正弦波の複素指数関数表現とインピーダンス のバックアップ(No.1)

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オームの法則

抵抗 $R$ の両端の電圧を $V_A(t),V_B(t)$、A から B へ流れる電流を $I(t)$ とすると、電圧降下 $\Delta V(t)=V_B(t)-V_A(t)$ は電流に比例し、その係数が $R$ となり、オームの法則

$$\Delta V(t)=V_B(t)-V_A(t)=R I(t)$$

が成り立ちます。

抵抗 $R$ は $\text{Ω}=\text{V/A}$ の単位で計られます。 $\Omega$ は「オーム」と読みます。

抵抗とコンダクタンス

同じ関係式を、

$$\underbrace{(1/R)}_G\Delta V(t)=G\Delta V(t)=I(t)$$

と書いた時の $G=1/R$ をコンダクタンスと呼びます。

コンダクタンス $G$ は $\text{S}=1/\Omega=\text{A/V}$ の単位で計られます。 $\text{S}$ はジーメンスと読みます。

コンデンサとコイルの特性

静電容量(キャパシタンス)$C$ を持つコンデンサ(キャパシタ)では、蓄えられた電荷 $Q(t)$ と両端電圧 $V(t)$ とが比例し、その比例係数が $C$ となります。

$$ Q(t)=CV(t) $$

電流が流れることで電荷量が変化するとき、$Q(0)=0$ を仮定すると

$$ \int_0^t I(t')\,dt'=Q(t) $$

あるいは、これを微分して、

$$ I(t)=\frac{d}{dt}Q(t) $$

の関係があるため、

$$ I(t)=\frac{d}{dt}Q(t)=C\,\frac{d}{dt}V(t) $$

あるいは、

$$ V(t)=(1/C)\int\,dt\, I(t) $$

が成り立ちます。

インダクタンス $L$ を持つコイル(インダクタ)では、電流変化に比例する電圧が生じます。

$$ V(t)=L\frac{d}{dt}I(t) $$

このように、コンデンサやコイルについては電圧と電流の関係は抵抗とは異なり単なる比例ではなく、微分や積分を含む「面倒な」関係になっています。

とはいえ次のように並べて書くと、

$$ \begin{cases} V(t)=R I(t)&(\text{抵抗})\\ V(t)=(1/C)\int\,dt\,I(t)&(\text{コンデンサ})\\ V(t)=L\frac{d}{dt}I(t)&(\text{コイル})\\ \end{cases} $$

線形演算子である $(1/C)\int\,dt$ や $L\frac{d}{dt}$ が抵抗 $R$ と同じ働きをする、と見ることができるところが実は重要です。

微分や積分で形の変わらない関数 = 指数関数

電圧や電流が、微分や積分で形の変わらない関数である指数関数で表せるとき、コンデンサやコイルの特性がどのように書けるか見てみます。

$$ \begin{aligned} V(t)=V_0e^{at}\\ I(t)=I_0e^{at} \end{aligned} $$

のとき、抵抗の特性は普通にオームの法則で、

$$ V_0e^{at}=RI_0e^{at} $$

となるのに対して、コンデンサーの特性は、

$$ I_0e^{at}=C\,\frac{d}{dt}\Big[V_0e^{at}\Big] $$ $$ I_0e^{at}=aCV_0e^{at} $$

コイルの特性は、

$$ V_0e^{at}=L\,\frac{d}{dt}\Big[I_0e^{at}\Big] $$ $$ V_0e^{at}=aLI_0e^{at} $$

これらの関係を並べてみると、

$$ \begin{cases} V(t)=\ \ \ \ R\ \ \ \ \ \ I(t)&(\text{抵抗})\\ V(t)=(1/aC)\,I(t)&(\text{コンデンサ})\\ V(t)=\ \ (aL)\ \ \,I(t)&(\text{コイル})\\ \end{cases} $$

のように、電圧・電流が指数関数的に変化する場合には、電圧と電流はコンデンサやコイルの場合も比例し、コンデンサの場合には $1/aC$ が、コイルの場合には $aL$ が、「抵抗と同じ役割を持つ比例係数」になっていることを確認できます。

これは、指数関数が線形演算子である微分演算子や積分演算子の固有関数になっていて、指数関数に作用させる場合に限って微分演算子や積分演算子をその固有値である $a$ や $1/a$ と置き換えて良いことが理由になっています。

$$ \underbrace{\frac{d}{dt}}_{\text{線形演算子}}\hspace{-3mm}e^{at}=\underbrace{a\rule[-2.4mm]{0mm}{5mm}}_\text{固有値}e^{at} $$

$$ \underbrace{\int dt\,}_{\text{線形演算子}}\hspace{-1mm}e^{at}=\underbrace{\frac 1a\rule[-3.2mm]{0mm}{5mm}}_\text{固有値}e^{at} $$

正弦波も形が変わらない = 指数関数で表せる

実は正弦波も微分や積分を行っても形が変わりません(位相は変わってしまうのですが)。

$$ \frac{d}{dt}\cos\omega t=-\omega\sin\omega t=\omega\cos(\omega t+\pi/2) $$

これは正弦波を指数関数で書けることによります。

$$ \frac d{dt}\cos\omega t=\frac d{dt}\Big[\frac{e^{i\omega t}+e^{-i\omega t}}2\Big]=i\omega\cdot \frac{e^{i\omega t}-e^{-i\omega t}}2 =-\omega\cdot \frac{e^{i\omega t}-e^{-i\omega t}}{2i}=-\omega\sin\omega t $$

ただ微分や積分で位相が変化してしまうので、指数関数ほど便利な感じになりません。

正弦波を簡易的に複素指数関数で表す

振幅と位相の両方を係数で表せて便利

インピーダンスとリアクタンス

抵抗、コンデンサ、コイルでできた回路を微分・積分を使わずに表せる(正弦波の時だけ)

現実の信号を複数の正弦波の重ね合わせとして表すと便利


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