線形代数I/内積 のバックアップ差分(No.3)
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[[線形代数I]] #contents * n 次元数ベクトルの標準内積 [#p13a5776] (カリキュラムと教科書との間のギャップを調整中の内容です) * 実数ベクトルの標準内積 [#p13a5776] &math(\bm a=\begin{bmatrix}a_1\\a_2\\\vdots\\a_n\end{bmatrix});, &math(\bm b=\begin{bmatrix}b_1\\b_2\\\vdots\\b_n\end{bmatrix}\in \mathbb R^n); に対して、その標準内積を &math((\bm a,\bm b)=a_1b_1+a_2b_2+\dots+a_nb_n=\sum_{i=1}^na_ib_i); として定義する。 * 内積の性質 [#vaef810c] * 実数ベクトルの内積の性質 [#vaef810c] 標準内積について以下の性質を容易に確かめられる。 + &math((\bm a,\bm b)=(\bm b,\bm a)); + &math((\bm a+\bm b,\bm c)=(\bm a,\bm c)+(\bm b,\bm c)); + &math((k\bm a,\bm b)=k(\bm a,\bm b)); + &math((\bm a,\bm a)\ge 0); かつ &math((\bm a,\bm a)=0);⇔&math(\bm a=\bm o); 数学的にはこの4つの性質を持つ演算はすべて「内積」と考える。 すなわち、内積の定義の仕方には様々な物がある。 数学的にはこの4つの性質を持つような任意の演算を「内積」と考えてよい。~ すなわち、内積の定義の仕方には標準内積以外にも様々な物がある。 例:&math((\bm a,\bm b)=a_1b_1+2a_2b_2+\dots+na_nb_n=\sum_{i=1}^nia_ib_i); も内積を定義する。 例:すぐには分かりにくいが、2次のベクトルに対して、 例:すぐには分かりにくいが、2次のベクトルに対して、~ &math((\bm a,\bm b)=a_1b_1+a_1b_2+a_2b_1+2a_2b_2); も内積を定義する。 (確かめてみよ) 以下で見る内積の性質は上記4つの条件のみを使って定義・証明可能であるから、 標準内積だけでなく、任意の内積について成立する。 * ベクトルの大きさ [#zbc3a037] 内積の定義されたベクトル空間を「内積空間」あるいは「計量空間」と呼ぶ。 &math((\bm a,\bm a)\ge 0); より、任意の &math(\bm a); に対して (複素数ベクトルについては内積の定義が多少異なるが、以下の議論はそのまま成り立つ) * ベクトルのノルム [#zbc3a037] 内積の持つ性質 &math((\bm a,\bm a)\ge 0); より、任意の &math(\bm a); に対して &math(\|\bm a\|=\sqrt{(\bm a,\bm a)}\ge 0); を定義することができる。これを &math(\bm a); のノルム(長さ・大きさ)と呼ぶ。 標準内積の場合: &math(\|\bm a\|=\sqrt{a_1^2+a_2^2+\dots+a_n^2}); 内積の定義より、&math(\|\bm a\|=0); は &math(\bm a=\bm o); の時のみ生じる。 ** Schwartz の不等式 [#m7966132] &math(\|\bm a\|^2=(\bm a,\bm a)); の書き換えは頻出するので覚えておくように。 &math(|(\bm a,\bm b)|\le\|\bm a\|\|\bm b\|); * シュワルツ (Schwartz) の不等式 [#m7966132] &math(|(\bm a,\bm b)|\le\|\bm a\|\|\bm b\|); 内積の絶対値は常に大きさの積以下である (証明) &math((t\bm a+\bm b,t\bm a+\bm b)=(\bm a,\bm a)t^2+(\bm a,\bm b)t+(\bm b,\bm a)t+(\bm b,\bm b)); &math(\|t\bm a+\bm b\|^2); &math(=\|\bm a\|^2t^2+2(\bm b,\bm a)t+\|\bm b\|^2\ge 0); &math(=(t\bm a+\bm b,t\bm a+\bm b)); この2次式の判別式は負でなければならないから、 &math(=(\bm a,\bm a)t^2+(\bm a,\bm b)t+(\bm b,\bm a)t+(\bm b,\bm b)); &math(=\|\bm a\|^2t^2+2(\bm a,\bm b)t+\|\bm b\|^2\ge 0); この2次式が &math(t); の値に依らず負にならないためには、 判別式が負でなければならないから、 &math((\bm b,\bm a)^2-\|\bm a\|^2\|\bm b\|^2\le 0); &math((\bm b,\bm a)^2\le\|\bm a\|^2\|\bm b\|^2); 両者の正の平方根を取れば、 &math(|(\bm a,\bm b)|\le\|\bm a\|\|\bm b\|); 与式を得る。 ** 三角不等式 [#he02d623] &math(\|\bm a+\bm b\|\le\|\bm a\|+\|\bm b\|); &math(\|\bm a+\bm b\|\le\|\bm a\|+\|\bm b\|); 三角形の一辺は他の二辺の和より短い (証明) &math(\|\bm a+\bm b\|^2=(\bm a+\bm b,\bm a+\bm b)); &math(=\|\bm a\|^2+2(\bm b,\bm a)+\|\bm b\|^2); &math(<\|\bm a\|^2+2|(\bm b,\bm a)|+\|\bm b\|^2); &math(<\|\bm a\|^2+2\|\bm a\|\|\bm b\|+\|\bm b\|^2); &math(=\left(\|\bm a\|+\|\bm b\|\right)^2); 両辺とも正なので、平方根を取れば与式を得る。 * ベクトルの為す角 [#j0250396] &math(\bm a,\bm b); が共にゼロでないとき、シュワルツの不等式より &math(-1\le\frac{(\bm a,\bm b)}{\|\bm a\|\|\bm b\|}\le1); そこで、 &math(\frac{(\bm a,\bm b)}{\|\bm a\|\|\bm b\|}=\cos \theta); を満たす &math(\theta); ただし &math(0\le\theta\le\pi); がただ一つ決まる。 この &math(\theta); を &math(\bm a,\bm b); の「為す角」と呼ぶ。 (「内積」が標準内積でない場合、通常の角度の定義とは異なった物になるが、 以下の議論には影響しない) * ベクトルの直交 [#v83096b5] &math(\cos \pi/2=0); より、内積がゼロの時、&math(\theta=\pi/2=90^\circ); となる。 &math(\cos \pi/2=0); より、 内積がゼロ ⇔ &math(\theta=\pi/2=90^\circ); である。 そこで、&math((\bm a,\bm b)=0); であることを 「&math(\bm a,\bm b); が直交する」と言う。 実は、&math(\bm a,\bm b); の少なくとも1方がゼロの時もやはり 実は、&math(\bm a,\bm b); の一方または両方がゼロの時もやはり &math((\bm a,\bm b)=0); となるが、&math(\theta); は定まらない。 だが、この場合も含めて「直交」を定義する。 &math((\bm a,\bm b)=0); ⇔ &math(\bm a \perp \bm b); - ゼロベクトル &math(\bm o); は全てのベクトルに直交する すなわち、ゼロベクトル &math(\bm o); は全てのベクトルに直交する。 * 正規化 [#de37b9ae] ゼロでない任意のベクトル &math(\bm a); に対して、 &math(\frac{1}{\|\bm a\|}\bm a); のノルムは1になる。 このように、ベクトルをその大きさで割ってノルムを1にすることを「正規化」と呼ぶ。 正規ベクトル:ノルムが1のベクトルのこと * 正規直交系 [#ude8ebc8] ベクトル &math(\bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_n); が正規直交系である、とは - すべてノルムが1である &math(\|\bm a_i\|=1); すなわち &math((\bm a_i,\bm a_i)=1); - 互いに直交する &math(i\ne j\rightarrow(\bm a_i,\bm a_j)=0); の条件を満たすこと。 - 条件はまとめて &math((\bm a_i,\bm a_j)=\delta_{ij}); と書ける。 - 基本ベクトル &math(\bm e_1,\bm e_2,\dots,\bm e_n); は正規直交系である ** 正規直交系は一次独立である [#m48703a3] &math(\bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_n); が正規直交系であるとき、 &math(\sum_{k=1}^nc_k\bm a_k=\bm o); が成り立つとすると、両辺と &math(\bm a_i); との内積を取ることで、 &math((\bm a_i,\sum_{k=1}^nc_k\bm a_k)); &math(=\sum_{k=1}^nc_k(\bm a_i,\bm a_k)); &math(=\sum_{k=1}^nc_k\delta_{ik}); &math(=c_i=(\bm a_i,\bm o)=0); したがって、すべての &math(i); について &math(c_i=0); となることが導かれる。 ** 成分の導出 [#f4426604] 同様にして、基本ベクトル &math(\bm e_1,\bm e_2,\dots,\bm e_n); は正規直交系であるから、 &math(\bm x=\begin{bmatrix}x_1\\x_2\\\vdots\\x_n\end{bmatrix}=\sum_{k=1}^nx_k\bm e_k); のとき、&math(\bm x); と &math(\bm e_k); との内積を取ることにより、 &math((\bm e_i,\bm x)); &math(=\sum_{k=1}^nx_k(\bm e_i,\bm e_k)); &math(=\sum_{k=1}^nx_k\delta_{ik}); &math(=x_i); として &math(\bm e_i); 方向の成分を求めることができる。 * グラム・シュミットの直交化法 [#i789773f] [[線形代数I/要点/(グラム)シュミットの直交化法]] * 直交変換・直交行列 [#y8b08c92] * 直交変換 [#kde39428] 任意の &math(\bm x,\bm y); に対して、 &math((f(\bm x),f(\bm y))=(\bm x,\bm y)); を満たす変換 &math(f(\bm x)); &math(\mathbb R^n\rightarrow \mathbb R^n); を直交変換と呼ぶ。 を満たす一次変換 &math(f(\bm x)\ :\ \mathbb R^n\rightarrow \mathbb R^n); を直交変換と呼ぶ。(なぜ直交?の答えは後ほど) - 直交変換は &math(\|f(\bm x)\|=\|\bm x\|); を満たす。(定義より、ほぼ明らか)~ こちらを直交変換の定義とする場合もある(同値な条件であるため) 練習: &math(\|f(\bm x)\|=\|\bm x\|); から &math((f(\bm x),f(\bm y))=(\bm x,\bm y)); を導こう。 (証明) 条件より &math(\|f(\bm x-\bm y)\|)=\|\bm x-\bm y\|); (左辺)^^2^^ &math(=\|f(\bm x)-f(\bm y)\|^2); &math(=\|f(\bm x)\|^2-2(f(\bm x),f(\bm y))+\|f(\bm y)\|^2); &math(=\|\bm x\|^2-2(f(\bm x),f(\bm y))+\|\bm y\|^2); (右辺)^^2^^ &math(=\|\bm x\|^2-2(\bm x,\bm y)+\|\bm y\|^2); したがって、&math((f(\bm x),f(\bm y))=(\bm x,\bm y)); ** 合同変換 [#v63bd062] 直交変換はすべてのベクトルの長さを保つから、それはすなわち「合同変換」である。~ 合同変換 = 回転 ( + 反転 ) ∵三角形の3辺の長さが等しければ合同であったのを思い出そう。 * R^^n^^ にて標準内積を取る場合 [#ic301bf7] &math(\|\bm a\|=\sqrt{a_1^2+a_2^2+\dots+a_n^2}); である。 また、 &math((\bm a,\bm b)=a_1b_1+a_2b_2+\dots+a_nb_n=\transpose \bm a\bm b); と書けるから、 &math((\bm a,A\bm b)=\transpose \bm a(A\bm b)=\transpose (\transpose \,A\bm a)\bm b=(\transpose A\bm a,\bm b)); ここで、&math(A); が対称行列 &math(\transpose A=A); であれば、 &math((\bm a,A\bm b)=(A\bm a,\bm b)); が成り立つ。 ** 直交行列 [#u25e29f3] 標準内積を用いた場合、直交変換の標準行列 &math(R); は任意の &math(\bm a,\bm b); に対して、 &math((R\bm a,R\bm b)=(\bm a,\transpose R R\bm b)=(\bm a,\bm b)); を満たす。したがって、2つの基本ベクトルに対して &math((\bm e_i,\transpose R R\bm e_j)=(\bm e_i,\bm e_j)=\delta_{ij}); となるが、この左辺は行列 &math(\transpose R R); の (i,j) 成分に等しい。 すなわち、 &math(\transpose R R=[\delta_{ij}]); であり、&math(R); は &math(\transpos R=R^{-1}); を満たす。 この条件を満たす &math(R); を直交行列と呼ぶ。 - 直交変換の表現行列は直交行列である ** なぜ直交? [#w75c4a00] 直交行列の列ベクトル分解を &math(R=\Bigg[\bm r_1\ \bm r_2\ \dots\ \bm r_n\Bigg]); と書くと、 &math(\transpose R R=\begin{bmatrix}\hspace{5mm}\bm r_1\hspace{5mm}\\ \bm r_2\\ \vdots\\ \bm r_n\end{bmatrix}\Bigg[\bm r_1\ \bm r_2\ \dots\ \bm r_n\Bigg]=[\bm r_i,\bm r_j]=[\delta_{ij}]); すなわち、直交行列の列ベクトルは正規直交系を為す。 - 同様に、行ベクトルも正規直交系を為す これが直交変換、直交行列の語源である。 * コメント [#p817b8d6] #article_kcaptcha
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