スピントロニクス理論の基礎/X-5 のバックアップ(No.2)
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経路積分について †
経路積分の導入 †
時刻
に
にあった系が、
時刻
に
にある確率が、
で表されるとする。
ファインマンの経路積分の考え方に依れば、
と を通る すべての経路 は、
その経路に沿った作用(ラグランジアンの時間積分) の を位相に持つ指数関数だけの寄与を に及ぼす。
すなわち、
&math( K(b,a)&\propto\sum_{\bm x(t)}\exp\left\{\frac{i}{\hbar}S[\bm x(t)]\right\}\\ &=\sum_{\bm x(t)}\exp\left\{\frac{i}{\hbar}\int_{t_a}^{t_b}dt\,\mathcal L[\bm x(t),\dot{\bm x}(t),t]\right\} );
である。
古典極限 †
ある経路 と少しだけ異なる とは、異なる位相を持って に寄与する。その位相差は、
&math(\frac{\delta S}{\hbar} =\frac{S[\bm x(t)+\delta\bm x(t)]-S[\bm x(t)]}{\hbar});
であるが、古典的な系(大きな系)では、小さな に対しても、 が に比べて非常に大きくなるため、 異なる経路の寄与は互いに打ち消し合い、多くの場合に総和をほぼゼロと見なすことができる。
唯一確率が打ち消さずに残るのは、 が の変化に対して停留値となる場合であり、その結果、古典的な系では を最小とする経路のみが実現されることになる。
ミクロな系では小さな に対して が と比較可能な大きさとなるために、 1つの経路のみが実現される形にはならず、「確率」が運動を支配することになる。
経路積分の時間分割 †
上記のような
を定義できるとすれば、
時刻
に
にあった系が、
時刻
に
にある確率は、
途中の時刻
にいる点
を考えることで、
&math( K(c,a)=\int d\bm x_b K(c,b)K(b,a) );
と表すことができる。
これを推し進めると、
時刻
に
にあった系が、
時刻
に
にある確率は、
時間を
個の区間に分割することにより、
&math( K(N,0)=\int d\bm x_1\int d\bm x_2\dots\int d\bm x_{N-1} \prod_{n=0}^{N-1}K(n+1,n) );
と表せることになる。
が十分に大きく、 を十分に小さいと見なせる場合には、 その間にラグランジアン が大きく変化することはないであろう。
&math( \mathcal L(\bm x,\dot{\bm x}, t)\sim \mathcal L\big(\frac{\bm x_{n+1}+\bm x_{n}}{2},\frac{\bm x_{n+1}-\bm x_{n}}{t_{n+1}-t_n}, \frac{t_{n+1}+t_n}{2}\big) );
したがって、
&math( K(n+1,n)\sim \frac{1}{A}\,\exp\left\{i\,\frac{t_{n+1}-t_n}{\hbar}\mathcal L\big(\frac{\bm x_{n+1}+\bm x_{n}}{2},\frac{\bm x_{n+1}-\bm x_{n}}{t_{n+1}-t_n}, \frac{t_{n+1}+t_n}{2}\big)\right\});
と書ける。ここで は規格化定数で、後でまた議論する。
これを代入した
&math( K(N,0)&=\int d\bm x_1\int d\bm x_2\dots\int d\bm x_{N-1} \prod_{n=0}^{N-1}\frac{1}{A}\,\exp\left\{i\,\frac{t_{n+1}-t_n}{\hbar}\mathcal L\big(\frac{\bm x_{n+1}+\bm x_{n}}{2},\frac{\bm x_{n+1}-\bm x_{n}}{t_{n+1}-t_n}, \frac{t_{n+1}+t_n}{2}\big)\right\}\\ &=\frac{1}{A^N}\int d\bm x_1\int d\bm x_2\dots\int d\bm x_{N-1} \,\exp\left\{i\sum_{n=0}^{N-1}\frac{t_{n+1}-t_n}{\hbar}\mathcal L\big(\frac{\bm x_{n+1}+\bm x_{n}}{2},\frac{\bm x_{n+1}-\bm x_{n}}{t_{n+1}-t_n}, \frac{t_{n+1}+t_n}{2}\big)\right\}\\ &=\frac{1}{A^N}\int d\bm x_1\int d\bm x_2\dots\int d\bm x_{N-1} \,\exp\left\{\frac{i}{\hbar}\sum_{n=0}^{N-1}S(n+1,n)\right\}\\ );
により、経路積分の具体的な計算方法が判明した。
慣用的にこの積分を、
&math( K(N,0)&=\int \mathcal D\bm x \exp\left\{\frac{i}{\hbar}S[\bm x(t)]\right\}\\ &\equiv\lim_{N\rightarrow\infty}\frac{1}{A^N}\int d\bm x_1\int d\bm x_2\dots\int d\bm x_{N-1} \,\exp\left\{\frac{i}{\hbar}\sum_{n=0}^{N-1}S(n+1,n)\right\}\\ );
と書き表す。