] [[線形代数II]] [[>>> 次の単元>線形代数II/線形写像・像・核・階数]] * 目次 [#rfb40a80] #contents &katex(); * 線形結合・一次独立・従属 [#n644d790] 線形代数I で学んだ 線形結合・一次独立・従属の概念を一般の線形空間でも使う 復習: &math( \begin{pmatrix}1\\2\\3\\4\end{pmatrix},\ \begin{pmatrix}2\\2\\3\\4\end{pmatrix},\ \begin{pmatrix}1\\2\\3\\3\end{pmatrix} ); は一次独立か? &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); の線形結合とは、 >&math(\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i=c_1\bm v_1+c_2\bm v_2+\dots+c_m\bm v_m); 線形代数I で学んだ 線形結合・一次独立・従属の概念を一般の線形空間でも定義できる &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); が「一次独立である」とは、 $\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V$ の線形結合とは: >$\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i=c_1\bm v_1+c_2\bm v_2+\dots+c_m\bm v_m$ >&math(\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i=\bm 0); から &math(c_1=c_2=\dots=c_m=0); を導けること $\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V$ が「一次独立である」とは: &math(c_1=c_2=\dots=c_m=0); 以外でも成り立つなら「一次従属である」という >$\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i=\bm 0$ から $c_1=c_2=\dots=c_m=0$ を導けること $c_1=c_2=\dots=c_m=0$ 以外でも成り立つなら「一次従属である」という 問: 実数を係数とする2次以下の &math(x); の多項式の集合について考える~ &math(x^2+3x-2, -x^2+2x, 3x^2); は線形独立か? >実数を係数とする2次以下の $x$ の多項式からなる線形空間 $P^2[x]$ を考える~ >$x^2+3x-2,\ -x^2+2x,\ 3x^2$ は線形独立か? 答: &math(a(x^2+3x-2)+b(-x^2+2x)+c(3x^2)=0); とすると、 &math((a-b+3c)x^2+(3a+2b)x+(-2a)=0); ここに現れた等号は、「2つの多項式を比較する」等号であるから、 >$a(x^2+3x-2)+b(-x^2+2x)+c(3x^2)=0$ とすると、 >$(a-b+3c)x^2+(3a+2b)x+(-2a)=0=0x^2+0x+0$ > >ここに現れた等号は、「左辺の多項式と右辺の多項式が等しい」という意味であるから、 左辺と右辺とで、対応する次数にかかる係数がすべて等しくなければならない。 > >すなわち、$a-b+3c=0,3a+2b=0,-2a=0$ となり、 これを満たす $a,b,c$ は $(a,b,c)=(0,0,0)$ しか存在しない。 > >したがって、与えられた3つのベクトルは線形独立である すなわち、&math(a-b+3c=0,3a+2b=0,-2a=0); となり、 これを満たす &math(a,b,c); は &math(\{a,b,c\}=\{0,0,0\}); しか存在しない。 演習: したがって、線形独立である >$P^2[x]$ において次のベクトルは線形独立か? > >[1] $2x^2+1,\ 2x-1,\ x^2+x$ >[2] $x^2+x+1,\ x-4,\ x^2+2x$ >[3] $x+1,\ x-1$ この演習の答えは [[線形代数II/演習1]] にある。 * 張る空間・生成元・部分空間 [#p7f650df] &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); の「張る空間」とは、 > &math(W\equiv\set{\bm v=\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i| c_1,c_2,\dots,c_m\in K}); $\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V$ の「張る空間」は次のように定義され、 >$W\equiv\set{\bm v=\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i| c_1,c_2,\dots,c_m\in K}$ &math(W=\big<\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\big>); と書く。 $W=\big[\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\big]$ と書く。(< > で括る流儀もある) このような &math(W); は和、スカラー倍に対して閉じており、それ自身も線形空間となる。 これは 「$\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m$ の一次結合で表せるベクトルの集合」 と同義である。 >&math(\bm v_1 = \sum_{i=1}^m c_{1i}\bm v_i\in W);、&math(\bm v_2 = \sum_{i=1}^m c_{2i}\bm v_i\in W); のとき、 >&math(k\bm v_1 = \sum_{i=1}^m (kc_{1i})\bm v_i\in W);、&math((\bm v_1+\bm v_2) = \sum_{i=1}^m (c_{1i}+c_{2i})\bm v_i\in W); このような $W$ は和、スカラー倍に対して閉じており、それ自身も線形空間となる。~ すなわち $W$ は $V$ の部分空間を為す。 &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); を &math(W); の「生成元」という。 >$\bm v_1 = \sum_{i=1}^m c_{1i}\bm v_i\in W$、$\bm v_2 = \sum_{i=1}^m c_{2i}\bm v_i\in W$ のとき、 >$k\bm v_1 = \sum_{i=1}^m (kc_{1i})\bm v_i\in W$、$(\bm v_1+\bm v_2) = \sum_{i=1}^m (c_{1i}+c_{2i})\bm v_i\in W$ 一般に、&math(V); の部分集合 &math(W); が線形空間となるとき、&math(W); は &math(V); の「部分空間」という。 $\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in W\subset V$ を $W$ の「生成元」という。 多くの場合、~ -&math(W_1=\big<\bm a\big>); は直線的である -&math(W_2=\big<\bm a,\bm b\big>); は平面的である -&math(W_3=\big<\bm a,\bm b, \bm c\big>); は空間的である %%%&math(\bm a,\bm b,\bm c); が一次従属だと、その限りではない!%%% * 4-2 基底・次元 [#t268fa3f] &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); が &math(V); を張り、~ %%%なおかつ一次独立である%%%とき、~ &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); は &math(V); の「基底」である、という。 基底を構成するベクトルの数を線形空間の「次元」と呼ぶ。 ある空間 &math(V); について、基底の取り方には任意性があるが、 次元は一意に決まることを後に証明する。 例:2次以下の &math(x); の多項式の集合を &math(V); とするとき、 &math(\bm b_1=x,\bm b_2= 3x^2+1,\bm b_3=2\in V); は &math(V); を張り、 また、一次独立であるから、&math(V); の基底となる~ すなわち、&math(V); は3次元である * 列ベクトル表示(数ベクトル表現) [#b391d31c] ** 準備 [#rca6d364] 定理: &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_n\in V); を &math(V); の基底とすれば、 &math(\forall \bm x\in V); はこれらの一次結合として一意に表される。 証明: &math(\bm x=\sum c_i\bm v_i=\sum c_i'\bm v_i); とすると、 &math(\sum (c_i-c_i')\bm v_i=\bm 0); 基底の線形独立性から、 &math(c_1-c_1'=c_2-c_2'=\dots=c_n-c_n'=0); となる。 ** 数ベクトル空間との1対1対応 [#k774687f] 上記の線形結合を、ベクトルのかけ算表示を使って &math( \bm x=\big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\big) \begin{pmatrix} x_1\\ x_2\\\vdots\\x_n \end{pmatrix} ); の形に書けば、 &math(\forall \bm x\in V); に対して、対応するn次元列ベクトル &math(\bm x'=\begin{pmatrix}x_1\\ x_2\\\vdots\\x_n\end{pmatrix} \in \mathbb R^n); が1つ決まる。 逆に、&math(\forall \bm x'\in \mathbb R^n); に対して、 &math(\bm x=\big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\big)\bm x' \in V); が1つ決まることから、 線形空間 &math(V); の元と &math(\mathbb R^n); の元との間に1対1の対応が付くことになる。 &math(\bm x'); を &math(\bm x); の「列ベクトル表示」という。 例: |実数を係数とする2次以下の &math(x); の多項式|3次実数ベクトル| |&math(V=\set{ax^2+bx+c\|a,b,c\in \mathbb R}); |&math(\mathbb R^3=\set{(a,b,c)\|a,b,c\in \mathbb R});| |>|&math(V); の基底 &math(x^2,x,1); に対する数ベクトル表現になっている| |&math((a_1x^2+b_1x+c_1)+(a_2x^2+b_2x+c_2)\\=(a_1+a_2)x^2+(b_1+b_2)x+(c_1+c_2));|&math((a_1,b_1,c_1)+(a_2,b_2,c_2)=(a_1+a_2,b_1+b_2,c_1+c_2));| |&math(k(ax^2+bx+c)=(ka)x^2+(kb)x+(kc));|&math(k(a,b,c)=(ka,kb,kc));| $$ \begin{aligned} W_1&=\big[\,(1,1,-1)\,\big]\hspace{3cm}\leftarrow\mathrm{(1,1,-1)により張られる空間}\\ &\equiv\big\{\,a(1,1,-1)\in\mathbb R^3\,|\,a\in\mathbb R\big\} \hspace{4.3mm}\leftarrow\mathrm{その定義}\\ \end{aligned} $$ このような対応関係は ベクトル和 や スカラー倍 に対しても保存されることから、 任意の線形空間 &math(V); は、同じ次元を持つ数ベクトル空間 &math(\mathbb R^n); と強い類似性を持つことが分かる。 とするとき、$(2,2,-2),\,(-5,-5,5)\in W_1$ であるが、$(2,2,2)\notin W_1$ こういう時、&math(V); と &math(\mathbb R^3); は「同型である」、と言う。 $$ W_1=\big[\,(1,1,-1)\,\big]=\big[\,(2,2,-2)\,\big] $$ 以下で同型を定義する。 であることもすぐに分かるが、さらには * 写像 [#h358e130] $$ \begin{aligned} W_1&=\big[\,(1,1,-1),(2,2,-2)\,\big]\\ &\equiv\big\{\,a(1,1,-1)+b(2,2,-2)\in\mathbb R^3\,|\,a,b\in\mathbb R\big\} \end{aligned} $$ 集合 &math(U); から集合 &math(U'); への写像とは、~ &math(U); の元それぞれに対して1つずつ、 &math(U'); の元を対応させる規則のことである となることにも注意せよ。一方、 「1つずつ」が重要 $$ W_1\neq W_2=\big[\,(1,1,-1),(2,2,2)\,\big] $$ - 対応する元が1つも無いような &math(U); の元があるなら写像ではない - 対応する元が2つ以上あれば写像ではない - 異なる元 &math(x_1,x_2\in U); に対して、同じ &math(x'\in U'); が対応するのは問題ない である。実際、$W_1\subset W_2$ であるが $W_2\not\subset W_1$ である。 &math(U); の元を1つ与えれば、必ず1つだけ &math(U'); の元が決まるということ ---- &math(f); が &math(U); から &math(U'); への写像であることを、 多くの場合、~ -1つのベクトルにより張られる空間 $W_1=\big[\bm a\big]$ は直線的である~ ←→ 直線の方程式 $\set{\bm p=s\bm a|s\in \mathbb R}$ -2つのベクトルにより張られる空間 $W_2=\big[\bm a,\bm b\big]$ は平面的である~ ←→ 平面の方程式 $\set{\bm p=s\bm a+t\bm b|s,t\in \mathbb R}$ -3つのベクトルにより張られる空間 $W_3=\big[\bm a,\bm b, \bm c\big]$ は空間的である~ ←→ 空間の方程式 $\set{\bm p=s\bm a+t\bm b+u\bm c|s,t,u\in \mathbb R}$ &math(f: U\to U'); ただし %%%$\bm a,\bm b,\bm c$ が一次従属だと、その限りではない!%%% と書く。 線形空間の次元を考えるには、空間を張るベクトルの数に加えて、 それらが一次独立であることが重要。 &math(x\in U); の時、&math(x'=f(\bm x)\in U'); である。 * 4-2 基底・次元 [#t268fa3f] ** 線形写像 [#ibeddaa7] $\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V$ が $V$ の生成元で、%%%なおかつ一次独立である%%%とき、~ $\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V$ は $V$ の「基底」である、という。 &math(V,V'); を線形空間として、 &math(f:V\to V'); が次の条件を満たすとき、&math(f); は「線形である」と言うのであった。 基底を構成するベクトルの数を線形空間の「次元」と呼ぶ。 - &math(f(a\bm x+b\bm y)=af(\bm x)+bf(\bm y)); 基底の例: - $\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix}\in \mathbb R^2$ - $\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}\in \mathbb R^2$ - $x^2+3x-2,\ -x^2+2x,\ 3x^2\in P^2[x]$ すなわち、写像がベクトル和やスカラー倍に対して透過的であると言うこと。 ある空間 $V$ について、基底の取り方には任意性があるが、 「次元」は一意に決まる。 あるいは、&math(T:V\to V'); として、 このことは、 - &math(T(\bm x+\bm y)=T\bm x+T\bm y); - &math(T(c\bm x)=cT\bm x); - $n$ 個のベクトルにより張られる空間から、$n$ を越える個数の線形独立なベクトルを取り出せない のように括弧を省略して書くこともよく行われる。 ことから導かれるが、この証明は省略する。 → [[(この証明)>線形代数II/線形独立、基底及び次元/次元の一意性]] 注)~ 左辺の和やスカラー倍が &math(V); で定義された演算であるのに対して、~ 右辺の和やスカラー倍は &math(V'); で定義された演算であることに注意せよ。~ (すなわち &math(V); と &math(V'); は同じスカラーの上に定義されている必要がある) *** 演習: [#y0a3eb13] 例: &math(V=\{xの3次以下の多項式\});、&math(V'=\{xの2次以下の多項式\}); として、 &math(T:V\to V'); を (1) $V=\set{\bm x=(x,y,z)\in \mathbb R^3 | x+y+2z=0}$ は $\mathbb R^3$ の部分空間となる。$V$ の基底を1つ定めよ。 &math(T\bm x\equiv\frac{d}{dx} \bm x); (2) 「複素数の集合 $\mathbb C$」を「実数 $\mathbb R$上の線形空間」と考えて、基底を1つ定めよ。 と定義すれば、これは線形写像になる。~ (関数線形空間に対して微分や積分を線形写像と考えるのはこれから非常に良く出てくる考え方) * 列ベクトル表示(数ベクトル表現) [#b391d31c] *** 練習 [#j3e80a73] ** 準備 [#rca6d364] 問:&math(T); が線形写像であれば、&math(T(\bm 0)=\bm 0); となることを示せ。 定理: 答:&math(T(\bm 0)=T(0\bm 0)=0T(\bm 0)=\bm 0); $\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_n\in V$ を $V$ の基底とすれば、 $\forall \bm x\in V$ はこれらの一次結合として一意に表される。 ** 1対1写像(単写) [#f9291c06] 証明: &math(T(ax^2+bx+c)=(a,b,0)); も &math(V\rightarrow\mathbb R^3); の線形写像である、 が、&math(T(ax^2+bx+c)=T(ax^2+bx+c')=(a,b,0)); となる。 基底は $V$ を張るから、$\bm x$ を基底の一次結合として表せることは証明不要。 このように、一般の写像では異なるベクトルが同じ値に移される場合がある。 その表し方が「一意に決まること」を証明する。 &math(\bm x\ne \bm y); であれば必ず &math(T(\bm x)\ne T(\bm y)); であるとき、 &math(T); は1対1写像である、あるいは、単写である、と言う。 もし、 &attachref(写像.png,,50%); $$ \bm x=\sum x_i\bm v_i=\sum x_i'\bm v_i $$ 1対1という言葉の意味:1対nはそもそも写像にならない。n対1になっていないことを示している。 であれば、これを変形して、 ** 上への写像(全写) [#u804c5ca] $$ \sum (x_i-x_i')\bm v_i=\bm 0 $$ 任意の &math(v'\in V'); に対して、そこに移ってくる &math(V); の元を見つけられる時、 上への写像、あるいは、全写であるという。 基底の線形独立性から、 例えば、&math(T(ax^2+bx+c)=(a,b,c)); は &math(V\rightarrow\mathbb R^3); への全写であるが、~ &math(T(ax^2+bx+c)=(0,a,b,c)); は &math(V\rightarrow\mathbb R^4); への全写ではない。 $$ x_1-x_1'=x_2-x_2'=\dots=x_n-x_n'=0 $$ 「上へ」というのは、&math(T); により &math(V); 全体を移したときにできる「像」 (しばしば &math(T(V)=\set{T(\bm v)\in V'|\bm v\in V}); と書かれる) が、 &math(V'); の真上に、全体を覆い尽くすように被さるため。 として一意性が示される。 &attachref(上への写像.png,,50%); ** 数ベクトル空間との1対1対応 [#k774687f] ** 上への1対1写像(全単写) [#x5e3aeb2] 上記の線形結合を、行列のかけ算と同様の表示を使って 単写かつ全写であることを言う。 $$ \bm x=\Big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\Big) \underbrace{\begin{pmatrix} x_1\\ x_2\\\vdots\\x_n \end{pmatrix}}_{\bm x'}=\Big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\Big)\bm x' $$ このときに限り、「逆写像 &math(T^{-1});」が定義できる。 の形に書けば、 - 1対1でないと、ある &math(v'\in V'); に複数の &math(v\in V); が対応してしまう - 上への写像でないと、ある &math(v'\in V'); に対応する &math(v\in V); が存在しない場合がある $\forall \bm x\in V$ に対して、対応する $n$ 次元列ベクトル $\bm x'=\begin{pmatrix}x_1\\ x_2\\\vdots\\x_n\end{pmatrix} \in \mathbb R^n$ が1つ決まることになる。 *** 練習 [#cdc16e96] 逆に、$\forall \bm x'\in \mathbb R^n$ に対して、 $\bm x=\big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\big)\bm x' \in V$ が1つ決まるから、 問:逆写像 &math(T^{-1}); は線形写像であることを示せ 線形空間 $V$ の元1つ1つと $\mathbb R^n$ の元1つ1つとの間に 1対1の対応が付くことになる。 答: &math(\bm X=T(\bm x), \bm Y=T(\bm Y)); とすると、 &math(\bm x=T^{-1}(\bm X),\bm y=T^{-1}(\bm Y)); $\bm x'$ を、基底 $\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_n$ に対する $\bm x$ の「列ベクトル表示」という。~ (列ベクトル表示は基底の取り方に依存することに注意せよ) 一方、 この対応関係は ベクトル和 や スカラー倍 に対しても保存されることから、 すべての $K$ 上の $n$ 次元線形空間 $V$ は、 同じ次元を持つ数ベクトル空間 $K^n$ と強い類似性を持つことが分かる。 &math(T(\bm x+\bm y)=T(\bm x)+T(\bm y)=X+Y); こういう時、$V$ と $K^n$ は「同型である」、と言う。 の両辺に &math(T^{-1}); を作用させると 以下で同型を厳密に定義する。 &math(\bm x+\bm y=T^{-1}(X)+T^{-1}(Y)=T^{-1}(X+Y)); 例: また、 実数を係数とする2次以下の $x$ の多項式からなる線形空間 &math(T(k\bm x)=kT(\bm x)=kX); $$ P^2[x]=\{ax^2+bx+c|a,b,c\in \mathbb R\} $$ の両辺に &math(T^{-1}); を作用させると に、基底 $\bm e_1=x^2-1,\bm e_2=x+1,\bm e_3=1$ を取る。 &math(k\bm x=kT^{-1}(X)=T^{-1}(kX)); 任意の $\bm x=ax^2+bx+c\in P^2[x]$ に対して、 となって、 &math(T^{-1}); が線形であることが示された。 $\bm x'=\begin{pmatrix}a\\b\\a-b+c\end{pmatrix}$ と取れば、 $\bm x=\begin{pmatrix}\bm e_1&\bm e_2&\bm e_3\end{pmatrix}\bm x'$ が成り立ち、 ** 同型 [#j11499b9] 基底 $\{\bm e_i\}$ に対する $\bm x$ の数ベクトル表現 $\bm x'\in \mathbb R^3$ がただ一つ求まることになる。 &math(V); と &math(V'); との間に上への1対1写像 &math(T); が存在する時、 &math(V); と &math(V'); は同型であるといい、~ &math(V\simeq V'); と書く。 逆に、任意の $\bm x'=\begin{pmatrix}a'\\b'\\c'\end{pmatrix}\in \mathbb R^3$ に対して、 またこのとき、&math(T); を同型写像と呼ぶ。 $$ \bm x=ax^2+bx+(-a+b+c)\in P^2[x] $$ これは上で述べた2つの写像が「似ている」ことを数学的に表わした物。~ 同型写像によって、2つの空間はすべて1対1に対応することになる。 が求まる。 &math(T(ax^2+bx+c)=(a,c,b)); とか、~ &math(T(ax^2+bx+c)=(a+b,a-b,c)); とかも同型写像になる。 同型である2つの線形空間の間の同型写像は一意には決まらないことに注意が必要。 $\bm x=ax^2+bx+c\in P^2[x]$, $\bm y=a'x^2+b'x+c'\in P^2[x]$ の数ベクトル表現は 線形空間の「同型」は同値関係の公理を満たす。すなわち、 $\bm x'=\begin{pmatrix}a\\b\\a-b+c\end{pmatrix}$, $\bm y'=\begin{pmatrix}a'\\b'\\a'-b'+c'\end{pmatrix}$ + &math(V\simeq V); : 反射律 + &math(V\simeq V'\to V'\simeq V); : 対称律 + &math(V\simeq V' \wedge V'\simeq V''\to V\simeq V''); : 推移律 なので、 同型の線形空間は構造が似ているため、一方を調べればもう一方のことが分かる。~ 特に、&math(\mathbb R^n); への同型が分かればほぼすべて分かったも同然!となる。 - $k\bm x$ のベクトル表現が $k\bm x'$ となること、 - $\bm x+\bm y$ のベクトル表現が $\bm x'+\bm y'$ となること、 ** 例 [#f06ed7b5] を、容易に確認できる。 &math(V\to V'); の同型写像を &math(T(\bm x)); とする。 [[前の単元 <<<>線形代数II/抽象線形空間]] [[線形代数II]] [[>>> 次の単元>線形代数II/線形写像・像・核・階数]] &math(\bm a, \bm b, \bm c\in V); が線形独立であれば、~ &math(T(\bm a), T(\bm b), T(\bm c\)in V'); も線形独立である。~ * 質問・コメント [#jf7db8ee] 対偶を証明する。 #article_kcaptcha もし &math(T(\bm a), T(\bm b), T(\bm c\)in V'); が線形従属であれば、 すべてがゼロではない3つのスカラー &math(\alpha,\beta,\gamma); に対して &math(\alpha T(\bm a)+\beta T(\bm b)+\gamma T(\bm c\)=\bm 0); が成立する。&math(T); は線形なので、 &math((左辺)=T(\alpha \bm a+\beta \bm b+\gamma bm c\)=\bm 0); ここで、 &math(\therefore T^{-1}(\bm 0)=\bm 0);
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