スピントロニクス理論の基礎/5-6 のバックアップソース(No.1)
更新[[[前の章へ]>スピントロニクス理論の基礎/5-5]] <<<< [[スピントロニクス理論の基礎]](目次) >>>> [[[次の章へ]>スピントロニクス理論の基礎/5-7]] #contents * 5-7 磁壁粒子 [#jb28ce63] 教科書だとこれまでの章との関係が分かりづらいのでちょっと整理してみる。 まず、この章では磁壁があたかも粒子のように振る舞う条件を考える。~ ただし、「粒子のように振る舞う」とは、質量を持っていて慣性が見られるような運動をすることを指す。 - 外場を加えたら徐々に速度が変化する - 運動エネルギーを定義できて、ポテンシャルとのやりとりで調和振動が生じる などが「粒子のような振る舞い」の代表例。 これまで、スピンのダイナミクスとして + スピン・スピン相互作用 &math(J=\lambda K); + 容易軸相互作用 &math(K); + 外部磁場 &math(B); + 困難軸相互作用 &math(K_\perp); + ピン止め相互作用 &math(V_0); の4つを考え、5-3〜5-4 において3つのケースについて見てきた。 ** 5-3 困難軸相互作用のない場合 (5.33) [#k333c792] 1 + 2 + 3 だけで 4, 5 が重要でない場合の結果が (5.33) で、その性質は - 「磁場に比例」した速度で等速並進運動し、回転も等速になる - 摩擦が大きくなればなるほど並進速度は上がり、回転速度は下がる であった。 磁場を掛けた瞬間に等速運動が開始するような運動で、 「粒子的」とはほど遠いと言える。 ** 5-5 困難軸があり、磁場が弱いとき (5.42) [#ybd7fca8] ここではピン止めは考えなかった。 この運動の性質は、 - 回転は止まっている - 磁場に比例した速度で等速並進運動する解がある - 摩擦が大きくなるほど並進速度は低下する であり、(5.33) との大きな違いは、 「等速並進運動」は解の1つであり、それ以外の解も存在することである。 特にこのケースは、&math(B\ll K_\perp); の条件では後に &math(X); 粒子と呼ばれるように磁壁があたかも粒子として運動し、 (5.42) で見た等速並進運動は外部磁場による加速運動の極限として理解されることになる。 ** 5-5 困難軸があり、磁場が強いとき (5.47) [#qe18e8bf] ここでもピン止めは考えなかった。 この運動の性質は、 - &math(\phi_0); は振動的 - &math(X); は振動しつつ並進する - 並進運動、回転運動とも、磁場が強くなると遅くなる - 磁場の強い極限では、困難軸異方性は無視できて (5.33) に帰着する - すなわち並進運動の速度は、 磁場がそれほど強くなければ摩擦が大きくなると遅くなるが、 磁場が強いところでは摩擦が大きい方が速くなる であった。 この場合も、これ以外の解は存在せず、 「粒子的」とはほど遠い運動と言える。
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