線形独立、基底及び次元 のバックアップソース(No.14)

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#contents

* 線形結合・一次独立・従属 [#n644d790]

復習: &math(
\begin{pmatrix}1\\2\\3\\4\end{pmatrix},\ 
\begin{pmatrix}2\\2\\3\\4\end{pmatrix},\ 
\begin{pmatrix}1\\2\\3\\3\end{pmatrix}
); は一次独立か?

線形代数I で学んだ 線形結合・一次独立・従属の概念を一般の線形空間でも定義できる

&math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); の線形結合とは:
>&math(\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i=c_1\bm v_1+c_2\bm v_2+\dots+c_m\bm v_m);

&math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); が「一次独立である」とは:

>&math(\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i=\bm 0); から &math(c_1=c_2=\dots=c_m=0); を導けること

&math(c_1=c_2=\dots=c_m=0); 以外でも成り立つなら「一次従属である」という

問:

>実数を係数とする2次以下の &math(x); の多項式からなる線形空間 &math(P^2[x]); を考える~
>&math(x^2+3x-2,\ -x^2+2x,\ 3x^2); は線形独立か?

答:

>&math(a(x^2+3x-2)+b(-x^2+2x)+c(3x^2)=0); とすると、
>&math((a-b+3c)x^2+(3a+2b)x+(-2a)=0=0x^2+0x+0);
>
>ここに現れた等号は、「左辺の多項式と右辺の多項式が等しい」という意味であるから、
左辺と右辺とで、対応する次数にかかる係数がすべて等しくなければならない。
>
>すなわち、&math(a-b+3c=0,3a+2b=0,-2a=0); となり、
これを満たす &math(a,b,c); は &math((a,b,c)=(0,0,0)); しか存在しない。
>
>したがって、与えられた3つのベクトルは線形独立である

演習:

>&math(P^2[x]); において次のベクトルは線形独立か?
>
>[1] &math(2x^2+1,\ 2x-1,\ x^2+x);  
>[2] &math(x^2+x+1,\ x-4,\ x^2+2x); 
>[3] &math(x+1,\ x-1); 

* 張る空間・生成元・部分空間 [#p7f650df]

&math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); の「張る空間」は次のように定義され、
> &math(W\equiv\set{\bm v=\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i| c_1,c_2,\dots,c_m\in K});

&math(W=\big[\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\big]); と書く。(< > で括る流儀もある)

これは 「&math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m); の一次結合で表せるベクトルの集合」 と同義である。

このような &math(W); は和、スカラー倍に対して閉じており、それ自身も線形空間となる。~
すなわち &math(W); は &math(V); の部分空間を為す。

>&math(\bm v_1 = \sum_{i=1}^m c_{1i}\bm v_i\in W);、&math(\bm v_2 = \sum_{i=1}^m c_{2i}\bm v_i\in W); のとき、
>&math(k\bm v_1 = \sum_{i=1}^m (kc_{1i})\bm v_i\in W);、&math((\bm v_1+\bm v_2) = \sum_{i=1}^m (c_{1i}+c_{2i})\bm v_i\in W);

&math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in W\subset V); を &math(W); の「生成元」という。

多くの場合、~
-1つのベクトルにより張られる空間 &math(W_1=\big[\bm a\big]); は直線的である~
    ←→ 直線の方程式 &math(\set{\bm p=s\bm a|s\in \mathbb R}); 
-2つのベクトルにより張られる空間 &math(W_2=\big[\bm a,\bm b\big]); は平面的である~
    ←→ 平面の方程式 &math(\set{\bm p=s\bm a+t\bm b|s,t\in \mathbb R}); 
-3つのベクトルにより張られる空間 &math(W_3=\big[\bm a,\bm b, \bm c\big]); は空間的である~
    ←→ 空間の方程式 &math(\set{\bm p=s\bm a+t\bm b+u\bm c|s,t,u\in \mathbb R}); 

ただし %%%&math(\bm a,\bm b,\bm c); が一次従属だと、その限りではない!%%%

線形空間の次元を考えるには、空間を張るベクトルの数に加えて、
それらが一次独立であることが重要。

* 4-2 基底・次元 [#t268fa3f]

&math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); が &math(V); を張り、%%%なおかつ一次独立である%%%とき、~
&math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); は &math(V); の「基底」である、という。

基底を構成するベクトルの数を線形空間の「次元」と呼ぶ。

基底の例:
- &math(\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix}\in \mathbb R^2);
- &math(\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}\in \mathbb R^2);
- &math(x^2+3x-2,\ -x^2+2x,\ 3x^2\in P^2[x]);

ある空間 &math(V); について、基底の取り方には任意性があるが、
「次元」は一意に決まる。

このことは、

- &math(n); 個のベクトルにより張られる空間から、&math(n); を越える個数の線形独立なベクトルを取り出せない

ことから導かれるが、この証明は省略する。 → [[(この証明)>線形代数II/線形独立、基底及び次元/次元の一意性]]

演習:

&math(V=\set{\bm x=(x,y,z)\in \mathbb R^3 | x+y+2z=0}); は
&math(\mathbb R^3); の部分空間となる。&math(V); の基底を1つ定めよ。

* 列ベクトル表示(数ベクトル表現) [#b391d31c]

** 準備 [#rca6d364]

定理:

&math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_n\in V); を &math(V); の基底とすれば、
&math(\forall \bm x\in V); はこれらの一次結合として一意に表される。

証明:

基底は &math(V); を張るから、&math(\bm x); を基底の一次結合として表せることは証明不要。

その表し方が「一意に決まること」を証明する。

もし、

&math(\bm x=\sum x_i\bm v_i=\sum x_i'\bm v_i);

であれば、これを変形して、

&math(\sum (x_i-x_i')\bm v_i=\bm 0);

基底の線形独立性から、

&math(x_1-x_1'=x_2-x_2'=\dots=x_n-x_n'=0);

として一意性が示される。

** 数ベクトル空間との1対1対応 [#k774687f]

上記の線形結合を、行列のかけ算と同様の表示を使って

&math(
\bm x=\Big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\Big)
\underbrace{\begin{pmatrix}
x_1\\ x_2\\\vdots\\x_n
\end{pmatrix}}_{\bm x'}=\Big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\Big)\bm x'
);

の形に書けば、

&math(\forall \bm x\in V); に対して、対応する &math(n); 次元列ベクトル
&math(\bm x'=\begin{pmatrix}x_1\\ x_2\\\vdots\\x_n\end{pmatrix} \in \mathbb R^n);
が1つ決まることになる。

逆に、&math(\forall \bm x'\in \mathbb R^n); に対して、
&math(\bm x=\big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\big)\bm x' \in V); が1つ決まるから、

線形空間 &math(V); の元1つ1つと &math(\mathbb R^n); の元1つ1つとの間に
1対1の対応が付くことになる。

&math(\bm x'); を、基底 &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_n); に対する 
&math(\bm x); の「列ベクトル表示」という。~
(列ベクトル表示は基底の取り方に依存することに注意せよ)

この対応関係は ベクトル和 や スカラー倍 に対しても保存されることから、
すべての &math(K); 上の &math(n); 次元線形空間 &math(V); は、
同じ次元を持つ数ベクトル空間 &math(K^n); と強い類似性を持つことが分かる。

こういう時、&math(V); と &math(K^n); は「同型である」、と言う。

以下で同型を厳密に定義する。

例:

実数を係数とする2次以下の &math(x); の多項式からなる線形空間

&math(P^2[x]=\{ax^2+bx+c|a,b,c\in \mathbb R\});

に、基底 &math(\bm e_1=x^2-1,\bm e_2=x+1,\bm e_3=1); を取る。

任意の &math(\bm x=ax^2+bx+c\in P^2[x]); に対して、

&math(\bm x'=\begin{pmatrix}a\\b\\a-b+c\end{pmatrix}); と取れば、
&math(\bm x=\begin{pmatrix}\bm e_1&\bm e_2&\bm e_3\end{pmatrix}\bm x'); が成り立ち、

基底 &math(\{\bm e_i\}); に対する &math(\bm x); の数ベクトル表現 &math(\bm x'\in \mathbb R^3); がただ一つ求まることになる。

逆に、任意の &math(\bm x'=\begin{pmatrix}a'\\b'\\c'\end{pmatrix}\in \mathbb R^3); に対して、

&math(\bm x=ax^2+bx+(-a+b+c)\in P^2[x]);

が求まる。

&math(\bm x=ax^2+bx+c\in P^2[x]);, &math(\bm y=a'x^2+b'x+c'\in P^2[x]); の数ベクトル表現は

&math(\bm x'=\begin{pmatrix}a\\b\\a-b+c\end{pmatrix});,
&math(\bm y'=\begin{pmatrix}a'\\b'\\a'-b'+c'\end{pmatrix});

なので、

- &math(k\bm x); のベクトル表現が &math(k\bm x'); となること、
- &math(\bm x+\bm y); のベクトル表現が &math(\bm x'+\bm y'); となること、

を、容易に確認できる。

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* 質問・コメント [#jf7db8ee]

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