線形代数I/教科書問/1.2 のバックアップソース(No.11)

更新

#contents

* 問1.2 [#b334ef08]

2次元ベクトルが3個以上あればそれらは1次従属であることを示せ。

* 解答 [#b87acdff]

** [準備1] [#k53c1235]

&math(n); 個のベクトル &math(\bm{a}_1, \bm{a}_2, \dots, \bm{a}_n); が線形従属であるとき、
そこに1つのベクトル &math(\bm{a}_{n+1}); を加えた(n+1)個のベクトルも
線形従属である。

** [なぜなら] [#fdd91d50]

&math(\bm{a}_1, \bm{a}_2, \dots, \bm{a}_n); が線形従属ならば

&math(x_1\bm{a}_1 + x_2\bm{a}_2 + \dots + x_n\bm{a}_n=\bm{o});

を満たす &math(\{x_k\}); で、&math(\{x_i\}\ne 0); となる要素を含むものが存在する。

この &math(\{x_k\}); に対して明らかに

&math(x_1\bm{a}_1 + x_2\bm{a}_2 + \dots + x_n\bm{a}_n + 0 \cdot \bm{a}_{n+1}=\bm{o});

であり、これは &math(\bm{a}_1, \bm{a}_2, \dots, \bm{a}_n, \bm{a}_{n+1}); が線形従属
であることを表す。

** [準備2] [#jbdb105c]

線形独立な任意の2次元数ベクトル2個 &math(\bm{a},\bm{b}); に対して &math(\bm{R}^2=[\bm{a},\bm{b}]); 
つまり、&math(\bm{R}^2\ ); は &math(\bm{a},\bm{b}); により張られる。

** [なぜなら] [#r75f4eb4]

&math(\bm{x}\in \bm{R}^2); として、&math(\bm{x}=s\bm{a}+t\bm{b}); と書けるかどうかを考える。

&math(\bm{a}=\left(\begin{array}{c}a_1\\a_2\end{array}\right));, 
&math(\bm{b}=\left(\begin{array}{c}b_1\\b_2\end{array}\right));, 
&math(\bm{x}=\left(\begin{array}{c}x_1\\x_2\end{array}\right));
と置こう。

上式は 

&math(\bm{x}=\left[\begin{array}{cc}a_1&b_1\\a_2&b_2\end{array}\right] \left(\begin{array}{c}s\\t\end{array}\right));

と書き直せるから、

&math(\ a_1b_2-b_1a_2\ne 0);

のとき、&math(\left[\begin{array}{cc}a_1&b_1\\a_2&b_2\end{array}\right]); の逆行列が
存在して

&math(\left(\begin{array}{c}s\\t\end{array}\right)=\left[\begin{array}{cc}a_1&b_1\\a_2&b_2\end{array}\right]^{-1}\bm{x});

として必ず s, t が存在することが示される。

後は &math(a_1b_2-a_2b_1= 0); のとき &math(\bm{a},\bm{b}); が必ず線形従属であることを示せればよい。

&math(s\bm{a}+t\bm{b}=\bm{o}); となる &math((s,t)); が唯一 &math((0,0)); に定まるかどうかを考えよう。

&math(\left\{\begin{array}{l}sa_1+tb_1=0\\sa_2+tb_2=0\end{array}\right.);

は、(1)&math(a_1\ne 0); の時、

&math(s=-tb_1/a_1);~

&math(-ta_2b_1/a_1+tb_2=0);~

&math(t(a_1b_2-a_2b_1)=0);~

であるが、最後の式は &math(a_1b_2-a_2b_1= 0); から自動的に成り立つ。

従って、上式は例えば &math((s,t)=(-b_1,a_1)); ただし &math(a_1\ne 0); を解に持つため
&math(\bm{a},\bm{b}); は線形従属であることが分かる。

(2)&math(a_1=0); のとき、&math(a_1b_2-a_2b_1= 0); から &math(a_2b_1= 0); 

そこで、(2.1)&math(a_2=0); の場合には任意の &math((s,t)=(s,0)); に対して
上式が成り立つことが明らか。

また、(2.2)&math(a_2\ne 0); の場合には &math(b_1=0); となって、
例えば &math((s,t)=(b_2, a_2)); ただし &math(a_2\ne 0); に対して上式が成り立つ。

従って、&math(R^2\ ); が &math(\bm{a},\bm{b}); により張られないのは
&math(\bm{a},\bm{b}); が線形従属である場合に限られることが示され、
その対偶として上の命題が証明された。

** [問の解答] [#m9a7a093]

線形従属なベクトルの組に新たにベクトルを追加してもやはり線形従属であるから、
二次元数ベクトルが3個の時に必ず線形従属になることを言えば良い。

これらを &math(\bm{a},\bm{b},\bm{c}); と置こう。

もし &math(\bm{a},\bm{b}); が線形従属であれば &math(\bm{a},\bm{b},\bm{c}); も
線形従属であるから &math(\bm{a},\bm{b}); が線形独立である場合を考える。

&math(\bm{R}^2); は線形独立な2つのベクトル &math(\bm{a},\bm{b}\in \bm{R}^2); によって
張られるので、&math(\bm{c}\in \bm{R}^2); を &math(\bm{c}=s\bm{a}+t\bm{b}); の形に
書くことができる。

これは &math(s\bm{a}+t\bm{b}-\bm{c}=\bm{o}); を表しており、すなわち任意に選んだ
&math(\bm{a},\bm{b},\bm{c}\in \bm{R}^2); は必ず線形従属となる。

以上で与えられた命題は証明された。

* コメント [#i4d163d4]

何かあれば自由にコメントを付けてください。

#comment_kcaptcha

Counter: 9822 (from 2010/06/03), today: 1, yesterday: 0