電気回路/HDL/Verilogメモ
内部信号線を pullup / pulldown できないのでその対処法†
以下は Xilinx ISE 14.2 で試した結果です。
pullup/pulldown の基本†
Verilog ではバス信号線などを pullup / pulldown で引っ張ることにより、すべてのドライバが highZ の時の値を 1 または 0 に決められることになっています。
通常そのようなトライステートなバスは FPGA 外部に出て行く信号線を記述するときに使います。
外部ピンをトライステートにする場合とは対照的に、
FPGA 内部のネットを疑似トライステート的に記述した場合には、
その回路は論理合成時に マルチプレクサ/and/or などの論理回路に置き換えられて、
「結果的にトライステートの場合と同様の動作をするよう」取りはからってもらえます。
たとえばこんな回路。
LANG:verilog wire oe1, oe2, oe3; wire [BUS_BITS-1:0] data1, data2, data3; wire [BUS_BITS-1:0] bus; assign bus = oe1 ? data1 : {BUS_BITS{1'bz}}; assign bus = oe2 ? data2 : {BUS_BITS{1'bz}}; assign bus = oe3 ? data3 : {BUS_BITS{1'bz}};
これは次のような警告を出しつつ問題なく論理合成できて、
LANG:console WARNING:Xst:2042 - Unit main: 8 internal tristates are replaced by logic (pull-up yes): bus<0>, bus<2>, bus<3>, bus<4>, bus<5>, bus<6>, bus<7>.
デフォルトでは pullup されているかのごとく highZ 時の値は 1 になります。
これを明示的に pulldown するには、Verilog 文法的には
LANG:verilog // bus 信号線を pulldown して、何も出力されないときは 0 とする generate genvar bus_pull_i; for(bus_pull_i=0; bus_pull_i<BUS_BITS; bus_pull_i=bus_pull_i+1) begin: bus_pull pulldown(bus[bus_pull_i]); end endgenerate
を付け足せば良いことになるのですが・・・実は後述の通りこのコードは論理合成できません。
もちろん 3 つの assign と pulldown をまとめて
LANG:verilog assign bus = oe1 ? data1 : oe2 ? data2 : oe3 ? data3 : {BUS_BITS{1'b0}};
と書いてしまえば論理合成可能で、得られる結果も同じなのですが、
data1, data2, data3 をバスに繋ぐコードは通常 あちこちのモジュールに分散しているので、 pulldown で「それ以外」の場合を一度に書けたらうれしいと。
内部信号線に付けた pullup/pulldown は論理合成できない†
上記のコードを論理合成しようとすると、 Synthesize でエラーになります。
LANG:console ERROR:Xst:850 - "main.v" line 40: Unsupported gate instantiation.
Verilog のゲートプリミティブ記述 pulldown の代わりに PULLDOWN モジュールを使って
LANG:verilog generate genvar bus_pull_i; for(bus_pull_i=0; bus_pull_i<BUS_BITS; bus_pull_i=bus_pull_i+1) begin: bus_pull PULLDOWN bus_pd(.O(bus[bus_pull_i])); end endgenerate
のように PULLDOWN してやると、Synthesize は通るようになります。
でも Translate で
LANG:console ERROR:Xst:2617 - Data Corruption(Timing): Arrival time traversal failed on Ugate element
となってやはり論理合成できない。
どうやら PULLDOWN/PULLUP モジュールは IOB に対するプルアップ・プルダウン制約に 特化した記述なようで、内部信号線には使えないみたいです。
そこで対処法†
すみません。 2012/11/06 まで、うまくいかない対処法が書かれていました。
結局よく調べてみると Verilog レベルでできる対処は無いようでした。
仕方がないので Xilinx ISE 固有の対処法になってしまうのですが、
によれば、
- Xilinx ISE ではトライステートバスを論理回路に直す時、 デフォルトでは pull up が指定されるため、pull up で構わなければ明示的な指定は必要ない
- これを pull down にするためにはネットにtristate2logic_pullup属性を指定すれば良い
- tristate2logic_pullup属性はあくまで論理合成時にしか働かないので、 シミュレーション用には明示的に pull up/pull down を書く必要がある
ということのようです。
LANG:verilog (* tristate2logic_pullup = "yes" *) wire [BUS_BITS-1:0] bus_pulled_up; // 論理合成時には暗黙で pullup される (* tristate2logic_pullup = "no" *) wire [BUS_BITS-1:0] bus_pulled_down; // 論理合成時には暗黙で pulldown される `ifdef XILINX_ISIM // シミュレーション用には明示的に pull しておく必要がある generate genvar bus_pull_i; for(bus_pull_i=0; bus_pull_i<BUS_BITS; bus_pull_i=bus_pull_i+1) begin: bus_pull pullup(bus_pull_up[bus_pull_i]); pulldown(bus_pull_down[bus_pull_i]); end endgenerate `endif // XILINX_ISIM
どなたか、普通ならこうするよ、とか、もっと良い方法があるよ、とかあれば教えて下さい。