量子力学Ⅰ/群速度と波束の崩壊 のバックアップ差分(No.5)
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[[量子力学Ⅰ]] * ある位置に局在する、有限の運動量を持つ波束 [#b0c6b8f8] -&math(x=x_0); に存在する運動量 &math(p=p_0); の古典粒子 に対応するのは、 -&math(x=x_0); ___付近___に局在する波数 &math(k=k_0=p_0/\hbar); の波動関数 である。波動関数が幅を持たなければ波長や波数を定義できないことに注意せよ。 このような局在した波動関数を「波束」と呼ぶ。 以下、&math(x_0=0); として波束の運動を考える。 波数 &math(k=k_0); の波動関数: &math( \varphi_{k_0}(x)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{ik_0x} ); ガウス関数を掛けて「波束」にする。 &math( \varphi(x) &=\frac{1}{\sqrt{\sqrt{2\pi}\sigma_{x0}}}e^{-x^2/4\sigma_{x0}^2}\,e^{ik_0x}\\ ); このとき、 &math( |\varphi(x)|^2=\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma_{x0}}e^{-x^2/2\sigma_{x0}^2} ); より、空間分布は &math(x=0); を中心とした標準偏差 &math(\sigma_{x0}); の正規化されたガウス関数になっている。 この関数の波数は &math(k=k_0); ? 波動関数を波数毎の成分に分解するにはフーリエ変換すればいい: &math( \varphi(k)&=\int_{-\infty}^\infty \frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-ikx}\varphi(x)dx\\ &=\frac{1}{\sqrt{2\pi\sqrt{2\pi}\sigma_{x0}}}\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2/4\sigma_{x0}^2}e^{-i(k-k_0)x}dx\\ &=\sqrt{\frac{2\sigma_{x0}}{\pi\sqrt{2\pi}}}\underbrace{\int_{-\infty}^\infty e^{-\{x/2\sigma_{x0}+i\sigma_{x0}(k-k_0)\}^2}\frac{dx}{2\sigma_{x0}}}_{\sqrt \pi}e^{-\sigma_{x0}^2(k-k_0)^2}\\ &=\sqrt{\frac{2\sigma_{x0}}{\sqrt{2\pi}}}e^{-4\sigma_{x0}^2(k-k_0)^2/4} ); 逆フーリエ変換は、 &math( \varphi(x)=\int_{-\infty}^\infty \underbrace{\varphi(k)}_{係数}\, \underbrace{\left(\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{ikx}\right)}_{波数kの成分}dk ); であるから、&math(\varphi(x)); に含まれる波数 &math(k); の成分の係数が &math(\varphi(k)); である。 したがって、波数が &math(k); となる確率は、 &math( |\varphi(k)|^2&=\frac{2\sigma_{x0}}{\sqrt{2\pi}}e^{-4\sigma_{x0}^2(k-k_0)^2/2} ); &math(k); の確率分布は &math(p=\hbar k_0); を中心に、&math(\sigma_{k0}=1/2\sigma_{x0}); のガウシアンとなる。 「波束」にしたことにより、&math(k=k_0); の成分だけでなく、 おおよそ &math(k=k_0\pm\sigma_{x0}); の成分を含んでしまったことになる。 空間的に狭い範囲に局在した波束ほど、幅広い範囲の波数の重ね合わせになることにも注意せよ。 この関数に対して、 &math( \sigma_{x}\cdot\sigma_{p}=\sigma_{x}\hbar\sigma_{k}=\hbar/2 ); は不確定性原理で与えられる最小値をとる。このような波束は「最小波束」と呼ばれる。 >波束 &math(\varphi(x)); の空間分布をガウス関数としたために最小波束が得られたが、 空間分布がガウス関数からずれれば、&math(\sigma_{x}\cdot\sigma_{p}>\hbar/2); となる。 * 自由な波束の運動 [#nbb01d97] 自由な粒子では、 &math(\varepsilon=\frac{p^2}{2m}); に対応して &math(\hbar\omega_k=\frac{\hbar^2 k^2}{2m}); がその分散関係を与えるのであった。 したがって、波数 &math(k); の成分 &math(\varphi_k(x)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{ikx}); の位相は &math(e^{-i\omega_kt}=e^{-\hbar k^2t/2m}); で回転する。 すなわち、上記最小波束の時間発展は、 &math( \psi(x,t)&=\int_{-\infty}^{\infty}\varphi(k)\underbrace{\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{ikx}e^{-i\omega_kt}}_{\psi_k(x,t)}dk\\ &=\dots\\ &=\sqrt{\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma_{x0}(1+i\xi t)}}\exp\left[\frac{-x^2/4\sigma_{x0}^2+i(k_0x-\omega_{k0} t)}{1+i\xi t}\right]\\ ); となる(→ [[計算の詳細>量子力学Ⅰ/群速度と波束の崩壊/メモ]])。 ただし、&math(\xi=\frac{\hbar}{2m\sigma_{x0}^2});、&math(\omega_0=\frac{\hbar k_0^2}{2m}); このとき、 &math( |\psi(x,t)|^2 &=\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma_{x0}\sqrt{1+\xi^2 t^2}} \exp\left[\frac{-\{x-(\hbar k_0/m) t\}^2}{2\sigma_{x0}^2(1+\xi^2t^2)}\right]\\ ); であり、これは &math(x=x_0-(\hbar k_0/m) t); を中心とする、標準偏差 &math(\sigma_x=\sigma_{x0}\sqrt{1+\xi^2 t^2}=\sigma_{x0}\sqrt{1+\left(\frac{\hbar}{2m\sigma_{x0}^2}\right)t^2}); のガウス関数になっている。 すなわちこの関数は速度 &math(v_G=\hbar k_0/m=p_0/m); で進みながら、 徐々に幅が広がり、高さがつぶれていく。 幅の広がる速さは &math(\sigma_{x0}); が小さいほど速い。 * 群速度と位相速度 [#b99dfdf6] 上記の波束のピーク位置は速度 &math(v_G); で進んだ。 この速度を 「群速度」 と呼ぶ。波束を異なる波長を持つ波の一群として見たときの群全体の速度という意味か。 上記の波束のピーク位置 = 位置の期待値は速度 &math(v_G); で進んだ。 この速度 &math(v_G); を波束の 「群速度」 と呼ぶ。 波束は異なる波長を持つ波の一群と見なせることを上で見た。 その波の一群が全体として持つ速度が群速度である。 これに対して位相速度、という言葉がある。 2つの概念を理解するために、&math(\xi=1); &math(\sigma_{k0}=1/2\sigma_{x0}); からも分かるとおり、 &math(\sigma_{x0}); が小さい波束ほど、 様々な速度の波数成分を重ね合わせて作られており、 時間が経つにつれて各成分の位相がより速やかにずれていき、 波形が崩れていくためである。
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