ベクトル空間と線形写像 のバックアップ(No.4)

更新


線形代数I

ベクトルとは?

  • 縦数ベクトル: \begin{bmatrix}a_1\\a_2\\\vdots\\a_n\end{bmatrix}
  • 横数ベクトル: \begin{bmatrix}a_1&a_2&\cdots&a_n\end{bmatrix}
  • 幾何ベクトル: \overrightarrow{\rm AB}
  • そのほかにも様々なものをベクトルと見なせる

直交座標の成分表示で幾何ベクトルを数ベクトルと1対1に対応させられる。

ベクトル空間とベクトル

上記のように、

  • k\bm a (スカラー倍)
  • \bm a+\bm b (和)

が内部で定義されている集合を「ベクトル空間」と言い、
その要素を「ベクトル」と言う。

詳しい定義は線形代数学IIで学ぶことになる。

集合について

集合とは : 「要素」を含む物

集合については、ある要素を含むか、含まないか、が主な興味となる。

A,B を集合、 x を要素とすると、

  • A=\{x_1,x_2,x_3\} A x_1,x_2,x_3 の3つの要素からなる集合である
  • x \in A x A に含まれる
  • A \subseteq B x \in A なら x \in B である
    • すなわち A B に含まれる
    • あるいは A B の部分集合である
  • A \subset B A \subseteq B かつ A\ne B

演算が「内部で定義されている」ということ

たとえば、 A=\left\{\begin{bmatrix}1\\2\end{bmatrix}, \begin{bmatrix}-1\\3\end{bmatrix}\right\} という集合を考える。

これは2つのベクトルを含む「ベクトルの集合」であるが、スカラー倍や和に対して「閉じていない」。

例: \begin{bmatrix}1\\2\end{bmatrix}+ \begin{bmatrix}-1\\3\end{bmatrix} \notin A

したがって、こういう集合はベクトル空間とは言わない。

n 次元数ベクトル空間

  • 実数の集合を \mathbb{R}
  • n 次元(縦)実数ベクトル空間を \mathbb{R}^n

と書くことにする。

以下では主に実数ベクトル空間について学ぶが、これらを

  • 複素数の集合 \mathbb C
  • n 次元複素数の集合 \mathbb C^n

に置き換えても、すべての定理が成立することに注意せよ。

1次結合(線形結合)

c_1\bm a_1+c_2 \bm a_2+ \dots+c_r \bm a_r = \sum_{k=1}^r c_k\bm a_k

の形を \bm a_1, \bm a_2, \dots, \bm a_r の「一次結合」と言う。

例1:

\bm a, \bm b の一次結合: 3\bm a+\bm b , \bm a-\bm b , -2\bm a

例2:

\bm b \bm a_1, \bm a_2, \dots, \bm a_r の一次結合で表せるか?というような問題が出されることがある。これは、

\bm b=x_1\bm a_1+x_2 \bm a_2+ \dots+x_r \bm a_r = \Bigg[\bm a_1\ \bm a_2\ \dots\ \bm a_r\Bigg]\begin{bmatrix}x_1\\x_2\\\vdots\\x_r\end{bmatrix}=A\bm x

を満たす \bm x は存在するか?という問題と同値である。

例3:

\bm a=\begin{bmatrix}a_1\\a_2\\\vdots\\a_n\end{bmatrix}\in \mathbb R^n は、 基本ベクトル \bm e_1, \bm e_2, \dots, \bm e_n の一次結合として、

\bm a=\sum_{k=1}^ra_k\bm e_k

と表せる。これを「成分表示」と呼ぶ。

一次独立

与えられた \bm a_1, \bm a_2, \dots, \bm a_r に対して、 c_1\bm a_1+c_2 \bm a_2+ \dots+c_r \bm a_r = \bm o となるのが、 c_1=c_2=\dots=c_n=0 の時しかありえないなら、 \bm a_1, \bm a_2, \dots, \bm a_r を「1次独立である」と言う。

  • どんなベクトルが与えられても c_1=c_2=\dots=c_n=0 なら条件を満たすこと
  • 与えられたベクトルによっては c_1=c_2=\dots=c_n=0 でなくても条件を満たすこと

に注意せよ。

例: 2\begin{bmatrix}1\\2\end{bmatrix}+(-1)\begin{bmatrix}2\\4\end{bmatrix}+4\begin{bmatrix}0\\0\end{bmatrix}=\bm o

一次従属

一次独立でないことを「一次従属である」と言う。

例: \bm a,\bm b,\bm c は一次独立か、一次従属か?

例: \bm a,\bm b,\bm c が一次従属であるとき・・・

一次独立と行列の階数

一次独立の条件は \Bigg[\bm a_1\ \bm a_2\ \dots\ \bm a_n\Bigg]\bm x=\bm o の解が \bm x=\bm o しか存在しない、と言っても同じ。

A\bm x=\bm o \bm x=\bm o 以外の解を持つ、というのは、 この方程式の一般解が1以上の自由度を持つ、という意味だから、

  • \bm a_1, \bm a_2, \dots, \bm a_r が一次独立
  • それらを並べた行列 A の階数が列数 n より小さい (\rank A<n)

は同値な条件となる。

一次独立かどうかを調べるには rank を求めてベクトルの数と比べればよい。

例: \begin{bmatrix}1\\2\\2\end{bmatrix},\begin{bmatrix}2\\1\\2\end{bmatrix},\begin{bmatrix}2\\2\\a\end{bmatrix} が一次独立になる条件を求めよ。

\begin{bmatrix}1&2&2\\2&1&2\\2&2&a\end{bmatrix}\sim\begin{bmatrix}1&2&2\\0&-3&-2\\0&-2&a-4\end{bmatrix}\sim\begin{bmatrix}1&2&2\\0&1&-2a+6\\0&-2&a-4\end{bmatrix}\sim\begin{bmatrix}1&2&2\\0&1&-2a+6\\0&0&-3a+8\end{bmatrix}

したがって、 a=8/3 の時に一次従属であり、そうでなければ一次独立となる。

A が正方の時

以下の条件は同値である。

  • \bm a_1,\bm a_2, \dots,\bm a_n が一次独立
  • A\bm x=\bm o の解が \bm x=\bm o のみ
  • \rank A=n
  • A が正則
  • |A|\ne 0

すなわち、 n 個の数ベクトルが一次独立であるかどうかを調べるには |A| を計算してみればよい。

一次独立の重要な性質

\{\bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_n\} が一次独立なら その部分集合も一次独立である

∵1列でも掃き出せない列があれば \rank A<n となるから

\{\bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_n\} が一次従属なら、そこにいくつかベクトルを加えた \{\bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_n,\bm a_{n+1},\dots,\bm a_{m}\} も一次従属である

∵上の定理の対偶になっている

n 次元ベクトルを n 本以上集めたら必ず一次従属になる

∵対応する行列 A のランクは行数 n より大きくならないから。

一次結合で生成される集合

直線の方程式

ある \bm a に対して、 \bm p=s\bm a を満たす点の集合は原点を通り \bm a に平行な直線となる。

\bm a \ne \bm o である限り)

平面の方程式

ある \bm a,\bm b に対して、 \bm p=s\bm a+t\bm b を満たす点の集合は原点を通り \bm a,\bm b に平行な平面となる。

\bm a\ne \bm o , \bm b\ne \bm o , \bm a \nparallel \bm b である限り)

空間を満たす

ある \bm a,\bm b,\bm c に対して、 \bm p=s\bm a+t\bm b+u\bm c を満たす点の集合は3次元空間を満たす。

\bm a\ne \bm o , \bm b\ne \bm o , その他例外もある)

このような「例外」は \bm a,\bm b,\bm c などのベクトルが一次従属である場合である。

  • n 本のベクトルが一次独立ならば、その一次結合は n 次元空間を張る
  • ベクトルが n 本あってもそれらが一次従属ならば、その一次結合が n 次元空間を張ることはない
    n' 次元 (n'<n) を張ることになる)

空間図形とベクトル

配布プリントに従って学ぶ。

線形空間(ベクトル空間)

線形代数IIで詳しく学ぶ。線形代数Iでは扱わない。

線形写像と表現行列

\bm a\in \mathbb R^n を与えると \bm a'\in \mathbb R^m を返すような関数 f:\mathbb R^n\rightarrow\mathbb R^m を考える。

すなわち \bm a'=f(\bm a)

f は様々な物が考えられるが、任意の \bm a に対して、必ず1つだけ \bm a' が決まることが重要である。 \mathbb R^n のベクトル全てを、対応する \mathbb R^m のベクトルに変換する、という意味で、このような関数を「写像」と呼ぶこともある。

例:

\bm a=\begin{bmatrix}x\\y\end{bmatrix}\in \mathbb R^2 , \bm a'=\begin{bmatrix}x'\\y'\\z'\end{bmatrix}\in \mathbb R^3 の時、例えば

\begin{bmatrix}x'\\y'\\z'\end{bmatrix}=f(\bm a)=\begin{bmatrix}2+x\sin y\\2^y\end{bmatrix}

として定義される f は、 x,y を1組決めれば x',y',z' が決まるため、 \mathbb R^2\rightarrow\mathbb R^3 の写像となる。

線形写像

ある写像 f が線形であるとは、任意の \bm a, \bm b\in \mathbb R^n および c\in \mathbb R に対して、

  • f(\bm a+\bm b)=f(\bm a)+f(\bm b)
  • f(c\bm a)=cf(\bm a)

が成り立つことを言う。


Counter: 288877 (from 2010/06/03), today: 53, yesterday: 0