線形代数II/抽象線形空間 のバックアップ差分(No.16)
更新- バックアップ一覧
- 現在との差分 を表示
- ソース を表示
- バックアップ を表示
- 線形代数II/抽象線形空間 へ行く。
- 追加された行はこの色です。
- 削除された行はこの色です。
[[前の単元 <<<>線形代数Ⅱ/代数学的構造]] [[線形代数Ⅱ]] [[>>> 次の単元>線形代数Ⅱ/線形独立、基底及び次元]] #contents * 4-1 線形空間 (あるいは ベクトル空間) [#ld04da61] 線形代数I では主に数ベクトルについて学んだ。 「線形空間」は数ベクトルに類似した代数的構造を表わす概念である。 ** 定義 [#kd0f1115] まず、ある既知の「体」&math(K); を想定する。~ >&math(K=\mathbb R\ \mathrm{or}\ \mathbb C); であることが多いが、四則演算(加減乗除)が可能であれば他の体でも良い - 線形空間 &math(V); は集合であり、その元をベクトルと呼ぶ~ すなわち、&math(\bm x,\bm y\in V); なら &math(\bm x,\bm y); はベクトル - 2つのベクトルの間に「和」が定義され、&math(V); はベクトルの和に対して閉じている~ すなわち、&math(\forall\bm x,\forall\bm y\in V); に対して &math(\bm x+\bm y\in V); - &math(K); の元とベクトルとの間に「スカラー倍」が定義され、&math(V); はスカラー倍に対して閉じている~ すなわち、&math(\forall a\in K);、&math(\forall\bm x\in V); に対して &math(a\bm x\in V); さらに、これらの「和」と「スカラー倍」に対して次の公理が成立する。~ + &math(\forall \bm x,\forall \bm y\in V); について &math(\bm x+\bm y=\bm y+\bm x); → ベクトル和に対する交換法則 + &math(\forall \bm x,\forall \bm y,\forall \bm z\in V); について &math((\bm x+\bm y)+\bm z=\bm x+(\bm y+\bm z)); → ベクトル和に対する結合法則 + ある元 &math(\bm 0\in V); が存在し、&math(\forall \bm x\in V); について &math(\bm x+\bm 0=\bm x); を満たす → ゼロ元の存在 + &math(1\in K); について、&math(\forall \bm x\in V); について、&math(1\bm x=\bm x); → スカラーの単位元 + &math(\forall \bm x\in V); について &math(\bm x+(-\bm x)=\bm 0); を満たす元 &math(-\bm x\in V); が存在 → 逆元の存在 + &math(\forall a,\forall b\in K);、&math(\forall \bm x\in V); について、&math((a+b)\bm x=a\bm x+b\bm x); → 分配法則(1) + &math(\forall a\in K);、&math(\forall \bm x,\forall \bm y\in V); について、&math(a(\bm x+\bm y)=a\bm x+a\bm y); → 分配法則(2) + &math(\forall a,\forall b\in K);、&math(\forall \bm x\in V); について、&math(a(b\bm x)=(ab)\bm x); → スカラー倍の結合法則 このとき、&math(V); を &math(K); 上の線形空間と呼ぶ。 ** 細かいことは置いておいて [#jd9c7299] 線形空間とは、「適切に定義されたベクトルの和とスカラー倍に対して閉じた集合」 のことである。 上記のややこしい「公理」は、和やスカラー倍を適切に定義するための最低限の条件を表わした物である。 ** 線形空間の例 [#v00e3d9f] &math(V=\mathbb R^3,K=\mathbb R); は線形空間である(&math(\mathbb R^3); は3次元実数ベクトルの集合) &math(V=\mathbb R^3,K=\mathbb C); は線形空間ではない! &math(x);の2次以下の実係数多項式の集合 ( &math(P^2[x]=\set{ax^2+bx+c|a,b,c\in \mathbb R}, K=\mathbb R); ) は、自然に定義される和と実数倍に対して線形空間となる(線形空間がベクトル同士の積に対して閉じている必要がないことに注意せよ) &math(V=\set{(3a,-a,2a)\in \mathbb R^3|a\in \mathbb R}); は &math(\mathbb R^3); に定義される和と実数倍に対して線形空間となる &math(V=\set{(3a,-a)\in \mathbb R^3|a\in \mathbb R}); は &math(\mathbb R^3); に定義される和と実数倍に対して線形空間となる ** 部分空間 [#t973d6bf] 線形空間 &math(U); の部分集合 &math(V);(&math(V\subset U);)が &math(U); に定義されるベクトル和やスカラー倍に対して閉じているとき、 &math(V); も線形空間となる。 (ベクトル和やスカラー倍は線形空間の公理を満たすため、 閉じていることのみが条件となる) このとき、&math(V); は &math(U); の部分空間であるという。 ** 線形空間の性質 [#yedd6e56] このような一般の線形空間 &math(V); がどこまで &math(\mathbb R^n); と似ているかを考えるのが以下の目標となる。 たとえば [[線形代数Ⅱ/抽象線形空間/性質]] で見るように、 上記の公理を満たすすべての線形空間は、 -ゼロ元はただ1つだけ存在する -逆元はただ1つだけ存在する -ベクトルの引き算を定義可能 -&math(\bm x-\bm x=\bm 0); -&math(-(-\bm x)=\bm x); 逆元の逆元はもとの元に戻る -&math(\bm a+ \bm b=\bm a+\bm c \to \bm b=\bm c); -&math((-\bm x)=(-1)\bm x); -&math(0\bm x = \bm 0); - ゼロ元はただ1つだけ存在する - 逆元はただ1つだけ存在する - 引き算を定義できる - &math(\bm x-\bm x=\bm 0); - &math(\bm a+\bm b=\bm a+\bm c → \bm b=\bm c); - &math(-\bm 0=\bm 0); - &math(-(-\bm x)=\bm x); - &math((-\bm x)=(-1)\bm x); - &math(0\bm x = \bm 0); といった、数ベクトル空間と同じ性質を持つことを定理として証明できる。 その他にも、任意の線形空間と数ベクトル空間との間には非常に多くの類似点がある。 [[前の単元 <<<>線形代数Ⅱ/代数学的構造]] [[線形代数Ⅱ]] [[>>> 次の単元>線形代数Ⅱ/線形独立、基底及び次元]] * 質問・コメント [#x915949d] #article_kcaptcha
Counter: 23952 (from 2010/06/03),
today: 1,
yesterday: 0