線形代数II/抽象線形空間 のバックアップソース(No.8)

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[[線形代数Ⅱ]]

#contents

* 4-1 線形空間 (あるいは ベクトル空間) [#ld04da61]

線形代数I では主に数ベクトルについて学んだ。

「線形空間」は 数ベクトル に類似した「代数的構造」を表わす概念である。

** 定義 [#kd0f1115]

まず、ある既知の「体」&math(K); を想定する。~
>&math(K=\mathbb R\ \mathrm{or}\ \mathbb C); であることが多いが、加減乗除が可能であれば他の体でも良い

- 線形空間 &math(V); は集合であり、その元をベクトルと呼ぶ~
すなわち、&math(\bm x,\bm y\in V); なら &math(\bm x,\bm y); はベクトル
- 2つのベクトルの間に「和」が定義され、&math(V); はベクトルの和に対して閉じている~
すなわち、&math(\forall\bm x,\forall\bm y\in V); に対して &math(\bm x+\bm y\in V);
- &math(K); の元とベクトルとの間に「スカラー倍」が定義され、&math(V); はスカラー倍に対して閉じている~
すなわち、&math(\forall\bm x\in V);、&math(\forall a\in K); に対して &math(a\bm x\in V);

さらに、これらの「和」と「スカラー倍」に対して次の公理が成立する。~

+ &math(\forall \bm x,\forall \bm y\in V); について &math(\bm x+\bm y=\bm y+\bm x);               → ベクトル和に対する交換律
+ &math(\forall \bm x,\forall \bm y,\forall \bm z\in V); について &math((\bm x+\bm y)+\bm z=\bm x+(\bm y+\bm z));    → ベクトル和に対する結合律
+ &math(\forall \bm x\in V); について &math(\bm x+\bm 0=\bm x); を満たす元 &math(\bm 0\in V); が存在 → ゼロ元の存在
+ &math(1\in K); について、&math(\forall \bm x\in V); について、&math(1\bm x=\bm x);            → スカラーの単位元
+ &math(\forall \bm x\in V); について &math(\bm x+(-\bm x)=\bm 0); を満たす元 &math(-\bm x\in V); が存在 → 逆元の存在
+ &math(\forall a,\forall b\in K);、&math(\forall \bm x\in V); について、&math((a+b)\bm x=a\bm x+b\bm x);  → 分配法則(1)
+ &math(\forall a\in K);、&math(\forall \bm x,\forall \bm y\in V); について、&math(a(\bm x+\bm y)=a\bm x+a\bm y); → 分配法則(2)
+ &math(\forall a,\forall b\in K);、&math(\forall \bm x\in V); について、&math(a(b\bm x)=(ab)\bm x);  → スカラー倍の結合則

このとき、&math(V); を &math(K); 上の線形空間と呼ぶ。

** 線形空間の例 [#v00e3d9f]

&math(V=\mathbb R^3,K=\mathbb R); は線形空間である

&math(V=\mathbb R^3,K=\mathbb C); は線形空間ではない!

&math(V=\set{ax^2+bx+c|a,b,c\in \mathbb R}, K=\mathbb R); (&math(x);の2次以下の実係数多項式の集合)は、自然に定義される和と実数倍に対して線形空間となる

&math(V=\set{(3a,-a)\in \mathbb R^2|a\in \mathbb R}); は &math(\mathbb R^2); に定義される和と実数倍に対して線形空間となる

** 線形空間の性質 [#yedd6e56]

このような一般の線形空間 &math(V); がどこまで &math(\mathbb R^n); と似ているかを考えるのが以下の目標となる。

たとえば、[[線形代数Ⅱ/抽象線形空間/練習]] で見るように
-ゼロ元はただ1つだけ存在する
-逆元はただ1つだけ存在する
-ベクトルの引き算を定義可能
-&math(\bm x-\bm x=\bm 0);
-&math(-(-\bm x)=\bm x); 逆元の逆元はもとの元に戻る
-&math(\bm a+ \bm b=\bm a+\bm c \to \bm b=\bm c);
-&math((-\bm x)=(-1)\bm x);
-&math(0\bm x = \bm 0);

といった基本的な性質は上記の公理を使って定理として証明できる。

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