場の量子化(第2量子化) のバックアップ(No.1)

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量子力学Ⅰ

場の量子化

ハートレー・フォック法ではフォック方程式の解に現れる 正規直交完全系 \set{\varphi_k(\bm r)} から任意の n 個を選んで、フェルミ粒子であればスレーター行列式、 ボーズ粒子であればスレーター行列のパーマネントを作ることで、 多体波動関数の近似解を得た。

ボーズ粒子の波動関数はスレーター行列に解を並べる順番によらないため、 「エネルギーの低い方から数えて k 番目の固有関数を n_k 個取る」 という \set{n_k} を指定してしまえば、それで1つの解が得られることになる。

フェルミ粒子ではスレーター行列の2つの行を入れ替えると 波動関数の負号が反転するため、 \set{n_k} に加えて「それらをどの順番で並べるか」も重要になる。 また1つの状態に複数粒子は入れないため n_k=0\ \mathrm{or}\ 1 である。

このようなモデルを扱う便利な方法として、 場の量子化の手法が確立された。

名前の由来

以下は演算子のお遊び的になっていて、あまり「場の量子化」の雰囲気がないかもしれない。

この体系は、古典論から量子論への移行が、 正準変数(例えば \bm r )と正準運動量(例えば \bm x )で書かれた系のエネルギー すなわちハミルトニアンの正準運動量を演算子に置き換えて波動方程式を得る、 という手順で行われたのに対して、

波動関数 \Psi で書かれた系のエネルギー(の期待値)

 &math(

E>=\int \Psi^* \hat H \Psi d\bm r );

を、粒子の波動関数自体を正準変数に見立てて演算子化し系の波動関数に対する方程式を得る、という手順で体系化したものになっている。

その意味で、古典論の粒子 → 粒子の波動関数 → 系の波動関数 という2段階の量子化手順を踏んでいるとして「第2量子化」と呼ばれたり、

波動関数 = 場 を変数に見立てた量子化であるから「場の量子化」と呼ばれたりする。

生成・消滅演算子

あるスレーター行列で表される状態の左端に \phi_k を追加する演算子を \hat c_k^\dagger とする。

粒子の個数がゼロである状態を \ket 0 で表せば、例えば

 &math( \Phi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)=|\,\varphi_\alpha,\varphi_\beta,\varphi_\gamma,\varphi_delta\,| );

を表す状態は、

 &math( \hat c_\alpha \hat c_\beta \hat c_\gamma \hat c_\delta \ket 0 );

と記述できる。

一方、一番左にある \varphi_k を消す消滅演算子を \hat c_k と書くことにする。 \hat c_k\hat c_k^\dagger=1 である。


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