線形独立、基底及び次元 のバックアップソース(No.1)
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[[線形代数Ⅱ]] #contents * 線形結合・一次独立・従属 [#n644d790] 線形代数I で学んだ 線形結合・一次独立・従属の概念を、 一般の線形空間について同じように考えることができる。 &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); の線形結合:~ &math(\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i=c_1\bm v_1+c_2\bm v_2+\dots+c_m\bm v_m); &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); が「一次独立である」とは、 >&math(\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i=c_1\bm v_1+c_2\bm v_2+\dots+c_m\bm v_m=\bm 0); から &math(c_1=c_2=\dots=c_m=0); を導けること &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); が一次独立では無いとき、一次従属と言う 問:実数を係数とする2次以下の &math(x); の多項式の集合について考える~ &math(x^2+3x-2, -x^2+2x, 3x^2); は線形独立か? 答:&math(a(x^2+3x-2)+b(-x^2+2x)+c(3x^2)=0); とすると、 &math((a-b+3c)x^2+(3a+2b)x+(-2a)=0);~ すなわち、&math(a-b+3c=0,3a+2b=0,-2a=0); となり、 これを満たす &math(a,b,c); は &math(\{a,b,c\}=\{0,0,0\}); しか存在しない。~ したがって、線形独立である * 張る空間・生成元・部分空間 [#p7f650df] &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); の張る空間とは、~ &math(V'=\set{v=\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i}\in V|c_1,c_2,\dots,\c_m\in K); として定義され、~ &math(V'=\big<\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\big>); と表わされる。 このような &math(V'); は和、スカラー倍に対して閉じており、線形空間となる。 &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); を &math(V'); の生成元という。 一般に、&math(V'\subset V); が線形空間となるとき、&math(V'); は &math(V); の部分空間である、という。 多くの場合、~ -1つのベクトルで生成される空間は直線的である &math(V'=\{s\bm a|\bm a\in V,s\in K\}); -1つのベクトルで生成される空間は平面的である &math(V'=\{s\bm a+t\bm b|\bm a,\bm b\in V,s,t\in K\}); -1つのベクトルで生成される空間は空間的である &math(V'=\{s\bm a+t\bm b+\u\bm c|\bm a,\bm b,\bm c\in V,s,t,u\in K\}); ただし、&math(\bm a,\bm b,\bm c); が一次従属である場合にはその限りではない! &math(\big<\bm a,2\bm a\big>=\set{s\bm a+t(2\bm a)|s,t\in K}=\set{(s+2t)\bm a|s,t\in K}=\set{s\bm a|s\in K}=\big<\bm a\big>); * 基底・次元 [#t268fa3f] 一次独立な &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); が &math(V); を張るとき、 &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); は &math(V); の基底である、と言う。 例:2次以下の &math(x); の多項式の集合を &math(V); とするとき、 &math(\bm b_1=x,\bm b_2= 3x^2+1,\bm b_3=\bm 2\in V); は &math(V); を張り、 また、一次独立であるから、&math(V); の基底となる ある空間 &math(V); について基底の取り方には任意性があるが、 どのように基底を取ったとしても、同じ空間の基底を構成するベクトルの数は等しくなることを後に証明する。 基底を構成するベクトルの数を線形空間の次元と呼ぶ。 * 同型な線形空間 [#hb28464c] |実数を係数とする3次以下の &math(x); の多項式|3次実数ベクトル| |&math(V=\set{ax^3+bx+c\|a,b,c\in \mathbb R}); |&math(\mathbb R^3=\set{(a,b,c)\|a,b,c\in \mathbb R});| |&math((a_1x^3+b_1x+c_1)+(a_2x^3+b_2x+c_2)\\=(a_1+a_2)x^3+(b_1+b_2)x+(c_1+c_2));|&math((a_1,b_1,c_1)+(a_2,b_2,c_2)=(a_1+a_2,b_1+b_2,c_1+c_2));| |&math(k(ax^3+bx+c)=(ka)x^3+(kb)x+(kc));|&math(k(a,b,c)=(ka,kb,kc));| すごく似ている。 こういう時、&math(V); と &math(\mathbb R^3); は「同型である」、と言う。 以下で同型を定義する。 ** 写像 [#h358e130] &math(T); は線形空間 &math(V); から &math(V'); への写像であるとする。~ すなわち &math(T); は、任意の &math(\bm v\in(V)); に対して、ただ1つの &math(\bm v'\in V'); を &math(\bm v'=T(\bm v)); として定める。 ** 線形写像 [#ibeddaa7] &math(T); が次の2つの条件を満たすとき、&math(T); は線形である、と言う。 - &math(T(\bm x+\bm y)=T(\bm x)+T(\bm y)); - &math(T(c\bm x)=cT(\bm x)); ここで、 左辺の和やスカラー倍が &math(V); で定義された演算であるのに対して、~ 右辺の和やスカラー倍は &math(V'); で定義された演算であることに注意せよ。 (すなわち &math(V); と &math(V'); は同じスカラーの上に定義されている) 上の例で言えば、 &math(T(ax^2+bx+c)=(a,b,c)); は &math(V\rightarrow\mathbb R^3); の線形写像である。 *** 練習 [#j3e80a73] 問:&math(T); が線形写像であれば、&math(T(\bm 0)=\bm 0); となることを示せ。 答:&math(T(\bm 0)=T(0\bm 0)=0T(\bm 0)=\bm 0); ** 1対1写像(単写) [#f9291c06] &math(T(ax^2+bx+c)=(a,b,0)); も &math(V\rightarrow\mathbb R^3); の線形写像である、 が、&math(T(ax^2+bx+c)=T(ax^2+bx+c')=(a,b,0)); となる。 このように、一般の写像では異なるベクトルが同じ値に移される場合がある。 &math(\bm x\ne \bm y); であれば必ず &math(T(\bm x)\ne T(\bm y)); であるとき、 &math(T); は1対1写像である、あるいは、単写である、と言う。 &attachref(写像.png,,50%); 1対1という言葉の意味:1対nはそもそも写像にならない。n対1になっていないことを示している。 ** 上への写像(全写) [#u804c5ca] 任意の &math(v'\in V'); に対して、そこに移ってくる &math(V); の元を見つけられる時、 上への写像、あるいは、全写であるという。 例えば、&math(T(ax^2+bx+c)=(a,b,c)); は &math(V\rightarrow\mathbb R^3); への全写であるが、~ &math(T(ax^2+bx+c)=(0,a,b,c)); は &math(V\rightarrow\mathbb R^4); への全写ではない。 「上へ」というのは、&math(T); により &math(V); 全体を移したときにできる「像」 (しばしば &math(T(V)=\set{T(\bm v)\in V'|\bm v\in V}); と書かれる) が、 &math(V'); の真上に、全体を覆い尽くすように被さるため。 &attachref(上への写像.png,,50%); ** 上への1対1写像(全単写) [#x5e3aeb2] 単写かつ全写であることを言う。 このときに限り、「逆写像 &math(T^{-1});」が定義できる。 - 1対1でないと、ある &math(v'\in V'); に複数の &math(v\in V); が対応してしまう - 上への写像でないと、ある &math(v'\in V'); に対応する &math(v\in V); が存在しない場合がある *** 練習 [#cdc16e96] 問:逆写像 &math(T^{-1}); は線形写像であることを示せ 答: &math(\bm X=T(\bm x), \bm Y=T(\bm Y)); とすると、 &math(\bm x=T^{-1}(\bm X),\bm y=T^{-1}(\bm Y)); 一方、 &math(T(\bm x+\bm y)=T(\bm x)+T(\bm y)=X+Y); の両辺に &math(T^{-1}); を作用させると &math(\bm x+\bm y=T^{-1}(X)+T^{-1}(Y)=T^{-1}(X+Y)); また、 &math(T(k\bm x)=kT(\bm x)=kX); の両辺に &math(T^{-1}); を作用させると &math(k\bm x=kT^{-1}(X)=T^{-1}(kX)); となって、 &math(T^{-1}); が線形であることが示された。 ** 同型 [#j11499b9] &math(V); と &math(V'); との間に上への1対1写像 &math(T); が存在する時、 &math(V); と &math(V'); は同型であるといい、~ &math(V\simeq V'); と書く。 またこのとき、&math(T); を同型写像と呼ぶ。 これは上で述べた2つの写像が「似ている」ことを数学的に表わした物。~ 同型写像によって、2つの空間はすべて1対1に対応することになる。 &math(T(ax^2+bx+c)=(a,c,b)); とか、~ &math(T(ax^2+bx+c)=(a+b,a-b,c)); とかも同型写像になる。 同型である2つの線形空間の間の同型写像は一意には決まらないことに注意が必要。 線形空間の「同型」は同値関係の公理を満たす。すなわち、 + &math(V\simeq V); : 反射律 + &math(V\simeq V'\to V'\simeq V); : 対称律 + &math(V\simeq V' \wedge V'\simeq V''\to V\simeq V''); : 推移律 同型の線形空間は構造が似ているため、一方を調べればもう一方のことが分かる。~ 特に、&math(\mathbb R^n); への同型が分かればほぼすべて分かったも同然!となる。 ** 例 [#f06ed7b5] &math(V\to V'); の同型写像を &math(T(\bm x)); とする。 &math(\bm a, \bm b, \bm c\in V); が線形独立であれば、~ &math(T(\bm a), T(\bm b), T(\bm c\)in V'); も線形独立である。~ 対偶を証明する。 もし &math(T(\bm a), T(\bm b), T(\bm c\)in V'); が線形従属であれば、 すべてがゼロではない3つのスカラー &math(\alpha,\beta,\gamma); に対して &math(\alpha T(\bm a)+\beta T(\bm b)+\gamma T(\bm c\)=\bm 0); が成立する。&math(T); は線形なので、 &math((左辺)=T(\alpha \bm a+\beta \bm b+\gamma bm c\)=\bm 0); ここで、 &math(\therefore T^{-1}(\bm 0)=\bm 0); * 4-2 線形独立、基底及び次元 [#mceb0c53] あるベクトル &math(\bm v\in V); をベクトル &math(a_1,a_2,\dots,a_l); の一次結合で表せる場合と、表せない場合がある。
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