量子力学Ⅰ/球面調和関数 のバックアップ(No.7)
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目次 †
球関数 $Y^m_l(\theta,\phi)$:角運動量の固有関数 †
の方程式
&math(\Big[\sin\theta \frac{\PD}{\PD \theta} \Big(\sin\theta\frac{\PD}{\PD \theta}\Big)+l(l+1) \sin^2\theta\Big]\Theta(\theta)=m^2\Theta(\theta));
は、 が
の範囲の整数になるときのみ解を持ち、その固有関数はルジャンドルの陪関数を用いて表わすことができる。
ただし、 はルジャンドルの多項式で、
によって与えられる。これらを用いた
&math( Y_l^m(\theta,\phi)= \underbrace{(-1)^{(m+|m|)/2}\sqrt{\frac{2l+1}{2}\frac{(l-|m|)!}{(l+|m|)!}}P_l^{|m|}(\cos\theta)}_{\Theta(\theta)} \underbrace{\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{im\phi}}_{\Phi(\phi)} );
は規格直交完全な固有関数となり、この関数を 球面調和関数 と呼ぶ。*1ここでは符号を に含めたが、符号を に含めても、両者で分け合っても、正規直交条件を満たすことはできる
・・・ |
特徴 †
- より、 &math( (-1)^{(m-|m|)/2}=\begin{cases}
- 1\hspace{0.5cm}&m\,が偶数\\
- 1\hspace{0.5cm}&m\,が奇数でm>0\\
- 1&m\,が奇数でm<0 \end{cases} );
- と の 次同次関数になっている ( などとなることに注意せよ)
形状 †
方向別に原点から の距離の点を結ぶ曲面をプロットした。 色が位相を表しており、黄色が1、青が-1に対応する。
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- は位相を回転させるだけで大きさを変えない
- そのため、 と は位相のみが異なり、絶対値のプロットでは同じ形になる
- 位相は が一周する間に 回だけ回転する
- 位相は と とで 平面に対して対称になる
- は隣り合う突出部で符号が反転することから、位相も反転する
- は球形
- では はドーナツ型。 が大きいほど扁平で、半径も大きい。 全角運動量が大きくなるため原点から遠ざかり、 つまり 成分がほぼゼロであるために扁平になると解釈できる。
- に含まれる の次数を反映して、 軸方向に 個の突出部が見られる。
より分かりやすい表示 †
をプロットすると、さらに球面調和関数の意味を理解しやすい。
- ,
- そのため は の回転面内に 本の突起を持つ
- と は平面 に対して鏡面対称
- 方向は実数関数なので位相は変化せず、大きさのみが変化する
- 方向には 方向に分岐する
$z$ が特殊なわけではない †
上のグラフを見るとあたかも が特殊な方向であるかのように錯覚するがそんなことはない。
や、
は、 とそっくり同じ形で、それぞれ 方向を向いた関数となる。
これらの関数は高校でも などとして学んだ。
ある量子数 に対して の異なる 個の固有関数が縮退している。 それらの任意の線形結合はすべて同じ固有値 に属する固有関数となる。 軸を特殊な方向として取る球座標を使って変数分離したことにより、 これらの線形結合の中から、同時に の固有関数でもある物が として現れたのである。
の固有関数であるから が特殊な方向になったというだけのことである。
同じ に属する固有関数をすべて足し合わせてしまえば、
のように球対称な定数関数が得られる。
参考資料 †
演習:$m$ に関する漸化式 †
であるから、
である。
しかし、 をそのままにして だけ を増減させてしまうとつじつまが合わなくなってしまう。
を に変換するには、先に導入した演算子 が役に立つ。
具体的には次の等式が成り立つ。
&math( \begin{cases} \hat l_+Y_l{}^{m}(\theta,\phi)=\hbar\sqrt{(l-m)(l+m+1)}Y_l{}^{m+1}\\ \hat l_-Y_l{}^{m}(\theta,\phi)=\hbar\sqrt{(l+m)(l-m+1)}Y_l{}^{m-1}\\ \end{cases} );
すなわち、 は量子数 を1だけ増やす/減らす演算子になっている。
(1) シュレーディンガー方程式を解くに当たり、 は の範囲に入らなければならないという制約があったが、 のとき、さらに1だけ増やそう/減らそうとすると何が起きるだろうか。
であることに注意して、
を導け。
ただし、
である。
(2) は の固有関数でも、 の固有関数でもないが、 や の固有関数になっていることを示し、 その固有値を求めよ。
(3) となることを確かめよ
(4) (2),(3) の結果を用いて を示せ。
解説 †
(4) より、 のときにも となり 方向の角運動量はゼロにならない。すなわち、
&math( \bm l^2=\hbar^2 l(l+1)=\underbrace{\ \hbar^2l^2\ }_{l_z^2} + \underbrace{\ \hbar^2l\ }_{\langle l_x^2+l_y^2\rangle} );
と理解できるのである。