線形独立、基底及び次元 のバックアップの現在との差分(No.9)
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は線形独立か? >実数を係数とする2次以下の $x$ の多項式からなる線形空間 $P^2[x]$ を考える~ >$x^2+3x-2,\ -x^2+2x,\ 3x^2$ は線形独立か? 答: &math(a(x^2+3x-2)+b(-x^2+2x)+c(3x^2)=0); とすると、 &math((a-b+3c)x^2+(3a+2b)x+(-2a)=0=0x^2+0x+0); ここに現れた等号は、「左辺の多項式と右辺の多項式が等しい」という意味であるから、 >$a(x^2+3x-2)+b(-x^2+2x)+c(3x^2)=0$ とすると、 >$(a-b+3c)x^2+(3a+2b)x+(-2a)=0=0x^2+0x+0$ > >ここに現れた等号は、「左辺の多項式と右辺の多項式が等しい」という意味であるから、 左辺と右辺とで、対応する次数にかかる係数がすべて等しくなければならない。 > >すなわち、$a-b+3c=0,3a+2b=0,-2a=0$ となり、 これを満たす $a,b,c$ は $(a,b,c)=(0,0,0)$ しか存在しない。 > >したがって、与えられた3つのベクトルは線形独立である すなわち、&math(a-b+3c=0,3a+2b=0,-2a=0); となり、 これを満たす &math(a,b,c); は &math(\{a,b,c\}=\{0,0,0\}); しか存在しない。 演習: したがって、与えられた3つのベクトルは線形独立である >$P^2[x]$ において次のベクトルは線形独立か? > >[1] $2x^2+1,\ 2x-1,\ x^2+x$ >[2] $x^2+x+1,\ x-4,\ x^2+2x$ >[3] $x+1,\ x-1$ この演習の答えは [[線形代数II/演習1]] にある。 * 張る空間・生成元・部分空間 [#p7f650df] &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); の「張る空間」は次のように定義され、 > &math(W\equiv\set{\bm v=\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i| c_1,c_2,\dots,c_m\in K}); $\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V$ の「張る空間」は次のように定義され、 >$W\equiv\set{\bm v=\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i| c_1,c_2,\dots,c_m\in K}$ &math(W=\big[\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\big]); と書く。(< > で括る流儀もある) $W=\big[\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\big]$ と書く。(< > で括る流儀もある) これは 「&math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); の一次結合で表せるベクトルの集合」 と同義である。 これは 「$\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m$ の一次結合で表せるベクトルの集合」 と同義である。 このような &math(W); は和、スカラー倍に対して閉じており、それ自身も線形空間となる。 このような $W$ は和、スカラー倍に対して閉じており、それ自身も線形空間となる。~ すなわち $W$ は $V$ の部分空間を為す。 >&math(\bm v_1 = \sum_{i=1}^m c_{1i}\bm v_i\in W);、&math(\bm v_2 = \sum_{i=1}^m c_{2i}\bm v_i\in W); のとき、 >&math(k\bm v_1 = \sum_{i=1}^m (kc_{1i})\bm v_i\in W);、&math((\bm v_1+\bm v_2) = \sum_{i=1}^m (c_{1i}+c_{2i})\bm v_i\in W); >$\bm v_1 = \sum_{i=1}^m c_{1i}\bm v_i\in W$、$\bm v_2 = \sum_{i=1}^m c_{2i}\bm v_i\in W$ のとき、 >$k\bm v_1 = \sum_{i=1}^m (kc_{1i})\bm v_i\in W$、$(\bm v_1+\bm v_2) = \sum_{i=1}^m (c_{1i}+c_{2i})\bm v_i\in W$ &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); を &math(W); の「生成元」という。 $\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in W\subset V$ を $W$ の「生成元」という。 一般に、&math(V); の部分集合 &math(W); が線形空間となるとき、&math(W); は &math(V); の「部分空間」という。 例: $$ \begin{aligned} W_1&=\big[\,(1,1,-1)\,\big]\hspace{3cm}\leftarrow\mathrm{(1,1,-1)により張られる空間}\\ &\equiv\big\{\,a(1,1,-1)\in\mathbb R^3\,|\,a\in\mathbb R\big\} \hspace{4.3mm}\leftarrow\mathrm{その定義}\\ \end{aligned} $$ とするとき、$(2,2,-2),\,(-5,-5,5)\in W_1$ であるが、$(2,2,2)\notin W_1$ $$ W_1=\big[\,(1,1,-1)\,\big]=\big[\,(2,2,-2)\,\big] $$ であることもすぐに分かるが、さらには $$ \begin{aligned} W_1&=\big[\,(1,1,-1),(2,2,-2)\,\big]\\ &\equiv\big\{\,a(1,1,-1)+b(2,2,-2)\in\mathbb R^3\,|\,a,b\in\mathbb R\big\} \end{aligned} $$ となることにも注意せよ。一方、 $$ W_1\neq W_2=\big[\,(1,1,-1),(2,2,2)\,\big] $$ である。実際、$W_1\subset W_2$ であるが $W_2\not\subset W_1$ である。 ---- 多くの場合、~ -&math(W_1=\big[\bm a\big]); は直線的である ←→ 直線の方程式 &math(\set{\bm p=s\bm a|s\in \mathbb R}); -&math(W_2=\big[\bm a,\bm b\big]); は平面的である ←→ 平面の方程式 &math(\set{\bm p=s\bm a+t\bm b|s,t\in \mathbb R}); -&math(W_3=\big[\bm a,\bm b, \bm c\big]); は空間的である ←→ 空間の方程式 &math(\set{\bm p=s\bm a+t\bm b+u\bm c|s,t,u\in \mathbb R}); -1つのベクトルにより張られる空間 $W_1=\big[\bm a\big]$ は直線的である~ ←→ 直線の方程式 $\set{\bm p=s\bm a|s\in \mathbb R}$ -2つのベクトルにより張られる空間 $W_2=\big[\bm a,\bm b\big]$ は平面的である~ ←→ 平面の方程式 $\set{\bm p=s\bm a+t\bm b|s,t\in \mathbb R}$ -3つのベクトルにより張られる空間 $W_3=\big[\bm a,\bm b, \bm c\big]$ は空間的である~ ←→ 空間の方程式 $\set{\bm p=s\bm a+t\bm b+u\bm c|s,t,u\in \mathbb R}$ ただし %%%&math(\bm a,\bm b,\bm c); が一次従属だと、その限りではない!%%% ただし %%%$\bm a,\bm b,\bm c$ が一次従属だと、その限りではない!%%% 線形空間の次元を考えるには、空間を張るベクトルの数に加えて、 それらが一次独立であることが重要。 * 4-2 基底・次元 [#t268fa3f] &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); が &math(V); を張り、%%%なおかつ一次独立である%%%とき、~ &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V); は &math(V); の「基底」である、という。 $\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V$ が $V$ の生成元で、%%%なおかつ一次独立である%%%とき、~ $\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V$ は $V$ の「基底」である、という。 基底を構成するベクトルの数を線形空間の「次元」と呼ぶ。 ある空間 &math(V); について、基底の取り方には任意性があるが、 基底の例: - $\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix}\in \mathbb R^2$ - $\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}\in \mathbb R^2$ - $x^2+3x-2,\ -x^2+2x,\ 3x^2\in P^2[x]$ ある空間 $V$ について、基底の取り方には任意性があるが、 「次元」は一意に決まる。 これは、 このことは、 - &math(n); 次元空間を &math(n); 個以下のベクトルで張ることはできない。 - &math(n); 次元空間に &math(n); 個以上の線形独立なベクトルの組を見つけることはできない。 - $n$ 個のベクトルにより張られる空間から、$n$ を越える個数の線形独立なベクトルを取り出せない ことが理由となるが、証明は省略する。 ことから導かれるが、この証明は省略する。 → [[(この証明)>線形代数II/線形独立、基底及び次元/次元の一意性]] 例:~ 2次以下の &math(x); の多項式の集合を &math(V); とするとき、 &math(\bm b_1=x,\bm b_2= 3x^2+1,\bm b_3=2\in V); は &math(V); を張り、 また、一次独立であるから、&math(V); の基底となる~ すなわち、&math(V); は3次元である *** 演習: [#y0a3eb13] (1) $V=\set{\bm x=(x,y,z)\in \mathbb R^3 | x+y+2z=0}$ は $\mathbb R^3$ の部分空間となる。$V$ の基底を1つ定めよ。 (2) 「複素数の集合 $\mathbb C$」を「実数 $\mathbb R$上の線形空間」と考えて、基底を1つ定めよ。 * 列ベクトル表示(数ベクトル表現) [#b391d31c] ** 準備 [#rca6d364] 定理: &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_n\in V); を &math(V); の基底とすれば、 &math(\forall \bm x\in V); はこれらの一次結合として一意に表される。 $\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_n\in V$ を $V$ の基底とすれば、 $\forall \bm x\in V$ はこれらの一次結合として一意に表される。 証明: 基底は &math(V); を張るから、&math(\bm x); を基底の一次結合として表せる。 基底は $V$ を張るから、$\bm x$ を基底の一次結合として表せることは証明不要。 だから、その表し方が「一意に決まること」が重要。 その表し方が「一意に決まること」を証明する。 もし、 &math(\bm x=\sum c_i\bm v_i=\sum c_i'\bm v_i); $$ \bm x=\sum x_i\bm v_i=\sum x_i'\bm v_i $$ であれば、これを変形して、 &math(\sum (c_i-c_i')\bm v_i=\bm 0); $$ \sum (x_i-x_i')\bm v_i=\bm 0 $$ 基底の線形独立性から、 &math(c_1-c_1'=c_2-c_2'=\dots=c_n-c_n'=0); $$ x_1-x_1'=x_2-x_2'=\dots=x_n-x_n'=0 $$ となる。 として一意性が示される。 ** 数ベクトル空間との1対1対応 [#k774687f] 上記の線形結合を、ベクトルのかけ算と同様の表示を使って 上記の線形結合を、行列のかけ算と同様の表示を使って &math( \bm x=\big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\big) \begin{pmatrix} $$ \bm x=\Big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\Big) \underbrace{\begin{pmatrix} x_1\\ x_2\\\vdots\\x_n \end{pmatrix} ); \end{pmatrix}}_{\bm x'}=\Big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\Big)\bm x' $$ の形に書けば、 &math(\forall \bm x\in V); に対して、対応するn次元列ベクトル &math(\bm x'=\begin{pmatrix}x_1\\ x_2\\\vdots\\x_n\end{pmatrix} \in \mathbb R^n); $\forall \bm x\in V$ に対して、対応する $n$ 次元列ベクトル $\bm x'=\begin{pmatrix}x_1\\ x_2\\\vdots\\x_n\end{pmatrix} \in \mathbb R^n$ が1つ決まることになる。 逆に、&math(\forall \bm x'\in \mathbb R^n); に対して、 &math(\bm x=\big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\big)\bm x' \in V); が1つ決まるから、 逆に、$\forall \bm x'\in \mathbb R^n$ に対して、 $\bm x=\big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\big)\bm x' \in V$ が1つ決まるから、 線形空間 &math(V); の元1つ1つと &math(\mathbb R^n); の元1つ1つとの間に 線形空間 $V$ の元1つ1つと $\mathbb R^n$ の元1つ1つとの間に 1対1の対応が付くことになる。 &math(\bm x'); を、基底 &math(\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_n); に対する &math(\bm x); の「列ベクトル表示」という。 $\bm x'$ を、基底 $\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_n$ に対する $\bm x$ の「列ベクトル表示」という。~ (列ベクトル表示は基底の取り方に依存することに注意せよ) この対応関係は ベクトル和 や スカラー倍 に対しても保存されることから、 すべての $K$ 上の $n$ 次元線形空間 $V$ は、 同じ次元を持つ数ベクトル空間 $K^n$ と強い類似性を持つことが分かる。 こういう時、$V$ と $K^n$ は「同型である」、と言う。 以下で同型を厳密に定義する。 例: |実数を係数とする2次以下の &math(x); の多項式|3次実数ベクトル| |&math(V=\set{ax^2+bx+c\|a,b,c\in \mathbb R}); |&math(\mathbb R^3=\set{(a,b,c)\|a,b,c\in \mathbb R});| |>|&math(V); の基底 &math(x^2,x,1); に対する数ベクトル表現になっている| |&math((a_1x^2+b_1x+c_1)+(a_2x^2+b_2x+c_2)\\=(a_1+a_2)x^2+(b_1+b_2)x+(c_1+c_2));|&math((a_1,b_1,c_1)+(a_2,b_2,c_2)\\=(a_1+a_2,b_1+b_2,c_1+c_2));| |&math(k(ax^2+bx+c)=(ka)x^2+(kb)x+(kc));|&math(k(a,b,c)=(ka,kb,kc));| 実数を係数とする2次以下の $x$ の多項式からなる線形空間 この対応関係は ベクトル和 や スカラー倍 に対しても保存されることから、 任意の &math(n); 次元線形空間 &math(V); は、同じ次元を持つ数ベクトル空間 &math(K^n); と強い類似性を持つことが分かる。 $$ P^2[x]=\{ax^2+bx+c|a,b,c\in \mathbb R\} $$ こういう時、&math(V); と &math(K^3); は「同型である」、と言う。 に、基底 $\bm e_1=x^2-1,\bm e_2=x+1,\bm e_3=1$ を取る。 以下で同型を定義する。 任意の $\bm x=ax^2+bx+c\in P^2[x]$ に対して、 [[前の単元 <<<>線形代数Ⅱ/抽象線形空間]] [[線形代数Ⅱ]] [[>>> 次の単元>線形代数Ⅱ/線形写像・像・核・階数]] $\bm x'=\begin{pmatrix}a\\b\\a-b+c\end{pmatrix}$ と取れば、 $\bm x=\begin{pmatrix}\bm e_1&\bm e_2&\bm e_3\end{pmatrix}\bm x'$ が成り立ち、 基底 $\{\bm e_i\}$ に対する $\bm x$ の数ベクトル表現 $\bm x'\in \mathbb R^3$ がただ一つ求まることになる。 逆に、任意の $\bm x'=\begin{pmatrix}a'\\b'\\c'\end{pmatrix}\in \mathbb R^3$ に対して、 $$ \bm x=ax^2+bx+(-a+b+c)\in P^2[x] $$ が求まる。 $\bm x=ax^2+bx+c\in P^2[x]$, $\bm y=a'x^2+b'x+c'\in P^2[x]$ の数ベクトル表現は $\bm x'=\begin{pmatrix}a\\b\\a-b+c\end{pmatrix}$, $\bm y'=\begin{pmatrix}a'\\b'\\a'-b'+c'\end{pmatrix}$ なので、 - $k\bm x$ のベクトル表現が $k\bm x'$ となること、 - $\bm x+\bm y$ のベクトル表現が $\bm x'+\bm y'$ となること、 を、容易に確認できる。 [[前の単元 <<<>線形代数II/抽象線形空間]] [[線形代数II]] [[>>> 次の単元>線形代数II/線形写像・像・核・階数]] * 質問・コメント [#jf7db8ee] #article_kcaptcha
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