線形代数II/関数空間 のバックアップ(No.5)

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線形代数Ⅱ?

関数の線形空間 = 関数空間

閉区間 [a,b] ただし a,b\in \mathbb R で定義された任意の複素関数を要素とする集合 U は、 通常の和と定数倍に対して線形空間を為す。

すなわち、 f,g\in U のとき、

u=f+g   ただし u(x)=f(x)+g(x)

v=kf   ただし v(x)=kf(x)

とすれば、 u,v\in U であり、 U はこれらの演算に対して閉じている。

以下、数ベクトル空間と対比させながら関数空間について学んでいこう。

ベクトルの値

\bm a={}^t\!(a_1\ a_2\ \dots\ a_n)\in\mathbb R^n のとき、

添字 k に対して a_k をプロットすれば、 「ベクトルのグラフ」を表示できる。

vector1.png

k から a_k への対応関係を1つ決めると、 それが1つのベクトルを決めることに相当する。

u(x)\in U のとき、

変数 x に対して u(x) をプロットすれば、 「関数のグラフ」を表示できる。

function.png

x から u(x) への対応関係を1つ決めると、 それが1つの関数を決めることに相当する。

ただし本来、ベクトルや関数の値は複素数を想定しているので、 上記グラフはあくまで概念的な物である。

  • ベクトルの和はグラフの重ね合わせに
  • ベクトルの定数倍はグラフの上下方向の引き延ばしに

それぞれ対応する。

内積

標準内積:

&math((\bm a,\bm b)\equiv\bm a^\dagger\bm b =\sum_{k=1}^n \overline{a_k}b_k);

少し一般化して、

(\bm a,\bm b)&\equiv\sum_{k=1}^n w_k\overline{a_k}b_k

としても内積の公理を満たす。ただし w_k>0 はある決まった正の数列で、 個々の成分に付けられた重みに相当する。

標準内積:

(u,v)\equiv\int_a^bdx\,\overline{u(x)}v(x)

少し一般化して、

(u,v)\equiv\int_a^bdx\,\rho(x)\overline{u(x)}v(x)

としても良い。ただし、 \rho(x)>0 は「重み関数」と呼ばれる。

正規・直交

正規性:

(\bm x,\bm x)=\|x\|^2=1

直交:

(\bm x,\bm y)=0


正規直交:

ベクトルの組 \set{\bm e_k} に対して

(\bm e_i,\bm e_j)=\delta_{ij}

正規性:

\int_a^bdx\,\rho(x)\|u(x)\|^2=1

直交:

\int_a^bdx\,\rho(x)\overline{u(x)}v(x)=0

正規直交:

関数の組 \set{\phi_k(x)} に対して

\int_a^bdx\,\rho(x)\overline{\phi_i(x)}\phi_j(x)=\delta_{ij}

完全性・成分表示

あるベクトルの組 \set{\bm b_k} が線形空間 V を張るとは、 任意の \bm x\in V を次の形に表せること。

\bm x=\sum_{k=1}^n x_k\bm b_k

ある関数系 \set{\phi_k(x)} が完全であるとは、 任意の関数 f(x) を次の形に表せること。

f(x)=\sum_{k=1}^\infty f_k\phi_k(x)

実際には k \infty までの和を取るわけには行かないため、 この表示は N\to \infty のときに

\int_a^bdx\,\Big\|f(x)-\sum_{k=1}^N f_k\phi_k(x)\Big\|^2\to 0

となることを意味する。

正規直交基底 \set{\bm e_k} により \bm x=\sum_{k=1}^n x_k\bm e_k と分解するとき、 その \bm e_k 成分を

x_k=(\bm e_k,\bm x)

として求められる。

正規直交関数形 \set{\phi_k(x)} により f(x)=\sum_{k=1}^n f_k\phi_k(x) と分解するとき、 その \phi_k(x) の係数を

f_k=\int_a^bdx\,\overline{\phi_k(x)}f(x)

として求められる。


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