線形代数I/内積 のバックアップ(No.1)

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線形代数I

n 次元数ベクトルの標準内積

\bm a=\begin{bmatrix}a_1\\a_2\\\vdots\\a_n\end{bmatrix} , \bm b=\begin{bmatrix}b_1\\b_2\\\vdots\\b_n\end{bmatrix}\in \mathbb R^n に対して、その標準内積を

(\bm a,\bm b)=a_1b_1+a_2b_2+\dots+a_nb_n=\sum_{i=1}^na_ib_i

として定義する。

内積の性質

標準内積について以下の性質を容易に確かめられる。

  1. (\bm a,\bm b)=(\bm b,\bm a)
  2. (\bm a+\bm b,\bm c)=(\bm a,\bm c)+(\bm b,\bm c)
  3. (k\bm a,\bm b)=k(\bm a,\bm b)
  4. (\bm a,\bm a)\ge 0 かつ (\bm a,\bm a)=0 \bm a=\bm o

数学的にはこの4つの性質を持つ演算はすべて「内積」と考える。 すなわち、内積の定義の仕方には様々な物がある。

例: (\bm a,\bm b)=a_1b_1+2a_2b_2+\dots+na_nb_n=\sum_{i=1}^nia_ib_i も内積を定義する。

例:すぐには分かりにくいが、2次のベクトルに対して、

(\bm a,\bm b)=a_1b_1+a_1b_2+a_2b_1+2a_2b_2 も内積を定義する。 (確かめてみよ)

以下で見る内積の性質は上記4つの条件のみを使って定義・証明可能であるから、 標準内積だけでなく、任意の内積について成立する。

ベクトルの大きさ

(\bm a,\bm a)\ge 0 より、任意の \bm a に対して

\|\bm a\|=\sqrt{(\bm a,\bm a)}\ge 0

を定義することができる。これを \bm a のノルム(長さ・大きさ)と呼ぶ。

標準内積の場合: \|\bm a\|=\sqrt{a_1^2+a_2^2+\dots+a_n^2}

Schwartz の不等式

(\bm a,\bm b)\le\|\bm a\|\|\bm b\|

(証明)

|(t\bm a+\bm b,t\bm a+\bm b)|=(\bm a,\bm a)t^2+(\bm a,\bm b)t+(\bm b,\bm a)t+(\bm b,\bm b)

=\|\bm a\|^2t^2+2(\bm b,\bm a)t+\|\bm b\|^2\ge 0

この2次式の判別式は負でなければならないから、

(\bm b,\bm a)^2-\|\bm a\|^2\|\bm b\|^2\le 0

(\bm b,\bm a)^2\le\|\bm a\|^2\|\bm b\|^2

両者の正の平方根を取れば、与式を得る。

三角不等式

\|\bm a+\bm b\|\le\|\bm a\|+\|\bm b\|

(証明)

(左辺) ^2=(\bm a+\bm b,\bm a+\bm b)

=\|\bm a\|^2+2(\bm b,\bm a)+\|\bm b\|^2

<\|\bm a\|^2+2|(\bm b,\bm a)|+\|\bm b\|^2

<\|\bm a\|^2+2\|\bm a\|\|\bm b\|+\|\bm b\|^2

=\left(\|\bm a\|+\|\bm b\|\right)^2

両辺とも正なので、平方根を取れば与式を得る。

ベクトルの為す角

\bm a,\bm b が共にゼロでないとき、シュワルツの不等式より

-1\le\frac{(\bm a,\bm b)}{\|\bm a\|\|\bm b\|}\le1


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