カノニカル分布の導出 のバックアップソース(No.2)

更新

* 概要 [#e3a482b6]

納得のいく「カノニカル分布の導出法」がネット上でなかなか見つけられなかったため、自分でやってみました。

でもまだ完全には納得していません。。。

** 目次 [#ja7a6f13]
#contents

* カノニカル分布の導出1:状態密度を使う [#r56d6657]

注目する系 &math(\mathrm S); (System) が温度 &math(T); の熱浴 &math(\mathrm R); (Reserver) と平衡状態にあるとします。

また、熱浴側のエネルギー &math(E_\mathrm{R}); が &math(E\le E_\mathrm{R}<E+\delta E); となるような熱浴の微視的状態の数を
&math(W_{\mathrm R}(E)\delta E); と書けるとします。すなわち &math(W_{\mathrm R}); は熱浴の状態密度です。

この熱浴に対して、

>1. 「エネルギーが &math([E, E+\delta E)); の範囲にある」という巨視的状態の持つエントロピーは~
 &math(S_{\mathrm R}(E,\delta E)=k_B\log\{W_{\mathrm R}(E)\delta E\});  (ボルツマンのエントロピー)
>
>2. 閉じた系に対する熱力学の等式:~
 &math(dE=TdS);
>
>3. 熱浴の、エネルギー &math(E); に対する確率密度関数 &math(p_\mathrm{R}); は次式で与えられる。~
 &math(
p_\mathrm{R}(E)=\frac{W_{\mathrm R}(E)}{\int_{-\infty}^\infty W_{\mathrm R}(E')dE'}\propto W_{\mathrm R}(E)
);  (等分配の法則)

が成り立つことを前提としてカノニカル分布を導出します。

1., 2. から、温度 &math(T); が統計力学的な量である &math(W_\mathrm{R}(E)); により次のように定義されることが分かる。

 &math(
T(E)&\equiv\left(\frac{dS}{dE}\right)^{-1}\\
&=\left[k_B\frac{d}{dE}\Big\{\log \Big(W_\mathrm{R}(E)\delta E\Big)\Big\}\right]^{-1}\\
&=\left[k_B\frac{d}{dE}\Big\{\log W_\mathrm{R}(E)+\cancel{\log\delta E}\Big\}\right]^{-1}\\
&=\frac{1}{k_B}\left[\frac{d\log W_\mathrm{R}(E)}{dE}\right]^{-1}\\
);

このとき、小さなエネルギーの変化 &math(-\Delta E); に対して、

 &math(
\frac{1}{k_BT}=\frac{d\log W_\mathrm{R}(E)}{dE}
= \frac{\log W_{\mathrm R}(E-\Delta E)-\log W_{\mathrm R}(E)}{-\Delta E}
);

 &math(
\exp\left[-\frac{\Delta E}{k_BT}\right]=\frac{W_{\mathrm R}(E-\Delta E)}{W_{\mathrm R}(E)}
);

さらに 3. を用いると、

 &math(
p_\mathrm{R}(E-\Delta E)=p_\mathrm{R}(E)\exp\left[-\frac{\Delta E}{k_BT}\right]
);

ここで、系 &math(\mathrm S);と熱浴 &math(\mathrm R); とを合わせた全エネルギーを &math(E); とすれば、~
注目する系が &math(\Delta E); を取る確率 &math(p_{\mathrm S}(\Delta E)); は、~
熱浴が &math(E-\Delta E); を取る確率 &math(p_\mathrm{R}(E-\Delta E)); 
と等しくなります。

すなわち、

 &math(
p_{\mathrm S}(\Delta E)=p_{\mathrm S}(0)\exp\left[-\frac{\Delta E}{k_BT}\right]
);

「&math(\Delta E); が小さい」という上記の条件を物理学的な言葉で記述するなら、「系が熱浴とエネルギーをやりとりしても熱浴の温度が変化しない」という条件に読み替えられるため、系が熱浴に対して小さい限り一般に、

 &math(
p_{\mathrm S}(E)=p_{\mathrm S}(0)\exp\left[-\frac{E}{k_BT}\right]
);

や、

 &math(
p_{\mathrm S}(E+\Delta E)=p_{\mathrm S}(E)\exp\left[-\frac{\Delta E}{k_BT}\right]
);

が成り立つことになります。

一方、「系が熱浴とエネルギーをやりとりしても熱浴の温度が変化しない」の数学的意味は、

 &math(W_{\mathrm R}(E+\Delta E)=W_{\mathrm R}(E)\left(e^{\frac{1}{k_BT}}\right)^{\Delta E});

の右辺の &math(\left(e^{\frac{1}{k_BT}}\right)); が定数ということなので、
「熱浴の状態密度が &math(E); の近傍 &math(\Delta E); でエネルギーとともにほぼ指数関数的に増加する」
であると理解できます。

** 納得のいかない点 [#ec74646e]

完全に離散的なままだと「エネルギーによる微分」が扱えないので、
離散的な状態を微分可能な程度にならした「状態密度」を導入して議論したのですが、
もっと離散的な系に密接に対応づけられないのかどうか、
まだ完全には納得がいっていません。


* 質問・コメント [#l774a821]

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