(グラム)シュミットの直交化法 のバックアップソース(No.3)
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[[線形代数I]] * 概要 [#i5088b82] グラムシュミットの直交化法とは、 与えられたベクトル &math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\cdots,\bm{a}_n); から、 正規直交系 &math(\bm{e}_1,\bm{e}_2,\cdots,\bm{e}_n); を作る方法である。 ただし、任意の &math(k); ( &math(1\leqq k \leqq n); ) について &math(\bm{e}_k); は &math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\cdots,\bm{a}_k); の一次結合で表せるものとする。 つまり、 - &math(\bm{e}_1); は &math(\bm{a}_1); の一次結合(定数倍)であり、&math(|\bm{e}_1|=1); - &math(\bm{e}_2); は &math(\bm{a}_1,\bm{a}_2); の一次結合で、&math((\bm{e}_2,\bm{e}_1)=0); かつ &math(|\bm{e}_2|=1); - &math(\bm{e}_3); は &math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3); の一次結合で、&math((\bm{e}_3,\bm{e}_1)=0);, &math((\bm{e}_3,\bm{e}_2)=0); かつ &math(|\bm{e}_3|=1); - 以下同様 を満たす &math(\bm{e}_1,\dots,\bm{e}_n); を見つけることがここでの課題。 見方を変えれば、任意の &math(k); ( &math(1\leqq k \leqq n); ) に対して &math(\bm{e}_1,\bm{e}_2,\bm{e}_3,\cdots,\bm{e}_k); は すべて &math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3,\cdots,\bm{a}_k); の一次結合であり、なおかつ正規直交系をなす。 ※ここでは、ベクトル &math(\bm{a}); と &math(\bm{b}); との内積を &math((\bm{a},\bm{b})=0); と書く。~ ※「一次結合で表せるベクトルの集合」は、本来「張る空間」と書くべきだが、カリキュラム上まだ扱っていないためこのような書き方を用いている。 「線形空間」について学んだ学生は、 任意の &math(k); ( &math(1\leqq k \leqq n); ) に対して &math(\bm{e}_1,\bm{e}_2,\bm{e}_3,\cdots,\bm{e}_k); の張る空間は &math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3,\cdots,\bm{a}_k); の張る空間と等しい。 あるいは、 任意の &math(k); ( &math(1\leqq k \leqq n); ) に対して &math(\bm{e}_1,\bm{e}_2,\bm{e}_3,\cdots,\bm{e}_k); は &math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3,\cdots,\bm{a}_k); の張る空間に取った正規直交基底になっている。 と書いた方がピンとくるかもしれない。 *(グラム)シュミットの直交化法の手順 [#l1a576cc] まず &math(\bm{e}_1); について、 &math(\bm{e}_1=k_{11}\bm{a}_1); かつ &math(|\bm{e}_1|=1); より (1) &math(\bm{e}_1=\frac{1}{|\bm{a}_1|}\bm{a}_1); とすればよい。 &math(\bm{e}_2); は &math(\bm{a}_1,\bm{a}_2); の一次結合である。 すなわち、&math(\bm{e}_1, \bm{a}_2); の一次結合と言っても良い (&math(\bm{a}_1,\bm{a}_2); の一次結合で表せるベクトルの集合と、 &math(\bm{e}_1,\bm{a}_2); の一次結合で表せるベクトルの集合とが 等しいことに注意せよ)。 そこで、&math(\bm{e}_1,\bm{a}_2); の一次結合のうち、 &math(\bm{e}_1); と直交するベクトル &math(\bm{f}_2); を求める。 &math(\bm{f}_2=\bm{a}_2-k_{21}\bm{e}_1); と書いて &math((\bm{e}_2,\bm{e}_1)=0); に代入すると、 &math((\bm{e}_2,\bm{e}_1)=(\bm{a}_2,\bm{e}_1)-k_{21}=0); ~ &math(\therefore k_{21}=(\bm{a}_2,\bm{e}_1)k_{21}=0); を得る。すなわち、 (2-1) &math(\bm{f}_2=\bm{a}_2-(\bm{a}_2,\bm{e}_1)\bm{e}_1); とすれば、&math(\bm{f}_2); は &math(\bm{e}_1,\bm{a}_2); の一次結合であり、 しかも &math(\bm{e}_1); に直交する。これを、 (2-2) &math(\bm{e}_2=\frac{1}{|\bm{f}_2|}\bm{f}_2); として正規化すれば、&math((\bm{e}_2,\bm{e}_1)=0); かつ &math(|\bm{e}_2|=1); の条件を満たすことができる。 同様に &math(\bm{e}_3); は &math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3); の一次結合であるが、&math(\bm{e}_1,\bm{e}_2,\bm{a}_3); の一次結合と言っても良い。 そこでまず、&math(\bm{e}_1,\bm{e}_2,\bm{a}_3); の一次結合で &math(\bm{e}_1,\bm{e}_2); と直交するものを求める。 &math(\bm{f}_3=\bm{a}_3-k_{31}\bm{e}_1-k_{32}\bm{e}_2); を &math((\bm{f}_3,\bm{e}_1)=(\bm{f}_3,\bm{e}_2)=0); に代入すると、 &math((\bm{f}_3,\bm{e}_1)=(\bm{a}_3,\bm{e}_1)-k_{31}=0); より &math(k_{31}=(\bm{a}_3,\bm{e}_1));~ &math((\bm{f}_3,\bm{e}_2)=(\bm{a}_3,\bm{e}_2)-k_{32}=0); より &math(k_{32}=(\bm{a}_3,\bm{e}_2));~ となって、 (3-1) &math(\bm{f}_3=\bm{a}_3-(\bm{a}_3,\bm{e}_1)\bm{e}_1-(\bm{a}_3,\bm{e}_2)\bm{e}_2); と求まり、 (3-2) &math(\bm{e}_3=\frac{1}{|\bm{f}_3|}\bm{f}_3); と正規化すれば条件を満たす。 以下同様に &math(\bm{e}_1,\bm{e}_2,\cdots,\bm{e}_{k-1}); と &math(\bm{a}_k); を使って &math(\bm{e}_k); を求めるには、 (k-1) &math(\bm{f}_k=\bm{a}_k-(\bm{a}_k,\bm{e}_1)\bm{e}_1-(\bm{a}_k,\bm{e}_2)\bm{e}_2-\cdots-(\bm{a}_k,\bm{e}_{k-1})\bm{e}_{k-1}); すなわち、 (k-1) &math(\bm{f}_k=\bm{a}_k-\sum_{i=1}^{k-1}(\bm{a}_k,\bm{e}_i)\bm{e}_i); として、&math(\bm{e}_1,\bm{e}_2,\cdots,\bm{e}_{k-1}); と直交するベクトル &math(\bm{f}_k); を求め、 (k-2) &math(\bm{e}_k=\frac{1}{|\bm{f}_k|}\bm{f}_k); として正規化すればよい。 (1) と (k-1), (k-2) に表された方法を用いて &math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\cdots,\bm{a}_n); から、正規直交系 &math(\bm{e}_1,\bm{e}_2,\cdots,\bm{e}_n); を作る方法を 「シュミットの直交化」あるいは「グラム・シュミットの直交化法」と呼ぶ。
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