多粒子系の波動関数とボゾン・フェルミオン のバックアップの現在との差分(No.10)

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[[量子力学Ⅰ]]

* 1粒子系の量子力学の復習 [#vcf8a3db]
&katex();

量子力学において1粒子の運動は、
粒子の位置を変数とする複素関数(波動関数)が満たす
シュレーディンガー方程式により記述された。
* 概要 [#q7edd673]

粒子の位置:&math(\bm r);~
波動関数:&math(\psi(\bm r,t));~
方程式:&math(i\hbar\frac{\PD}{\PD t}\psi(\bm r,t)=\hat H\psi(\bm r,t));
これまで、1粒子のシュレーディンガー方程式の解法を細かく見てきたが、
以下では多粒子系の問題について考える。(教科書では「量子力学II」に収録されている9章の内容となる)

シュレーディンガー方程式は両辺に共通な &math(\psi(\bm r,t)); を除いて考えると
** 目次 [#g08172c8]
#contents

 &math(\frac{\hbar}{-i}\frac{\PD}{\PD t}(\dots)=\hat H(\dots));
* 2粒子系の量子力学 [#w3265732]

の形をしている。これは前期量子論における
古典的なハミルトニアンは系のエネルギーを位置と運動量で表したものであった。

 &math(\hbar\omega=\varepsilon);
したがって2粒子系であれば、2つの粒子の位置座標 $\bm r_1,\bm r_2$ 
および、運動量 $\bm p_1,\bm p_2$ を使って、

という関係に対応しているのであった。
$$
H(\bm r_1,\bm r_2,\bm p_1,\bm p_2)=\underbrace{\frac{p_1^2}{2m_1}+\frac{p_2^2}{2m_2}\rule[-14pt]{0pt}{10pt}}_{\text{運動エネルギー}}+\underbrace{\mathop{V(\bm r_1,\bm r_2,t)}_{\ }\rule[-14pt]{0pt}{10pt} }_{\text{ポテンシャル}}
$$

ただし、&math(\hat H); は古典力学におけるハミルトニアン、
ただし中に現れる粒子の運動量 &math(\bm p); を &math(\hbar\bm \nabla/i); で置き換えたものである。
などとなる。

シュレーディンガー方程式を解いて得られた波動関数の絶対値の二乗が
時刻 &math(t); に粒子を位置 &math(\bm r); を見いだす確率となる。
量子力学ではハミルトニアンに $\bm p\to\frac{\hbar}{i}\bm \nabla$
の置き換えをして、演算子

その他の物理量 &math(O); の期待値 &math(\langle O\rangle); は、
物理量に対応する演算子を &math(\hat O); として次のように与えられる。
$$
\hat H\big(\bm r_1,\bm r_2,\frac{\hbar}{i}\bm \nabla_{r_1},\frac{\hbar}{i}\bm \nabla_{r_2}\big)=
{}-\frac{\hbar^2}{2m_1}\nabla_{r_1}^2
{}-\frac{\hbar^2}{2m_2}\nabla_{r_2}^2
{}+V(\bm r_1,\bm r_2,t)
$$

 &math(\big\langle O(t)\big\rangle=\int\psi(\bm r,t)^\dagger \hat O \psi(\bm r,t) d\bm r);
を得る。ただし、$\nabla_{r_1}^2=\frac{\partial^2}{\partial \bm r_1^2}$ は $\bm r_1$ に対するラプラシアン、$\nabla_{r_2}^2=\frac{\partial^2}{\partial \bm r_2^2}$ は $\bm r_2$ に対するラプラシアン、

* 2粒子系の量子力学 [#w3265732]
これが波動関数に作用する演算子となるのであるから、
2粒子系の波動関数は $\bm r_1,\bm r_2$ の関数であるはずだ。

2つの電子の位置座標をそれぞれ &math(\bm r_1,\bm r_2); とする。
 2粒子系の波動関数: $\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t)$ 

2粒子系の波動関数を &math(\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t)); として、
すると、シュレーディンガー方程式は

シュレーディンガー方程式を
$$i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t)=\hat H\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t)$$

 &math(i\hbar\frac{\PD}{\PD t}\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t)=\hat H\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t));
と書ける。

としたならば、これは1粒子系で学んだ内容の自然な拡張となっており、
事実これが正しい2粒子系のシュレーディンガー方程式である。
波動関数を大文字にしたのは教科書に合わせるためで表記上の問題しかない。
教科書では1粒子波動関数を小文字 &math(\psi,\varphi); で、多粒子波動関数を大文字 &math(\Psi,\Phi); 
で表すことにしている。
波動関数を大文字にしたのは教科書に合わせるためで、表記上の問題しかない。
教科書では、1粒子波動関数を小文字 $\psi,\varphi$ で、多粒子波動関数を大文字 
$\Psi,\Phi$ で表すことになっている。

&math(\hat H); は古典力学における2粒子系のハミルトニアンに現れる
2つの粒子の運動量 &math(\bm p_1,\bm p_2); を
&math(\bm\nabla_{\bm r_1}, \bm\nabla_{\bm r_2}); に置き換えたものとなる。
 波動関数の絶対値の二乗:$\big|\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t)\big|^2d\bm r_1d\bm r_2$

>例:~
2粒子がクーロン相互作用しているなら、&math(V(\bm r_1,\bm r_2)=\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{e_1e_2}{|\bm r_1-\bm r_2|}); となるから、~
  &math(
\hat H(\bm r_1,\bm r_2,t)=
-\frac{\hbar^2}{2m_1}\bm\nabla_{r_1}^2-\frac{\hbar^2}{2m_2}\bm\nabla_{r_2}^2
+\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{e_1e_2}{|\bm r_1-\bm r_2|});~
である。~
は時刻 $t$ において、
-粒子1を位置 $\bm r_1$ の近傍の $d\bm r_1$ に、
-粒子2を位置 $\bm r_2$ の近傍の $d\bm r_2$ に、

シュレーディンガー方程式を解いて得られた波動関数の絶対値の二乗が
時刻 &math(t); に2つの粒子をそれぞれ位置 &math(\bm r_1); および &math(\bm r_2); に見いだす確率となる。
見出す確率となる。

その他の物理量 &math(O); の期待値 &math(\langle O\rangle); は、
物理量に対応する演算子を &math(\hat O); として次のように与えられる。
物理量 $O(\bm r_1,\bm r_2,\bm p_1,\bm p_2)$ の期待値 $\overline O$ は、
対応する演算子 $\hat O(\bm r_1,\bm r_2,\hbar\bm \nabla_{r_1}/i,\hbar\bm \nabla_{r_2}/i)$ 
を用いて次のように与えられる。

 &math(\langle O(t)\rangle=\iint \Psi^*(\bm r_1,\bm r_2,t)\hat O \Psi(\bm r_1,\bm r_2,t)d\bm r_1\bm r_2);
$$
\overline O(t)=\iint \Psi^*(\bm r_1,\bm r_2,t)\,\hat O\,\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t)\,d\bm r_1\,d\bm r_2
$$

これらが1粒子系で学んだ内容の自然な拡張となっていることを確認せよ。

* 多粒子系の量子力学 [#ne59b5a9]

位置座表をそれぞれ &math(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n); として、~
波動関数を &math(\Psi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n,t)); とすれば良い。

一般の $n$ 粒子系では、位置座表をそれぞれ $\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n$ として、
波動関数を $\Psi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n,t)$ とすれば良い。
このときハミルトニアンは例えば次のような形に書けるはずで、

&math(
\hat H(\bm r_1,\bm r_2,t)=
\underbrace{\sum_{j=1}^n -\frac{\hbar^2}{2m_j}\bm\nabla_{r_j}^2}_{運動エネルギー}+
\underbrace{V(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)\rule[-16.5pt]{0pt}{10pt}}_{ポテンシャルエネルギー}
);
$$
\hat H=
\underbrace{\sum_{j=1}^n -\frac{\hbar^2}{2m_j}\bm\nabla_{r_j}^2}_{\text{運動エネルギー}}+
\underbrace{V(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n,t)\rule[-14pt]{0pt}{10pt}}_{\text{ポテンシャルエネルギー}}
$$

これを用いてシュレーディンガー方程式はやはり次の形に書ける。

 &math(i\hbar\frac{\PD}{\PD t}\Psi=\hat H\Psi);
$$i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\Psi=\hat H\Psi$$

波動関数の物理的意味は、時刻 $t$ において、
それぞれの粒子を位置 $\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n$ 
の周囲 $d\bm r_1,d\bm r_2,\dots,d\bm r_n$ 
に見出す確率が $|\Psi|^2d\bm r_1\dots d\bm r_n$ である。

1粒子に対する波動関数は絶対値の二乗を取るだけでそのまま現実の三次元空間中における粒子の存在確率密度を表すことになり、「物質波」と呼ぶにふさわしいものであったが、多粒子系の波動関数は現実の三次元空間ではなく、仮想的な $3n$ 次元空間(粒子数 $n$)における確率密度に対応するものであり、もはや「物質波」と呼べるようなものではなくなっていることにも注目せよ。

これまで学んだとおり、1粒子のシュレーディンガー方程式でも
解析的に閉じた解が得られるのは非常に単純な問題に限られており、
そのような場合であっても解を得るには高度な数学を要する。
そのような例外的な場合に限ってさえ、解を得るには高度な数学を要するのであった。

多体のシュレーディンガー方程式を解析的に解くことはほぼ不可能であるため、
様々な近似を用いて1体の問題に直し、さらに近似を用いて1体の問題を解くことにより、
多体のシュレーディンガー方程式を解析的に閉じた形で解くことはほぼ不可能であるため、
様々な近似を用いて1体の問題に直し、さらに近似を用いて複雑な1体問題を解くことにより、
ようやく実験結果と比較できるような理論的予測が得られる。

もう1つ、多体問題ではシュレーディンガー方程式だけでは波動関数が一意に定まらない。
シュレーディンガー方程式に加えて対称性に関する制約を与えて始めて解が一意に定まることになる。
以下この点について考える。


* 同種粒子の不可弁別性 [#q8a2e6f8]

多粒子系において、粒子 &math(j); と &math(k); とが同種の粒子
(たとえば電子)であるとする。
多粒子系の量子力学では%%%シュレーディンガー方程式に加えて%%%、同種の粒子の間に不可弁別性が成り立つことが求められる。

粒子 &math(j); が &math(\bm r_a); に、~
粒子 &math(k); が &math(\bm r_b); に、それぞれ見いだされる確率と、~
~
粒子 &math(j); が &math(\bm r_b); に、~
粒子 &math(k); が &math(\bm r_a); に、それぞれ見いだされる状態と、~
~
は常に等しい、というのが同種粒子の不可弁別性である。
粒子 $j$ と $k$ とが同種の粒子なら、
- 粒子 $j$ が $\bm r_a$ に、粒子 $k$ が $\bm r_b$ に、存在する状態と
- 粒子 $j$ が $\bm r_b$ に、粒子 $k$ が $\bm r_a$ に、存在する状態と

は物理的に区別されない、同一の状態である、というのが同種粒子の不可弁別性である。

量子力学では観測するまで粒子の位置は決まっていない。

観測した結果、2カ所に電子が見つかったとして、
それらのどちらがどちらの電子かを判別する方法はない。
そもそもそれら2つの状態は区別できない、
として構築した理論が現実をよく再現する。

上記を式で書けば、
したがって、そもそもそれら2つの状態は区別できないものとして扱うべきだ、
とするのが不可弁別性であり、これに基づき構築した理論が現実をよく再現する。

&math(
&\big|\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots,t)\big|^2\\
=&\big|\Psi(\dots,\bm r_b,\dots,\bm r_a,\dots,t)\big|^2\\
&\hspace{1.4cm}^\uparrow_j\hspace{1.1cm}^\uparrow_k
);
すべての粒子に「個別の軌道」が存在することをよりどころとする
古典論とは大きく異なる考え方であることに注意せよ。

すなわち、同種の2つの粒子の位置座標を入れ替えても、波動関数の絶対値は変化せず、
その位相のみが変化する。
繰り返しになるが、不可弁別性はシュレーディンガー方程式から導かれるものではない。
物理的に正しい波動関数はシュレーディンガー方程式を満たす&ruby(・・・・・){だけでなく};、
不可弁別性とも矛盾しないことが求められるのである。
* 多粒子系の物理量 [#i5550a42]

この位相変化の大きさを見積もるのに、多くの教科書では次のような議論が行われる。
粒子1と2とが同種である場合、粒子の不可弁別性により、

>位置の入れ替えで生じる位相変化の大きさを &math(C); とする、~
すなわち、~
&math(
C&\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots,t)\\
=\phantom{C}&\Psi(\dots,\bm r_b,\dots,\bm r_a,\dots,t)\\
&\hspace{1.3cm}^\uparrow_j\hspace{1.1cm}^\uparrow_k
);~
もう一度入れ替えると元に戻るから、~
&math(
C^2&\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots,t)\\
=C&\Psi(\dots,\bm r_b,\dots,\bm r_a,\dots,t)\\
=\phantom{C}&\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots,t)\\
&\hspace{1.3cm}^\uparrow_j\hspace{1.1cm}^\uparrow_k
);~
ここから &math(C^2=1); が得られ、&math(C=\pm 1); を得る。~
- 粒子1の位置
- 粒子2の運動量

ただ、&math(C); が &math(\bm r_a, \bm r_b); に依存しない定数であるというのは
それほど自明なことではない。
などの物理量は、「観測可能量」とはならない。
粒子1と粒子2とが区別できないとすれば、このような物理量を測定することは不可能だからだ。

議論を場の量子論などまで進めることにより、&math(C=\pm 1); であることを導ける。
観測可能(定義可能)な物理量としては、

&math(C); が &math(+1); となるか &math(-1); となるかは粒子の種類により異なり、
電子では &math(-1); に、光子では &math(+1); になる。
- 全エネルギー
- 全運動量
- 全角運動量

前者のように &math(C=-1); となる粒子はフェルミ粒子(フェルミオン)と呼ばれ、~
後者のように &math(C=+1); となる粒子はボーズ粒子(ボゾン)と呼ばれる。
のような「全粒子の物理量の総和」や、

フェルミ粒子はスピンが半整数値をとり、~
ボーズ粒子はスピンが整数値をとることも、同時に導かれる。
- ある範囲に入る粒子の数
- 上向きスピンを持つ粒子の数

* パウリの排他律 [#ze677499]
のように「ある条件を満たす粒子数」など、~
「個々の粒子を区別せずに定義できるもの」のみとなる。

フェルミオンに関する著しい性質として、
2つのフェルミオンが同じ座標にいる確率は常にゼロになる。
* 粒子の入れ替え演算子とその固有値 [#o688ef49]

なぜならこの場合、2つの位置座標を入れ替えても関数形が変わらないため、
不可弁別性が成り立つとき、同種粒子 $j$ と $k$ とを入れ替えた状態は同じ状態を表すから、

&math(
&\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_a,\dots,t)=C\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_a,\dots,t)\\
);
$$
\begin{aligned}
&\big|\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots,t)\big|^2\\
=&\big|\Psi(\dots,\bm r_b,\dots,\bm r_a,\dots,t)\big|^2\\
&\hspace{1.2cm}{}^\uparrow_j\hspace{1cm}{}^\uparrow_k
\end{aligned}
$$

&math(
&(1-C)\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_a,\dots,t)=0\\
);
でなければならない。すなわち、

&math(
&2\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_a,\dots,t)=0\\
);
$$
\begin{aligned}
&\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots,t)\\
=C&\Psi(\dots,\bm r_b,\dots,\bm r_a,\dots,t)\ \ \ ただし |C|=1\\
&\hspace{1.1cm}{}^\uparrow_j\hspace{1cm}{}^\uparrow_k
\end{aligned}
$$

となり、波動関数の値がゼロになる。
であるから、同種の2つの粒子の座標(一般には空間座標+スピン座標)を入れ替えても、
波動関数の絶対値は変化せず、位相のみが変化することになる。

ボゾンの場合には &math(1-C=0); となるため、必ずしも波動関数はゼロとならず、
同じ座標に複数の粒子が存在できる。
不可弁別性だけが条件であれば、
$C$ は時刻 $t$ や位置座標 $\bm r_k$ の関数であっても構わないのであるが、
実際には $C$ の値は粒子の種類によって $\pm 1$ のどちらか一方を取らなければならないことが知られている。

通常「パウリの排他律」と言った場合には、
「複数のフェルミ粒子が同じ量子状態を占めることはできない」という意味であるが、
根本にある原理は上記と同じである。
* 相互作用のない2つの粒子 [#ec9cc311]
このことを、「関数に作用して粒子 $j$ と $k$ の座標入れ替える」
という「座標の入れ替え演算子 $\hat P_{jk}$ 」を導入して解説する。

例として、遠く離れた2つの水素原子の基底状態を考える。
まず、この $\hat P_{jk}$ は線形演算子である。

2つの原子が遠く離れていれば、
原子核 1 の周りの電子の確率分布や、原子核 2 の周りの電子の確率分布は、
水素原子が1個しかない場合の確率分布と ほぼ等しいはずである。
$$\begin{aligned}
\hat P_{12}\big[af(\bm r_1,\bm r_2)+bg(\bm r_1,\bm r_2)\big]
&=af(\bm r_2,\bm r_1)+bg(\bm r_2,\bm r_1)\\
&=a\big[\hat P_{12}f(\bm r_1,\bm r_2)\big]+b\big[\hat P_{12}g(\bm r_1,\bm r_2)\big]\\
\end{aligned}$$

孤立水素原子の基底状態の、時間によらない波動関数を &math(\varphi_0(\bm r)); とすれば、
したがって、その「固有状態」を考えることができる。
固有関数の1つを $\Phi$ とすると、

すなわち、~
原子核 1 の周りの電子の存在確率は &math(|\varphi_0(\bm r-\bm R_1)|^2);~
原子核 2 の周りの電子の存在確率は &math(|\varphi_0(\bm r-\bm R_2)|^2);~
とほぼ等しいことになる。ただし、&math(\bm R_1,\bm R_2); は2つの原子核の位置を表す。
$$\begin{aligned}
\hat P_{jk}&\Phi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots)=C\Phi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots)\\
=&\Phi(\dots,\bm r_b,\dots,\bm r_a,\dots)
\end{aligned}$$

そこで、
が成り立ち、このとき $C$ は $\hat P_{jk}$ の固有値であるから、$\bm r_a,\bm r_b$ によらない定数である。

&math(\varphi_1(\bm r)=\varphi_0(\bm r-\bm R_1));~
&math(\varphi_2(\bm r)=\varphi_0(\bm r-\bm R_2));
さらに、$\hat P_{jk}^2$ は恒等変換となるから $C^2=1$ 
であり、そこから $\hat P_{jk}$ に固有値が存在すれば $C=\pm 1$ に限られる。

と置き、系全体の波動関数を
多粒子波動関数は必ず同種粒子に対する $\hat P_{jk}$ の固有関数になっている、ということを言いたいのだがその前に、そのような固有関数が必ず存在することと、固有関数は時間発展しても固有関数のままであることと、を見ることにする。

&math(\Phi_\mathrm{d}(\bm r_1,\bm r_2)=\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2));
* 多粒子ハミルトニアンの対称性 [#jc3b610f]

としてみると、
シュレーディンガー方程式に従い時間発展する波動関数に対しては $C$ (の期待値)が時間的依存しない定数となることを多粒子ハミルトニアンの対称性から以下のように導ける。

&math(|\Phi_\mathrm{d}(\bm r_1,\bm r_2)|^2=|\varphi_1(\bm r_1)|^2|\varphi_2(\bm r_2)|^2);
2つの陽子の位置を $\bm R_1,\bm R_2$ に固定した水素様「分子」の2つの電子に対するポテンシャルは、それぞれの座標を $\bm r_1,\bm r_2$ として

となり、電子 1 の空間分布は電子 2 の位置によらず &math(|\varphi_1(\bm r_1)|^2); で表され、
電子 2 の空間分布は電子 1 の位置によらず &math(|\varphi_2(\bm r_2)|^2); で表される。
$$\begin{aligned}
V(\bm r_1,\bm r_2)&=\frac{e^2}{4\pi\epsilon_0}\Biggl[
\underbrace{
\frac{-1}{|\bm r_1-\bm R_1|}+
\frac{-1}{|\bm r_1-\bm R_2|}}_{電子1と原子核}+
\underbrace{
\frac{-1}{|\bm r_2-\bm R_1|}+
\frac{-1}{|\bm r_2-\bm R_2|}}_{電子2と原子核}+
\underbrace{\frac{+1}{|\bm r_1-\bm r_2|}}_{\text{電子間相互作用}}
\Biggr]\\
&=V_{1体}(\bm r_1)+V_{1体}(\bm r_2)+V_{2体}(\bm r_1,\bm r_2)
\end{aligned}$$ 

また、系のハミルトニアンは、
と書ける。

&math(
\hat H&=
\underbrace{\left[-\frac{1}{2m}\bm \nabla_{\bm r_1}^2-\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{e^2}{|\bm r_1-\bm R_1|}\right]}
_{\displaystyle\hat H_1}
+\underbrace{\left[-\frac{1}{2m}\bm \nabla_{\bm r_2}^2-\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{e^2}{|\bm r_2-\bm R_2|}\right]}
_{\displaystyle\hat H_2}
+\underbrace{\cancel{\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{e^2}{|\bm r_1-\bm r_2|}}}
_{\displaystyle 相互作用を無視}\\
&=\hat H_1+\hat H_2
);
このポテンシャルが2つの電子の位置座標 $\bm r_1,\bm r_2$ 
の入れ替えに対して対称性を持っている(値が変わらない)ことに注意せよ。

であるから、上記波動関数に作用させれば
$$\begin{aligned}
\hat P_{12}V(\bm r_1,\bm r_2)&=V(\bm r_2,\bm r_1)\\
&=V(\bm r_1,\bm r_2)
\end{aligned}$$

&math(
\hat H\mathit\Phi(\bm r_1,\bm r_2)
&=\hat H_1\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)+\hat H_2\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\\
&=\big[\hat H_1\varphi_1(\bm r_1)\big]\varphi_2(\bm r_2)
 +\varphi_1(\bm r_1)\big[\hat H_2\varphi_2(\bm r_2)\big]\\
&=\varepsilon\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)+\varepsilon\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\\
&=2\varepsilon\mathit\Phi(\bm r_1,\bm r_2)
);
したがって、ハミルトニアンも入れ替えに対して対称になる。

のように、&math(E=2\varepsilon); の固有関数となっており、時間を含まないシュレーディンガー方程式の解となっていることを表している。
この例に限らず、また、2粒子系に限らず、一般にハミルトニアンは同種粒子の入れ替えに対して対称な形をしている。~
 ↔ 質量やポテンシャル=相互作用が異なる粒子は「同種」と言えない

ただしこの波動関数はフェルミ粒子に要求される半対称性 &math(\Phi(\bm r_2,\bm r_1)=-\Phi(\bm r_1,\bm r_2)); を満たさない。電子 1 が &math(\bm R_1); 付近に、電子 2 が &math(\bm R_2); 付近に存在することを表す波動関数は不可弁別性を満たさないためだ。
粒子 $j,k$ が同種粒子であれば $\hat P_{jk}$ は $\hat H$ と可換となる。なぜなら、任意の $\Psi$ に対して、

正しい波動関数は、~
電子 1 が原子核 1 に、電子 2 が原子核 2 に束縛された状態と、~
電子 1 が原子核 2 に、電子 2 が原子核 1 に束縛された状態と、~
を、等しい確率で混ぜ合わせて得られる。
$$
\hat P_{jk}\big\{\hat H\Psi\big\}=\big\{\hat P_{jk}\hat H\big\}\big\{\hat P_{jk}\Psi\big\}=\hat H\big\{\hat P_{jk}\Psi\big\}
$$

&math(\Phi(\bm r_1,\bm r_2)=C_1\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)+C_2\varphi_2(\bm r_1)\varphi_1(\bm r_2));
すなわち、

等確率にするためには &math(|C_1|=|C_2|); とすべきであり、フェルミオンでは &math(\pm C); の形にすればよい。一見、&math(C=1/\sqrt 2); とすれば良さそうであるが、&math(\varphi_1); と &math(\varphi_2); との重なりを完全に無視できない限り上記2つの項は直交しないため、&math(C=1/\sqrt 2); と取っても規格化は達成されない。このことは下でもう少し詳しく見る。
$$\hat P_{jk}\hat H=\hat H\hat P_{jk}$$ あるいは $[\hat P_{jk},\hat H]=0$ 

&math(\Phi(\bm r_1,\bm r_2)=C\big\{\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)-\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\big\});
このことから、

この波動関数が &math(\Phi(\bm r_2,\bm r_1)=-\Phi(\bm r_1,\bm r_2)); を満たすことは容易に確かめられる。
+ 両者の同時固有関数が存在すること(← [[不確定性原理>量子力学Ⅰ/不確定性原理#hb461116]] で学んだ)~
(指摘し忘れていたが $\hat P_{jk}$ はエルミートである($(\hat P_{jk}\phi',\phi)=(\phi',\hat P_{jk}\phi)$)
+ $\hat P_{jk}$ に対応する物理量は定数であり、時間によらないこと~
$\frac{d}{dt}\langle C\rangle=\langle\frac1{i\hbar}[\hat P_{jk},\hat H]\rangle=0$
(← [[エーレンフェストの定理>量子力学Ⅰ/エーレンフェストの定理#j882b192]]で学んだ)

以上が1粒子の波動関数から粒子の不可弁別性を考慮して2粒子の波動関数を作る際の標準的な手順となる。
が結論される。

※ボーズ粒子であれば、&math(C_1=C_2=C); と取ればよい。
すなわち、時間に寄らないシュレーディンガー方程式の解(ハミルトニアンの固有関数)であり、
なおかつ $\hat P_{jk}$ の固有状態となるような波動関数が存在する。
現実の(非定常な)波動関数はそのような同時固有状態の線形結合で表される。
(($\hat P_{jk}$ がエルミートであれば $\phi_{\text{sym}}$ を $1$ の、$\phi_{\text{asym}}$ を $-1$ の固有関数として任意の関数を $\phi=A\phi_{\text{sym}}+B\phi_{\text{asym}}$ と展開できるが、この $\phi$ が $|\phi|^2=|\hat P_{jk}\phi|^2$ を満たすとすると、$|A\phi_{\text{sym}}+B\phi_{\text{asym}}|^2=|A\phi_{\text{sym}}-B\phi_{\text{asym}}|^2$ を得る。たぶんここから $A$ か $B$ のどちらかがゼロであることは導けないので、現実の波動関数が $\hat P_{jk}$ の固有関数となることは、$|\phi|^2=|\hat P_{jk}\phi|^2$ の要請とは別の要請になっているんだと思う。))

** 確率分布 [#y920ce4b]
そして、系がある時刻において $\hat P_{jk}$ の固有状態にあれば、
時刻が変化してもやはり同じ固有値($+1$ または $-1$)
の固有状態のままである。

&math(
\Big|\Phi(\bm r_1,\bm r_2)\Big|^2 &=C^2\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\big|^2+\big|\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\big|^2
-\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1^*(\bm r_2)\varphi_2^*(\bm r_1)
-\varphi_1^*(\bm r_1)\varphi_2^*(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)
\Big]\\
&=C^2\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\big|^2+\big|\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\big|^2
-2\,\mathrm{Re}\Big\{\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1^*(\bm r_2)\varphi_2^*(\bm r_1)\Big\}
\Big]\\
);
* ボゾンとフェルミオンの対称性・反対称性 [#s491e79c]

1粒子の時間によらない波動関数は常に実数に取れることを利用すると、
場の量子論などの進んだ研究から、
多粒子系の波動関数はシュレーディンガー方程式の解になることに加えて
任意の同種粒子に対する入替操作 $\hat P_{jk}$ に対する
固有関数になっているという条件も満たさねばならないことが知られている。

&math(
\Big|\Phi(\bm r_1,\bm r_2)\Big|^2 
&=C^2\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\big|^2+\big|\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\big|^2
-2\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_2)
\Big]\\
);
例えば電子2個、光子2個からなる系の波動関数 $\Psi$ について、
$1$ 番目と $2$ 番目が電子であれば $\hat P_{12}$ に対する固有値は $-1$ となり、$3$ 番目と $4$ 番目が光子であれば、$\hat P_{34}$ に対する固有値は $+1$ となる。したがって、この波動関数は、

ここから、粒子1の確率分布を求めると、
$$\hat H\Psi=E\Psi$$
$$\hat P_{12}\Psi=-\Psi$$
$$\hat P_{34}\Psi=\Psi$$

&math(
P(\bm r_1)
&=\int\Big|\Phi(\bm r_1,\bm r_2)\Big|^2 d\bm r_2\\
&=C^2\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\big|^2\int\big|\varphi_2(\bm r_2)\big|^2d\bm r_2+\big|\varphi_2(\bm r_1)\big|^2\int\big|\varphi_1(\bm r_2)\big|^2d\bm r_2
-2\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_1)\int\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_2)d\bm r_2
\Big]\\
&=C^2\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\big|^2+\big|\varphi_2(\bm r_1)\big|^2
-2\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_1)\int\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_2)d\bm r_2
\Big]\\
);
を満たさなければならないことになる。(本当は、光子などを扱うには相対論的効果や生成・消滅過程を考慮した記述が必要になるため この書き方はかなり問題があるのだが・・・雰囲気だけ読み取って欲しい。)

&math(\varphi_1); と &math(\varphi_2); とが直交する場合には
&math(\int\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_2)d\bm r_2=0); であるから
第3項は消えて、
入れ替え演算子の固有値は $C=\pm 1$ に限られるのであった:

&math(
P(\bm r_1)
&=\frac{1}{2}\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\big|^2+\big|\varphi_2(\bm r_1)\big|^2
\Big]\\
);
- $C=-1$ となる粒子はフェルミ粒子(フェルミオン)と呼ばれる~
→ スピンは半整数値を取る
-- 素粒子とされるクォーク(通常単独では存在しない)やレプトン(電子やニュートリノなど)
-- 3つのクォークからなるハドロン(陽子や中性子など)
-- 奇数個のフェルミオンが硬く結びついた粒子(He^^3^^ 原子 = 陽子×2+中性子×1+電子×2 など)~
 → そのような粒子の入れ替えはフェルミオンの奇数回の入れ替えに分解できる~
~
- $C=+1$ となる粒子はボーズ粒子(ボゾン)と呼ばれる~
→ スピンは整数値を取る
-- 素粒子の間の相互作用を媒介するゲージ粒子である光子やウィークボソン、グルーオンなど(それぞれ電磁気力、弱い力、強い力を媒介)
-- 偶数個のフェルミオンが強く結びついた粒子(超流動を生じる He^^4^^ 原子 = 陽子×2+中性子×2+電子x2、超伝導を担うクーパー対 = 電子×2 など)~
 → そのような粒子の入れ替えはフェルミオンの偶数回の入れ替えに分解できる
-- フォノンやプラズモンなど、集団励起状態を表す準粒子

粒子の確率分布は単に &math(|\varphi_1|^2); と &math(|\varphi_2|^2); 
の平均値となる。
すべての量子力学的粒子はこのどちらかに属する。

一方、&math(\varphi_1); と &math(\varphi_2); とが直交しない場合には、
&math(\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_1)); がゼロと見なせない領域、つまり
&math(\varphi_1); と &math(\varphi_2); とが両方ともゼロと見なせない領域で、
&math(|\varphi_1|^2); と &math(|\varphi_2|^2); の平均値からずれることになる。
((&math(\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_1)); がゼロと見なせない領域が存在することは、2つの粒子が相互作用をしないという仮定に反することになるため近似の精度には注意が必要である))
重要なことなのでもう一度書くと、粒子の入れ替えに対する
フェルミ粒子の反対称性 $\hat P_{jk}\Psi=-\Psi$ や
ボーズ粒子の対称性 $\hat P_{jk}\Psi=\Psi$ 
は、「シュレーディンガー方程式とは独立した基本原理」であるから、
多粒子系の波動関数を求める際には、それがシュレーディンガー方程式を満たすことに加えて、
これらの対称性を備えていることも確認しなければならない。

2つの波動関数を水素原子の基底状態を模して &math(\propto e^{-|\bm r-\bm R|});
と置き、&math(P(\bm r_1)); を計算した結果を以下に示す。
以下では主に電子を想定して、フェルミオンについて主に学ぶ。
ボゾンについては付録的に述べる。

2つの波動関数が両方とも値を持つことになる中央部で不自然に確率分布が小さくなっている他は、
おおむね1粒子波動関数を足し合わせた分布が再現されていることが分かる。
** 波動関数の一意性 [#t95bbee6]

&ref(two-hydrogens-2d.png);
逆に言えば、与えられたポテンシャルに対してシュレーディンガー方程式(+境界条件+規格化条件)だけでは
数学的に波動関数を一意に定めることはできず、
対称性を指定して始めて波動関数が1つに定まるのである(位相因子を除いて)。
* パウリの排他律1 [#ze677499]

&ref(two-hydrogens-profile.png);
フェルミオンに関する著しい性質として、
2つのフェルミオンが同じ座標を取る確率は常にゼロになる。

#collapsible(Mathematica ソース);
なぜならこの場合、2つの位置座標を入れ替えても形が変わらないため、

 LANG:mathematica
 phi[x_, q_, d_] := Exp[-Sqrt[(x - d)^2 + q^2]]
 
 phi1 = Compile[{x1, q1, d}, 
    NIntegrate[
     2 Pi q2 (phi[x1, q1, d] phi[x2, q2, -d] - 
        phi[x1, q1, -d] phi[x2, q2, d]),
     {x2, -100.0, 100.0}, {q2, 0, 100.0}]];
 
 image = Table[phi1[x, q, 3], {x, 0, 10, 0.1}, {q, 0, 5, 0.1}];
 
 ListDensityPlot[
  Flatten[Table[{x, q, 
     image[[Abs[Round[x/0.1]] + 1]][[Abs[Round[q/0.1]] + 1]]}, {x, -10,
      10, 0.1}, {q, -5, 5, 0.1}], 1], PlotRange -> All, 
  AspectRatio -> 1/2]
 
 profile = Table[phi1[x, 0, 3], {x, 0, 10, 0.01}];
 
 ListPlot[Table[{x, profile[[Abs[Round[x/0.01]] + 1]]}, {x, -10, 10, 
    0.01}], PlotRange -> All]
 
#collapsible();
* スレーター行列式 [#o506f6bd]
$$\begin{aligned}
\Psi(\dots,\bm r_a,s_a,\dots,\bm r_a,s_a,\dots,t)=C\Psi(\dots,\,&\bm r_a,s_a,\dots,\bm r_a,s_a,\dots,t)\\
&\ \ \uparrow\hspace{17mm}\uparrow\\
&\ \ \ 入れ替えた
\end{aligned}$$

上でフェルミオンの波動関数が以下の性質を持っていることを学んだ。
$$
(1-C)\Psi(\dots,\bm r_a,s_a,\dots,\bm r_a,s_a,\dots,t)=0
$$

- 座標を入れ替えると符号が反転する
- 同じ座標が2つ以上あるとゼロになる
フェルミオン $C=-1$ では

これは行列式の以下の性質とよく似ている。
$$
2\Psi(\dots,\bm r_a,s_a,\dots,\bm r_a,s_a,\dots,t)=0
$$

- 2つの行を入れ替えると符号が反転する
- 同じ行が2つ以上あるとゼロになる
となり、波動関数の値がゼロであることが導かれるためだ。
これはパウリの排他律の一例となっている。

実際、上で見た2電子の波動関数は
ここで、$s_?$ はスピン座標である。この授業ではスピンについて深く学ばないが、
スピンが異なれば波動関数値が異なって構わないため、ここで言う「同じ座標」とは、
「同じ空間座標かつ同じスピン」という意味に捉えて欲しい。

&math(
\Phi(\bm r_1,\bm r_2)
&=\frac{1}{\sqrt 2}\Big[\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)-\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\Big]\\
&=\frac{1}{\sqrt 2}\left|\begin{matrix}
\varphi_1(\bm r_1) & \varphi_1(\bm r_2) \\
\varphi_2(\bm r_1) & \varphi_2(\bm r_2) \\
\end{matrix}\right|
);
ボゾンの場合には $1-C=0$ となるため、必ずしも波動関数はゼロとならず、
同じ座標に複数の粒子が存在できる。

のように2×2の行列式の形に表せる。
* 質問・コメント [#t9e105fe]

一般の多粒子系においても、
#article_kcaptcha
**不可弁別性と確率 [#mb95aff5]
>[[岡安]] (&timetag(2021-02-27T08:20:24+09:00, 2021-02-27 (土) 17:20:24);)~
~
直方体の容器の中に2個の粒子が入っていてランダムに運動しています。~
次の3つの事象が起きる確率を考えます。~
Ⅰ:2個とも容器の左半分にある。~
Ⅱ:1個が左半分に、もう1個が右半分にある。~
Ⅲ:2個とも右半分にある。~
2個の粒子が区別できるなら、粒子をそれぞれ粒子1,粒子2として同様に確からしい事象を考えると~
Ⅰ:{粒子1左,粒子2左}~
Ⅱ:{粒子1左,粒子2右},{粒子1右,粒子2左}~
Ⅲ:{粒子1右,粒子2右}~
という4つの事象が考えられるので、求めるそれぞれの確率は~
P(Ⅰ)=1/4,P(Ⅱ)=1/2,P(Ⅲ)=1/4 となります。(2枚のコイントスと同じ。)~
2個の粒子が区別できないなら、同様に確からしい事象は~
Ⅰ:{1つの粒子左,もう1つの粒子左}~
Ⅱ:{1つの粒子左,もう1つの粒子右}~
Ⅲ:{1つの粒子右,もう1つの粒子右}~
という3つなので、求めるそれぞれの確率は~
P(Ⅰ)=1/3,P(Ⅱ)=1/3,P(Ⅲ)=1/3 となります。ご存知のように、この粒子が「区別できない」ということを使って量子状態に粒子を分配する仕方の数を求め、ラグランジュの未定乗数法を用いボース・アインシュタイン分布もフェルミ・ディラック分布も求めるというのが現代物理学の主流です。~
ところが、この P(Ⅰ)=1/3,P(Ⅱ)=1/3,P(Ⅲ)=1/3という確率はコルモゴロフによる確率の公理(高校の数学Aでは「確率の基本性質」)に反してしまいます。また、ボース・アインシュタイン分布もフェルミ・ディラック分布も量子状態が粒子を授受することでエネルギー平衡状態にあると考えても求められます。不可弁別性については見直す必要があるのではないでしょうか。~

&math(
\Phi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)
&=\frac{1}{\sqrt{n!}}\left|\begin{matrix}
\varphi_1(\bm r_1) & \varphi_1(\bm r_2) & \dots  & \varphi_1(\bm r_n) \\
\varphi_2(\bm r_1) & \varphi_2(\bm r_2) &        & \vdots \\
\vdots             &                    & \ddots & \vdots \\
\varphi_n(\bm r_1) & \dots              & \dots  & \varphi_n(\bm r_n) \\
\end{matrix}\right|
);
//
- 書いてくださった内容のうち最後の3行以外についてはおっしゃる通りと思います。ただ私の理解不足で「不可弁別性については見直す必要がある」というのがどの点を指して書かれたものか理解できませんでした。もしよろしければ教えていただけますでしょうか? -- [[武内 (管理人)]] &new{2021-02-28 (日) 21:23:44};
- P(Ⅰ)=1/3,P(Ⅱ)=1/3,P(Ⅲ)=1/3という確率は確率の公理に反するという点です。 -- [[岡安]] &new{2021-03-01 (月) 10:00:00};
- このページにおける不可弁別性の説明の仕方に問題があるというのではなく、不可弁別性自体に疑義があるため、不可弁別性を元にして量子力学を学ぶこと自体を見直すべきであるというご指摘でしょうか? -- [[武内 (管理人)]] &new{2021-03-01 (月) 20:52:44};
- 私が読み違えていたために後出しになってしまい申し訳ないのですが「2個の粒子が区別できないなら、同様に確からしい事象は・・・」と書かれた部分は正しくないように思います。事象を I = {左に2つ}、 II = {左右に1つずつ}、 III = {右に2つ} の3つに分けるべきであるというのは正しいですが、そのことと、それら3つが等確率で生じるということとは直接結び付きません。この例における確率分布は I, II, III に対応する統計力学的に実現可能な状態数の比で決まると考えるのが良さそうです。粒子間に古典的な相互作用が働かない場合、古典力学では正確に 1:2:1 の確率分布になるところ、量子力学は不可弁別性から生じる「交換相互作用」の分だけこの確率からずれる可能性を示唆します。とはいえ不可弁別性から 1:1:1 になることが導かれるわけではないのだと思います。 -- [[武内 (管理人)]] &new{2021-03-01 (月) 21:54:17};
- 感動しています。先生はP(Ⅰ)=1/3,P(Ⅱ)=1/3,P(Ⅲ)=1/3という考えは間違っているとお考えなんですね。 ①ギブスのパラドックスを解消するためには(またはエントロピーの相加性が成り立つためには)区別できるn個の同じ種類の気体分子からなる系のミクロ状態の数ωをn!で割ったものω/n!をミクロ状態の数としなければならない。そこで、同じ種類の気体分子は区別できないと考えなければならないと教わりました。 ②g個の量子状態にn個のボソンを分配する仕方の数は(n+g-1)!/{n!(g-1)!}通りで同様に確からしい(g=2,n=2としたら容器の中の2粒子と同じ)、フェルミオンならg!/{n!(g-n)!}通りと教わりました。l 「詳解 現代物理学演習」後藤憲一他、「確率・統計入門」小針アキ宏、「An Introduction to Its Applications」W.Fellerにも書かれています。  ①も②も間違っていますよね。ある物理学者はある数学者に「君がそれを認めたら物理学がひっくり返ってしまう。」と言ったそうですが、そんなことはないんですね。安心しました。長々と書き申し訳ありません。 -- [[岡安]] &new{2021-03-02 (火) 15:38:20};
- 2つの1粒子状態に2つの粒子を詰める話と、箱の左右どちらで見つかるかという話とは異なります。後者は可能なすべてのミクロ状態に対して統計的平均を取った結果の空間分布で決まります。その結果が $P(\mathrm{I})=1/3,P(\mathrm{II})=1/3,P(\mathrm{III})=1/3$ になることを不可弁別性から示せるわけではないと思います。一方、2つの1粒子状態 $\psi_1,\psi_2$ に2つの粒子 $1,2$ を詰める話 ($g=2,n=2$) では $\mathrm{I}=\psi_1(1)\psi_1(2),\mathrm{II}=\psi_1(1)\psi_2(2)+\psi_2(1)\psi_1(2),\mathrm{III}=\psi_2(1)\psi_2(2),\mathrm{IV}=\psi_1(1)\psi_2(2)-\psi_2(1)\psi_1(2)$ の4つを独立な多粒子系量子状態として取れますが、このうちボゾンでは $\mathrm{I,II,III}$ が可能で、エネルギーに差異がないとすれば統計力学的にはこれら3つの状態が等確率 1:1:1 で実現するのに対して、フェルミオンでは $\mathrm{IV}$ だけが可能です。こちらの意味であれば私は $P(\mathrm{I})=1/3,P(\mathrm{II})=1/3,P(\mathrm{III})=1/3$ という考えが間違っているとは思いません。 -- [[武内 (管理人)]] &new{2021-03-02 (火) 17:17:55};
- この文脈であれば、ボゾンでは $P(\mathrm{I})=1/3,P(\mathrm{II})=1/3,P(\mathrm{III})=1/3,P(\mathrm{IV})=0$、フェルミオンでは $P(\mathrm{I})=0,P(\mathrm{II})=0,P(\mathrm{III})=0,P(\mathrm{IV})=1$ と書いておくのが良いかもしれませんね。 -- [[武内 (管理人)]] &new{2021-03-02 (火) 17:30:06};
- $g$ 個の1粒子状態に $n$ 個の粒子を入れる問題においても、「ミクロな状態数」としては「(独立かつ実現可能な)多粒子状態の数」をカウントしなければならない、というのが重要なのだと思います。 -- [[武内 (管理人)]] &new{2021-03-02 (火) 17:39:30};
- P(Ⅰ)=1/3,P(Ⅱ)=1/3,P(Ⅲ)=1/3という確率は空間については間違っているが量子状態への分配については正しいとお考えということは、学習院大学の田崎先生と同じお考えということですね。「エントロピーの相加性から判断して同じ種類の気体分子の不可弁別性を示すことができる」ということには反対でいらっしゃるということですね。 2個のサイコロの偶奇を考えてもP(Ⅰ)=1/3,P(Ⅱ)=1/3,P(Ⅲ)=1/3という確率は確率の公理に反するので、2個の同種ボソンが何かしら特殊な関係にあるにしてもピッタリP(Ⅰ)=P(Ⅱ)=P(Ⅲ)となるというのは何故なのでしょう?P(Ⅰ)=1/4,P(Ⅱ)=1/2,P(Ⅲ)=1/4の方がはるかに自然に思えます。また、P(Ⅰ)=1/4,P(Ⅱ)=1/2,P(Ⅲ)=1/4は2個の粒子を区別してもしなくても導くことができます。 -- [[岡安]] &new{2021-03-03 (水) 15:18:39};
- 『「エントロピーの相加性から判断して同じ種類の気体分子の不可弁別性を示すことができる」ということには反対』がどこから来るのかが理解できていません。2個のサイコロの偶奇とは関係ないと思います。I, II, III の多粒子状態がぴったり同じ確率を持つ理由は、この問題設定でそれらが厳密に同じエネルギーを持つと仮定していることが直接の原因になります。 -- [[武内 (管理人)]] &new{2021-03-03 (水) 15:41:26};
- 空間的な左右への配分、量子状態への分配、2個のサイコロの偶奇といった問題を同一視できないことは、2つの粒子がフェルミオンである場合を考えれば明らかなように思うのですが、岡安さんはフェルミオンについても P(Ⅰ)=1/4,P(Ⅱ)=1/2,P(Ⅲ)=1/4 であると考えてらっしゃるのでしょうか? -- [[武内 (管理人)]] &new{2021-03-03 (水) 15:58:39};
- 勿論、量子状態への粒子の分配の話はボソンについてです。私があげた3つの文献にはいずれも(n+g-1)!/{n!(g-1)!}を求めるのにg個の区別できる箱にn個の区別できない粒子(またはボール)を分配する仕方の数と同じであるとしています。2粒子の左右の空間への配分ではこの式にならないと仰っていられるということは、(ちょっと角が立ちますが)これらの文献の説明には同意されないということですよね。先生のように、誰が言ったとしても間違っていることは間違っていると言って下さる方こそ学習者の味方です。 -- [[岡安]] &new{2021-03-04 (木) 14:29:38};
- 「g個の区別できる箱にn個の区別できない粒子(またはボール)を分配する仕方の数」というのも、急に出てきた新しい話のように思います。また、~~~として分類した際の場合の数が (n+g-1)!/{n!(g-1)!} である、という話と、それぞれのミクロな状態が等確率で実現する、という話と、その結果としてマクロな状態が等確率で実現する、という話も分けて考える必要があります。まずは個々の「例え話」について、その話に出てくるどの性質が量子統計のどの性質とどのように似ているとして例えられたのかを整理できると、より理解が進むように感じました。ここでの議論がその助けになっていれば幸いです。(私自身としてはいろいろと発見や学びがありとても有意義でした。ありがとうございました。) -- [[武内 (管理人)]] &new{2021-03-04 (木) 15:38:22};

とすることで、相互作用を無視できる &math(n); 個の粒子の波動関数を1粒子の波動関数から作れる。
#comment_kcaptcha

この右辺に現れる行列式はスレーター行列式と呼ばれる。
**多粒子ハミルトニアンの対称性 [#e150cb59]
>[[いえやす]] (&timetag(2020-12-09T01:29:33+09:00, 2020-12-09 (水) 10:29:33);)~
~
同種粒子の扱い方について勉強しています。~
H と P が可換であることについて質問させていただきます。~
~
① 置換 P とハミルトニアンが可換であることの証明で、積 HΨ に置換 P を作用させると~
 P{HΨ} = {PH}{PΨ}~
となっているのですが、積 HΨ に P を作用させる場合は、H, Ψのそれぞれに P を作用させると考えなければならないのでしょうか?~
② これは置換 P なのでそのように考えるのでしょうか?~
③ P は1次演算子なので、すべての1次演算子f に対しても~
 f{HΨ} = {fH}{fΨ}~
となるのでしょうか?~
~
ご指導よろしくお願いします。~

行列式の定義により、右辺には &math(n!); 個の項が現れる。
それぞれの項は、&math(n); 個の粒子をそれぞれどの1粒子状態に割り当てるか、
の割り当て方の1つ1つに対応し、その割り当て方は &math(n!); 通り存在する。
それらに適切な符号を付け、均等に加えたのがスレーター行列式である。
//
- 中身を具体的に考えてみるとわかると思います。$a,b$ を入れ替える $P_{ab}$ という演算子を考えると、$P_{ab}\{f(a,b)\cdot g(a,b)\}=f(b,a)\cdot g(b,a)$ ですが、これは $\{P_{ab}f(a,b)\}\{P_{ab}g(a,b)\}$ と等しいです。一方、例えば $P_x$ が $x$ での微分であるとすれば、$P_x\{c(x)d(x)\}=\{P_xc(x)\}d(x)+c(x)\{P_xd(x)\}$ だったりしますね。線形演算子は和に対しては分配法則が成り立ちますので $P(f+g)=Pf+Pg$ ですが、積に対してどういう演算法則が成り立つかはそれぞれ個別に考えなければなりません。 -- [[武内 (管理人)]] &new{2020-12-09 (水) 11:28:17};
- ご説明ありがとうございます。考え方がよく分かりました。 -- [[いえやす]] &new{2020-12-09 (水) 20:40:05};

&math(
\Phi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)
&=\frac{1}{\sqrt{n!}}\sum_{(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)}\sigma(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)
\varphi_1(\bm r_{p_1})\varphi_2(\bm r_{p_2})\dots\varphi_n(\bm r_{p_n})
);
#comment_kcaptcha

※ボゾンの場合には各項の符号を与える &math(\sigma(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)); の部分を &math(+1); 
に置き換えればよい
**質問 [#mc656d16]
>[[岡野]] (&timetag(2020-03-12T04:44:52+09:00, 2020-03-12 (木) 13:44:52);)~
~
同種粒子の不可弁別性は不確定性原理による性質ということですか~

* 平均場近似 [#sbab0752]
//
- 不確定性原理は非可換な演算子で表される2つの物理量を同時に測定した際の確率分布の広がりに関する原理であるのに対して、同種粒子の不可弁別性は粒子の入れ替えに対するハミルトニアンの対称性と関連する波動関数の性質に関する原理ですので、少なくともこの授業で扱う範囲ではまったく独立のものととらえて構わないと思います。もっと進んだ理論において両者を関連付ける話題があるのかどうか、、、勉強不足でわからないのですが、なにかそういった話があるのでしょうか? -- [[武内(管理人)]] &new{2020-03-12 (木) 16:20:26};
- 小出昭一郎著,量子力学IIの11ページにある説明は、粒子の位置と運動のどちらも完全には定められないという点を理由に説明を進めているので、同種粒子の不可弁別性は不確定性原理によるのであるのかと疑問に感じ、質問させていただきました。 -- [[岡野]] &new{2020-03-13 (金) 10:03:27};

上記のように1粒子状態を複数集めて他粒子状態を作れるためには、
粒子間の相互作用がないことを仮定しなければならないが、
それでは興味のある問題は1つも解けないことになってしまう。
#comment_kcaptcha

そこで、擬似的に相互作用をなくすために他の粒子からの相互作用を平均化してしまい、
ポテンシャル &math(V); に含めてしまうことが行われる。

例えば、粒子 1 が &math(\bm r_1); にある際に他の粒子から受けるポテンシャルは、

&math(V(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n));

であるはずのところを、

&math(V_1(\bm r_1)=\int\dots\int V(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)\,\rho(\bm r_2,\bm r_2,\dots,\bm r_n)\,d\bm r_2d\bm r_3\dots d\bm r_n);

としてしまったのが「平均場」である。ここで &math(\rho(\bm r_2,\bm r_2,\dots,\bm r_n)); 
は粒子 2~粒子 &math(n); がそれぞれ &math(\bm r_2,\bm r_2,\dots,\bm r_n); にいる確率である。

粒子 &math(j); に対する平均場を &math(V_j(\bm r_j)); と書けば、この粒子の運動は

&math(\left[-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2+V_j(\bm r_j)\right]\phi_j(\bm r_j)=\varepsilon_j\phi_j(\bm r_j));

という1体問題の波動方程式を解くことで得られる。

とはいえ &math(\rho(\bm r_2,\bm r_2,\dots,\bm r_n)); が未知である限り上記の方程式は決定されないのであるが、上記の方程式の解を使えば

 &math(\rho(\bm r_2,\bm r_2,\dots,\bm r_n)=|\varphi_2(\bm r_2)|^2\,|\varphi_3(\bm r_3)|^2\dots|\varphi_n(\bm r_n)|^2);

などと書けることから、&math(\varphi_j(\bm r_j)); をうまく決めて上記の1体ポテンシャルと波動方程式が自己無矛盾(=自己無撞着=セルフコンシステント)に解けたとすれば、その波動方程式が平均場近似の下での「正しい波動関数」であると言える。

このように、相互作用する多粒子に対する問題を、平均化された場の中を運動する1体問題として近似し、平均場と波動方程式をセルフコンシステントに解く方法を「平均場近似による方法」と呼ぶ。

多体問題をそのまま解くことはほぼ不可能であるため、量子力学における多体問題はほぼ必ず平均場近似を用いて議論される。


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