複素数ベクトル空間における内積の一般形 のバックアップソース(No.1)

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* 複素数ベクトル空間における内積の一般形 [#u9acc9ae]

- 複素数ベクトル空間に定義される任意の内積は、ある正定値((すべての固有値が正))のエルミート行列を用いて $(\bm x,\bm y)=\bm y^\dagger A\bm x$ の形に表せる。
- 逆に、ある正定値のエルミート行列を用いて $(\bm x,\bm y)=\bm y^\dagger A\bm x$ として定義された演算 $(\,\cdot\,,\,\cdot\,)$ は内積の性質を満たす。

*  証明 [#i06ddb14]

$(\,\cdot\,,\,\cdot\,)$ がある内積を表すとし、$\bm e_i$ を基本ベクトルとする。

$A_{ij}=(\bm e_i,\bm e_j)$ と置けば、任意の 

$$\bm x=\sum_{i}x_i\bm e_i,\ \bm y=\sum_{i}y_i\bm e_i$$

に対して

$$(\bm x,\bm y)=\sum_{i}\sum_{j}x_i^*y_j(\bm e_i,\bm e_j)=\sum_{i}\sum_{j}x_i^*A_{ij}y_j=\bm x^\dagger A\,\bm y$$

が成り立つ。$(\bm y,\bm x)=(\bm x,\bm y)^*$ にこの形を代入すれば、

$$(\bm y,\bm x)=\bm y^\dagger A\,\bm x=(\bm x,\bm y)^*=\underbrace{(\bm x^\dagger A\,\bm y)^*=(\bm x^\dagger A\,\bm y)^\dagger }_{\because\ \text{this is a }1\times 1\ \text{matrix}}=\bm y^\dagger A^\dagger \bm x$$

これが任意の $\bm x,\bm y$ について成り立つためには、$A^\dagger=A$ すなわち $A$ はエルミートでなければならない。

さらに、この $A$ をユニタリー行列で対角化した形を

$$
\Lambda=U^\dagger AU
$$

として、ある $i$ に対して $\Lambda_{ii}=\lambda_i\le0$ であると仮定すると、

$$
\bm x=U\bm e_i
$$

として定義される $\bm x$ に対して、

$$
(\bm x,\bm x)=\bm x^\dagger A\bm x=\bm e_i^\dagger U^\dagger AU\bm e_i=\bm e_i^\dagger\Lambda \bm e_i^\dagger=\lambda_i\le 0
$$

となってしまい、任意の $\bm x$ に対して $(\bm x,\bm x)\ge 0$ でなければならないという内積の条件と矛盾してしまう。

したがって、任意の $i$ に対して $\lambda_i>0$ でなければならず、これは $A$ が正定値であることと同義である。

上記を逆にたどることで、$A$ が正定値のエルミート行列である場合に $(\bm x,\bm y)=\bm y^\dagger A\bm x$ が内積となることを示せる。

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