スピントロニクス理論の基礎/2 のバックアップソース(No.5)

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* 2 磁性と電気伝導の基礎 [#c3828765]

#contents

** 磁化と局在スピン [#x0fcb757]

磁化 &math(\bm M); は &math(\mathrm{A/m}); という単位を持ち、物質の持つ磁気モーメント &math(\mathrm{Am^2}); を体積当たりにした量。これと原子当たりのスピンの大きさ &math(\bm S); との関係は、電子スピンあたりの磁気モーメントが &math(-g\mu_B/2); なので:

&math(
a^3 \bm M=-g\mu_B \bm S
);

より、(2.9)

&math(
\bm M=-\frac{g\mu_B}{a^3}\bm S
);

となる。(&math(|\bm S|=1/2); であることに注意)

** 電子のスピン [#j523d8aa]

量子力学では電子のスピンは &math(s=1/2); であり、
&math(S^2=\frac{3}{4}\hbar^2); および &math(S_z=\pm\frac{1}{2}\hbar); などと習うが、

ここでは古典論の範疇であるから &math(|S|=1/2); であって &math(\bm S); は任意の方向を向き、
その &math(x,y,z); 各成分は同時に決定可能である。

** ボーア磁子とg因子 [#yb87104a]

電子スピンの磁気モーメントは上記の通り

&math(a^3\bm M=-g\mu_B \bm S); 

と表される。量子力学であれば右辺の &math(\bm S); の代わりに &math(\bm S/\hbar); となるが、
これは上記の通り量子力学では &math(S=\hbar/2); であるため。

この教科書のように &math(S=1/2); である場合には、角運動量は

&math(\hbar S);

と表されるのだと思う。(&math(\hbar); はそのまま角運動量の単位を持つことに注意)

いずれにせよ、角運動量を &math(\bm L); とすれば、

&math(a^3\bm M=-g\mu_B \frac{\bm L}{\hbar}); 

である。

質量 &math(m_e); の電子が半径 &math(r); の円軌道を速さ &math(v); で回転するとき、その角運動量は
(運動量)×(原点からの距離) として求められるから、

&math(L=p r=m_e v r);

となる。同じ仮定で、この電子は &math(2\pi r); の円周上を速さ &math(v); で回転するため、
円周上を1秒間に &math(v/2\pi r); 回だけ周回する。すなわち、円軌道を流れる電流は1秒間に 

&math(\frac{ev}{2\pi r});

だけの電荷を運ぶ。上式は電流そのものを表し、

&math(I=\frac{ev}{2\pi r});

である。磁化は電流に面積を掛けて表され(MKSA単位系ならそれに &math(\mu_0); が掛かる)、

&math(a^3 M=IA=I\pi r^2=\frac{evr}{2}=\frac{e}{2 m_e}L=-g\mu_B \frac{L}{\hbar});

ボーア磁子の定義は &math(\mu_B\equiv\frac{e\hbar}{2 m_e}); なので、
&math(L); が軌道角運動量であれば当然 &math(g=1); となるが、
&math(L); がスピン角運動量の時は
&math(g\sim 2); となって、これが電子スピンの &math(g); 因子と呼ばれる物である。

電子スピンの &math(g); 因子の &math(2); からのずれ &math(a=g-2); は異常磁気モーメントと呼ばれる。

** 強磁性相互作用 [#jd67b07e]

隣り合うスピンが平行になると安定なので、最隣接のみを考慮したハミルトニアンは

&math(
H_J=-J_0\sum_{\bm r,\bm a}\bm S(\bm r)\cdot\bm S(\bm r+\bm a)
);

ただし &math((J_0>0)); であり、&math(\bm a); は隣の格子点へのベクトル。

ダブルカウントを防ぐことを考えると、立方格子であれば &math(\bm a); は

&math(
\bm a=\begin{pmatrix}a\\ 0\\ 0 \end{pmatrix} \mathrm{or}
\begin{pmatrix}0\\ a\\ 0 \end{pmatrix} \mathrm{or}
\begin{pmatrix}0\\ 0\\ a \end{pmatrix}
);

の3種類を取る。

** 連続極限 [#eb5cdf2b]

フェルミエネルギーレベルの極端に高エネルギーの電子伝導を考えない限り、
格子の効果は均して考えることができる → 連続極限

&math(
\bm S(\bm r)\cdot \bm S(\bm r+\bm a)=-\frac{1}{2}\{\bm S(\bm r+\bm a)-\bm S(\bm r)\}^2 + S^2
);

連続極限では &math(\bm S); は大きさを変えず、その向きだけを &math(a); の空間スケールに比べて十分ゆっくりと変化すると考える。

- 大きさを変えないことから &math(S^2); の項は定数項として落とせる。
- &math(\bm a); を小さいとして1次の項までで評価する。

&math(
\{\bm S(\bm r+\bm a)-\bm S(\bm r)\}^2=
\{\bm a\cdot\bm \nabla S_x(\bm r)\}^2+
\{\bm a\cdot\bm \nabla S_y(\bm r)\}^2+
\{\bm a\cdot\bm \nabla S_z(\bm r)\}^2
);

立方格子では

&math(
\bm a&=(a,0,0),(0,a,0),(0,0,a)\\
&=a\bm e_x,a\bm e_y,a\bm e_z
);

なので、

&math(
\sum_{\bm a=a\bm e_x\!,\, a\bm e_y\!,\, a\bm e_z}&
\{\bm S(\bm r+\bm a)-\bm S(\bm r)\}^2\\
=\ &a^2\{\bm \nabla S_x(\bm r)\}_x{}^2+
a^2\{\bm \nabla S_x(\bm r)\}_y{}^2+
a^2\{\bm \nabla S_x(\bm r)\}_z{}^2+\\
&a^2\{\bm \nabla S_y(\bm r)\}_x{}^2+
a^2\{\bm \nabla S_y(\bm r)\}_y{}^2+
a^2\{\bm \nabla S_y(\bm r)\}_z{}^2+\\
&a^2\{\bm \nabla S_z(\bm r)\}_x{}^2+
a^2\{\bm \nabla S_z(\bm r)\}_y{}^2+
a^2\{\bm \nabla S_z(\bm r)\}_z{}^2\\
\equiv&\ \{\nabla \bm S(\bm r)\}^2
);

より、

&math(
H_J=\frac{J}{2}\sum_{\bm r}\nabla {\bm S}(\bm r)^2
);

ただし、&math(J\equiv J_0a^2); である。

* 質問・コメント [#oc9ef424]

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