量子力学Ⅰ/確率密度の保存 のバックアップソース(No.3)

更新

[[量子力学I/波動関数の解釈]]

* 全確率の保存 [#i7b418d2]

ある時刻において規格化した波動関数がシュレーディンガー方程式に従って時間発展する時、
確率密度が増えたり減ったりしてはおかしなことになる。この点を確認しよう。

 &math(
\frac{d}{dt}\iiint|\psi(\bm r,t)|^2\,d\bm r
&=\iiint\psi^*\frac{\PD\psi}{\PD t}+\frac{\PD\psi^*}{\PD t}\psi\,d\bm r\\
&=\frac{i\hbar}{2m}\iiint\psi^*(\nabla^2\psi)-(\nabla^2\psi^*)\psi\,d\bm r\\
&=\frac{i\hbar}{2m}\iiint\bm \nabla\cdot\big[\psi^*(\bm \nabla\psi)-(\bm \nabla\psi^*)\psi\big]\,d\bm r\\
&=\frac{i\hbar}{2m}\iint_S\big[\psi^*(\bm \nabla\psi)-(\bm \nabla\psi^*)\psi\big]\cdot \bm n\,dS\\
);

2つ目の等号では &math(V(\bm r,t)); が実数であることから、
&math(V(\bm r,t)); を含む2つの項が打ち消し合って消えた。

最後の等式はガウスの定理を用いて体積積分を面積積分に直した。
ここでは積分範囲を無限大に取っているためその表面というのは考えづらいが、
&math(\psi); が有限範囲内のみゼロでない値を取る場合を想定し、
それより大きな範囲を取ると考えれば問題ない。

そのような場合、表面 &math(S); 上で積分内の関数はゼロになるため、

 &math(\frac{d}{dt}\iiint|\psi(\bm r,t)|^2\,d\bm r=0);

シュレーディンガー方程式に従った時間発展では全確率密度が保存されることが分かった。

* 確率密度の流れ [#tff807cf]

上記の計算において積分領域を有限に取れば、
右辺の積分は領域外から領域内へ入ってくる確率密度であると解釈できる。((ピンと来なければ電磁気学で学んだ電荷の保存則の部分を復習せよ))
すなわち、積分内の符号を反転した

 &math(
\bm S(\bm r,t)&=-\frac{i\hbar}{2m}\big[\psi^*(\bm \nabla\psi)-(\bm \nabla\psi^*)\psi\big]);

あるいはこれを変形した、

 &math(
\bm S(\bm r,t)&=\frac{\hbar}{2mi}\big[\psi^*(\bm \nabla\psi)-\{\psi^*(\bm \nabla\psi)\}^*\big]\\
&=\frac{\hbar}{2mi}\cdot 2\,\mathrm{Im}\Big[\psi^*(\bm \nabla\psi)\Big]\\
&=\mathrm{Re}\Big[\psi^*\frac{\hbar\bm \nabla}{mi}\psi\Big]\\
);

が局所的な確率密度の流れを表わす(単位面積当たり、単位時間当たりの流量)。

&math(\hbar\bm \nabla/i); は運動量を表わす演算子であり、
&math(\hbar\bm \nabla/mi); はそれを質量 &math(m); で割った物であるから、
&math(\bm v=\bm p/m); よりこれは速度を表わす演算子となる。すなわち、確率密度の流れを

 &math(
\bm S(\bm r,t)&=\mathrm{Re}\Big[\psi^*\hat{\bm v}\psi\Big]\\
);

と書いておくと覚えやすい。

多数の電子が同じ波動関数に従って移動しているような場合には、
この &math(\bm S); に素電荷 &math(e); を掛けた物が電流密度になるなど、
物理的な意味も大きい。

* 線形代数を用いた証明 [#f6db1a8f]

&math(\Delta t); が小さく &math(t); から &math(t+\Delta t); の間に 
&math(\hat H(\hat{\bm r},\hat{\bm p},t)); が変化しないと見なせるとき、
シュレーディンガー方程式を変形して

 &math(\frac{\PD}{\PD t}\psi(\bm r,t)=(-i\hat H/\hbar)\psi(\bm r,t));

より、

 &math(\psi(\bm r,t+\Delta t)=e^{-i\Delta t\hat H(\hat{\bm r},\hat{\bm p},t)/\hbar}\psi(\bm r,t));

と表せる。積分範囲の端で &math(\psi=0); となる場合には &math(\hat H); はエルミートであり、すなわち &math(-\Delta t\hat H/\hbar); もエルミートであるから、

 &math(\hat U=e^{-i\Delta t\hat H(\hat{\bm r},\hat{\bm p},t)/\hbar});

と置けばこれはユニタリーになる。→ [[[&math(H); がエルミート行列の時、&math(e^{iH}); はユニタリーの証明]>量子力学I/線形代数の復習#a5808b18]]

ユニタリー変換の性質より、

 &math(|\psi(\bm r,t+\Delta t)|^2=|\hat U\psi(\bm r,t)|^2=|\psi(\bm r,t)|^2); 

である。

この等式が任意の時刻に成り立つことから、シュレーディンガー方程式に従った波動関数の時間発展により、
確率密度は保存される。

* 質問・コメント [#wfa4b315]

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